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ウインティア王国編
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学園が休みの今日、ゾルティーの要望を叶えるためエリーがランを連れて王宮に来た。
ウォルシュ家の馬車から先に降りてくるエリーに手を差し出す。
「ルフィおはよう」
今日もエリーが可愛い。
「おはようエリー」
次に降りてきたのはランだ。
俺にはチラリと目を向けただけで、エリーの横に並んで歩き出す。
ランの大きさに驚く門番や、すれ違う文官や使用人の前を堂々とした足踏みで歩くランは注目を集めている。
「ラン~」
後ろから珍しく大きな声でランを呼びながら走ってくるゾルティー。
呼ばれたランはゾルティーに向かって走っていく。
白くて少し長い毛を靡かせ走る姿は確かに綺麗な犬だ。
「ゾル様おはようございます」
「おはようエリー嬢。兄上私を置いて行くなんて酷いですよ!私もランの出迎えがしたかったのに!」
「すまない」
悪いなんて思ってないがな。
「エリー昼食が済んだら母上と婚礼衣装の打ち合わせだが、母上のことは気にせずエリーの気に入った衣装を作ればいいからな」
「ルフィありがとう。でも王妃様の意見も取り入れたいわ。あんなに喜んでくれているもの」
確かに母上は今日を楽しみにしていたが・・・
「嫌なことは嫌って言ってもいいからな」
エリーは大丈夫よっと笑っているが、娘が欲しいとずっと言っていたあの母上だ、エリーが可愛いのは分かるが、やり過ぎないように釘をさしておくか。
打ち合わせが終わったらエリーと2人きりの時間を絶対に過ごす!
「お待たせエリーちゃん」
母上もう来たのか・・・
「今日は私のためにお時間を取ってくださりありがとうございます」
「いいのよ~さっ行きましょう」
「ルフィまた後でね」
エリーは母上に手を引かれて連れて行かれたが、俺もその間に済ませてしまいたい事があるからな。
「失礼します」
父上の執務室には既にゾルティーも来ていて隣に座っている。
父上の左右には騎士団長のタイロン伯爵と、新しく宰相に任命されたノットー伯爵が立っている。
前のソファにはゾルティーの婚約者候補に上がっている令嬢とその父親。
「なぜ呼ばれたか分かっているか?」
父上の言葉に令嬢は素直に頷くが、父親バレル伯爵の方は訳が分からずオロオロしている。
先に口を開いたのは令嬢だった。
「申し訳ございません。わたくしはゾルティー殿下の婚約者候補に相応しくありません。候補からご辞退させていただきたく存じます」
頭を下げる令嬢に対し父親の方は目を見開いて娘を見ているだけだ。
「そうだね。お腹の子は彼の子かい?」
「っ!ご存知でしたか、そうです彼を心から愛しております」
「お前は何を言っているんだ!」
手を上げようとした父親を騎士団長が止めたが、怒りが収まらないのか足まで出そうとしているが宰相の言葉に項垂れた。
「王族との婚姻の条件に純潔であることは絶対です」
父親の野心のせいでバレル令嬢を無理矢理ゾルティーの婚約者候補に上げたが、彼女には子供の頃から想い合う子息がいた。
今回のことは王家から令嬢を咎めることはなかったが、娘の気持ちを考えず自分の野心のために娘を使おうとした父親には、厳重注意と娘とお腹の子の父親との結婚を認めさせた。
「幸せになってね」
「ありがとうございます」
結婚を認められたバレル令嬢は何度も頭を下げながら父上とゾルティーにお礼を言って部屋から退室した。
「さて、もう一つも終わらせようか」
次に入室したのはドクトル侯爵とその娘。
挨拶を済ませてソファに座る令嬢とその父親の顔には喜びが隠しきれていない。
「なぜ呼ばれたか分かるか?」
「娘がゾルティー殿下の婚約者に選ばれたからではないでしょうか」
嬉しそうな顔もここまでだ。
「なぜお前の愛人をゾルティーの嫁に貰わねばならない?」
2人とも一瞬で真っ青になり、ガタガタ震えだした。
「年齢も誤魔化しているな」
「い、いえ・・・こ、これはその・・・」
「実際は22歳だと調べはついている」
これは本当だ。
17歳だと偽って学園まで通っている。
いくら童顔でも無理がある。
「実の娘を修道院に入れてまで、自分の愛人を王家に嫁がせ簒奪でも狙っていたか?」
「め、滅相もございません!わ、わたしは」
「もういい!言い訳はできぬぞ。引っ捕らえろ!」
「ちょっと!なんで私まで!贅沢させてやるって言ったじゃない!」
コイツは自分の愛人が選ばれると本気で思っていたようだが、平民が王家に嫁げるわけが無い。
調べたところ女が13歳の時からの関係だ。
ギャーギャー騒ぐ愛人と元侯爵は衛兵に引きずられながら部屋から出て行った。
別宅に閉じ込められ虐げられてきた本妻と、修道院に入れられていた娘は侯爵家の財産を渡して妻の実家に引き取られることが決まっている。
コイツらは爵位剥奪のうえ王家簒奪を図った罪で処刑される。
ゾルティーの婚約者候補四家のうち二家は片付いたが、あとの二家が慎重に動かないと厄介だ。
なんで四家ともに問題があるのか・・・
ゾルティーも女運ないよな。
ウォルシュ家の馬車から先に降りてくるエリーに手を差し出す。
「ルフィおはよう」
今日もエリーが可愛い。
「おはようエリー」
次に降りてきたのはランだ。
俺にはチラリと目を向けただけで、エリーの横に並んで歩き出す。
ランの大きさに驚く門番や、すれ違う文官や使用人の前を堂々とした足踏みで歩くランは注目を集めている。
「ラン~」
後ろから珍しく大きな声でランを呼びながら走ってくるゾルティー。
呼ばれたランはゾルティーに向かって走っていく。
白くて少し長い毛を靡かせ走る姿は確かに綺麗な犬だ。
「ゾル様おはようございます」
「おはようエリー嬢。兄上私を置いて行くなんて酷いですよ!私もランの出迎えがしたかったのに!」
「すまない」
悪いなんて思ってないがな。
「エリー昼食が済んだら母上と婚礼衣装の打ち合わせだが、母上のことは気にせずエリーの気に入った衣装を作ればいいからな」
「ルフィありがとう。でも王妃様の意見も取り入れたいわ。あんなに喜んでくれているもの」
確かに母上は今日を楽しみにしていたが・・・
「嫌なことは嫌って言ってもいいからな」
エリーは大丈夫よっと笑っているが、娘が欲しいとずっと言っていたあの母上だ、エリーが可愛いのは分かるが、やり過ぎないように釘をさしておくか。
打ち合わせが終わったらエリーと2人きりの時間を絶対に過ごす!
「お待たせエリーちゃん」
母上もう来たのか・・・
「今日は私のためにお時間を取ってくださりありがとうございます」
「いいのよ~さっ行きましょう」
「ルフィまた後でね」
エリーは母上に手を引かれて連れて行かれたが、俺もその間に済ませてしまいたい事があるからな。
「失礼します」
父上の執務室には既にゾルティーも来ていて隣に座っている。
父上の左右には騎士団長のタイロン伯爵と、新しく宰相に任命されたノットー伯爵が立っている。
前のソファにはゾルティーの婚約者候補に上がっている令嬢とその父親。
「なぜ呼ばれたか分かっているか?」
父上の言葉に令嬢は素直に頷くが、父親バレル伯爵の方は訳が分からずオロオロしている。
先に口を開いたのは令嬢だった。
「申し訳ございません。わたくしはゾルティー殿下の婚約者候補に相応しくありません。候補からご辞退させていただきたく存じます」
頭を下げる令嬢に対し父親の方は目を見開いて娘を見ているだけだ。
「そうだね。お腹の子は彼の子かい?」
「っ!ご存知でしたか、そうです彼を心から愛しております」
「お前は何を言っているんだ!」
手を上げようとした父親を騎士団長が止めたが、怒りが収まらないのか足まで出そうとしているが宰相の言葉に項垂れた。
「王族との婚姻の条件に純潔であることは絶対です」
父親の野心のせいでバレル令嬢を無理矢理ゾルティーの婚約者候補に上げたが、彼女には子供の頃から想い合う子息がいた。
今回のことは王家から令嬢を咎めることはなかったが、娘の気持ちを考えず自分の野心のために娘を使おうとした父親には、厳重注意と娘とお腹の子の父親との結婚を認めさせた。
「幸せになってね」
「ありがとうございます」
結婚を認められたバレル令嬢は何度も頭を下げながら父上とゾルティーにお礼を言って部屋から退室した。
「さて、もう一つも終わらせようか」
次に入室したのはドクトル侯爵とその娘。
挨拶を済ませてソファに座る令嬢とその父親の顔には喜びが隠しきれていない。
「なぜ呼ばれたか分かるか?」
「娘がゾルティー殿下の婚約者に選ばれたからではないでしょうか」
嬉しそうな顔もここまでだ。
「なぜお前の愛人をゾルティーの嫁に貰わねばならない?」
2人とも一瞬で真っ青になり、ガタガタ震えだした。
「年齢も誤魔化しているな」
「い、いえ・・・こ、これはその・・・」
「実際は22歳だと調べはついている」
これは本当だ。
17歳だと偽って学園まで通っている。
いくら童顔でも無理がある。
「実の娘を修道院に入れてまで、自分の愛人を王家に嫁がせ簒奪でも狙っていたか?」
「め、滅相もございません!わ、わたしは」
「もういい!言い訳はできぬぞ。引っ捕らえろ!」
「ちょっと!なんで私まで!贅沢させてやるって言ったじゃない!」
コイツは自分の愛人が選ばれると本気で思っていたようだが、平民が王家に嫁げるわけが無い。
調べたところ女が13歳の時からの関係だ。
ギャーギャー騒ぐ愛人と元侯爵は衛兵に引きずられながら部屋から出て行った。
別宅に閉じ込められ虐げられてきた本妻と、修道院に入れられていた娘は侯爵家の財産を渡して妻の実家に引き取られることが決まっている。
コイツらは爵位剥奪のうえ王家簒奪を図った罪で処刑される。
ゾルティーの婚約者候補四家のうち二家は片付いたが、あとの二家が慎重に動かないと厄介だ。
なんで四家ともに問題があるのか・・・
ゾルティーも女運ないよな。
応援ありがとうございます!
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