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ウインティア王国編

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何を期待しているのか、ニコニコと笑顔で俺を見つめるセルティ嬢。

この顔を見るだけで頭が沸騰しそうな程怒りが湧いてくる。
なのにコイツは・・・

「セルティ嬢、何故ここに呼ばれたか分かるか?」

「ええ!ウォルシュ嬢が残念なことになったとお聞きしましたの」

白々しい、お前がそう指示を出していたのだろうが!

「・・・残念?」

「噂でそう聞いておりますわ」

「・・・噂?」

「ええ、身体が自由に動かないとか・・・」

掛かったな。

「・・・・・・」

「それでルフラン殿下からわたくしに大事なお話しがおありでしょう?」

「ああ・・・それが何の話か分かっているのか?」

「勿論ですわ。ウォルシュ嬢はもう王太子妃、いえ次期王妃としての務めを果たすことは出来ませんでしょう?」

やはり狙いは王妃の椅子か。

「・・・だからお前が務めると言うのか?」

「そうですわ!他国からの王族も招待される結婚式を中止することは出来ませんでしょう?」

俺が待ちに待った結婚式を中止にするわけが無いだろ。

なるほど中止が出来ない事を見越して、式の間際に毒を使ったのか。

「・・・そうだな」

「ですから、わたくしアルマがルフラン殿下の妃として選ばれましたのよね?」

もういいか・・・
コイツの戯言を聞くのも終わりだ。

「何か勘違いしていないか?」

「勘違いでございますか?」

「ああ、結婚式は予定通り行う」

「そうでしょうとも。婚礼衣装の事でしたらご安心くださいませ。こんな事もあろうかと準備は出来ております」

「お前・・・いい加減にしろよ?」



お前たちも我慢の限界だったのか?
ノックと同時にアラン、レイ、ゾルティー、最後にエリーが入室してきた。


「そ、そんな、ど、どうして・・・」

顔を真っ青にしてセルティ嬢がブルブルと震えだした。

「どうした?」

「い、いえ」

「俺には心から愛するエリーがいるのに何故お前と結婚しなければならないんだ?」

「・・・決まっております!わたくし程ルフラン殿下に相応しい人間はおりません!」

開き直りやがった。

「エリーの身体が不自由になったなど、そんな噂は流れていないが何故お前がそれを言う?」

「セルティ嬢、君が潜り込ませていたメイドが全て吐いたよ」

「今さら言い逃れは出来ないぞ」

お前のした事でセルティ公爵家は爵位を剥奪され、両親もお前も処罰される。

「ねえ?セルティ様?貴女はルフィを、彼を麻痺させ不自由な身体にしたかったの?」

普段と変わらない口調で問いかけるエリー。 

「まさか!彼は次期国王ですわ!」

「おかしいわね~、ルフィこっちを向いて?」

俺の横に立っているエリーを見上げると、顔が近づいてきたと思ったらキスをされた。
何時もなら人前では恥ずかしがるエリーがだ。

「な!」

今度は真っ赤になってエリーを睨んでいる。

「ねえ、私とルフィの関係を知らないの?婚約者よ?キスぐらいいつもしているわ」

「・・・汚らわしい恥を知りなさい!」

「そうそう!私の今日のドレスどうですか?ルフィとお揃いなのよ?卒業パーティーでも皆様からお似合いだと褒めていただけたの」

ゾルティーに騙されたことにやっと気づいたか。

「ゾルティー殿下、わたくしを騙しましたのね」

「人聞きが悪いね。犯罪者の君を貴族の集まるパーティーに参加させるなんて怖くてできないでしょ?」

「犯罪者?誰が犯罪者ですの?」

何を言われているのか分かってないようだ。

「あの口紅を塗った私がルフィとキスをすれば彼も麻痺毒に侵されるわ。それを狙ったんじゃないの?」

「違うわ!貴女よ!貴女が、貴女さえ排除出来ればよかったのよ!」

意外とあっさり白状したな。
余程目の前で見せつけられたことに動揺したようだ。

「排除?ねえセルティ様?人に毒を使用することに良心は痛まなかったの?」

「良心?わたくしの邪魔になる者を排除することの何が悪いのでしょうか?当然のことをしたまでですわ」

セルティ嬢の言葉に部屋にいる誰もが慄いた。 






「サイコパス」

エリーから知らない言葉が発せられた。
アランとゾルティーにも分からないようだが、レイだけは"サイコパス"の意味が分かっているようだ。

「あのねセルティ様、サイコパスの最大の特徴はね『良心の欠如』なのよ。サイコパスには他人の痛みに対する共感が全く無く、罪悪感など微塵も感じないのがサイコパスの特徴なのよ。貴女にぴったり当てはまるわ」

「何故、罪悪感を感じなければいけませんの?毒を使ったから?では次は別の方法で貴女を排除しますわ」

まだ次があると思っているのか?

「毒を使った、いや毒を入手した時点で犯罪を犯していることがまだ分からないのか?」

「犯罪?何度も申し上げますがわたくしにとって邪魔になる者を排除する為ですわよ?」

話が通じない奴だとは思っていたがこれ程とは・・・

アランの我慢にも限界がきたんだな。

「じゃあ、君が用意した毒を自分で体験してみようか?君がエリーを排除する為に使った毒だよ?同じものを君に与えてあげるよ。僕にとっては君が一番邪魔だからいいよね?」

アランの言葉にこの部屋にいる人間は誰も反対しない。
特にゾルティーとレイはアランと同じような黒い笑顔だ。

ガルは部屋に入ってからずっと無言を貫いている。

「同じ毒?わたくしが体験?それは邪魔者に使用する物ですわ」

まだ分かってないようだ。

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『悪役令嬢はゲームに巻き込まれない為に攻略対象者の弟を連れて隣国に逃げます』もいつの間にか100話になりました。

私のような素人の拙い文書を読んでくださる皆様のおかげでここまで書き続けることができました。
ありがとうございます。

誤字脱字の多い作者ですが、これからも宜しくお願いいたします。m(_ _)m
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