【完結】前世の記憶があっても役に立たないんですが！

38 カイト視点 2

また僕は間違えたんだ。

アリシアに前世の記憶がなさそうな事に安堵しつつ、早く自分だけのものにしたいのに、アリシアは兄のアルフレッド殿とジークハルト殿にベッタリで僕を見ようともしなかった。

思い通りにならない苛立ちを会う度にアリシアにぶつけてしまったんだ。
その度にジークハルト殿がアリシアを僕の口撃から守っていた。

すぐに分かったよ。
彼もアリシアのことを好きなんだって。
僕と違って彼はとてもアリシアを大切にしていたからね。

アリシアに意地悪な事ばかり言ってしまう僕より、彼の方がアリシアに相応しいと思えるようになったのは、学園に入学してあの女がナタリーとして目の前に現れたからだ。

あの女にも記憶があるのがすぐに分かった。

そして、アリシアも前世の記憶が戻ってしまったことも・・・

カイトが僕であることを知られないように、彼女を殺した僕は近づかない方がいい。
もう怖くてアリシアの前で話すことも出来なくなった。


それでもあの女がアリシアに対して憎しみの目を向けていることに気づいてしまったからには何があっても、アリシアを守れるように陰から見守ることにした。



アリシアが彼と婚約したと聞いた時は、さすがにショックだったが、相手がジークハルト殿なら、彼なら間違いなくアリシアを幸せにできるだろう。と安心もした。

彼と手を繋いで幸せそうに微笑みあっている2人を見て彼女が幸せでいてくれたなら、それだけでいいと、やっと素直に思えるようになった。



あの女を監視していてよかった。

あの女がアリシアを見る目が以前よりも憎しみが色濃くなってきていたのが分かっていた。


あの日もあの女が街の外れにある小屋にフードを被り入った事を監視を任せてい者から連絡を受け、急いで駆けつけた。

あと少し遅かったらあの女はアリシアを殺していただろう。

有紗、いやアリシアを助けることが出来た。
やっと謝れた。
許されるべきではないのに、前世と変わらず優しいアリシアはこんな僕に幸せになって欲しいと言ってくれた。
過去の事だと恨んでなどいないとも言ってくれた。


アリシアを抱きしめて泣いているジークハルト殿を見て、やっと本当に彼女を諦められた。
どうか幸せになって欲しい。
心からそう思えたんだ。

ジークハルト殿に抱かれながら無意識だろう優しく微笑んで意識を失った彼女が傷だらけなのに幸せそうに見えたんだ。

あの女も公爵令嬢に手を出したんだ。
もう二度とアリシアに近づくことは出来ないだろう。


僕も前に進まなくてはならないな。
次期公爵家当主としての義務もある。
贅沢はいわない。
思いやりがあり、優しい子がいい。
その子を大切にして幸せにしてあげるんだ。
喜でくれたらきっと僕も嬉しい。

アリシアと幸せになるって約束したんだもんな。


また君に出会えてよかったよ。