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!!
ジル兄様!
数ヶ月先にしか会えないと思っていたジル兄様がホールに入場してきた。
会場中の視線を集めている。
当然だ。
この会場の誰よりも気品に溢れ、優雅に歩く姿。
そして、キラキラと輝くプラチナゴールドの髪、意志の強そうなヘーゼルの瞳。
長身でスラリとした長い手足。服の上からも分かる引き締まった身体。
もう亡くなっている、ジル兄様のお母様に似た麗しいお顏。
ジル兄様に見惚れるのは令嬢だけではないようだ。
チラリと私を見たジル兄様と視線が合った。
!!
・・・・・・分かったわ。
お父様も兄様もハリスン、ゼガードはジル兄様がこの夜会に参加をすることを事前に知っていたのね。
私は何も聞かされていない。
だから何をするのか知らないし、私が動くこともしない。
あとはジル兄様たちに任せればいいのね。
国王陛下の隣に並び、ジル兄様が挨拶を述べると夜会が開始された。
「ユティ、私はジルグレートに挨拶してくるよ。少し離れるけれどここから動かないでね」
ジル兄様から目を離さず頷いて了解する。
「あの方がソルトレグス帝国の皇太子なのよね。素敵な方ね。ユティとお似合いよ」
「ありがとうリア」
ジル兄様とお近付きになりたくて、皆様タイミングを見計らっている。
レグルス兄様がジル兄様ところへ行くと、すぐさまディオリス殿下にエスコートされたオルト嬢が加わりジル兄様に親しげに話しかけた。
・・・・・・。
オルト嬢が私のジル兄様に向ける目が・・・
ジル兄様がオルト嬢が傍にいることを許しているのには何かしらの思惑があってのことでしょうけれど・・・何と言うか気持ちのいいものではない。
同じ目をオルト嬢はレグルス兄様にも向けるなんて・・・。
隣のディオリス殿下が不憫に見える。
オルト嬢には周りからも侮蔑と嫉妬、羨望の眼差しが向けられている。
オルト嬢が狙おうがジル兄様とレグルス兄様が彼女に落ちることは絶対にないと断言出来るわ。
たぶんジル兄様たちは私が知らないことも知っていると思う。
彼女の母親のことも・・・
そして、あの時の協力者のことも・・・
だから・・・2人ともオルト嬢と会話をしながらも目が冷たい。
確かに以前の可愛らしい庇護欲をそそるようなか弱いイメージの彼女とは真逆の妖艶な色気のある雰囲気になっているけれど、ジル兄様は無表情だしレグルス兄様は貼り付けた笑みを浮かべている。
彼女はそれに気付いてもいなさそう。
「キャッ」
え?
「も、申し訳ございません」
「リア!」
ジル兄様たちに集中していると、男性がリアにぶつかったようで持っていたワインがリアのドレスにかかったようだ。そのせいで背中部分が赤く染まっている。
「このままだと見立つわね」
「ほ、本当に申し訳ございません」
平身低頭で謝る男性・・・どこかで見たことがあるような・・・
「・・・替えのドレスは持って来ているから、お気になさらず」
「で、では客室までご案内致します」
知らない男性にリアを任せる訳にはいかない。
それに城の使用人に任せるのが普通。
・・・
「私がついて行きます。案内は給仕に任せますので貴方の付き添いは必要ありませんわ」
「い、いえ、私が責任もってお連れします」
ふ~ん?
「私が付き添って何か問題が?」
「そ、そういうワケでは・・・」
「では私に任せてもらいますね」
たとえ王宮の中とはいえ、リアを知らない男に任せる訳ないでしょう?
それに・・・
それから、給仕の女性にリアが連れて来ていた専属侍女に連絡してもらい、客室に替えのドレスを持ってきて貰えるように手配してもらった。
「「・・・」」
ハリスンとゼガードに目配せして会場から離れる前にもう一度、ジル兄様たちの方へ視線を向けると小さく頷いていた。
そして・・・オルト嬢の口元がつり上がったのが見えた。
ジル兄様が出てきた時点で彼女の先は無くなった。
馬鹿なオルト嬢。
結局、彼女も母親と同じだったのね・・・
ジル兄様!
数ヶ月先にしか会えないと思っていたジル兄様がホールに入場してきた。
会場中の視線を集めている。
当然だ。
この会場の誰よりも気品に溢れ、優雅に歩く姿。
そして、キラキラと輝くプラチナゴールドの髪、意志の強そうなヘーゼルの瞳。
長身でスラリとした長い手足。服の上からも分かる引き締まった身体。
もう亡くなっている、ジル兄様のお母様に似た麗しいお顏。
ジル兄様に見惚れるのは令嬢だけではないようだ。
チラリと私を見たジル兄様と視線が合った。
!!
・・・・・・分かったわ。
お父様も兄様もハリスン、ゼガードはジル兄様がこの夜会に参加をすることを事前に知っていたのね。
私は何も聞かされていない。
だから何をするのか知らないし、私が動くこともしない。
あとはジル兄様たちに任せればいいのね。
国王陛下の隣に並び、ジル兄様が挨拶を述べると夜会が開始された。
「ユティ、私はジルグレートに挨拶してくるよ。少し離れるけれどここから動かないでね」
ジル兄様から目を離さず頷いて了解する。
「あの方がソルトレグス帝国の皇太子なのよね。素敵な方ね。ユティとお似合いよ」
「ありがとうリア」
ジル兄様とお近付きになりたくて、皆様タイミングを見計らっている。
レグルス兄様がジル兄様ところへ行くと、すぐさまディオリス殿下にエスコートされたオルト嬢が加わりジル兄様に親しげに話しかけた。
・・・・・・。
オルト嬢が私のジル兄様に向ける目が・・・
ジル兄様がオルト嬢が傍にいることを許しているのには何かしらの思惑があってのことでしょうけれど・・・何と言うか気持ちのいいものではない。
同じ目をオルト嬢はレグルス兄様にも向けるなんて・・・。
隣のディオリス殿下が不憫に見える。
オルト嬢には周りからも侮蔑と嫉妬、羨望の眼差しが向けられている。
オルト嬢が狙おうがジル兄様とレグルス兄様が彼女に落ちることは絶対にないと断言出来るわ。
たぶんジル兄様たちは私が知らないことも知っていると思う。
彼女の母親のことも・・・
そして、あの時の協力者のことも・・・
だから・・・2人ともオルト嬢と会話をしながらも目が冷たい。
確かに以前の可愛らしい庇護欲をそそるようなか弱いイメージの彼女とは真逆の妖艶な色気のある雰囲気になっているけれど、ジル兄様は無表情だしレグルス兄様は貼り付けた笑みを浮かべている。
彼女はそれに気付いてもいなさそう。
「キャッ」
え?
「も、申し訳ございません」
「リア!」
ジル兄様たちに集中していると、男性がリアにぶつかったようで持っていたワインがリアのドレスにかかったようだ。そのせいで背中部分が赤く染まっている。
「このままだと見立つわね」
「ほ、本当に申し訳ございません」
平身低頭で謝る男性・・・どこかで見たことがあるような・・・
「・・・替えのドレスは持って来ているから、お気になさらず」
「で、では客室までご案内致します」
知らない男性にリアを任せる訳にはいかない。
それに城の使用人に任せるのが普通。
・・・
「私がついて行きます。案内は給仕に任せますので貴方の付き添いは必要ありませんわ」
「い、いえ、私が責任もってお連れします」
ふ~ん?
「私が付き添って何か問題が?」
「そ、そういうワケでは・・・」
「では私に任せてもらいますね」
たとえ王宮の中とはいえ、リアを知らない男に任せる訳ないでしょう?
それに・・・
それから、給仕の女性にリアが連れて来ていた専属侍女に連絡してもらい、客室に替えのドレスを持ってきて貰えるように手配してもらった。
「「・・・」」
ハリスンとゼガードに目配せして会場から離れる前にもう一度、ジル兄様たちの方へ視線を向けると小さく頷いていた。
そして・・・オルト嬢の口元がつり上がったのが見えた。
ジル兄様が出てきた時点で彼女の先は無くなった。
馬鹿なオルト嬢。
結局、彼女も母親と同じだったのね・・・
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