【完結】偽物令嬢と呼ばれても私が本物ですからね!

kana

文字の大きさ
53 / 58

53

しおりを挟む
優しく頬に触れる手で目が覚めたのは日も高くなってからだった。

「おはようユティ。ゆっくり眠れた?」

「ジル兄様!・・・おはよう」

寝顔を見られてもソルトレグス帝国に滞在している時はジル兄様に起こされるのが当たり前になっていたから気にならない。
それよりもここにジル兄様がいる事が嬉しい。

「はははっ昨日は疲れただろう?でも、もうお昼の時間だよ。一緒に食べよう」

そう言って部屋から退室したけれど、ジル兄様は部屋の前で待っていてくれるから早く支度しないと!
私は自分でも着られるワンピースに着替えて急いで部屋から飛び出す。
すかさずジル兄様が危なっかしいな~と言いながらお姫様抱っこされる。

子供じゃないのだから転んだりしないのに・・・でも、このままだと次にジル兄様に会えるのは夏期休暇になると思うと甘えれるだけ甘えちゃおう!って気になる。

食堂ではお父様と兄様がすでに待っていた。
今日は我が家に同居しているゼガードは席を外しているみたい。
軽くおはようの挨拶をして、そのままジル兄様は私を膝に乗せたまま席に着く。
そして、私はナイフもフォークも持っていない・・・

「はい、ユティあ~ん」

「あ~ん」(もぐもぐもぐ)





朝食?もうお昼だから昼食か。
昼食が終わったあとはサロンに移動し、執事にお茶を入れてもらってから部屋から退室してもらいって私たち4人だけになった。

向かいのソファにはお父様と兄様。
対面にジル兄様の膝に乗った私。
うん、いつものポジションだ。

「王宮からあの者たちの刑罰が決まったと通達が来た」

お父様がその通達の紙を広げて見せてくれた。

まず、私とリアに乱暴を働こうとした子息たちは家から廃嫡または除籍され鉱山に強制労働10年。
(彼らは貴族の子息として今まで力仕事なんかした事がないでしょうから大変でしょうね。耐えれたとしても10年後は平民)

王宮騎士は奴隷
(へ~今どき奴隷ね。体力はあるだろうから妥当かな。この国には奴隷制度はないから他国か~)

ヨルダン伯爵は毒杯。
(当然ね)

ヨルダン子息は鉱山へ強制労働50年。
(媚薬だと分かっていて使用したんだものね。生きている内に解放される事はないだろう)

オルト嬢は・・・毒杯。
(結局、母親と同じ末路になってしまったのね。
媚薬の件だけでなく、ソルトレグス帝国の皇帝の姪に危害を加えようとしたことは知らなかったでは許されない。
彼女がした事は普通に犯罪だ。
だから同情はしない・・・)

ディオリス殿下・・・学院を退学。国境の一般警備兵として3年間辺境の地へ。
(これはちょっと厳し過ぎる気がするけれど・・・)

「大体妥当だとは思いますけど、ディオリス殿下の罰は厳し過ぎではありませんか?」

「嵌められたとはいえオルト嬢が王宮騎士に接触する機会を与えたからだろうね」

「王家には王太子殿下と、ディオリス殿下しかいませんよね?王太子に何かあれば・・・」

「だから、廃嫡にはしていないのだろう」

兄様とお父様の言っていることも分かるけれど、3年は長いと思う。

「これが帝国に対しての落としどころだろう。
違法だと知りながら媚薬や薬を使用してでも王家と縁付きたい者は多くいる。
それはソルトレグス帝国でも同じだよ。
それにオルト嬢の母親のした事をディオリス殿下に教えていなかった国王にも責任がある。教えられていれば彼はオルト嬢をもっと警戒し彼女に利用される事もなかったかもしれないが・・・結局は自分の欲に負けたんだよ」

欲ね~

「・・・分かったわ」

お父様も兄様もこの刑罰に納得している様だし、これが当然だと思っているのならそうなのだろう。



それよりも!

「ジル兄様はいつまでこっちグラドラ王国にいられるの?」

「ん?明日にはここを発つよ」

「あ、明日?」

は、早すぎる。
王宮にはもっと滞在していたはず!
分かっている。分かってはいるのよ?
この国に遊びに来たわけではないことは!

でも・・・でも、私はもっとジル兄様と一緒にいたい。

「ユティ・・・僕と一緒に帝国に帰るかい?」

え?

「あ、明日は無理だわ・・・それだとリアにも、エドにもお別れが出来ないもの」

「はははっ、分かっているよ。無理を言ってごめんね」

ジル兄様は笑って冗談にしようとしたけれど、私、気付いちゃった。

そうだよね?
私とジル兄様は繋がっているもの。
お互いが唯一無二の存在だものね。

「夏!夏期休暇まで待っていて!それまでに、いっぱい、いっぱいリアとエドと思い出づくりをするから!・・・それまで私がいなくて寂しくても泣いちゃダメだよ?」

「・・・泣かないよ。でも本当に?本当にいいのか?せっかく仲良しの友達が出来たのだろう?」

「うん、会えなくなるのは寂しいけれど、離れていてもずっと友達だもの」

膝の上の私を痛いくらい抱きしめて「ありがとう」っと・・・



「そうと決まれば、私たちの方も・・・忙しくなるな」

お父様が兄様に何か言っていたけれど、それは小さくて聞き取れなかった。

しおりを挟む
感想 101

あなたにおすすめの小説

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

なぜ、虐げてはいけないのですか?

碧井 汐桜香
恋愛
男爵令嬢を虐げた罪で、婚約者である第一王子に投獄された公爵令嬢。 処刑前日の彼女の獄中記。 そして、それぞれ関係者目線のお話

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...