【完結】偽物令嬢と呼ばれても私が本物ですからね!

kana

文字の大きさ
54 / 58

54

しおりを挟む
~ビアンカ・オルト男爵令嬢視点~


こんなはずじゃなかった。

わたくしはあの子を侯爵令嬢の地位から引きずり下ろして、絶望させられればよかったなのに・・・

まさかあの子がソルトレグス帝国皇帝の姪だったなんて・・・ 
皇位継承権を持っている存在だったなんて・・・

わたくしの思惑すらも皇太子とレグルス様に読まれていたなんて・・・






猿轡をされて、地面に膝まづかされた屈辱に無傷なあの子を恨んでいた。
本来なら今頃、男たちのにされていたはずなのに!と・・・

声も出せず屈辱に耐えながらそこで話された、お義父様とお母様の関係。
義理兄のネイトがわたくしの異父兄妹と聞かさても何がおかしいのか分からなかった。
お義父様も義兄様もわたくしを愛してくれたなのに。

でも、お母様が王弟を唆していた事や、人を使ってあの子の存在自体を無いものとしようとした事は理解できた。

ラグーナ侯爵家で聞かされた話しは、だいぶ配慮されたものだった。

わたくしに夢中のはずのディオリス殿下が叫んだと思ったら、わたくしに憎悪の目を向けて殴り掛かろうとしてきた。
すんでのところでハリスン様とゼガード様が助けてくれた。
相変わらず素敵ね。
次はこの二人も誘惑してみようかしら?
呑気にそんな事を考えていると『血は争えないな・・・お前も死ね』と呟いたディオリス殿下の目は本気だった。

『お前死ね』??
あの子を襲うのは未遂で終わったのよ?
だからわたくしは罪を犯していないわよ?

そんな事よりも、皇太子があの子に向ける目は何?
何度お茶をしても、わたくしには向けられなかった目。
あの子だけを大切だと、愛していると、その目が物語っている。

・・・あれ?わたくしのはあんな目を向けてくれなかったわ。

そっと顔を上げるとレグルス様と目が合った。
侮蔑、軽蔑、嫌悪、憎悪・・・
そこで理解した。
あの夢は正夢なんかではなく、わたくしの願望だったと。
わたくしとレグルス様が結ばれることは無いことを・・・

だったら・・・もういい。
もう消えてしまいたい。

『お前も死ね』

ええ、それがいいわ。
わたくしの思考はそこで止まった・・・。






~ディオリス殿下視点~


『コレは意志の強い者には効きにくいが、意志の弱い者、少しでも好意がある者ほどのめり込み、言いなりになってしまう代物だ』

ああ、私は王族でありながら意志の弱い者だったのだな。
同じ立場のジルグレート皇太子も、レグルス殿もこの女オルト嬢の傍にいても惑わされる事はなかったのが証拠だ。

あのままオルト嬢の傍にいたら私も伯父上のように操られたのだろうか?
・・・きっと操られたのだろうな。




話し合いが終わり、部屋には私たち家族4人だけが残された。
そう言えば、母上からも兄上からも何度も"オルト嬢との関係を切れ"と言われていたな。
それも、私を思っての事だったのだと今なら理解できる。
今さら理解出来たところでもう遅いがな。

廃嫡かもしくは処刑か・・・

「悪かった」

「ごめんなさい」

突然両親に頭を下げられた。
ああ、私に話していなかった事か。

「弱い私が悪かったのです。頭を上げてください」

本当に家族を恨んだりしていない。
私が馬鹿だっただけだ。
あれほど止めようとしてくれたのに・・・母上を泣かせてしまった。

私は処分が決まるまで自主的に自室で謹慎した。

ノックの音とともに兄上が入室してきて「ディオリスの刑罰が決まった」と。

私は廃嫡もされず、王族籍も抜かれず、3年間国境の辺境の地に一般兵として送られることになった。
これでは軽すぎる!と抗議したが決まった事だと・・・



私の見送りは兄上だけだった。

「ディオリス・・・帰ってくるのを待っているから。お前の居場所はここだと、お前は俺たちの大切な家族だと言うことを忘れるな」

「・・・はい、・・・はい、ありがとうございます」

涙を堪えることは出来なかった。
もう間違わない。
体だけではなく誘惑に負けない強い精神を鍛えて帰ってくる。

護送車に乗り込む間際に「お互い失恋しちゃったな」と冗談を言うようなノリで言ってきた兄上は少し辛そうだった。

長年兄上がエミリアを想っていたことは知っていた。
ただ不器用すぎて、揶揄い過ぎた。
"好きな子ほどイジめてしまう"まさにそれだった。

ああそうだった。
私もラグーナ侯爵令嬢をひと目見た時から、淡い恋心を抱いていたな。

それも寄り添う皇太子とラグーナ嬢を見て泡となって消えた。
私の入り込む余地なんてどこにもなかった。

きっと彼女は幸せになるだろう。
独占欲の固まりの彼に愛されて。



さあ、出発だ。
しおりを挟む
感想 101

あなたにおすすめの小説

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

なぜ、虐げてはいけないのですか?

碧井 汐桜香
恋愛
男爵令嬢を虐げた罪で、婚約者である第一王子に投獄された公爵令嬢。 処刑前日の彼女の獄中記。 そして、それぞれ関係者目線のお話

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?

なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」 顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される 大きな傷跡は残るだろう キズモノのとなった私はもう要らないようだ そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった このキズの謎を知ったとき アルベルト王子は永遠に後悔する事となる 永遠の後悔と 永遠の愛が生まれた日の物語

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。 ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

処理中です...