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~ビアンカ・オルト男爵令嬢視点~
こんなはずじゃなかった。
わたくしはあの子を侯爵令嬢の地位から引きずり下ろして、絶望させられればよかっただけなのに・・・
まさかあの子がソルトレグス帝国皇帝の姪だったなんて・・・
皇位継承権を持っている存在だったなんて・・・
わたくしの思惑すらも皇太子とレグルス様に読まれていたなんて・・・
猿轡をされて、地面に膝まづかされた屈辱に無傷なあの子を恨んでいた。
本来なら今頃、男たちの玩具にされていたはずなのに!と・・・
声も出せず屈辱に耐えながらそこで話された、お義父様とお母様の関係。
義理兄のネイトがわたくしの異父兄妹と聞かさても何がおかしいのか分からなかった。
お義父様も義兄様もわたくしを愛してくれただけなのに。
でも、お母様が王弟を唆していた事や、人を使ってあの子の存在自体を無いものとしようとした事は理解できた。
ラグーナ侯爵家で聞かされた話しは、だいぶ配慮されたものだった。
わたくしに夢中のはずのディオリス殿下が叫んだと思ったら、わたくしに憎悪の目を向けて殴り掛かろうとしてきた。
すんでのところでハリスン様とゼガード様が助けてくれた。
相変わらず素敵ね。
次はこの二人も誘惑してみようかしら?
呑気にそんな事を考えていると『血は争えないな・・・お前も死ね』と呟いたディオリス殿下の目は本気だった。
『お前も死ね』??
あの子を襲うのは未遂で終わったのよ?
だからわたくしは罪を犯していないわよ?
そんな事よりも、皇太子があの子に向ける目は何?
何度お茶をしても、わたくしには向けられなかった目。
あの子だけを大切だと、愛していると、その目が物語っている。
・・・あれ?わたくしの男たちはあんな目を向けてくれなかったわ。
そっと顔を上げるとレグルス様と目が合った。
侮蔑、軽蔑、嫌悪、憎悪・・・
そこで理解した。
あの夢は正夢なんかではなく、わたくしの願望だったと。
わたくしとレグルス様が結ばれることは無いことを・・・
だったら・・・もういい。
もう消えてしまいたい。
『お前も死ね』
ええ、それがいいわ。
わたくしの思考はそこで止まった・・・。
~ディオリス殿下視点~
『コレは意志の強い者には効きにくいが、意志の弱い者、少しでも好意がある者ほどのめり込み、言いなりになってしまう代物だ』
ああ、私は王族でありながら意志の弱い者だったのだな。
同じ立場のジルグレート皇太子も、レグルス殿もこの女の傍にいても惑わされる事はなかったのが証拠だ。
あのままオルト嬢の傍にいたら私も伯父上のように操られたのだろうか?
・・・きっと操られたのだろうな。
話し合いが終わり、部屋には私たち家族4人だけが残された。
そう言えば、母上からも兄上からも何度も"オルト嬢との関係を切れ"と言われていたな。
それも、私を思っての事だったのだと今なら理解できる。
今さら理解出来たところでもう遅いがな。
廃嫡かもしくは処刑か・・・
「悪かった」
「ごめんなさい」
突然両親に頭を下げられた。
ああ、私に話していなかった事か。
「弱い私が悪かったのです。頭を上げてください」
本当に家族を恨んだりしていない。
私が馬鹿だっただけだ。
あれほど止めようとしてくれたのに・・・母上を泣かせてしまった。
私は処分が決まるまで自主的に自室で謹慎した。
ノックの音とともに兄上が入室してきて「ディオリスの刑罰が決まった」と。
私は廃嫡もされず、王族籍も抜かれず、3年間国境の辺境の地に一般兵として送られることになった。
これでは軽すぎる!と抗議したが決まった事だと・・・
私の見送りは兄上だけだった。
「ディオリス・・・帰ってくるのを待っているから。お前の居場所はここだと、お前は俺たちの大切な家族だと言うことを忘れるな」
「・・・はい、・・・はい、ありがとうございます」
涙を堪えることは出来なかった。
もう間違わない。
体だけではなく誘惑に負けない強い精神を鍛えて帰ってくる。
護送車に乗り込む間際に「お互い失恋しちゃったな」と冗談を言うようなノリで言ってきた兄上は少し辛そうだった。
長年兄上がエミリアを想っていたことは知っていた。
ただ不器用すぎて、揶揄い過ぎた。
"好きな子ほどイジめてしまう"まさにそれだった。
ああそうだった。
私もラグーナ侯爵令嬢をひと目見た時から、淡い恋心を抱いていたな。
それも寄り添う皇太子とラグーナ嬢を見て泡となって消えた。
私の入り込む余地なんてどこにもなかった。
きっと彼女は幸せになるだろう。
独占欲の固まりの彼に愛されて。
さあ、出発だ。
こんなはずじゃなかった。
わたくしはあの子を侯爵令嬢の地位から引きずり下ろして、絶望させられればよかっただけなのに・・・
まさかあの子がソルトレグス帝国皇帝の姪だったなんて・・・
皇位継承権を持っている存在だったなんて・・・
わたくしの思惑すらも皇太子とレグルス様に読まれていたなんて・・・
猿轡をされて、地面に膝まづかされた屈辱に無傷なあの子を恨んでいた。
本来なら今頃、男たちの玩具にされていたはずなのに!と・・・
声も出せず屈辱に耐えながらそこで話された、お義父様とお母様の関係。
義理兄のネイトがわたくしの異父兄妹と聞かさても何がおかしいのか分からなかった。
お義父様も義兄様もわたくしを愛してくれただけなのに。
でも、お母様が王弟を唆していた事や、人を使ってあの子の存在自体を無いものとしようとした事は理解できた。
ラグーナ侯爵家で聞かされた話しは、だいぶ配慮されたものだった。
わたくしに夢中のはずのディオリス殿下が叫んだと思ったら、わたくしに憎悪の目を向けて殴り掛かろうとしてきた。
すんでのところでハリスン様とゼガード様が助けてくれた。
相変わらず素敵ね。
次はこの二人も誘惑してみようかしら?
呑気にそんな事を考えていると『血は争えないな・・・お前も死ね』と呟いたディオリス殿下の目は本気だった。
『お前も死ね』??
あの子を襲うのは未遂で終わったのよ?
だからわたくしは罪を犯していないわよ?
そんな事よりも、皇太子があの子に向ける目は何?
何度お茶をしても、わたくしには向けられなかった目。
あの子だけを大切だと、愛していると、その目が物語っている。
・・・あれ?わたくしの男たちはあんな目を向けてくれなかったわ。
そっと顔を上げるとレグルス様と目が合った。
侮蔑、軽蔑、嫌悪、憎悪・・・
そこで理解した。
あの夢は正夢なんかではなく、わたくしの願望だったと。
わたくしとレグルス様が結ばれることは無いことを・・・
だったら・・・もういい。
もう消えてしまいたい。
『お前も死ね』
ええ、それがいいわ。
わたくしの思考はそこで止まった・・・。
~ディオリス殿下視点~
『コレは意志の強い者には効きにくいが、意志の弱い者、少しでも好意がある者ほどのめり込み、言いなりになってしまう代物だ』
ああ、私は王族でありながら意志の弱い者だったのだな。
同じ立場のジルグレート皇太子も、レグルス殿もこの女の傍にいても惑わされる事はなかったのが証拠だ。
あのままオルト嬢の傍にいたら私も伯父上のように操られたのだろうか?
・・・きっと操られたのだろうな。
話し合いが終わり、部屋には私たち家族4人だけが残された。
そう言えば、母上からも兄上からも何度も"オルト嬢との関係を切れ"と言われていたな。
それも、私を思っての事だったのだと今なら理解できる。
今さら理解出来たところでもう遅いがな。
廃嫡かもしくは処刑か・・・
「悪かった」
「ごめんなさい」
突然両親に頭を下げられた。
ああ、私に話していなかった事か。
「弱い私が悪かったのです。頭を上げてください」
本当に家族を恨んだりしていない。
私が馬鹿だっただけだ。
あれほど止めようとしてくれたのに・・・母上を泣かせてしまった。
私は処分が決まるまで自主的に自室で謹慎した。
ノックの音とともに兄上が入室してきて「ディオリスの刑罰が決まった」と。
私は廃嫡もされず、王族籍も抜かれず、3年間国境の辺境の地に一般兵として送られることになった。
これでは軽すぎる!と抗議したが決まった事だと・・・
私の見送りは兄上だけだった。
「ディオリス・・・帰ってくるのを待っているから。お前の居場所はここだと、お前は俺たちの大切な家族だと言うことを忘れるな」
「・・・はい、・・・はい、ありがとうございます」
涙を堪えることは出来なかった。
もう間違わない。
体だけではなく誘惑に負けない強い精神を鍛えて帰ってくる。
護送車に乗り込む間際に「お互い失恋しちゃったな」と冗談を言うようなノリで言ってきた兄上は少し辛そうだった。
長年兄上がエミリアを想っていたことは知っていた。
ただ不器用すぎて、揶揄い過ぎた。
"好きな子ほどイジめてしまう"まさにそれだった。
ああそうだった。
私もラグーナ侯爵令嬢をひと目見た時から、淡い恋心を抱いていたな。
それも寄り添う皇太子とラグーナ嬢を見て泡となって消えた。
私の入り込む余地なんてどこにもなかった。
きっと彼女は幸せになるだろう。
独占欲の固まりの彼に愛されて。
さあ、出発だ。
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