【 完結 】どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。

kana

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はい⋯⋯ぐっすり寝すぎてしまいました。
起きたのは昼前。
当然学園を休むことに⋯⋯

食堂で私が起きるのを待ってくれていたお母様は学園をズル休みすることなんて、なんてことないことのように「いいのよ、いいのよ、メイちゃんは今まで真面目に頑張ってきたのだから1日ぐらいサボってもいいのよ~」ってテンション高く言ってくれた。それだけ婚約解消が嬉しかったんだね。

そんなものなのかな?
そ、そうよね!だって前世を思い出すまで皆んなの手本になるようないい子だったものね!

まあ、今から学園にも行けないしサボってできた時間は有効利用しないとね。
まずは小説の内容をしっかり思い出してまとめないと、婚約解消したからといって、どこで落とし穴があるか分からないからね!

昼食をすませ、侍女たちにはゆっくり休みたいと言って部屋に1人にしてもらった。




『君だけに永遠の愛を贈る』

ちょっと自信はないけれど、こんな題名の小説だったような気がする。
だって前世では似たような小説や漫画を何十冊、何百冊、何千冊と読んだんだよ。
ヒロインの名前と、自分の名前だけで私が悪役令嬢だって気付いたことを褒めて欲しいぐらいだわ。

まあ、それはいい。
物語の内容も他の小説と似たようなものだ。

ヒロインは男爵令嬢のエルザ・ヒューア 2年生
ピンク色の髪に、夏の青空のような瞳。

悪役令嬢は公爵令嬢の私メイジェーン・イスト1年生。金髪にエメラルドグリーンの瞳。

攻略対象者はこの国の王太子リュート・ラッセリア2年生。

騎士団長の息子ザイフォン・デカリア伯爵家次男、2年生。

財務大臣の息子カイザック・モナー公爵家嫡男、2年生。


あと、学園の教師だったかな?

そしてもう一人⋯⋯我が兄レオクリフ・イスト公爵家嫡男3年生。
金髪にアメジストのような紫色の瞳。

主な登場人物はこれぐらいかな?

あと、公爵令嬢で王太子の婚約者である私にはヨイショする取り巻きもいたが⋯⋯私が前世を思い出さなければ彼女たちが私の指示に従ってヒロインを虐める役になっていたのよね⋯⋯

そんな彼女たちだけれど、私と王太子殿下の婚約が解消されたと知ったら、我先に殿下に自分をアピールするような令嬢たちなのだ。我ながら人を見る目がないわ~

はっきり言って冷たいようだけれど、ヒロインがイジメられようが知ったことではないわ。
誰だって我が身が可愛いからね。
それに、彼女は王太子に婚約者がいると知りながら距離を置こうともせず、恋人気取りで隣にいたもの、殿下を密かに狙っている令嬢たちにとっては面白くない存在なのだ。




でもヒロインって凄いよね。
入学してからお兄様以外の攻略対象者たちと親しくなっているんだもん。

確かに可愛いのよ!
華奢で小顔で垂れ目で口も小さいの。
女の私から見ても守ってあげたくなるような子なんだよ!
素直そうで、控えめで、いい子そうなんだよ!
そりゃあ攻略対象者たちもメロメロになっちゃうよ。

これからヒロインのエルザが誰とハッピーエンドを迎えるのかどうでもいいが、お兄様だけは止めてね?

だって我が家は公爵家。
エルザを見た限りでは礼儀作法もマナーもイマイチ⋯⋯
今から教養やマナー、作法を学ぶのはキツイと思うもの。
それを言うと、王族に嫁ぐのはもっと大変だよね。

そうなのだ、小説の中でいくらハッピーエンドを迎えようと、その後どうなるかは書かれてない。
だけど現実はそんなに甘くない。
男爵令嬢が王族に嫁ぐどころか妾にもなれない決まりがあることを知っているのだろうか?

まあヒロインだし?
王太子殿下が周りを説得できれば何とかなるか?
いやいや、今のままでは誰も納得しないだろうし認めないだろう。
かなりの努力が⋯⋯それこそ血の滲むような努力が必要になる。

あの子は愛する人の為に頑張れるだろうか?心が折れたりしないだろうか?ヒロインから笑顔が消えたりしないだろうか?

⋯⋯なんてね。私が彼女の心配をする必要はないか。
彼女には支えてくれる人が沢山いるのだから⋯⋯



他人のことよりも自分のことよね。
婚約解消したからと言って安心するのはまだ早い気がする。
本来なら悪役令嬢である私が断罪から本当に逃れるのか、まだまだ気は抜けない。


明日、学園に行ったら婚約解消の件で注目を集めるだろう。
いわれなきことを言われるかもしれない。
それでも⋯⋯それでも公爵令嬢という私の地位は変わらない。
我が家の名に恥じぬよう胸を張ろう。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




~???視点~



「婚約解消⋯⋯ですか?」

「ああ、今までよく耐えていると思っていたが⋯⋯。あれでは私が親でも喜んで解消させるさ」

あれだけ苦言を呈したのに⋯⋯無駄だったか。

では俺は俺で好きにさせてもらう。
アイツに遠慮はしない。

無理強いをする気は無い。
女を口説いたことはないが、必ず彼女には俺を好きになってもらう。
その為の努力は惜しまない。


もう、彼女の泣き顔は見たくない⋯⋯


『君が泣かなくてもいいように僕がずっと守ってあげるよ』


いま思えばよくそんなキザなセリフを吐けたものだと、恥ずかしさにのたうち回りそうになるが、きっと彼女は覚えていないんだろうな。
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