【 完結 】どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。

kana

文字の大きさ
19 / 36

19

コリーナ嬢が現れた瞬間、ホールが静寂に包まれた。
コリーナ嬢はため息が出るほど綺麗だった。
が、そんな事はどうでもいいとばかりにお兄様が手を差し出した。

「さあ、ファーストダンスの時間だよ。お手をどうぞお姫様」と、いつものように優しく微笑んだ。

それと同時に今度はキャーと聞き慣れたいつもの黄色い悲鳴が、ホールのあちらこちらから聞こえた。

「はい!よろしくお願いします。王子様お兄様」と差し出された手に手を乗せて曲に合わせて踊り出す。

お兄様のリードは優雅で踊りやすい。
私だって王太子妃教育を受けてきたからダンスはかなりの腕前だと思う。

でも、どうしても集中できなかった。
コリーナ嬢が誰にもエスコートされず1人で登場したことも気になるし、何よりもコリーナ嬢のドレスは紫色だったから⋯⋯

確かに今年デビュタントの令嬢たちの中にはピンク色も黄色も青色もいた。でもそれは限りなく白に近い⋯⋯1人だけで立っていれば白いドレスと間違えられるであろう、本当に白に薄い薄い色がついている程度だった。
推奨されているだけで、別に白いドレスじゃなくてもいいのは知っていた。
でも⋯⋯あの色はお兄様の瞳の色と同じだ。
アメジストのような紫色の瞳のお兄様と同じ色のドレスだ。
この国では婚約者の色を身につけたり、纏うことがよくある。
この色ではコリーナ嬢がお兄様の婚約者かも?なんて周りから勘違いされるかもしれない。
タダでさえコリーナ嬢は唯一お兄様の名を呼ぶことを許されている令嬢なのだから⋯⋯

私の考えすぎだよね?今までだってコリーナ嬢がお兄様に好意を寄せているところなんて見たこともないもの。
コリーナ嬢のことだ、きっと彼女は紫色が好きなんだ。
うん、きっとそう。
大丈夫。別にに意味はない。
そうだよね?

このホールにもお兄様にキャーキャー言っている令嬢も貴婦人も未亡人もたくさん居るけれど、中にはコリーナ嬢を冷めた目で見てる令嬢たちもいるのに気付いてしまった。
でも大丈夫だよ。
変な言い掛かりをつけられても私がしっかり守ってあげるから。

「こら、メイ。今はお兄様に集中してくれないと悲しいよ」

「うっ、ごめんなさいお兄様⋯⋯コリーナ嬢が気になって」

「うん、デビュタントに遅れるのはいけないね」

「そこなの?あの⋯⋯お兄様はコリーナ嬢のドレスの色は気にならないのですか?」

「ん?まったく気にならないよ。彼女の好きな色を着ただけだろ。白いドレスを推奨しているだけで、決まりでもないんだからいいんだよ。それに私のデビュタントの年は色鮮やかなドレスの令嬢が多かったよ。だからメイは気にせずダンスに集中しようね」

そうなんだ。
なら気にしなくていいか。それにあのドレスはコリーナ嬢にとてもよく似合っている。
元々、整った顔立ちに清楚で可憐なコリーナ嬢はどんなドレスを着ても似合うだろう。

「はい!自慢のお兄様を皆さんに見せつけちゃいます」

ダンスに集中すればそれはとても楽しい時間であっという間に1曲目が終わってしまった。
曲の終わりで礼をしてお兄様に誘導されながら歩き出す前に私の前に大きなゴツゴツした手が差し出された。

「メイジェーン嬢、俺とも踊ってくれるか?」

断る理由なんてない。
彼は私を何度も助けてくれたカイザックだったから。
だから、お兄様の許可を取る前に返事をした。

「ええ、喜んで」

差し出された手に手を重ねると、グッと引き寄せられ腰に手を回された。そこまでがとても自然で『こやつ女の扱いに慣れておるな?』と少し残念な気持ちになってしまった。

曲が流れ出すと「俺が初めて踊る相手がメイジェーン嬢でよかった」なんてカイザックが言い出した。思わず「はあ?」と淑女らしくない声と疑いの眼差しを向けてしまった。
「本当だぞ?去年の俺のデビュタントでも誰とも踊らなかったし、エスコートもしなかった。それ以降に参加した夜会でも踊っていない。まあダンスの教師はノーカンだ」

「え?」と背の高いカイザックを見上げると「本当だぞ」と眉毛を下げて困ったような顔をしていた。
それはまるで私に疑われるのが嫌だからみたいで⋯⋯「わ、分かりました。様」と言ってから気付いた。
私⋯⋯名前を呼ぶことを許可されていない⋯⋯い、今さらだけど。

「申し訳ございません」

「何を謝っている?」

「モナー様の名を勝手に呼んでいましたわ。これでは彼女エルザのことを言えませんわ」

「ああそんなことか。⋯⋯そうだなでは罰に⋯⋯」

少し考える素振りを見せてから「ではと呼んでもらおうか?なっ?いいよな?」

な、何を言い出すんだカイザックは!
私のことは『メイ』でもいい。でもお互いが愛称で呼び合えば、それはもう親しい仲だと宣伝するようなもので⋯⋯

「おい、罰なんだからそう呼べよ」

ニヤリとしたカイザックに胸がギュッとなった。

「ほらほらだ。呼んでみろメイ」

前から思っていたけれどカイザックって顔はクールで冷たい感じなのに、騎士並に鍛えた身体をしているし、言葉遣いはやんちゃ坊主みたいだし、前世で読んだ小説のカイザックととまったくイメージが違う。

「カ、カイ様?」

繋いだカイザックの手に力が入ったのが伝わってきた。

「違うだ」

あ~分かりましたよ!本当に呼び捨てするからね!怒らないでよね!

「カイ!」

そう呼んだ途端、私の体が宙に浮いた。カイがリフトのように持ち上げたのだ。

わぁーという歓声が耳に届いたけれど、私はそれを気にする余裕がなかった。
上から見下ろすカイの笑顔がとても嬉しそうだったから。
それにまた私の胸がギュッと締め付けられたかのように痛んだから⋯⋯

あなたにおすすめの小説

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

私を裏切った不倫夫に「どなたですか?」と微笑むまで 〜没落令嬢の復讐劇〜

恋せよ恋
恋愛
「早くあんな女と別れて、可愛い子と一緒になりたいよ」 不倫中の夫が笑う声を聞き、絶望の中で事故に遭うジェシカ。 結婚五年目に授かったお腹の子を失った彼女は、 「記憶を失ったフリ」で夫と地獄の婚家を捨てることを決意。 元男爵令嬢の薄幸ヒロインは、修道院で静かに時を過ごす。 独り身領主の三歳の男の子に懐かれ、なぜか領主まで登場! 無実の罪をなすりつけ、私を使い潰した報いを受けなさい。 記憶喪失を装った没落令嬢による、「ざまぁ」が幕を開ける! ※本作品には、馬車事故による流産の描写が含まれます。  苦手な方はご注意ください。主人公が絶対に幸せになる  物語ですので、安心してお読みいただければ幸いです。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

あなたへの想いを終わりにします

四折 柊
恋愛
 シエナは王太子アドリアンの婚約者として体の弱い彼を支えてきた。だがある日彼は視察先で倒れそこで男爵令嬢に看病される。彼女の献身的な看病で医者に見放されていた病が治りアドリアンは健康を手に入れた。男爵令嬢は殿下を治癒した聖女と呼ばれ王城に招かれることになった。いつしかアドリアンは男爵令嬢に夢中になり彼女を正妃に迎えたいと言い出す。男爵令嬢では妃としての能力に問題がある。だからシエナには側室として彼女を支えてほしいと言われた。シエナは今までの献身と恋心を踏み躙られた絶望で彼らの目の前で自身の胸を短剣で刺した…………。(全13話)

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。