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曲が終わりカイにエスコートされてお兄様の元に戻ると、カイに呆れた顔を向けていた。
「お前な~」
「これからは堂々とメイを口説くから邪魔をしないでくれよレオクリフ殿」
口説くって⋯⋯思わずカイを見上げてると、イタズラが成功したような顔で頭を撫でてきた。
「まあ、お前なら反対はしないが無理強いは許さないからな。変な婚約者が居たせいで男にまったく免疫がないメイなんだから強引な手は使うなよ?」
コレって⋯⋯カイが私を口説くってことで、お兄様もカイのことは認めていると言っているのよね?
「ああ、ずっと諦めてきたがやっとチャンスが回ってきたんだ、必ず振り向かせて見せるさ。なっ?メイ?」
なっ?メイ?て突然言われても返答に困る。
それにずっとって⋯⋯いつからなのかも気になる。
前世なら『お試しで付き合ってみるのも有り』なんだけど、この世界では平民ならともかく貴族はそんなに簡単にはいかない。
どうしても家同士の繋がりを求められ、本人の意思関係なく政略結婚が多くなる。てか、ほとんどがそるだ。
だからこそ交流を重ね少しでもお互いを尊重し合える夫婦になることを望むし、交流から恋をし相思相愛で結ばれることもある。それに結婚してから愛が芽ばえることもあると聞く。これは上手くいったパターンだけれど、妻を顧みない旦那もいるし、愛人を作る人もいる。私がリュート殿下と結婚していたら⋯⋯辛い人生を送ることになっていたでしょうね。
あ!その前に断罪されて結婚することはなかったわね!
まあ、それは置いといて我が家は公爵家だけれど、お父様とお母様は学園で出会い相思相愛で結婚した。
ちなみにお母様は侯爵家の令嬢だったので反対もなかったそうだ。
だから、本当は私にも政略結婚は望んでいなかったそうだが、王家からの打診に当時5歳の私(お花畑おバカ幼児)が望んだため結ぶことになったとか⋯⋯(私がおバカだったばかりに心配かけてごめんよ~)
それで未だにお兄様の婚約者が居ないのは本人に任せているからなんだとか。
カイはモナー公爵家の嫡男。私が嫁ぐのに問題はない。
カイには何度も助けられているし、紳士だし、頭も顔も良いし、なんか私には優しいし、ヒロインに落とされていなかったことも好感が持てるし、トータルすれば結婚相手としては申し分のない相手だ。
なんて考えている間もカイの手は私の腰に置かれたままだ。
「メイジェーン様」
聞きなれた声に振り向くと、コリーナ嬢が申し訳なさそうに立っていた。
カイが口説くなんて言うからすっかりコリーナ嬢のことが頭から抜けていたじゃない!
「コリーナ嬢!姿が見当たらなくて心配していましたのよ」
コリーナ嬢はお兄様とカイに一瞬だけ目を向けてから話してくれた。
「家を出て馬車に乗り込む間際にお父様が躓いて、わたくしも巻き込まれて転んでしまいましたの。⋯⋯そ、それでドレスが汚れてしまい⋯⋯この色のドレスしかなくて⋯⋯」
「お怪我はありませんでしたの?」
「え、ええ、恥ずかしながらお父様は足を挫いてしまって⋯⋯」
「それでお一人だったのですね」
それに、着てこようとしていたドレスまで汚れてしまったなんて⋯⋯
「でも、そのドレスはコリーナ嬢にとても似合っていますわ」
「あ、ありがとうございます」
やっと笑ってくれた。褒められて照れくさそうにするコリーナ嬢は可憐で可愛い。
「そ、それで⋯⋯ファーストダンスなのですが⋯⋯」
「もしかして、誰とも踊れていませんの?」
「はい、お父様と踊る予定だったので⋯⋯」
一生に一度のデビュタントなのに、ドレスは汚れ、ファーストダンスも踊れないって⋯⋯それでもコリーナ嬢なら他の男性から声を掛けられると思うけれど⋯⋯私はチラリとお兄様とカイに視線を向けた。
「悪いな、俺はメイとしか踊らない」
私が何か言う前にカイに断られてしまった。
それに、なんだか突き放すような言い方だ。
「⋯⋯私でよければ踊ってくれるかい?」
「はい!喜んで!レオクリフ様」
よかった。お兄様がコリーナ嬢を誘ってくれて。
せっかくのデビュタントだものコリーナ嬢にもいい思い出になると思う。
ホールの中央で踊る2人はとても絵になって綺麗だった。それにコリーナ嬢が嬉しそう。でも、お兄様のあの微笑みは⋯⋯上辺だけのものだと私は知っている。
「⋯⋯この間は助けてやれなくてごめんな」
え?
「講堂でのことだ」
「ああ、お兄様から聞いてますよ。⋯⋯カイはリュート殿下の元に様子を見に行っていたんですよね」
「ああ、聞きたいことがあったからな。ま、メイは気にすることないさ」
と、また頭を撫でられた。
エルザのことだろうけれど、もう私には関係ないわ。
「ええ、もう彼との縁は切れましたから。それにカイに言われるまで彼の存在をすっかり忘れていました」
そう言うとまた頭を撫でられた。
それにしても、カイがピッタリとくっ付いているせいか視線が痛い。
カイが人気があることは噂で知っていた。
⋯⋯確かにいい男なんだよ。
私、きっと、たぶん、カイのこと好きになる⋯⋯予感がする。
「お前な~」
「これからは堂々とメイを口説くから邪魔をしないでくれよレオクリフ殿」
口説くって⋯⋯思わずカイを見上げてると、イタズラが成功したような顔で頭を撫でてきた。
「まあ、お前なら反対はしないが無理強いは許さないからな。変な婚約者が居たせいで男にまったく免疫がないメイなんだから強引な手は使うなよ?」
コレって⋯⋯カイが私を口説くってことで、お兄様もカイのことは認めていると言っているのよね?
「ああ、ずっと諦めてきたがやっとチャンスが回ってきたんだ、必ず振り向かせて見せるさ。なっ?メイ?」
なっ?メイ?て突然言われても返答に困る。
それにずっとって⋯⋯いつからなのかも気になる。
前世なら『お試しで付き合ってみるのも有り』なんだけど、この世界では平民ならともかく貴族はそんなに簡単にはいかない。
どうしても家同士の繋がりを求められ、本人の意思関係なく政略結婚が多くなる。てか、ほとんどがそるだ。
だからこそ交流を重ね少しでもお互いを尊重し合える夫婦になることを望むし、交流から恋をし相思相愛で結ばれることもある。それに結婚してから愛が芽ばえることもあると聞く。これは上手くいったパターンだけれど、妻を顧みない旦那もいるし、愛人を作る人もいる。私がリュート殿下と結婚していたら⋯⋯辛い人生を送ることになっていたでしょうね。
あ!その前に断罪されて結婚することはなかったわね!
まあ、それは置いといて我が家は公爵家だけれど、お父様とお母様は学園で出会い相思相愛で結婚した。
ちなみにお母様は侯爵家の令嬢だったので反対もなかったそうだ。
だから、本当は私にも政略結婚は望んでいなかったそうだが、王家からの打診に当時5歳の私(お花畑おバカ幼児)が望んだため結ぶことになったとか⋯⋯(私がおバカだったばかりに心配かけてごめんよ~)
それで未だにお兄様の婚約者が居ないのは本人に任せているからなんだとか。
カイはモナー公爵家の嫡男。私が嫁ぐのに問題はない。
カイには何度も助けられているし、紳士だし、頭も顔も良いし、なんか私には優しいし、ヒロインに落とされていなかったことも好感が持てるし、トータルすれば結婚相手としては申し分のない相手だ。
なんて考えている間もカイの手は私の腰に置かれたままだ。
「メイジェーン様」
聞きなれた声に振り向くと、コリーナ嬢が申し訳なさそうに立っていた。
カイが口説くなんて言うからすっかりコリーナ嬢のことが頭から抜けていたじゃない!
「コリーナ嬢!姿が見当たらなくて心配していましたのよ」
コリーナ嬢はお兄様とカイに一瞬だけ目を向けてから話してくれた。
「家を出て馬車に乗り込む間際にお父様が躓いて、わたくしも巻き込まれて転んでしまいましたの。⋯⋯そ、それでドレスが汚れてしまい⋯⋯この色のドレスしかなくて⋯⋯」
「お怪我はありませんでしたの?」
「え、ええ、恥ずかしながらお父様は足を挫いてしまって⋯⋯」
「それでお一人だったのですね」
それに、着てこようとしていたドレスまで汚れてしまったなんて⋯⋯
「でも、そのドレスはコリーナ嬢にとても似合っていますわ」
「あ、ありがとうございます」
やっと笑ってくれた。褒められて照れくさそうにするコリーナ嬢は可憐で可愛い。
「そ、それで⋯⋯ファーストダンスなのですが⋯⋯」
「もしかして、誰とも踊れていませんの?」
「はい、お父様と踊る予定だったので⋯⋯」
一生に一度のデビュタントなのに、ドレスは汚れ、ファーストダンスも踊れないって⋯⋯それでもコリーナ嬢なら他の男性から声を掛けられると思うけれど⋯⋯私はチラリとお兄様とカイに視線を向けた。
「悪いな、俺はメイとしか踊らない」
私が何か言う前にカイに断られてしまった。
それに、なんだか突き放すような言い方だ。
「⋯⋯私でよければ踊ってくれるかい?」
「はい!喜んで!レオクリフ様」
よかった。お兄様がコリーナ嬢を誘ってくれて。
せっかくのデビュタントだものコリーナ嬢にもいい思い出になると思う。
ホールの中央で踊る2人はとても絵になって綺麗だった。それにコリーナ嬢が嬉しそう。でも、お兄様のあの微笑みは⋯⋯上辺だけのものだと私は知っている。
「⋯⋯この間は助けてやれなくてごめんな」
え?
「講堂でのことだ」
「ああ、お兄様から聞いてますよ。⋯⋯カイはリュート殿下の元に様子を見に行っていたんですよね」
「ああ、聞きたいことがあったからな。ま、メイは気にすることないさ」
と、また頭を撫でられた。
エルザのことだろうけれど、もう私には関係ないわ。
「ええ、もう彼との縁は切れましたから。それにカイに言われるまで彼の存在をすっかり忘れていました」
そう言うとまた頭を撫でられた。
それにしても、カイがピッタリとくっ付いているせいか視線が痛い。
カイが人気があることは噂で知っていた。
⋯⋯確かにいい男なんだよ。
私、きっと、たぶん、カイのこと好きになる⋯⋯予感がする。
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