【 完結 】どうぞ二人の愛を貫いてください。悪役令嬢の私は一抜けしますね。

kana

文字の大きさ
20 / 36

20

しおりを挟む
曲が終わりにエスコートされてお兄様の元に戻ると、カイに呆れた顔を向けていた。

「お前な~」

「これからは堂々とを口説くから邪魔をしないでくれよレオクリフ殿」

口説くって⋯⋯思わずカイを見上げてると、イタズラが成功したような顔で頭を撫でてきた。

「まあ、お前なら反対はしないが無理強いは許さないからな。変な婚約者が居たせいで男にまったく免疫がないメイなんだから強引な手は使うなよ?」

コレって⋯⋯カイが私を口説くってことで、お兄様もカイのことは認めていると言っているのよね?

「ああ、諦めてきたがやっとチャンスが回ってきたんだ、必ず振り向かせて見せるさ。なっ?メイ?」

なっ?メイ?て突然言われても返答に困る。
それにって⋯⋯いつからなのかも気になる。
前世なら『お試しで付き合ってみるのも有り』なんだけど、この世界では平民ならともかく貴族はそんなに簡単にはいかない。
どうしても家同士の繋がりを求められ、本人の意思関係なく政略結婚が多くなる。てか、ほとんどがそるだ。
だからこそ交流を重ね少しでもお互いを尊重し合える夫婦になることを望むし、交流から恋をし相思相愛で結ばれることもある。それに結婚してから愛が芽ばえることもあると聞く。これは上手くいったパターンだけれど、妻を顧みない旦那もいるし、愛人を作る人もいる。私がリュート殿下と結婚していたら⋯⋯辛い人生を送ることになっていたでしょうね。
あ!その前に断罪されて結婚することはなかったわね!

まあ、それは置いといて我が家は公爵家だけれど、お父様とお母様は学園で出会い相思相愛で結婚した。
ちなみにお母様は侯爵家の令嬢だったので反対もなかったそうだ。
だから、本当は私にも政略結婚は望んでいなかったそうだが、王家からの打診に当時5歳の私(お花畑おバカ幼児)が望んだため結ぶことになったとか⋯⋯(私がおバカだったばかりに心配かけてごめんよ~)
それで未だにお兄様の婚約者が居ないのは本人に任せているからなんだとか。



カイはモナー公爵家の嫡男。私が嫁ぐのに問題はない。
カイには何度も助けられているし、紳士だし、頭も顔も良いし、なんか私には優しいし、ヒロインに落とされていなかったことも好感が持てるし、トータルすれば結婚相手としては申し分のない相手だ。
なんて考えている間もカイの手は私の腰に置かれたままだ。

「メイジェーン様」

聞きなれた声に振り向くと、コリーナ嬢が申し訳なさそうに立っていた。
カイが口説くなんて言うからすっかりコリーナ嬢のことが頭から抜けていたじゃない!

「コリーナ嬢!姿が見当たらなくて心配していましたのよ」

コリーナ嬢はお兄様とカイに一瞬だけ目を向けてから話してくれた。

「家を出て馬車に乗り込む間際にお父様が躓いて、わたくしも巻き込まれて転んでしまいましたの。⋯⋯そ、それでドレスが汚れてしまい⋯⋯この色紫色のドレスしかなくて⋯⋯」

「お怪我はありませんでしたの?」

「え、ええ、恥ずかしながらお父様は足を挫いてしまって⋯⋯」

「それでお一人だったのですね」

それに、着てこようとしていたドレスまで汚れてしまったなんて⋯⋯

「でも、そのドレスはコリーナ嬢にとても似合っていますわ」

「あ、ありがとうございます」

やっと笑ってくれた。褒められて照れくさそうにするコリーナ嬢は可憐で可愛い。

「そ、それで⋯⋯ファーストダンスなのですが⋯⋯」

「もしかして、誰とも踊れていませんの?」

「はい、お父様と踊る予定だったので⋯⋯」

一生に一度のデビュタントなのに、ドレスは汚れ、ファーストダンスも踊れないって⋯⋯それでもコリーナ嬢なら他の男性から声を掛けられると思うけれど⋯⋯私はチラリとお兄様とカイに視線を向けた。

「悪いな、俺はメイとしか踊らない」

私が何か言う前にカイに断られてしまった。
それに、なんだか突き放すような言い方だ。

「⋯⋯私でよければ踊ってくれるかい?」

「はい!喜んで!様」

よかった。お兄様がコリーナ嬢を誘ってくれて。
せっかくのデビュタントだものコリーナ嬢にもいい思い出になると思う。

ホールの中央で踊る2人はとても絵になって綺麗だった。それにコリーナ嬢が嬉しそう。でも、お兄様のあの微笑みは⋯⋯上辺だけのものだと私は知っている。

「⋯⋯この間は助けてやれなくてごめんな」

え?

「講堂でのことだ」

「ああ、お兄様から聞いてますよ。⋯⋯カイはリュート殿下の元に様子を見に行っていたんですよね」

「ああ、聞きたいことがあったからな。ま、メイは気にすることないさ」

と、また頭を撫でられた。
エルザのことだろうけれど、もう私には関係ないわ。

「ええ、もう彼との縁は切れましたから。それにカイに言われるまで彼の存在をすっかり忘れていました」

そう言うとまた頭を撫でられた。
それにしても、カイがピッタリとくっ付いているせいか視線が痛い。
カイが人気があることは噂で知っていた。
⋯⋯確かにいい男なんだよ。

私、きっと、たぶん、カイのこと好きになる⋯⋯予感がする。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました

ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」  大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。  けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。  王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。  婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。  だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

恋人が聖女のものになりました

キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」 聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。 それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。 聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。 多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。 ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……? 慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。 従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。 菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

冤罪で処刑された悪女ですが、死に戻ったらループ前の記憶を持つ王太子殿下が必死に機嫌を取ってきます。もう遅いですが?

六角
恋愛
公爵令嬢ヴィオレッタは、聖女を害したという無実の罪を着せられ、婚約者である王太子アレクサンダーによって断罪された。 「お前のような性悪女、愛したことなど一度もない!」 彼が吐き捨てた言葉と共に、ギロチンが落下し――ヴィオレッタの人生は終わったはずだった。 しかし、目を覚ますとそこは断罪される一年前。 処刑の記憶と痛みを持ったまま、時間が巻き戻っていたのだ。 (またあの苦しみを味わうの? 冗談じゃないわ。今度はさっさと婚約破棄して、王都から逃げ出そう) そう決意して登城したヴィオレッタだったが、事態は思わぬ方向へ。 なんと、再会したアレクサンダーがいきなり涙を流して抱きついてきたのだ。 「すまなかった! 俺が間違っていた、やり直させてくれ!」 どうやら彼も「ヴィオレッタを処刑した後、冤罪だったと知って絶望し、時間を巻き戻した記憶」を持っているらしい。 心を入れ替え、情熱的に愛を囁く王太子。しかし、ヴィオレッタの心は氷点下だった。 (何を必死になっているのかしら? 私の首を落としたその手で、よく触れられるわね) そんなある日、ヴィオレッタは王宮の隅で、周囲から「死神」と忌み嫌われる葬儀卿・シルヴィオ公爵と出会う。 王太子の眩しすぎる愛に疲弊していたヴィオレッタに、シルヴィオは静かに告げた。 「美しい。君の瞳は、まるで極上の遺体のようだ」 これは、かつての愛を取り戻そうと暴走する「太陽」のような王太子と、 傷ついた心を「静寂」で包み込む「夜」のような葬儀卿との間で揺れる……ことは全くなく、 全力で死神公爵との「平穏な余生(スローデス)」を目指す元悪女の、温度差MAXのラブストーリー。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

処理中です...