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次は俺の番だな。
「デューク・ティタニアだ。隣りにいるのは俺の婚約者ミラ・ティタニアだ。最初に言っておく、ミラに手を出したらタダでは済まさないからな」
俺たちに視線を向けていたクラスの連中を一通り見回す。
呆れを含んだ視線を向けるローガンとセナは無視しよう。
チョンチョンっと、袖を引っ張っているミラの方へ目を向けると「それじゃあ脅してるみたいでしょ」と小声で怒られた。
次はミラだ。
立ち上がっただけなのに、ミラの周りだけが時間かスローモーションになったかのように、立ち上がる仕草も、しっかり立って真っ直ぐに伸びた姿勢も、優雅で上品な雰囲気が出来上がっていた。
「ミラ・ティタニアです。・・・デュークの婚約者です。よろしくお願い致します」
ハニカミながら自己紹介するミラが可愛い!
あちらこちらから、感嘆の溜め息が漏れる。
そうなんだよ。
今回はミラの婚約者は俺なんだ。
あれはミラをボイル家から助け出してすぐの、ミラがウチの養子になった次の日だ・・・。
前日に泣き疲れたミラが次の日に俺を見て『リューク?・・・兄様』って言ったんだ。
俺は慌てたね。
俺はミラの兄になりたかったワケではなかったからな。
そしたら、ミラが・・・
ああ思い出すだけで今でも身悶えするね。
「兄妹になると結婚出来ないの?」って、涙を浮かべてウチの両親に聞いたんだ。
「ミラ、リューが大好きなの。ミラはリューのお嫁さんになれないのかな?」って・・・その恥じらう姿が本当に可愛くて可愛くて・・・
カッコ悪いけれど泣いたね。
泣きながら「お、俺もミラが大好きだ~」ってミラを抱きしめた。
いま思えば、天にも昇る気持ちってああいう気持ちのことだったんだろうな。
ミラが俺を大好きだって、お嫁さんになりたいって言ってくれた!
ミラを抱きしめながらも俺の頭では『大好き』『お嫁さん』の言葉がリピートし続けたね。
父上と母上は反対するどころか大喜び。
母上はまた泣いていたな。
それからすぐに俺とミラは婚約を結んだ。
いつ邪魔が入るかもしれないからだ。
その日からミラは大切で大好きな可愛い守るべき俺の婚約者になったんだ。
婚約を結んだ日は、使用人含めて我が家でパーティーが行われた。
ただ一つ不満があるとすれば・・・
手を繋ぐまでしか、ミラに触れてはダメだと両親に約束させられたことだ。
その時は俺もまだ8歳だったし、気持ちが舞い上がっていたからすぐに了承したんだ。
だけどな、人って成長するんだ・・・
今の俺は16歳だ。
思春期真っ盛りってヤツだ。
別に俺はミラが俺の傍に居てくれるだけで十分幸せなんだ。
なのに・・・ミラと2人っきりにはさせてもらえないんだ。
ミラに何かしようとなんて思ってもいないのに・・・
常に邸の中でも使用人達に監視されているんだ・・・
そんなに俺は信用出来ないのか!
特に両親の俺を見る目が・・・疑いの目なんだ。
俺、実の息子だよな?
拾われてきた子じゃないよな?
だから、学院に入ったら警戒は解かないが、少しぐらいイチャイチャ出来るかなって思っていたのに・・・
ローガンとセナがいるなんて!
もう俺の願望が叶うことはないんだろうな・・・
ダメだ!落ち込むな俺!
3年後にはミラは俺のお嫁ちゃんになる事は間違いないんだ!
それからなら、人目もはばからずイチャイチャし放題じゃないか!
あと3年だ。
この3年間、ミラを守りきれば・・・ミラが俺のお嫁ちゃん。
そう考えると、邪魔だと思っていたローガンとセナが居ることは心強くもあるな。
~ローガン・イーリヤ団長視点~
ライラ様はよくミラ様を連れてティタニア公爵家に遊びに来ていた。
庭園をデューク様本人もまだ覚束無い足で、よちよち歩きのミラ様の手を引いて歩く微笑ましい姿を、その傍らで俺達も見守っていた。
幼くも可愛い2人の交流は、ライラ様が亡くなると徐々に無くなってしまった。
そんなある日の早朝。
旦那様と奥様、それにまだ8歳のデューク様が血相を変えてボイル侯爵家に向かう、と言った。
騎士も何人か一緒に着いてこいとも指示された。
意味が分からないままついて行った先で見たものは・・・
邸の奥にある物置小屋で、小さく丸まって眠っていたミラ様だった。
国王陛下の姪で、我が主の姪で、元王女のライラ様の娘のミラ様が・・・
ありえない光景に身体が固まった。
すぐに旦那様の指示で邸の者すべてを捕らえたが、取り調べれが進むほど、胸糞の悪い話だった。
まだ幼く愛らしいミラ様に虐待を行っていたとは・・・
今はティタニア公爵家に引き取られ、公爵夫妻だけでなく使用人にも大切に愛され、優しく素直ないい子に育った。
デューク様とミラ様が入学する前に旦那様と奥様に呼ばれ、学院に教師として潜入しろと指示を出された。
そこで聞かされた前回の出来事。
信じられないという思いと、あの日突然ボイル家に向かった旦那様達がまっすぐ小屋に向かった理由が理解出来た。
前回、ミラ様はあそこで10年以上も虐待をされ続けていた事になる。
俺たちにとっても大切で可愛いミラ様をだ!
前回、学院でもミラ様は嘲笑われ、虐げられ、侮辱されていたという。
そこまで聞けば断る理由などない。
『じゃあ、次こそはミラを守ってあげて。お願いよ。』
お任せ下さい。
ライラ様の最後の願いなら俺は命にかえても叶えます。
「デューク・ティタニアだ。隣りにいるのは俺の婚約者ミラ・ティタニアだ。最初に言っておく、ミラに手を出したらタダでは済まさないからな」
俺たちに視線を向けていたクラスの連中を一通り見回す。
呆れを含んだ視線を向けるローガンとセナは無視しよう。
チョンチョンっと、袖を引っ張っているミラの方へ目を向けると「それじゃあ脅してるみたいでしょ」と小声で怒られた。
次はミラだ。
立ち上がっただけなのに、ミラの周りだけが時間かスローモーションになったかのように、立ち上がる仕草も、しっかり立って真っ直ぐに伸びた姿勢も、優雅で上品な雰囲気が出来上がっていた。
「ミラ・ティタニアです。・・・デュークの婚約者です。よろしくお願い致します」
ハニカミながら自己紹介するミラが可愛い!
あちらこちらから、感嘆の溜め息が漏れる。
そうなんだよ。
今回はミラの婚約者は俺なんだ。
あれはミラをボイル家から助け出してすぐの、ミラがウチの養子になった次の日だ・・・。
前日に泣き疲れたミラが次の日に俺を見て『リューク?・・・兄様』って言ったんだ。
俺は慌てたね。
俺はミラの兄になりたかったワケではなかったからな。
そしたら、ミラが・・・
ああ思い出すだけで今でも身悶えするね。
「兄妹になると結婚出来ないの?」って、涙を浮かべてウチの両親に聞いたんだ。
「ミラ、リューが大好きなの。ミラはリューのお嫁さんになれないのかな?」って・・・その恥じらう姿が本当に可愛くて可愛くて・・・
カッコ悪いけれど泣いたね。
泣きながら「お、俺もミラが大好きだ~」ってミラを抱きしめた。
いま思えば、天にも昇る気持ちってああいう気持ちのことだったんだろうな。
ミラが俺を大好きだって、お嫁さんになりたいって言ってくれた!
ミラを抱きしめながらも俺の頭では『大好き』『お嫁さん』の言葉がリピートし続けたね。
父上と母上は反対するどころか大喜び。
母上はまた泣いていたな。
それからすぐに俺とミラは婚約を結んだ。
いつ邪魔が入るかもしれないからだ。
その日からミラは大切で大好きな可愛い守るべき俺の婚約者になったんだ。
婚約を結んだ日は、使用人含めて我が家でパーティーが行われた。
ただ一つ不満があるとすれば・・・
手を繋ぐまでしか、ミラに触れてはダメだと両親に約束させられたことだ。
その時は俺もまだ8歳だったし、気持ちが舞い上がっていたからすぐに了承したんだ。
だけどな、人って成長するんだ・・・
今の俺は16歳だ。
思春期真っ盛りってヤツだ。
別に俺はミラが俺の傍に居てくれるだけで十分幸せなんだ。
なのに・・・ミラと2人っきりにはさせてもらえないんだ。
ミラに何かしようとなんて思ってもいないのに・・・
常に邸の中でも使用人達に監視されているんだ・・・
そんなに俺は信用出来ないのか!
特に両親の俺を見る目が・・・疑いの目なんだ。
俺、実の息子だよな?
拾われてきた子じゃないよな?
だから、学院に入ったら警戒は解かないが、少しぐらいイチャイチャ出来るかなって思っていたのに・・・
ローガンとセナがいるなんて!
もう俺の願望が叶うことはないんだろうな・・・
ダメだ!落ち込むな俺!
3年後にはミラは俺のお嫁ちゃんになる事は間違いないんだ!
それからなら、人目もはばからずイチャイチャし放題じゃないか!
あと3年だ。
この3年間、ミラを守りきれば・・・ミラが俺のお嫁ちゃん。
そう考えると、邪魔だと思っていたローガンとセナが居ることは心強くもあるな。
~ローガン・イーリヤ団長視点~
ライラ様はよくミラ様を連れてティタニア公爵家に遊びに来ていた。
庭園をデューク様本人もまだ覚束無い足で、よちよち歩きのミラ様の手を引いて歩く微笑ましい姿を、その傍らで俺達も見守っていた。
幼くも可愛い2人の交流は、ライラ様が亡くなると徐々に無くなってしまった。
そんなある日の早朝。
旦那様と奥様、それにまだ8歳のデューク様が血相を変えてボイル侯爵家に向かう、と言った。
騎士も何人か一緒に着いてこいとも指示された。
意味が分からないままついて行った先で見たものは・・・
邸の奥にある物置小屋で、小さく丸まって眠っていたミラ様だった。
国王陛下の姪で、我が主の姪で、元王女のライラ様の娘のミラ様が・・・
ありえない光景に身体が固まった。
すぐに旦那様の指示で邸の者すべてを捕らえたが、取り調べれが進むほど、胸糞の悪い話だった。
まだ幼く愛らしいミラ様に虐待を行っていたとは・・・
今はティタニア公爵家に引き取られ、公爵夫妻だけでなく使用人にも大切に愛され、優しく素直ないい子に育った。
デューク様とミラ様が入学する前に旦那様と奥様に呼ばれ、学院に教師として潜入しろと指示を出された。
そこで聞かされた前回の出来事。
信じられないという思いと、あの日突然ボイル家に向かった旦那様達がまっすぐ小屋に向かった理由が理解出来た。
前回、ミラ様はあそこで10年以上も虐待をされ続けていた事になる。
俺たちにとっても大切で可愛いミラ様をだ!
前回、学院でもミラ様は嘲笑われ、虐げられ、侮辱されていたという。
そこまで聞けば断る理由などない。
『じゃあ、次こそはミラを守ってあげて。お願いよ。』
お任せ下さい。
ライラ様の最後の願いなら俺は命にかえても叶えます。
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