アンネイセカイ~異世界と姉と安寧と~

蒼月

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幕間:アイリス・レヴィアの胸の内

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 私はリューネの街の出身だった。付近に出る魔物は高レベルで。唯一レベルの低い魔物が出る森が近くにあるくらいで、これといった特徴のない街だ。だが私はこの街が大好きだ。生まれた街というのもあるが、街の人は皆いい人で、勇者という身分という垣根を越えて、家族のように接してくれるのだ。
 そしていつものように現在所属している冒険者ギルドで依頼を受け、死の森へと向かうと、魔物に襲われている子供を見つけてしまった。すぐさま助けに行くが魔物も子供も速く、なかなか距離を詰めることが出来なかった。能力を使うか迷う。しかし、子供が追い詰められてしまい、そこで迷いがふっ切れ能力を使うことにする。
「時よ、全ての動きを鈍らせ掌握せよ!」
 その瞬間だった。世界の色が失われ、全ての動きが止まった、否。極限までゆっくりとなったのだ。
「させるかあぁぁぁ!」
色の消えた世界で放たれる剣戟。子供から見たら何が起きたのかも分からないだろう。そのうちに魔物は血飛沫を撒き散らし、息絶えた。
 そして死の森にいる子供に向かって思わず激昂してしまった。
「君は何をしている!ここがどこだか分かっているのか!」
 子供はこちらを見返すが、その目に光はなく、どれほどの絶望に身を焦がされたのか、死んでいた。
「なんで助けてくれたの?僕は死んでもよかったのに……」
 その瞬間涙腺が緩んだ。何がこの子をそうさせたのか、両親はなにをやっているのか。何もかもが悲しかった。気がつくと目の端から涙が一筋流れていたことにも気が付かなかった。
 話を聞いてみると、両親は強盗に襲われて死んでしまったらしい。一心に親の愛を受け育ったこの子に対してはあまりにもむごい仕打ちだった。
「どうしてお姉さんは助けてくれたの?僕はもう死んでもよかったのに……どうして?」
 その言葉を聞いた瞬間涙が溢れてきた。どうして幼子がそのような言葉を使わなければならないのか。思わず頬をはたいてしまった。強すぎたのか幼子は体のバランスを崩してしまう。
「君のような幼子が……死んでいいはずがないだろう!頼る人がいないなら私がなる!だからそんな悲しいことを言わないでくれ……」
 その言葉は本心だった。この子は迷い人の可能性がある以上、私が保護者になろうと思った。放っておけるはずがない。
 この子が言った何も出来なくてもいい。目の前の、この悲しい運命を背負ってしまった幼子をとにかく救いたかったのだ。
「ありがとう。お姉さん」
 そう言われた瞬間、救われたような気持ちになり、幼子を抱きしめる。これからは私に頼ってもいい事を伝えると安心したのか、張り詰めた緊張が解け、声を上げて泣いてしまった。頭を撫で、あやしていくと少しずつ落ち着いていき、体を離す。
 それからは自己紹介をした。この子の名前は釘鷺雄と言うらしい。ここいらでは聞き覚えのない和名なため、やはり迷い人なのだろう。
 この場所のことや、冒険者のこと、発見した経緯を説明し、その小さい手を繋いで共にリューネの街へと帰る。街へ入ると雄君は見たことのない世界を見たように驚き、年相応にはしゃいでいた。それを見て私は安心する。まだこの子は心までは死んでいなかったのだと。
 その後は冒険者ギルドへと向かうが、普段はパーティを組まずソロなため、子供を連れて来たことを驚かれた。その中の1人に攫ってきたのではないかと不躾な事を話す輩がいたため、時の流れを変える時空魔法でパンツを残し切り刻んであげると逃げてしまった。
 すると驚くことに雄君には見えていたらしく、本当だとすれば伝説の魔眼使いなのではないだろうか。興奮した勢いでパーティ勧誘をしてしまったが、なるにしてもまずは雄君の実力を付けなければならない。この街にもだいぶお世話になったが、この子のためにも中央国に行くのも考えの人つとして頭の隅に留めておこう。
 その日の夜から早速鍛錬を開始することにした。やはり年相応の体力ですぐにへとへとになってしまっていたが、根性はあるらしく、諦めずに頑張っていた姿がとても微笑ましかった。そして夜、背中を流してあげようと一緒にお風呂に入ろうとしたがそこだけはと拒否されてしまい少しだけ悲しかったが、あいにく部屋が一つしか空いていなかったため、同じベッドで寝ることに成功したのは嬉しかった。
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