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第一章:金色の神様
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奴らが巨大ヘビに襲われていたのだ。もしも振り落とされたりすれば,間違いなく食べられてしまうだろう。しかもマイケルは,左腕を負傷しているようだった。出血がかなり酷い。危険な状況なのは言うまでもない。
――どうすればいい。
なぜこんな事態に。アイツらは昔,自分を苦しめた最低な奴らなんだ。でもこのまま見捨てる,という訳にはいかない。マイケルたちを助けられるのは自分たちしかいない。……こんな所に来なければ,とさえスウェンは思う。
あれこれ考えている時,ジャックが隣でニヤニヤしながらこんな言葉を放った。
「アイツら,ざまぁねぇな」
「え――?」
信じられない,言葉だった。スウェンは木の枝をへし折り,ジャックを睨みつける。
気付くと自分の拳が,親友の顔面に向けられていた。
――痛ましい音が鳴り響く。
「ぐ……! な,何すんだ!」
突然殴られたジャックは怒鳴るんだ。
「……黙れ,ジャック。いくらお前でも許さない」
「あ……?」
「――俺は,行く」
そう言うとスウェンは,担いでいたシカの死体を放り投げた。大鎌を手に構え,スッと立ち上がる。
「スウェン! お前もしかしてアイツらを助けるつもりなのか」
「うるさいな! どうせあのヘビを狩りに来たんだぜ。
マイケルたちを助けるのは……ついでだ」
――嘘だ。
本気で奴らを助けに行きたかった。なぜだか分からない。殺したいくらい恨んでいた奴らを,救いたいと思う自分が。
――このまま放っておけば,じきに奴らはヘビに丸飲みにされるだろう。
決してそれがいいこととは思えない。
スウェンは,こんな自分に腹が立った。全身が震える。
「誰か。誰かいないのか!」
「助けてくれ!」
情けない声で,マイケルたちが叫んでいた。
――急がなければ。
「スウェン、ホントに行くのかよ」
「お前も一緒に助けに行くか?」
「ばあか! 何言ってんだ! どうしてあんな野郎たちの為に,オレがヘビと戦わなきゃならないんだよ!」
随分,ジャックは奴らのことを毛嫌っているようだった。
たった一人で巨大ヘビに立ち向かって行けるかとても不安であった。しかしマイケルたちを救うには,行くしかない。意を決してスウェンは木からヘビの体に飛び付いた。
鱗がザラザラしていて,まるで岩にしがみついているような感触であった。
「マイケル!」
スウェンは声の限り,叫んだ。
すると奴らは声に反応して,こちらを見下ろした。
案の定,三人とも驚いた表情になる。
「……あ? おい……テメェ!」
「こんな所で,何してやがる!」
奴らを睨みつけてからスウェンは言う。
「助けに来たんだ。……感謝しろよ」
するとマイケルたちはスウェンのことをじっと見つめ,黙りこくった。
――ヘビの動きは鈍い。
数百メートル先まである尻尾の先を動かそうとする
が,重すぎるのだろう,ヘビは自分の尻尾を持ち上げることさえできなかった。
(こいつ,太りすぎなんだ。馬鹿みてぇ。自分で自分の体も動かせないなんて)
スウェンは落ちないよう注意深く,ヘビの目玉付近まで登った。
このとき,全身がまたブルブル震えた。自分の全身よりも大きな眼球に睨まれては,とてつもない恐怖を感じてしまった。スウェンは無表情で武器を構え,ヘビの眼球目掛けて思い切り刃先を振り下ろした。
「――!!」
目玉の中から血が噴水のように飛び散る。白いものがスウェンの手に付き,ドロッとした感触がした。
ヘビは奇声を上げて唸りを上げ,狂ったようにもがき,地面に倒れた。
「三人とも,すぐに逃げろ!」
「あ,ああ……」
マイケルたちは急いでヘビの側を離れ,森林の中へ消えていった。
刃先を目玉から引き抜き,赤い血とネバネバした奇妙な液体が鎌にくっついた。なんとも言えない,悪臭が漂う。
ヘビは痛みのあまりしばらく正常にしていられないようだ。スウェンを投げ飛ばし,鎌首を持ち上げた。
「……ふん」
難無く着地しながらスウェンはしかめ面を浮かべる。実際は心臓がバクバクだった。
ヘビはものすごい顏で,こちらを見ている。奴の口の中は唾液だらけである……。
初めて戦う巨大な相手を前にして,まだ体が震えていた。鎌で攻撃しようとしても,体が言うことを聞いてくれない。
「……スウェン!」
すると樹木の上から急にジャックが叫び,何やら黒い円形のものを投げてきた。受け取るとそれは,意外に重みがある。
だがよくそれを見てみると,スウェンは,一瞬心臓が止まりそうになるほど驚いた。
――点火している。
爆弾だ。
「うわっ!」
スウェンはとっさに,その爆弾を投げ捨てた。
(ジャックめ,爆弾なんていつの間に! 殺す気か!)
何をしでかすか分からない奴だ,
スウェンはつくづく思った。
爆弾は高く高く宙へ。
餌と勘違いしたのだろうか,ヘビはベトベトの割れた舌を垂らし,瞬く間にそれを口の中に入れてしまう。
「バ,バカな奴」
すぐさまスウェンは身を伏せた。それと同時に,内臓を叩かれるような鈍い音が,森中に響き渡った。
頭上から大量の血の雨が降ってきて,全身が真っ赤に染められる。
スウェンは恐る恐る,上を見上げた。
――そこにはヘビが……いや,もはやヘビではない物体があった。
――どうすればいい。
なぜこんな事態に。アイツらは昔,自分を苦しめた最低な奴らなんだ。でもこのまま見捨てる,という訳にはいかない。マイケルたちを助けられるのは自分たちしかいない。……こんな所に来なければ,とさえスウェンは思う。
あれこれ考えている時,ジャックが隣でニヤニヤしながらこんな言葉を放った。
「アイツら,ざまぁねぇな」
「え――?」
信じられない,言葉だった。スウェンは木の枝をへし折り,ジャックを睨みつける。
気付くと自分の拳が,親友の顔面に向けられていた。
――痛ましい音が鳴り響く。
「ぐ……! な,何すんだ!」
突然殴られたジャックは怒鳴るんだ。
「……黙れ,ジャック。いくらお前でも許さない」
「あ……?」
「――俺は,行く」
そう言うとスウェンは,担いでいたシカの死体を放り投げた。大鎌を手に構え,スッと立ち上がる。
「スウェン! お前もしかしてアイツらを助けるつもりなのか」
「うるさいな! どうせあのヘビを狩りに来たんだぜ。
マイケルたちを助けるのは……ついでだ」
――嘘だ。
本気で奴らを助けに行きたかった。なぜだか分からない。殺したいくらい恨んでいた奴らを,救いたいと思う自分が。
――このまま放っておけば,じきに奴らはヘビに丸飲みにされるだろう。
決してそれがいいこととは思えない。
スウェンは,こんな自分に腹が立った。全身が震える。
「誰か。誰かいないのか!」
「助けてくれ!」
情けない声で,マイケルたちが叫んでいた。
――急がなければ。
「スウェン、ホントに行くのかよ」
「お前も一緒に助けに行くか?」
「ばあか! 何言ってんだ! どうしてあんな野郎たちの為に,オレがヘビと戦わなきゃならないんだよ!」
随分,ジャックは奴らのことを毛嫌っているようだった。
たった一人で巨大ヘビに立ち向かって行けるかとても不安であった。しかしマイケルたちを救うには,行くしかない。意を決してスウェンは木からヘビの体に飛び付いた。
鱗がザラザラしていて,まるで岩にしがみついているような感触であった。
「マイケル!」
スウェンは声の限り,叫んだ。
すると奴らは声に反応して,こちらを見下ろした。
案の定,三人とも驚いた表情になる。
「……あ? おい……テメェ!」
「こんな所で,何してやがる!」
奴らを睨みつけてからスウェンは言う。
「助けに来たんだ。……感謝しろよ」
するとマイケルたちはスウェンのことをじっと見つめ,黙りこくった。
――ヘビの動きは鈍い。
数百メートル先まである尻尾の先を動かそうとする
が,重すぎるのだろう,ヘビは自分の尻尾を持ち上げることさえできなかった。
(こいつ,太りすぎなんだ。馬鹿みてぇ。自分で自分の体も動かせないなんて)
スウェンは落ちないよう注意深く,ヘビの目玉付近まで登った。
このとき,全身がまたブルブル震えた。自分の全身よりも大きな眼球に睨まれては,とてつもない恐怖を感じてしまった。スウェンは無表情で武器を構え,ヘビの眼球目掛けて思い切り刃先を振り下ろした。
「――!!」
目玉の中から血が噴水のように飛び散る。白いものがスウェンの手に付き,ドロッとした感触がした。
ヘビは奇声を上げて唸りを上げ,狂ったようにもがき,地面に倒れた。
「三人とも,すぐに逃げろ!」
「あ,ああ……」
マイケルたちは急いでヘビの側を離れ,森林の中へ消えていった。
刃先を目玉から引き抜き,赤い血とネバネバした奇妙な液体が鎌にくっついた。なんとも言えない,悪臭が漂う。
ヘビは痛みのあまりしばらく正常にしていられないようだ。スウェンを投げ飛ばし,鎌首を持ち上げた。
「……ふん」
難無く着地しながらスウェンはしかめ面を浮かべる。実際は心臓がバクバクだった。
ヘビはものすごい顏で,こちらを見ている。奴の口の中は唾液だらけである……。
初めて戦う巨大な相手を前にして,まだ体が震えていた。鎌で攻撃しようとしても,体が言うことを聞いてくれない。
「……スウェン!」
すると樹木の上から急にジャックが叫び,何やら黒い円形のものを投げてきた。受け取るとそれは,意外に重みがある。
だがよくそれを見てみると,スウェンは,一瞬心臓が止まりそうになるほど驚いた。
――点火している。
爆弾だ。
「うわっ!」
スウェンはとっさに,その爆弾を投げ捨てた。
(ジャックめ,爆弾なんていつの間に! 殺す気か!)
何をしでかすか分からない奴だ,
スウェンはつくづく思った。
爆弾は高く高く宙へ。
餌と勘違いしたのだろうか,ヘビはベトベトの割れた舌を垂らし,瞬く間にそれを口の中に入れてしまう。
「バ,バカな奴」
すぐさまスウェンは身を伏せた。それと同時に,内臓を叩かれるような鈍い音が,森中に響き渡った。
頭上から大量の血の雨が降ってきて,全身が真っ赤に染められる。
スウェンは恐る恐る,上を見上げた。
――そこにはヘビが……いや,もはやヘビではない物体があった。
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