【完結】Good Friends

朱村びすりん

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第六章:終ワラナイ遊ビ

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 クロックス連邦を出発した後,軍全体でミーティングが行われた。
そこで作戦の発表がされた。その内容は,こうだ。
 空中戦では,ロバウト号をはじめとする戦闘機が大砲等を使用する。そして,地上ではブライアンと他二名を指揮官とし,剣・弓・爆弾・その他武器を用いて戦闘する。
 その間に,帝国の本拠地に侵入するのはジャック(ジャッシー),スウェン,マイケル,そしてもう一人マイケルの護衛隊員の計四名だ。これは,侵入する人数は少ないのが適切と考えた上での構成である。この四名が侵入した後に,帝王を倒そうというものだった。
 毒の煙対策のため,全員特殊マスクを着用する。
――エルフィン軍は,他国から派遣された兵を含めると軍勢およそ百三十万万程度。
 しかし,間者の情報によると賊兵はそれを遥かに上回り,推定五百万以上は参戦するという。
 どう考えても,エルフィン軍は不利な立場にあった……。



――スウェンはクロックス連邦を離れる際,母に一通の手紙を送った。
 母は,自分の息子が戦争へ行くことなど知らないだろう。ろくに近所付き合いもせず,新聞やテレビも見ない……そんな内向的な生活をしていれば世間の情報を知る機会がもちろんないのだ。
 しかし,スウェンは手紙にはそのことを一切書かなかった。
 長期に渡って旅の道を歩み,自分が(自分なりに)どう変わったか,旅先で出会った人たちのこと,生まれて初めて好きな人ができたこと――。とにかく自分が元気であることだけを伝えた。
 下手くそな字であるが,思いを込めてスウェンが綴った紙は,一体何日後に母に届くのだろうか。


――デザイヤ帝国に向かう船内は,ずっと静寂に包まれていた。窓の向こうは真っ暗な夜空が広がり,星も月も見当たらない。
 船内では,同じ部屋で全員が眠りについていた。途中,目を覚まして吐く者がいた。おしっこを漏らしてしまう隊員もいる。

 ……それほど,怖いのだ。

 悪夢を見ていたスウェンは,うなされていた。全身に汗を流しながら目覚めてしまった。
「…………」
 何も,言葉が出なかった。
 汗を拭い,ぬくっと立ち上がる。
 この部屋は暑すぎる
 そう思い,船の外へ出ようと部屋をあとにした。


 部屋を出てロビーに移動し,甲板へと向かう。船内は本当に静かで,しかも薄暗い。なんだか寂しかった。
 甲板に行くと,強い風がスウェンの頬に当たってきた。空の上は,やはり寒い。
「……?」
 月の見える目の先に,誰かが立っていた。
「……ブライアンか」
 スウェンが名を呼ぶと,彼はこちらを振り向いた。唇が青くなっている。長いこと,ここにいたのだろうか。
「眠れないのか」
「はい。……見てください,月の先を」
 小さな声でブライアンは言うと,赤黒く光る不気味な月の方を指差した。
「……?」
 スウェンは彼の指す先に目を据えた。
「あれは――」
 かなりの遠方で,地上の方からもくもくと昇っていく,真っ暗な煙の姿がうっすらと目で確認できた。耐えることなくそれは,空の上……宇宙の果てまで続いているように思えた。
「あれは……毒の煙か!?」
 スウェンは目を見張った。驚愕するスウェンとは裏腹に,ブライアンは冷静な口調であった。
「違いますよ」
 と,一言。
 スウェンはブライアンのことを見る。
「え……?」
「あれは,デザイヤ軍からの信号です」
「信号?」
 首を傾げるスウェン。
 その隣で,金の短い髪をなびかせるブライアンは淡々と語った。
「宣戦布告をした国が『戦闘開始可能』という意味で放つものです。相手国――つまり,わたしたちの軍がその答えとして同じ煙を発すれば,開戦されるのです。戦争での暗黙の了解,というものでしょうか」
 初めて知る話に,スウェンは言葉を失う。呆然と,夜空を眺めた。
「……あの信号が見えてきたということは,戦場はもうすぐそこだという意味です。あと数時間もしないうちに……戦いが始まるでしょう」
 静かに話していたが,ふと彼の手を見ると,握る拳が震えているのにスウェンは気づく。
「ミスター・ミラー。そろそろ兵たちを起こさなければなりません。手伝ってくれませんか」
「……ああ」
 唾を飲み込んだ。
 夜空の中は,寒空。それなのに,スウェンの胸は熱くなった。
 共に部屋へ戻ろうと歩き出したとき,ブライアンがもうひとつ言葉を向けた。
「申し訳ありませんが,夜食は食べないで下さいね。……全部戻してしまいますから」
 スウェンは苦笑した。


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