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第六章:終ワラナイ遊ビ
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空は見渡す限り,黒い煙に覆われている。 湿気がものすごく,人々の熱気であたりの温度は上昇するばかりである。 どこもかしこも砂だらけで,ここには植物の欠片も見当たらない。 生物が普通にして住めるような場所ではなかった。
ここはデザイヤ帝国,賊たちの拠点地付近の砂漠。 六月中旬,午前零時五十九分 対帝国戦が開始されたのだ。 推定,五百万人以上の賊兵が参戦している。
ブライアンは地上で,長槍を手に戦っていた。 倒せど倒せど,次々に襲いかかってくる賊たち。 ブライアンは汗と血によって,全身が濡れてしまっていた。 仲間と敵――同じ人間同士が命を奪い合い,殺されていく。 その時の人々の表現は,まるで化物のよう……。
空中では,ロバウト号と他3機の戦闘機が大砲や爆撃で敵に食らわせている。 その爆音は,耳の鼓膜が破れる寸前になるほどの大音量。
何もかもが,おかしくなってしまいそうだ。
――ジャッシー王子たちは,拠点地の侵入に成功しているようである。 帝王撃退まで持ち堪えられればよいのだが……。 エルフィン軍が不利な状況は,依然変わらない。
軍の先頭に立ち,ブライアンは槍を振り続ける。 賊の体に刃を突き刺したときの血しぶき,唸り声,そして狂乱した顏――。 こちらまで頭がおかしくなってしまいそうだ。
「ギヒヒヒ。死ィネ!」
背後から奇妙な叫び声がした。 ブライアンはすかさず振り返り,武器を構える。
「……?」
しかし,そこには声の主の姿はない。
考える間もなく,脇腹あたりが急激に熱くなった。よく,分からない,感覚。 腹からどばっと赤い液体が流れてくる。火傷をした時に,その部分を思い切り殴られるような――そんな激痛が走る。
ブライアンは今の状況を理解した。
それから一瞬の間,全てが頭の中に通過していき,そしてすぐに何も考えられなくなった。この戦争のことも,親愛なるジャッシー王子のことも。愛する家族のことさえも。
倒れると同時に,声の主――賊が武器の刃を,ブライアンの脇腹から引き抜くのだった。
(これが……殺し合いですか)
ブライアンの目は静かに閉ざされる。
この時,最期に彼の耳に入ってきたのは「クロックス連邦が――」と大声で叫ぶ兵士の声であった。
※
それよりも四時間も前のことである。
スウェンたちは拠点地内へ侵入していた。皹の入ったコンクリートで造られた巨大な建物であり,その中はただただ真っ暗な広い通路が続いているだけだ。窓の一つとして存在しない。足元はびしょびしょで,硫黄のようなキツイ臭いが漂う。いやに熱気むんむんで,じっとしていても力が抜けてしまいそうだった。
「なあ……どうして誰もいないんだ?」
あまりにもしんとしているので,スウェンは逆に不安であった。
「それは,まだオレたちの存在がバレてないからだろ。 何も文句はねーよ」
小声で,ジャックは嬉しそうに言う。
その隣では,マイケルがいつものように目つきを悪くさせていた。
「ホンットにおれたち,今戦争中なのかよ?」
「……いちいち煩い奴だな。殺しの経験もないくせに,余裕ぶっこくな」
「あん? 何か言ったかクソ王子。ウンコ食らってみるか?」
「お前のその下品な言葉遣い,なんとかしろ」
「うっせぇ。テメェがいなくなれば,こんなこと言わずに済むんだ。 戦争が終結したら,さっさと死んじまえ」
「望むところだ」
よく分からない,口喧嘩が始まった。こんな時に呑気に争っていられるのだから大したものである。
チームが乱れてしまってはいけない,と言いたいところだが,スウェンはあえて二人を止めないでいた。それは,なぜだろう?
(別に……ただ面倒くさいから,止めない)
スウェンはふっとため息を漏らした。二人ならきっと,やる時はしっかりやってくれる。信用しきっているから,スウェンは面倒なことはしないのだ。
「……はぁ……はぁ」
ふと斜め後ろを見ると,マイケルを護衛する為にいる隊員が,なぜか息を切らせていた。走ったわけでもないのに。
「大丈夫か,あんた」
そう聞いても,隊員は小さく頷くだけである。その答えに,スウェンは納得しなかった。
喧嘩をやめそうにない二人を無視し,スウェンは隊員の側に寄る。
「戦いが怖いんだろ? 無理するな」
「…………」
それでもまだ首を横に振り続ける。 特殊マスクと兜が邪魔をして表情が全く分からなかったが,隊員がものすごく脅えているのだとスウェンは感じていた。
スウェンは優しく,彼の背中を摩った。すると隊員は,ゆっくりとこちらに顏を向ける。
「……ごめんなさい」
かすれた,声を聞いた。 スウェンは思わず足を止める。
今のはそら耳か。
しかし,次の瞬間――
「!?」
隊員の頭から,兜が外された。
スウェンはただ,目を見張ることしかできなかったのだ……。
信じがたい,信じられない現実が,目の前に立っていたからだ。 【彼女】は顏を真っ青にして,弱々しい瞳をこちらに向けていた。スウェンは言葉をなくした。
周りのことなど一切気にしないで,スウェンは彼女を抱き締めるのだった。
「エイダ……」
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