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王国へ
しおりを挟む帝国を攻め込んだ貴族兵はレオン王子達を残して全滅した。
街の至る所から煙がもくもくと上がる。
帝国民たちは避難所から出てきて、街の再建をすぐさま始めて行った。
やっぱり強い国民ね。王国が攻め込まれて怖かったと思うし、もし帝国が負けたら最悪の事態を予測できたと思うのに……
私の足元でうごめく物体があった。
「むむむ……むむ!! むー!!」
剣で刺そうが、槍で突こうが、炎で燃やしても、私の力を使っても力尽きない聖女。
死んでは蘇り、死んでは蘇りを繰り返していた。
最終的にギルの剣で串刺しにして、私の力を伝わらせたロープで縛り付ける事にした。
後はギルのお父さん……皇帝に引渡せばいいのかな……これどうしよ?
ギルは隣でカインの持ち物であろう槍を手に持って思いを馳せていた。
その表情は嬉しそうで悲しそうで苦しそうで……
「ふん、貴様らしいな。返すぞ!!」
ギルは力任せに槍をはるか空の彼方へと飛ばした。
槍は唸りをあげ、風を切り裂き、空へ消えていった。
ギルは軽く溜息を吐くと私達に告げた。
「……俺たち帝国はやられたらやり返す。聖女に操られていた? そんなのいいわけだ。おい、レオンそうだろ?」
アリッサによって回復魔法をかけられているレオンが苦しそうに頷いた。
「……そうです。聖女の力は、自分自身が持っている悪い心を増幅させるだけです。……私達王国民は傲慢になりすぎていました。魔力をうまく使えるからといって他の国を見下していました」
「ふん。貴様にも来てもらおう」
「ど、どこにですか? 私はクリスに謝罪をしたら処刑では……」
「狂った王国民の後始末だ」
テッドが私の横にいつの間にかいた。
「そうでしゅ! ……聖女の呪いは一部の人間にしかかかっていないハズでしゅ! なのに……なのにクリス様は……みんなに……」
「テッド……」
小さなテッドの顔が大人びて見える。
いつの間にかこんなに立派になっちゃって……嬉しくて頭をなでたくなっちゃう。
そんな私達を見てレオンがボソボソ呟いた。
「……確かに聖女の魅了の力は王国民全員に行き渡っているわけではなかった。主要な人間だけが……あれが王国民の本性? 石を投げつける人間性なのか? なぜほとんどの人間はクリスの短剣を受けて死んでしまったのだ? 俺はなんで生き残れたんだ?」
ギルはツカツカとレオンの所まで近づいて、胸倉を掴んだ。
「ちょっとレオン!? 傷が開くわよ! ぶっちゃけ死んでもいいけどさ!」
「……ふん、王国でクリスに刺されたおかげだな。貴様は後悔することができた。だから芯まで腐ってなかったんだろう。クリスに感謝しろ」
「あ、ああ……クリス……俺は……」
レオンは私に向かって土下座を始めてしまった!?
ちょ、ちょっと、面倒くさいわ……
レオンが真人間になろうとしてるとか、どうでもいいし……
私は帝国を守れただけでいいの。
「うん、レオンは二度と顔を見せないでくれればそれでいいわ」
「ふん、それでいいだろう。殺すほどでもない。……王国を統治するために必要だしな」
「え!? 行くって、まさか王国!?」
「ああ、もちろんだ。俺のクリスを虐げた王国民を許せるわけない。……聖女を引きずり回して王国に乗り込むぞ」
ギルはスマート水晶を手に持って、城にいるであろうお父さんと話し始めた。
ああ、わかった、そうだ、と短い相づちだけが聞こえてくる。
水晶を切り、私の手を掴んだ。
「クリス、君のトラウマを全て消し去ろう。――王国を破壊するぞ!!!」
ギルはプリムを踏んづけて高らかを声をあげた!!
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