じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

文字の大きさ
113 / 860
4章 それぞれの明日

6-2

しおりを挟む
6-2

兵士たちが一斉に剣を抜いた。門に並んでいた人たちからどよめきと悲鳴があがる。エラゼムは素早く背中の盾剣を外すと、大声で叫んだ。

「桜下殿、しんがりは吾輩が!駆けてくだされっ!」

「おう、まかせたっ!」

うおおお、走れーー!俺たちは一目散に門へ向かって走り出した。

「くそー!なんでこうなるんだ!」

「いいから、足止めないでよ!わたしが道を開く!」

フランが爪を抜くと、先頭に躍り出た。恐ろしい鉤爪を持った少女が向かってくるのを見て、門の前にいた人たちは悲鳴を上げてちりぢりになった。よし、これで残りは衛兵だけだ。

「やりすぎるなよ!」

「努力する!」

フランの突破力なら強引にでも門を抜けられる……はずだ。ていうか、もうそれしか道がない!結局強行突破じゃないかって?けっ、作戦なんて、くそくらえだ!

「逃がさぬ!そうやすやすと突破はさせぬぞ!」

怒声に振り向くと、あのリーダー兵士が一枚の巻物を取り出し、それの端っこを口にくわえていた。なんだ、ヤギの真似事か?と思った次の瞬間、兵士は巻物の端を握って、ビリリっと引き裂いてしまった。パアァー!

「うわっ」

兵士が破った巻物から、真っ赤な火の玉がピューンと打ちあがった。火の玉は空高く飛んでいくと、パーンと騒々しくはじけ飛んだ。後には赤い煙が、まるで目印のようにふわふわ浮かんでいる……

「まさか、信号弾か!?」

あれが勇者の居場所を教えるシグナルだとしたら、町中から兵士が集まってくるぞ。そして案の定、目の前の関所からは槍を構えた兵士たちがぞくぞくと飛び出してきた。

「け!それがどうした!援軍が来る前に蹴散らしちまえばいいだけだろ!」

門の前に立ちふさがる兵士はせいぜい十数人。それだけの数で、フランが止められるはずない。

「どけっ!」

フランは鉤爪を振りぬいて兵士たちに突っ込んでいく。と、そのときウィルが鋭く叫んだ。

「桜下さん!あれ!弓矢を持ってます!」

「なに……!」

槍を構えた兵士の後ろに、大きな弓矢を構えた弓兵が立ち並んでいる。あいつら、接近戦じゃ敵わないから、飛び道具で攻撃するつもりなんだ!

「フラン、気を付けろ!そいつら弓矢を……」

『……!主様!気を付けるのはあなたの方です!』

え?それってどういう……
ピュンピュンピュン!うわ、矢を撃ってきた!けど、矢じりはフランを狙っていない。狙われているのは、俺だ!

「っ!」

フランが強引に体をねじり、爪で矢を弾き飛ばす。だが捌き損ねた矢の一本が、俺に向かって真っすぐ飛んできた。やばい!

「南無三!」

俺はとっさに剣を引き抜き、やみくもに振り回した。剣は奇跡的に矢じりを弾き、矢はおかしな方向に飛んで行った。あ、危なかった。アニが警告してくれなければ、絶対反応できなかっただろう。

「こいつら……!」

フランは兵士に襲い掛かろうとしたが、再び弓を構えた姿を見て、ぐっと押しとどまった。兵士たちの目は、どう見てもフランではなく、俺を射抜こうとしている。

「ちぃ!」

フランは踵を返すと、俺のそばまで戻ってきた。俺が狙われているんじゃ、フランは自由に動き回れない。くそ、俺たちの足は完全に止まってしまった。そこに追いついたエラゼムが合流する。

「どうされたか、桜下殿!」

「厄介なことになった。どうにも、俺が狙われているみたいなんだ!」

「なんですと?」

「くそ、どうなってんだ!」

すると服の下から、アニが鋭くリンと鳴った。

『連中は、主様に特化した戦法を仕掛けてきています!主様の能力のことが、敵にも知れ渡っているんですよ!』

なに?俺の能力に特化しただって?動きの止まった俺たちは、あっという間に兵士たちに取り囲まれてしまった。フランとエラゼムが鋭く牽制しているので、一定以上は近づいてこないが……

「ちくしょう、大ピンチじゃないか……!」

「ふっははははは!とうとう追い詰めたぞ、この極悪勇者め!」

取り囲まれた俺たちを見て、兵士の一人が勝ち誇ったように笑った。立派な鎧を着た、あの見覚えあるリーダー兵士だ。

「私たちを見くびるなよ!貴様の能力はすでに対策済みだ!」

「なんだと?どういう意味だ!」

「ふはは。貴様の醜悪なネクロマンスは、邪悪がゆえに確かに強力だ。なにせ死を恐れぬ不死身の軍団を生み出せる能力だからな。まともに相手をしていたのでは、暖かな血の通った我らは苦戦を強いられるのも必至。が!それは屍に限った話だ!」

リーダー兵士はビシィ!と俺を指さした。

「死霊の傀儡を操る貴様!術者本人は、ただの人間に過ぎないということを!我々が見逃しているとでも思ったのか!」

む。その通り、それが俺の能力の弱点だ。フランと出会ったモンロービル村では、そこを突かれて危なくなったこともあった。

「死霊を少しでも自分から離してみろ。その瞬間、貴様自身を射抜いてやる!」

ち、今も弓矢で狙われているってことか。俺は視線を滑らせて、周囲の弓兵を探してみた。槍を構えた歩兵の後ろにはいない。なら、上か?思った通り、周囲の建物の屋根の上に、相当の数の弓兵がいた。伏兵だ。ちっ、あらかじめ兵を隠して忍ばせていたんだ。やられた、てっきり門だけだと思っていたな。

「……へー、そうかい。けど、忘れてやいないか?アンタたちは一度、俺を取り逃してるんだぜ?またあんた達をぶっ飛ばして、俺が逃げ出すことも考慮に入れるべきだ」

「なにぃ……?」

「ちょ、桜下さん!?」

不敵にわらった俺を見て、ウィルがすっとんきょうな声を上げる。リーダー兵士は、怒りに顔をゆがませた。

「貴様、我らを馬鹿にするか!そんなことが可能か、その身で確かめるがい、い!?」

い?リーダー兵士の声が急に裏返った。あれ、挑発に乗ってくれたと思ったのに。

「な、なにをするヘイズ!」

ヘイズと呼ばれた切れ目の兵士が、リーダー兵士の肩をつかんで後ろに引っ張っていた。

「エドガー隊長、そんな安い挑発に乗らないでください。奴の思うつぼですよ」

「な、なにぃ?」

「考えてもみてください。オレたちがここで突っ込む意味はないでしょ」

「むっ……た、確かにそうだな。危ないところだった」

リーダー兵士はうむ、とうなずくと、改めてこちらに向き直った。こいつの名前はエドガーっていうのか?

「ふははは、その手には乗らんぞ。私たちはお前を釘づけにしているだけでよいのだ。そのうちに全兵士がここに集まり、お前は逃げたくても逃げられなくなるのだからな」

く……バレたか。ここで勇み足になって突っ込んできてくれれば、返り討ちにできたのにな。混戦状態では矢も撃ち込めないだろうし

(けど、結構ヤバイな状況だな)

今は相手の数はそこそこだが、大軍と合流されてしまうとそうもいかなくなる。いくら百人力のフランとエラゼムだって、千に囲まれたらどうしようもないだろう。相手が千人もいるのかはわからないけど……

(あの切れ目のヤロウ、厄介だな。アイツがいなきゃ、うまくいってたのに……)

しかし、ぼやいてもしょうがない。仲間と合流される前に、この場を切り抜けなくては。


つづく
====================

読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

====================

Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。

↓ ↓ ↓

https://twitter.com/ragoradonma
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...