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5章 幸せの形
14-2
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14-2
「……ああ。わかったよ」
俺は虚空に向かってつぶやくと、ライラのそばにかがんだ。
「ライラ。俺たちと、いっしょに行かないか?」
「……」
「俺たちがお前を幸せにしてやれるかどうかは分からない。俺たちは、ほら、けっこう恨まれやすいタチみたいだからさ。だけど、お前と一緒にいて、お前の幸せを見つける手伝いならできるかもしれない」
「……」
「お前さえ良ければ、俺たちは歓迎するぜ。一人ぼっちじゃ寂しいのは、俺たちもいっしょなんだ」
「……わかった」
ライラはぐしぐしと両手で目をこすると、すくっと立ち上がった。そしてぶすっとした顔で、かがんだ俺を見下した。
「仕方ないから、大まほーつかいのライラさまが、いっしょに行ってあげる」
「へへ、そりゃ頼もしい。よろしくな」
俺が手を差し出すと、ライラもその手を握り返した。ライラの小さな、黒い手は、まるで死人のように冷たく、だが確かに命が脈打っていた。
「ライラぁ、まだなのかぁ?」
「もうちょっとだよ。この谷を越えたらすぐのところ」
「ひぃー、まだけっこうあるじゃんか……」
俺は額の汗をぬぐってから、また山道を歩き出した。俺たちは今、ライラの案内のもと、あるところへ向かっている。なんでも、ライラがこの五年間すみかにしていた洞穴があるとのことで、旅立つ前にそこにおいてある物を持っていきたいそうなのだ。しかし、夜の山の歩きにくいことと言ったら……慣れているライラはひょいひょい進むが、こっちにとっては重労働だ。フランがまたおんぶしようかと提案してくれたが、丁重に断った。今夜は激しい戦闘が続いたし、“ファズ”で治したとはいえ、あまり負担を掛けたくなかったのだ。
「ついた!ここだよ」
それから谷一つ越えた崖のふもとに、ライラのすみかはあった。小さな穴ぐらで、中には落ち葉が適当に敷かれているだけだ。こんなところで、よく五年も……
「それで、ライラが持っていきたいものって、なんだ?あんまり大きなものだと……」
「そんなんじゃないよ。ほら、これ」
そう言ってライラが見せたのは、一冊のぶ厚い本だった。ずいぶん古ぼけていて、端っこがあちこち傷んでいる。
「これ、ライラのまほーの教科書なんだ。前に住んでたところから引っ越すときに、これだけ持ってきたの」
前に住んでたところ……ライラの記憶で見た、あの薄暗い書架か。あの中の一冊ってことだな。けどそれより気になるのは、あの書架らしきところに、ライラが監禁されていた、らしいことだ……まだまだ、ライラには謎が多くありそうだな。
「ライラさん、そんな大きな本、重くありませんか?」
ウィルが心配そうに言う。本は厚紙の表紙で綴じられていて、下手するとライラの顔よりでかそうだ。ライラが持つと、ちょっとした盾のようにも見える。
「そうだ!ライラさん、それはエラゼムさんの荷物に入れてもらいましょうよ。それをずっと持ち歩くのは大変でしょう?」
「……エラ、ゼム?」
「ええ。ほら、あちらの鎧の騎士さまです」
ウィルがエラゼムを手で指し示す。そのとたん、ライラは猫のように飛び跳ね、敵意をあらわにフーッとうなった。
「ら、ライラさん?」
「だって、そいつ、ライラのこといじめたんだよ!」
「あ、あの時はしょうがなかったじゃないですか。不可抗力ですよ」
「ふか……?わけわかんないこと言って、ライラ、だまされないからね!」
ウィルが言い返そうとすると、エラゼムがやんわりとそれを制した。
「ウィル嬢、彼女の言う通りです。知らぬこととはいえ、吾輩が敵意を持って彼女に接したのは事実。何を言っても、そのことは変わりありませぬ」
「で、ですが……」
「わだかまりというものは、言葉で解決してもしようがないものですから。ゆっくりと時間をかけなければ、真なる信頼は生まれますまい。ウィル嬢のお気持ちはありがたいですが、今はそのままで」
「……わ、わかりましたよぅ」
ウィルは納得がいっていない様子だったが、ひとまずこの場はあきらめたみたいだ。ライラとエラゼムは、仲良くなるのに時間がかかりそうだなぁ。それはあの場にいた俺の責任でもあるだろうし、機会を見つけて、ライラの誤解を解いてやらないと。
「でも、ライラさん。それはそれとしても、そんな重いものを持って山道は歩けないでしょう?危険ですよ」
「う……」
ライラは本を抱きかかえて、視線をさまよわせる。見てられなくて、俺はライラに声をかけた。
「じゃあさ、俺のカバンに入れようか」
「え?」「桜下さん?」
「その本一冊くらいなら、まあ俺でもなんとかなるだろ。まだカバンにもギリギリ空きがあるし」
「いいの?」
ライラが本をぎゅっと抱きしめ、上目遣いで俺を見上げる。
「ああ。けど、いつか俺のカバンもいっぱいになるかもしれないぞ。それまでには、エラゼムのこと、許してやれよな」
「……わかった」
ライラはぼそりとうなずいた。あんなことがあったけど、根は素直な子どもなんだ。俺はライラからぶ厚い本を受け取り、それを肩にかけたカバンにしまった。うわ、重っ!ちょ、ちょっと後悔したかも……
「あら?ライラさん、それは?」
ウィルがライラの手元をのぞき込んでいる。ライラは、きれいな色の布を握りしめていた。体に巻いているぼろマントとは、明らかに質が違うものだ。
「きれいな布ですね……ショール、ですか?」
「うん……おかーさんが、ライラにくれたの。ライラとおんなじ名前のお花で染めたのよって……」
あ……じゃあ、あれはお母さんの遺品か。そのショールは水色からピンク、そして藤色へと美しいグラデーションで染められていて、ところどころに小さな花の模様が入っていた。
「そう、だったんですか……それじゃあ、大切なものなんですね。それも、桜下さんに持っててもらいますか?」
「ううん。これは、ライラが持ってたい」
「ですか。でも、手に持ってるのもなんですし、肩だとマントがあるし……あ、そうだ。ライラさん、そのショール、少し貸してもらえます?」
ライラは素直にうなずくと、ショールをウィルの手に渡した。ウィルはそれを、ライラの細い腰にきゅっと巻き付けた。
「はい、できた。これならどうですか?桜下さん、かわいいですよね?」
な、なぜ俺に振る。しかもものすごい圧を感じるぞ……俺は見えないウィルの手に動かされるように、ただこっくりと首を縦に振った。
「……!えへへ、ありがとう、おねーちゃん」
「はい、どういたしまして」
ライラがにっこり笑うと、ウィルも優しく微笑んだ。へー、意外な一面を見たな、ウィルが子どもの相手が得意だったなんて……
「さてと……ライラ、持ってく物はそれで全部か?」
「うん。もう大丈夫」
「よし。それじゃもうひと踏ん張りして、今夜のうちに山を下りちゃうか……」
俺が気合を入れようとしたとたん、足からかくんと力が抜けて、思わずよろけてしまった。エラゼムがさっと背中を押さえてくれたが、彼はこれを見逃さなかった。
「桜下殿、今夜はここで休みましょう。連日戦闘続きで、だいぶお疲れとお見受けしました」
「でも、あんなことがあったばかりだし……」
「少なくとも、先の墓場からはある程度遠ざかりました。疲れを抱えて山を往くのは危険です。今夜はここで過ごし、明日の早朝に山を下ることにいたしましょう」
そういえば、本当ならサイレン村で一晩過ごして、朝一番に山を下りるって計画だったっけ……いろいろあって狂っちゃったけど、確かに正直くたびれた。
「わかったよ、そうしよう。ライラ、お前の穴ぐらを借りてもいいか?」
「うん……それに、ライラも、なんだか……」
「え?ら、ライラ?」
ライラはぼーっと立っているが、体がふらふら揺れている。
「おいライラ、大丈夫かよ?」
「つか、れた……」
ライラの体がふらりと倒れた。俺は慌てて手を伸ばし、ライラの体を受け止める。
「おい、ライラ!どうしたんだ!?」
「ライラさん!?」
俺とウィルは血相を変えたが、そこにフランが、落ち着いた声で待ったを掛けた。
「そんなに騒ぐことないよ。この子、寝てるだけだ」
「え……?ね、寝てる?」
俺とウィルはライラの顔を覗き込む。確かにライラは、すぅすぅと寝息を立てていた。
「なんだ、びっくりしたぜ……」
「ライラさん、今日は大活躍でしたものね。きっと疲れ切ったんですよ」
「ああ……にしても、眠るアンデッドか。つくづく規格外だな」
俺はライラの寝顔を見下ろした。生きたまま、アンデッドになった女の子。いくら同じアンデッドとはいえ、フランたちとは違った扱いが必要そうだ。俺はライラを落ち葉の上に寝かせると、自分のマントを取り出して上にかけてやった。
「桜下さん……ライラさんのこと、なんですけど。その、ライラさんがこうなった理由って……」
ウィルが慎重に、言葉を選ぶように口を開く。俺はうなずいて、あぐらをかいて座った。
「うん。みんなにも話しておこうと思ったんだ、ライラに起こったことについて。本人が聞いてないところで言うのも、どうかと思ったんだけど……あれをライラにもう一度説明させるのも、酷だと思うから」
ウィルがごくりと唾をのむのが聞こえた。フランとエラゼムも、俺のそばに腰を下ろす。今日はいろいろあって疲れたから、楽にしながら話させてもらおう。あまり楽しい話題じゃないのが残念だ。
「まず、ライラが昔、暮らしていたところからなんだけど……」
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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俺は虚空に向かってつぶやくと、ライラのそばにかがんだ。
「ライラ。俺たちと、いっしょに行かないか?」
「……」
「俺たちがお前を幸せにしてやれるかどうかは分からない。俺たちは、ほら、けっこう恨まれやすいタチみたいだからさ。だけど、お前と一緒にいて、お前の幸せを見つける手伝いならできるかもしれない」
「……」
「お前さえ良ければ、俺たちは歓迎するぜ。一人ぼっちじゃ寂しいのは、俺たちもいっしょなんだ」
「……わかった」
ライラはぐしぐしと両手で目をこすると、すくっと立ち上がった。そしてぶすっとした顔で、かがんだ俺を見下した。
「仕方ないから、大まほーつかいのライラさまが、いっしょに行ってあげる」
「へへ、そりゃ頼もしい。よろしくな」
俺が手を差し出すと、ライラもその手を握り返した。ライラの小さな、黒い手は、まるで死人のように冷たく、だが確かに命が脈打っていた。
「ライラぁ、まだなのかぁ?」
「もうちょっとだよ。この谷を越えたらすぐのところ」
「ひぃー、まだけっこうあるじゃんか……」
俺は額の汗をぬぐってから、また山道を歩き出した。俺たちは今、ライラの案内のもと、あるところへ向かっている。なんでも、ライラがこの五年間すみかにしていた洞穴があるとのことで、旅立つ前にそこにおいてある物を持っていきたいそうなのだ。しかし、夜の山の歩きにくいことと言ったら……慣れているライラはひょいひょい進むが、こっちにとっては重労働だ。フランがまたおんぶしようかと提案してくれたが、丁重に断った。今夜は激しい戦闘が続いたし、“ファズ”で治したとはいえ、あまり負担を掛けたくなかったのだ。
「ついた!ここだよ」
それから谷一つ越えた崖のふもとに、ライラのすみかはあった。小さな穴ぐらで、中には落ち葉が適当に敷かれているだけだ。こんなところで、よく五年も……
「それで、ライラが持っていきたいものって、なんだ?あんまり大きなものだと……」
「そんなんじゃないよ。ほら、これ」
そう言ってライラが見せたのは、一冊のぶ厚い本だった。ずいぶん古ぼけていて、端っこがあちこち傷んでいる。
「これ、ライラのまほーの教科書なんだ。前に住んでたところから引っ越すときに、これだけ持ってきたの」
前に住んでたところ……ライラの記憶で見た、あの薄暗い書架か。あの中の一冊ってことだな。けどそれより気になるのは、あの書架らしきところに、ライラが監禁されていた、らしいことだ……まだまだ、ライラには謎が多くありそうだな。
「ライラさん、そんな大きな本、重くありませんか?」
ウィルが心配そうに言う。本は厚紙の表紙で綴じられていて、下手するとライラの顔よりでかそうだ。ライラが持つと、ちょっとした盾のようにも見える。
「そうだ!ライラさん、それはエラゼムさんの荷物に入れてもらいましょうよ。それをずっと持ち歩くのは大変でしょう?」
「……エラ、ゼム?」
「ええ。ほら、あちらの鎧の騎士さまです」
ウィルがエラゼムを手で指し示す。そのとたん、ライラは猫のように飛び跳ね、敵意をあらわにフーッとうなった。
「ら、ライラさん?」
「だって、そいつ、ライラのこといじめたんだよ!」
「あ、あの時はしょうがなかったじゃないですか。不可抗力ですよ」
「ふか……?わけわかんないこと言って、ライラ、だまされないからね!」
ウィルが言い返そうとすると、エラゼムがやんわりとそれを制した。
「ウィル嬢、彼女の言う通りです。知らぬこととはいえ、吾輩が敵意を持って彼女に接したのは事実。何を言っても、そのことは変わりありませぬ」
「で、ですが……」
「わだかまりというものは、言葉で解決してもしようがないものですから。ゆっくりと時間をかけなければ、真なる信頼は生まれますまい。ウィル嬢のお気持ちはありがたいですが、今はそのままで」
「……わ、わかりましたよぅ」
ウィルは納得がいっていない様子だったが、ひとまずこの場はあきらめたみたいだ。ライラとエラゼムは、仲良くなるのに時間がかかりそうだなぁ。それはあの場にいた俺の責任でもあるだろうし、機会を見つけて、ライラの誤解を解いてやらないと。
「でも、ライラさん。それはそれとしても、そんな重いものを持って山道は歩けないでしょう?危険ですよ」
「う……」
ライラは本を抱きかかえて、視線をさまよわせる。見てられなくて、俺はライラに声をかけた。
「じゃあさ、俺のカバンに入れようか」
「え?」「桜下さん?」
「その本一冊くらいなら、まあ俺でもなんとかなるだろ。まだカバンにもギリギリ空きがあるし」
「いいの?」
ライラが本をぎゅっと抱きしめ、上目遣いで俺を見上げる。
「ああ。けど、いつか俺のカバンもいっぱいになるかもしれないぞ。それまでには、エラゼムのこと、許してやれよな」
「……わかった」
ライラはぼそりとうなずいた。あんなことがあったけど、根は素直な子どもなんだ。俺はライラからぶ厚い本を受け取り、それを肩にかけたカバンにしまった。うわ、重っ!ちょ、ちょっと後悔したかも……
「あら?ライラさん、それは?」
ウィルがライラの手元をのぞき込んでいる。ライラは、きれいな色の布を握りしめていた。体に巻いているぼろマントとは、明らかに質が違うものだ。
「きれいな布ですね……ショール、ですか?」
「うん……おかーさんが、ライラにくれたの。ライラとおんなじ名前のお花で染めたのよって……」
あ……じゃあ、あれはお母さんの遺品か。そのショールは水色からピンク、そして藤色へと美しいグラデーションで染められていて、ところどころに小さな花の模様が入っていた。
「そう、だったんですか……それじゃあ、大切なものなんですね。それも、桜下さんに持っててもらいますか?」
「ううん。これは、ライラが持ってたい」
「ですか。でも、手に持ってるのもなんですし、肩だとマントがあるし……あ、そうだ。ライラさん、そのショール、少し貸してもらえます?」
ライラは素直にうなずくと、ショールをウィルの手に渡した。ウィルはそれを、ライラの細い腰にきゅっと巻き付けた。
「はい、できた。これならどうですか?桜下さん、かわいいですよね?」
な、なぜ俺に振る。しかもものすごい圧を感じるぞ……俺は見えないウィルの手に動かされるように、ただこっくりと首を縦に振った。
「……!えへへ、ありがとう、おねーちゃん」
「はい、どういたしまして」
ライラがにっこり笑うと、ウィルも優しく微笑んだ。へー、意外な一面を見たな、ウィルが子どもの相手が得意だったなんて……
「さてと……ライラ、持ってく物はそれで全部か?」
「うん。もう大丈夫」
「よし。それじゃもうひと踏ん張りして、今夜のうちに山を下りちゃうか……」
俺が気合を入れようとしたとたん、足からかくんと力が抜けて、思わずよろけてしまった。エラゼムがさっと背中を押さえてくれたが、彼はこれを見逃さなかった。
「桜下殿、今夜はここで休みましょう。連日戦闘続きで、だいぶお疲れとお見受けしました」
「でも、あんなことがあったばかりだし……」
「少なくとも、先の墓場からはある程度遠ざかりました。疲れを抱えて山を往くのは危険です。今夜はここで過ごし、明日の早朝に山を下ることにいたしましょう」
そういえば、本当ならサイレン村で一晩過ごして、朝一番に山を下りるって計画だったっけ……いろいろあって狂っちゃったけど、確かに正直くたびれた。
「わかったよ、そうしよう。ライラ、お前の穴ぐらを借りてもいいか?」
「うん……それに、ライラも、なんだか……」
「え?ら、ライラ?」
ライラはぼーっと立っているが、体がふらふら揺れている。
「おいライラ、大丈夫かよ?」
「つか、れた……」
ライラの体がふらりと倒れた。俺は慌てて手を伸ばし、ライラの体を受け止める。
「おい、ライラ!どうしたんだ!?」
「ライラさん!?」
俺とウィルは血相を変えたが、そこにフランが、落ち着いた声で待ったを掛けた。
「そんなに騒ぐことないよ。この子、寝てるだけだ」
「え……?ね、寝てる?」
俺とウィルはライラの顔を覗き込む。確かにライラは、すぅすぅと寝息を立てていた。
「なんだ、びっくりしたぜ……」
「ライラさん、今日は大活躍でしたものね。きっと疲れ切ったんですよ」
「ああ……にしても、眠るアンデッドか。つくづく規格外だな」
俺はライラの寝顔を見下ろした。生きたまま、アンデッドになった女の子。いくら同じアンデッドとはいえ、フランたちとは違った扱いが必要そうだ。俺はライラを落ち葉の上に寝かせると、自分のマントを取り出して上にかけてやった。
「桜下さん……ライラさんのこと、なんですけど。その、ライラさんがこうなった理由って……」
ウィルが慎重に、言葉を選ぶように口を開く。俺はうなずいて、あぐらをかいて座った。
「うん。みんなにも話しておこうと思ったんだ、ライラに起こったことについて。本人が聞いてないところで言うのも、どうかと思ったんだけど……あれをライラにもう一度説明させるのも、酷だと思うから」
ウィルがごくりと唾をのむのが聞こえた。フランとエラゼムも、俺のそばに腰を下ろす。今日はいろいろあって疲れたから、楽にしながら話させてもらおう。あまり楽しい話題じゃないのが残念だ。
「まず、ライラが昔、暮らしていたところからなんだけど……」
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