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8章 重なる魂
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その後も、ライラはフランの髪をいじくりまわして遊んでいた。ツインテールにしてみたり、まとめてお団子にしてみたり……フランの髪は長くて癖がほとんどないので、ヘアアレンジには向いているらしい。俺はその度に感想を求められ、ボキャブラリーに乏しい俺はほぼ「似合ってる」しか言えなかった……女の子への褒め言葉って、なんて言えばいいんだ?ただ、そんな拙い言葉でも、フランはまんざらでもなさそうだった。
結局最後にはウィルも加わって、ライラの髪もいじる流れになった。くせっけを編み込んで三つ編みのおさげにしてやると、ライラはたいそう喜んではしゃいでいた。髪を結ってもらったのは、お母さんが生きていた頃以来だったそうだ。
さて、ところで……
「……」
女子たちが楽しげにはしゃぐかたわら、一人この世の終わりに取り残されたような空気を纏っている人物がいる。ぼろぼろのマントを体に巻き付け、口には黒いマスク。病的に白い肌の上に、墨のような黒髪をバラバラと散らした女……ヴァンパイア・アルルカだった。
こいつは今現在唯一、俺が強制的に従えているアンデッドだ。セイラムロットで残虐な行為を好き放題やらかしていた彼女を、俺たちはボコボコに懲悪した。そして二度と悪さができないよう、俺がネクロマンスの能力で服従させたのだ。いままでの仲間とは違い、無理やり俺に従わせていることが、アルルカが一向に心を開かない理由だった。
(……まあ、無理もないだろうけど)
出会いが最悪だったからな。いきなり打ち解けるのは、アルルカも、そして俺たちも無理だろう。しかし一方で、いずれはこいつとも、仲直りしたいとも思っているんだけどな。
アルルカは、まごうことなく凶悪なモンスターだ。こいつには、人を思いやる心ってもんが決定的に欠如している。だけど思いやりを知り、そして道徳を学べば、善良なモンスター……いや、善良な人間になれるかもしれない。ぶっちゃけ、当面は難しいとは思うけれど。だが俺が身柄を預かった以上、彼女を更生させることが、ネクロマンサーとしての責任だとも思っていた。
「……」
とはいえこの数日間、アルルカは一っ言も口をきいていない。彼女の所業を知っている仲間たちも、積極的に話しかけることはなく……おかげで俺はアルルカの声を忘れてしまいそうだった。ひょっとして、この先もずっとだんまりで過ごしていくつもりなんだろうか?うーん、それはそれで空気が悪くて嫌だなぁ。
俺がそんなことを考えていた時だった。
どさ。
「うん?」
何かが倒れた音がしたぞ。髪をいじり合っていたウィル、フラン、ライラもきょとんとした顔をしている。まさか、エラゼム?いや、彼も何事かと視線をさまよわせていた。じゃあ、一体何が倒れたんだ?
「あ」
見つけた。黒いマントのせいで闇夜に同化していたが、アルルカが仰向けに地面に横たわっている。なにしているんだ?アンデッドは眠らないはずだけど……
「アルルカ?なにやって……」
「無理」
へ?
「無理無理むりむりムリムリむりぃぃぃぃ~~~~~~!」
うわっ。アルルカがじたばたと、それこそ駄々っ子のように暴れ始めた……マントの留め金が外れ、やたらと露出度の高い格好が丸出しになる。体つきは大人びているのに、やっていることは子どもそのものであって……フランたちがドン引きしている。
「もぉやだぁぁぁぁああ!うわああぁぁぁぁあぁあん!辛いよおおぉぉぉ!いっそ殺してよおおぉぉぉおお!」
「あ、アルルカ……?」
俺は恐る恐る声をかけるが、アルルカは本格的に声を上げて泣き始めてしまった。
「わああぁぁぁぁ。ひっく、ひっく。我慢できないよおぉぉぉ。血が飲みたいよおぉぉぉ!」
「血?お前、まだそんな……」
「うぅ、ひっく、ひっく。ぅぅ、うるさいバーカ!お前に分かるもんか!きっ、きっ、吸血鬼にとって、ち、ち、血は、何よりも楽しみなご馳走なのに……それなのに……うわああぁぁぁぁあぁあん!つらいよぉ、くるしいよぉ~~~!」
アルルカは髪を振り乱し、土がつくのもお構いなしに転げまわっている。うわぁ……
すると首から下がるアニが、思い出したようにリィンと揺れた。
『ああ、そう言われれば。ヴァンパイアにとって、吸血衝動は切っても切り離せないものでしたね』
「アニ?どういうことだ?」
『なんでしょう、摂理、とでもいいましょうか。人間が、腹が減れば食べ、疲れれば眠るように、ヴァンパイアは人間の血を吸うことを本能としているのです』
本能……俺はじたじたと駄々をこねるアルルカを見下ろした。吸血が人間でいう食事と同じなんだとしたら、これだけ取り乱すのもうなずける……のかもしれない。
『ヴァンパイアの欲求は、人間のそれほど頻繁ではありませんが、誘惑の強さはその比ではないといわれています。月に一度ピークがおとずれ、その波はおおむね月齢と一致するのだとか』
「あぁ~……そういやこの前の満月で、本当ならアルルカは、リンの血をありったけ吸い尽くしていたはずなんだもんな。そりゃ欲求不満にもなるか」
『多量ではないにしても、月に一度は必ず吸血を行っていたようですしね。やはりヴァンパイアにとって血は、これほど無様な姿をさらしてでも必要なものなのでしょう』
無様って……しかし言い得て妙だな、まったく。
「けど、それはさすがに酷だな。食事抜きってことだろ、今のアルルカは?」
『まあ、そうですね。まだ月は太いままですし、そうとう欲求が溜まっているのでしょう』
「けど、だからってこいつを自由にするわけにもなぁ……」
『でしたら、その辺の獣で代用すれば?人間とは違うでしょうが、血にかわりはないでしょう』
なるほど、そういうのもありか。
「あ~、アルルカ?お前の事情は分かった。そうとうしんどいんだな?」
俺が腰をかがめて話しかけると、アルルカは転がるのをやめて、コクリとうなずいた。
「でも、お前に人を襲わせるわけにはいかないから。動物の血で我慢できるか?」
「…………うわあぁぁぁぁん!」
アルルカは体を丸めて、今度はダンゴムシのようになってしまった。
「あだじに、獣の血を啜れっていうの?ひっく、ひっく。うえぇぇぇぇぇん。とんだ、とんだ辱めだわ!そんなみ、みじめな目に合うくらいなら、いっそ死んだほうがマシよぉぉぉぉぉ」
う~ん、困ったな。お気に召さないみたいだ。まあけど、そんなもんかもしれない。味は似たようなものだからと、鶏肉や豚肉の代わりにヘビやカエルを出されたら、俺でも嫌だしなぁ。俺がどうしたもんかと頬をぽりぽりかいていると、いらだった様子のフランが俺のそばにやってきた。
「……どうしても必要なら、わたしの血を吸わせる?」
「フラン?でも……」
「いいよ。それでこの痴女が黙るんだったら、安いから」
こ、今度は痴女かよ……確かにゾンビであるフランなら、多少血を抜かれても平気なのかもしれないが。しかし俺たちの話を聞いていたのか、アルルカはむくりと体を起こすと、涙と鼻水でぐしょぐしょの顔を横に振った。
「い、い、いやよ。そいつの血、まずいもん……」
ビキッ。あ、フランの中から何かが切れた音がした。俺はすばやくフランのわきに手を突っ込むと、今にも爪を抜いて襲い掛からんとする彼女を羽交い締めにする。
「お、お、落ち着けフラン」
「は、な、し、て!そいつ、一発どつくから……!」
「気持ちはわかるが、今はこらえてくれってば。それに、俺も反対なんだ」
「え?」
フランはきょとんとすると、体の力を抜いた。ふぅ、馬鹿力のフランを抑えるのは大変なんだ。
「確かにフランは、血を抜かれても平気かもしれないけど、それにも限度があるだろ?ゾンビの体はたぶん、新しく血を作るってことはしないんじゃないか?」
「……まあ、そうかもね。もう死んでるんだし」
「だろ?それじゃあ結局、その場しのぎにしかならないじゃないか。フランがカラカラに干からびちゃうのもやだし」
「でも、じゃあどうするの?このバカ女を簀巻きにしておとなしくさせるとか?」
「いや、それもさすがに……じゃなくて、もうこうなったらこれしかないだろ」
俺は改めて屈みこむと、ぐすぐすとべそをかくアルルカと目線を合わせた。
「アルルカ。俺の血を吸わせてやるよ」
「へ」
「はぁ!?」
キョトンとするアルルカと、後ろで叫ぶフラン。
「ちょっと、こいつにあなたの血を吸わせるって、本気!?」
「だって、そうするしかないじゃんか。どうしたって人間の血が必要なんだったら、俺たちの中で真人間は俺しかいないんだ。ほかの人をその都度引きずってくるわけにもいかないよ」
「じゃなくて、そんなことしたらあなたが……」
「もちろん、全部の血をやるわけじゃないさ。思い出してみろよ、リンは毎月毎月、儀式だっていわれて血を吸われてたんだ。それでも元気にしていたってことは、一度の吸血量を、命に別状がない程度に抑えることができるってことだろ。なあ、アルルカ?」
俺は改めて、アルルカの目を覗き込んだ。アルルカはずびーっと鼻をすすっている。
「取引だ。一か月に一度だけ、俺の健康を害さない量だけなら、血をやるよ」
「……いいの?」
「ただし、その代りほかの人間を襲うだとか、俺を殺そうとするのはナシだ。一度でも約束を破ったら、もう二度と血はやらない。この条件を守れるなら、だけどな。どうだ?」
アルルカはぽかんとしていて、俺の言っていることを理解しているの怪しかったが、やがてたどたどしくうなずいた。
「……わか、った」
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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その後も、ライラはフランの髪をいじくりまわして遊んでいた。ツインテールにしてみたり、まとめてお団子にしてみたり……フランの髪は長くて癖がほとんどないので、ヘアアレンジには向いているらしい。俺はその度に感想を求められ、ボキャブラリーに乏しい俺はほぼ「似合ってる」しか言えなかった……女の子への褒め言葉って、なんて言えばいいんだ?ただ、そんな拙い言葉でも、フランはまんざらでもなさそうだった。
結局最後にはウィルも加わって、ライラの髪もいじる流れになった。くせっけを編み込んで三つ編みのおさげにしてやると、ライラはたいそう喜んではしゃいでいた。髪を結ってもらったのは、お母さんが生きていた頃以来だったそうだ。
さて、ところで……
「……」
女子たちが楽しげにはしゃぐかたわら、一人この世の終わりに取り残されたような空気を纏っている人物がいる。ぼろぼろのマントを体に巻き付け、口には黒いマスク。病的に白い肌の上に、墨のような黒髪をバラバラと散らした女……ヴァンパイア・アルルカだった。
こいつは今現在唯一、俺が強制的に従えているアンデッドだ。セイラムロットで残虐な行為を好き放題やらかしていた彼女を、俺たちはボコボコに懲悪した。そして二度と悪さができないよう、俺がネクロマンスの能力で服従させたのだ。いままでの仲間とは違い、無理やり俺に従わせていることが、アルルカが一向に心を開かない理由だった。
(……まあ、無理もないだろうけど)
出会いが最悪だったからな。いきなり打ち解けるのは、アルルカも、そして俺たちも無理だろう。しかし一方で、いずれはこいつとも、仲直りしたいとも思っているんだけどな。
アルルカは、まごうことなく凶悪なモンスターだ。こいつには、人を思いやる心ってもんが決定的に欠如している。だけど思いやりを知り、そして道徳を学べば、善良なモンスター……いや、善良な人間になれるかもしれない。ぶっちゃけ、当面は難しいとは思うけれど。だが俺が身柄を預かった以上、彼女を更生させることが、ネクロマンサーとしての責任だとも思っていた。
「……」
とはいえこの数日間、アルルカは一っ言も口をきいていない。彼女の所業を知っている仲間たちも、積極的に話しかけることはなく……おかげで俺はアルルカの声を忘れてしまいそうだった。ひょっとして、この先もずっとだんまりで過ごしていくつもりなんだろうか?うーん、それはそれで空気が悪くて嫌だなぁ。
俺がそんなことを考えていた時だった。
どさ。
「うん?」
何かが倒れた音がしたぞ。髪をいじり合っていたウィル、フラン、ライラもきょとんとした顔をしている。まさか、エラゼム?いや、彼も何事かと視線をさまよわせていた。じゃあ、一体何が倒れたんだ?
「あ」
見つけた。黒いマントのせいで闇夜に同化していたが、アルルカが仰向けに地面に横たわっている。なにしているんだ?アンデッドは眠らないはずだけど……
「アルルカ?なにやって……」
「無理」
へ?
「無理無理むりむりムリムリむりぃぃぃぃ~~~~~~!」
うわっ。アルルカがじたばたと、それこそ駄々っ子のように暴れ始めた……マントの留め金が外れ、やたらと露出度の高い格好が丸出しになる。体つきは大人びているのに、やっていることは子どもそのものであって……フランたちがドン引きしている。
「もぉやだぁぁぁぁああ!うわああぁぁぁぁあぁあん!辛いよおおぉぉぉ!いっそ殺してよおおぉぉぉおお!」
「あ、アルルカ……?」
俺は恐る恐る声をかけるが、アルルカは本格的に声を上げて泣き始めてしまった。
「わああぁぁぁぁ。ひっく、ひっく。我慢できないよおぉぉぉ。血が飲みたいよおぉぉぉ!」
「血?お前、まだそんな……」
「うぅ、ひっく、ひっく。ぅぅ、うるさいバーカ!お前に分かるもんか!きっ、きっ、吸血鬼にとって、ち、ち、血は、何よりも楽しみなご馳走なのに……それなのに……うわああぁぁぁぁあぁあん!つらいよぉ、くるしいよぉ~~~!」
アルルカは髪を振り乱し、土がつくのもお構いなしに転げまわっている。うわぁ……
すると首から下がるアニが、思い出したようにリィンと揺れた。
『ああ、そう言われれば。ヴァンパイアにとって、吸血衝動は切っても切り離せないものでしたね』
「アニ?どういうことだ?」
『なんでしょう、摂理、とでもいいましょうか。人間が、腹が減れば食べ、疲れれば眠るように、ヴァンパイアは人間の血を吸うことを本能としているのです』
本能……俺はじたじたと駄々をこねるアルルカを見下ろした。吸血が人間でいう食事と同じなんだとしたら、これだけ取り乱すのもうなずける……のかもしれない。
『ヴァンパイアの欲求は、人間のそれほど頻繁ではありませんが、誘惑の強さはその比ではないといわれています。月に一度ピークがおとずれ、その波はおおむね月齢と一致するのだとか』
「あぁ~……そういやこの前の満月で、本当ならアルルカは、リンの血をありったけ吸い尽くしていたはずなんだもんな。そりゃ欲求不満にもなるか」
『多量ではないにしても、月に一度は必ず吸血を行っていたようですしね。やはりヴァンパイアにとって血は、これほど無様な姿をさらしてでも必要なものなのでしょう』
無様って……しかし言い得て妙だな、まったく。
「けど、それはさすがに酷だな。食事抜きってことだろ、今のアルルカは?」
『まあ、そうですね。まだ月は太いままですし、そうとう欲求が溜まっているのでしょう』
「けど、だからってこいつを自由にするわけにもなぁ……」
『でしたら、その辺の獣で代用すれば?人間とは違うでしょうが、血にかわりはないでしょう』
なるほど、そういうのもありか。
「あ~、アルルカ?お前の事情は分かった。そうとうしんどいんだな?」
俺が腰をかがめて話しかけると、アルルカは転がるのをやめて、コクリとうなずいた。
「でも、お前に人を襲わせるわけにはいかないから。動物の血で我慢できるか?」
「…………うわあぁぁぁぁん!」
アルルカは体を丸めて、今度はダンゴムシのようになってしまった。
「あだじに、獣の血を啜れっていうの?ひっく、ひっく。うえぇぇぇぇぇん。とんだ、とんだ辱めだわ!そんなみ、みじめな目に合うくらいなら、いっそ死んだほうがマシよぉぉぉぉぉ」
う~ん、困ったな。お気に召さないみたいだ。まあけど、そんなもんかもしれない。味は似たようなものだからと、鶏肉や豚肉の代わりにヘビやカエルを出されたら、俺でも嫌だしなぁ。俺がどうしたもんかと頬をぽりぽりかいていると、いらだった様子のフランが俺のそばにやってきた。
「……どうしても必要なら、わたしの血を吸わせる?」
「フラン?でも……」
「いいよ。それでこの痴女が黙るんだったら、安いから」
こ、今度は痴女かよ……確かにゾンビであるフランなら、多少血を抜かれても平気なのかもしれないが。しかし俺たちの話を聞いていたのか、アルルカはむくりと体を起こすと、涙と鼻水でぐしょぐしょの顔を横に振った。
「い、い、いやよ。そいつの血、まずいもん……」
ビキッ。あ、フランの中から何かが切れた音がした。俺はすばやくフランのわきに手を突っ込むと、今にも爪を抜いて襲い掛からんとする彼女を羽交い締めにする。
「お、お、落ち着けフラン」
「は、な、し、て!そいつ、一発どつくから……!」
「気持ちはわかるが、今はこらえてくれってば。それに、俺も反対なんだ」
「え?」
フランはきょとんとすると、体の力を抜いた。ふぅ、馬鹿力のフランを抑えるのは大変なんだ。
「確かにフランは、血を抜かれても平気かもしれないけど、それにも限度があるだろ?ゾンビの体はたぶん、新しく血を作るってことはしないんじゃないか?」
「……まあ、そうかもね。もう死んでるんだし」
「だろ?それじゃあ結局、その場しのぎにしかならないじゃないか。フランがカラカラに干からびちゃうのもやだし」
「でも、じゃあどうするの?このバカ女を簀巻きにしておとなしくさせるとか?」
「いや、それもさすがに……じゃなくて、もうこうなったらこれしかないだろ」
俺は改めて屈みこむと、ぐすぐすとべそをかくアルルカと目線を合わせた。
「アルルカ。俺の血を吸わせてやるよ」
「へ」
「はぁ!?」
キョトンとするアルルカと、後ろで叫ぶフラン。
「ちょっと、こいつにあなたの血を吸わせるって、本気!?」
「だって、そうするしかないじゃんか。どうしたって人間の血が必要なんだったら、俺たちの中で真人間は俺しかいないんだ。ほかの人をその都度引きずってくるわけにもいかないよ」
「じゃなくて、そんなことしたらあなたが……」
「もちろん、全部の血をやるわけじゃないさ。思い出してみろよ、リンは毎月毎月、儀式だっていわれて血を吸われてたんだ。それでも元気にしていたってことは、一度の吸血量を、命に別状がない程度に抑えることができるってことだろ。なあ、アルルカ?」
俺は改めて、アルルカの目を覗き込んだ。アルルカはずびーっと鼻をすすっている。
「取引だ。一か月に一度だけ、俺の健康を害さない量だけなら、血をやるよ」
「……いいの?」
「ただし、その代りほかの人間を襲うだとか、俺を殺そうとするのはナシだ。一度でも約束を破ったら、もう二度と血はやらない。この条件を守れるなら、だけどな。どうだ?」
アルルカはぽかんとしていて、俺の言っていることを理解しているの怪しかったが、やがてたどたどしくうなずいた。
「……わか、った」
つづく
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