じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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9章 金色の朝

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結局、二人の勝敗はつかなかった。俺は二人をおすわりさせることで、不毛な争いに終止符を打った。
フランのビリビリになった服は、“ファズ”の呪文で元に戻すことができた。

「最初から、こうしとけばよかったんだよ……」

ライラを恨みがましそうに睨みながら、フランがぼやく。

「まぁ、こうして綺麗になったことだし、怪我の功名ってことで」

「代償が大きすぎるよ。ったく……」

フランはまだぶつぶつぼやいていたが、とりあえず溜飲は下がったみたいだった。

「さてと。服もきれいになったことだし、夜の準備をするか」

あたりはほとんど真っ暗になっていた。空の端っこに、わずかばかりの紫色が残っているが、それもじきに消えるだろう。かろうじて手元が見えているうちに、野営の支度をしなければ。

「桜下殿。薪でしたら、わずかですが集めておきました」

エラゼムが、片腕一抱えほどの枝を俺の前に置く。

「お、助かるよ。手持ちの燃料は、できるだけ節約したいから」

「ええ。ですが、この辺りは農耕には不向きなようです。あまり枝ぶりのいい木は見つかりませんで……」

「あー、確かに。こんなでっかい湖があるのに、木はほとんど生えてないもんな。土も白っぽいし」

「ここは地熱の活動が活発とのことでしたので、それが影響しているのやもしれませんな」

ふむ。火山活動とか、そんなのが関係でもしているのだろうか?かたや、この先の街道を進んだところには、豊かな麦畑の広がるワンパンの町がある。自然豊かだと聞いている二の国だが、町ごとの環境も十人十色のようだ。こうしてあちこちを旅していると、地域ごとの違いがわかってきて、ちょっと面白い。俺もこっちの世界について、少しは詳しくなってきたな。

「さて、火をたかないと。ウィル、頼んでいいか?」

「わかりました」

ウィルの得意な炎魔法で、薪の山に火を付けてもらう。細い枝がパチパチと音を立てて燃え始めた。

「桜下さん。ちょっと、相談というか、訊いてもいいですか?」

「うん?なんだ?」

焚き火のそばにかがんで、荷袋から食器を出すかたわら、ウィルがたずねてくる。

「この先って、どうするつもりなんですか?」

「どうって、メシ食って寝るつもりだけど……」

「ああいえ、そうではなく。この先の旅程について訊きたかったんです。北を目指すってことで、移動をしていましたよね」

「うん。なにか気になるのか?」

「ええ……あの、マスカレードのことです。なんだか、私たちの行程が、ぜんぶバレているような気がして。このままでいいのかなって……」

ああ、それは確かに……神出鬼没な奴は、いつも俺たちの行く手に先回りしている印象がある。

「そんな状態で、旅を続けても大丈夫なんでしょうか……」

「うぅん……けど、ならなおのこと、エラゼムの剣を早く直したほうがいいと思うんだよな。五体満足じゃないままでいるほうが、不安じゃないか?」

「それは、そうですが」

「それに、もし奴に俺たちの場所がわかってるんだとしたら、どこかに隠れても同じことだろ?」

「あっ。やだ、ほんとだ……」

ウィルはハッとしたように口を押えると、しゅんと肩を落とした。

「はぁ……ちょっと、ナーバスになってたみたいです。ごめんなさい」

「いや、気持ちはわかるよ。俺だって不気味だ」

ウィルの心配ももっともだ。しかし、どこかに隠れていれば事態が好転するというわけでも、またない。

「おねーちゃん、だいじょーぶ!またあいつが来たって、ライラがやっつけてあげるから!」

落ち込むウィルを見かねたのか、ライラが明るい笑顔で、ウィルの隣に座った。

「ライラさん……そうですよね。うん、安心しました」

「うん!」

「わたしも安心。大魔法使いはきっと、失敗を繰り返さないはずだから」

すかさずフランが嫌味を言うと、ライラは歯をむいて唸った。ウィルは二人をなだめる側に回ったことで、心配から気がそれたみたいだ。ウィルは心配しいだから、なにかと気苦労もかけているんだろうな。

(早いとこ、マスカレードの奴が捕まればいいんだけど)

闇の魔力をもち、マンティコアのような怪物を従え、国の転覆を謀る謎の男。野放しにしておくには、あまりにも危険だ。

(……ロアに相談してみるか)

このまま北に向かえば、王都を通ることになるだろう。王城に行くのはあまり気が進まないが、ロアに依頼された任務の報告もかねて、話をしてみてもいいかもしれない。ウィルはああ言ったけれど、心の奥底では不安なはずだ。それに、俺だって。

(……あいつとは、また会うことになる気がするんだよな……)

そんな予感がするのだ。



つづく
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長期休暇に、アンデッドとの冒険はいかがでしょうか。

読了ありがとうございました。

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