311 / 860
9章 金色の朝
3-3
しおりを挟む
3-3
お、オーガだって?
観客の何人かが悲鳴を上げた。俺だって同じ気分だ。目の前に現れた、俺の倍くらい背丈のありそうな怪物は、どう見ても鬼にしか見えなかった。その厳めしい顔つきを見て、俺は風神雷神の屏風絵を思い出した。
「観客のみなさま、ご安心ください!このオーガは、魔法によって生み出された虚像、幻にすぎません」
進行役の男が、騒ぐ観客を落ち着かせようとアナウンスする。な、なんだ。本物じゃないのか。俺はほっと胸をなでおろした。それなら、全然楽勝だな……
「しかし、チャレンジャーは油断なきよう。幻と言えど、このオーガにはある程度の実体があります。殴られれば痛いですし、蹴られればぶっ飛びますので、ご用心を」
「な、なに!」
それじゃあ実戦とほとんど変わらないじゃないか!
「このオーガを倒せれば、チャレンジャーの勝利!課題はクリアとなります。もしもダメそうでも、死ぬ前にこちらでオーガを止めますので、そこはご安心ください」
「おい!絶対安全なんじゃなかったのか!?」
「さぁさぁチャレンジャーは、卓越した魔法を駆使して、このオーガを見事倒してください!このドームは魔法を含むあらゆる衝撃を吸収しますので、思う存分ぶっかましてもらって構いませんよ。ま、できたらの話ですがね?それじゃ、スタート!」
「あ、おいってば!」
俺たちの了承も得ず、勝手に課題が始まってしまった。それと同時に、オーガが恐ろしい眼で、俺たちをぎょろりと睨む。
「グルルルル……」
「あ、あはは……どうぞお手柔らかに……」
「ギュララララララッ!」
うわぁ、とても話が通じそうにない!
「アルルカ、陽動!」
俺はそれだけ叫ぶと、ライラのわきに手を突っ込んで持ち上げ、死に物狂いで駆け出した。
「ギュララララララ!」
オーガは狂ったように叫びながら、ハンマーのような拳を振り下ろす。バゴーーン!
「ど、えぇ!?」
嘘だろ!オーガが殴った部分の敷石が、木っ端みじんになったぞ!ひ、広場の一部が砂利道になってしまった……
「や、やべえ。あんなの、指一本にでも触れたらアウトだ……」
あんなのにまともに殴られたら、確実に骨が粉々になってしまうだろう。冗談じゃ済まないぞ……!
オーガは俺たちとアルルカ、二手に分かれたどちらを追うか迷っているようだった。するとアルルカがマントの前を外し、ばさりと翼を広げた。
「ふん。図体だけはでかいようだけれど、空にまでついてこれるかしら?」
あ、なるほど。前にマスカレードに取った戦法と同じで、遠距離から狙撃する気なんだ。
……しかしアルルカは、ここがドームで覆われていることを失念していた。ゴチン!
「あいたぁ!」
アルルカはドームの天井にしこたま頭をぶつけてしまった。それを見た観客たちがどっと笑う。しかし、今はそんなのんきな場面じゃないぞ。オーガがアルルカを狙っている!
「アルルカ!危ないぞ!」
「え?」
オーガのパンチが、油断したアルルカの腹に直撃した。
バキッ!メキメキ!嫌な音を響かせ、アルルカの腰から上がちぎれ、飛んだ。観客から悲鳴が上がる。
「あ、アルルカーーーっ!」
「なによ、うるさいわね」
「ある、ぅえ?」
俺のすぐ隣に、腕組みしたアルルカが立っている。え、じゃあ真っ二つになったアルルカは……?ちぎれたアルルカの体は、地面に落ちてゴトンと転がった。ごとん?
「氷で人形を作る魔法よ。あたしは影になって、分身と入れ替わったの。あんたが陽動しろっていうからやってあげたんじゃない」
「あ、そ、そうだったな……」
び、びっくりした。さっきのは偽物か……転がったアルルカの分身は、すぐに透明な水になって溶けてしまった。
「で?こっからどうすんのよ」
「あ、ああ。いや、とりあえず気を引いてもらえれば、あとはライラの魔法でどうにかなるかと思ったんだけど……」
ライラの火力なら、いくらでっかいオーガといえどイチコロだろう。しかし、魔法の詠唱にはどうしたって時間がかかる。いつもはエラゼムが、その間防御をしてくれたが、今はそうもいかない……ならば、詠唱の時間がほとんどかからない、アルルカの魔法の出番だ。
「ライラ、何秒くらいあればやつを倒せそうだ?」
「……十秒。それだけあれば、きっと倒すよ」
「だそうだ。アルルカ、それだけ時間を稼げるか?」
「はっ。誰にものを言ってるの?なんだったら、十秒であいつを倒してあげるわよ!」
ばさ!アルルカが翼を広げ、今度はドームの天井にぶつからない程度の高さにとどまった。オーガのほうも騙されたと気づいたのか、再び空に舞い上がったアルルカを睨み付ける。
「さあ、いくわよ!スノウ・ウィロウ!」
ピシピシピシ!アルルカの手に握られた杖の先から、氷の鞭が生成される。アルルカは大きく体をそらすと、掛け声とともに鞭をしならせた。
「せいや!」
ビューン!鞭はオーガの手首に巻き付いたが、オーガは怪力の一捻りで、氷の鞭を粉々に砕いてしまった。破片が俺たちのほうにまで飛んでくる。
「うひゃ!アルルカ、気を付けろよ!」
「う、うっさいわね!ちゃんと避けなさいよ!」
俺たちがいがみ合っていると、再びオーガの拳がアルルカ目がけて飛んでくる。しかし今度は、アルルカもそれを読んでいた。横に羽ばたいてかわし、空中で体をひねると、杖の銃口をオーガへとむける。
「食らいなさい!メギバレット!」
ダァーン!撃ち出された弾丸は、オーガの右目を直撃した。うわ、すごい精密射撃だ。あんな体勢で……
「ギャルルゥ!」
オーガが右目を押さえて呻く。しかし、それくらいじゃオーガの幻影は消えない。もっと大きなダメージを与えないと……!
「ほら、今よ!」
アルルカがこちらに目配せする。すると、言われるまでもないとばかりに、ライラが呪文を叫んだ。
「マウルヴルフ!」
ライラが宙を掻くように手を動かす。すると、ゴゴーン!広場の敷石が吹っ飛び、オーガの足元にぽっかりと大穴が開いた。
「ギャララ!?」
オーガもさすがに驚いたようで、奇声を発して穴に落っこちた。しかし、俺の背丈の倍くらいある相手だ。大穴に落ちてなお、やつのたくましい上半身は穴からのぞいていた。
「ちょっと!ぜんぜん弱ってないわよ!」
穴から出ようともがくオーガを見て、アルルカが苛立ったように叫んだ。ライラも負けじと言い返す。
「うるさいな、これはまだ準備!次ので確実に仕留めてやるんだから!」
そういうとライラは、まるで歌うかのように、なめらかな声で呪文の詠唱を開始した。
「……ん?この呪文、前にも……」
俺は、この唄うような詠唱を前も聞いたことがある。ライラの周囲でつむじ風が舞い始めたことで、俺は完全に思い出した。これ、初めてライラと出会った時。サイレン村で、アイアンゴーレムを倒した呪文じゃないか?
「いぃ!?ま、まずいぞ。アルルカ、そこにいちゃヤバい!早く戻れ!」
俺は、オーガのそばで飛んでいるアルルカを、必死に呼び戻した。アルルカは怪訝そうな顔をしているが、俺もなりふり構っていられない。あんなとこにいたら、アルルカまで巻き添え喰らって、吸血鬼の刺身になっちまう!
ゴオォォォ。いよいよ風が渦を巻き、地面の小石をはじき飛ばす。アルルカが一はばたきで隣へやって来ると同時に、ライラはかっと目を見開き、両腕をがばっと広げた。
「カマイタチッ!」
ブゥン!ライラは広げた腕を、見えないヴェールを引き裂くように振り下ろした。その瞬間、目の前の空気がぐにゃっと歪み、そこから音速の風の刃が飛び出した。風の刃は地面の敷石を抉り取りながら、オーガへまっすぐ飛んでいく。
ズカッ!
直撃だ!風の刃は、オーガを一刀両断した。顔の中心で真っ二つになったオーガは、パシャッとはじけて、ただの水になってしまった。
「おお!なんだ、けっこうあっけなかったな」
所詮は幻か。とはいえ、これで無事にクリアだ……
ほっと息をつこうとしたその時、俺の脳裏に違和感が走った。なんだ……?脳内に、過去の映像がフラッシュバックする。前にアイアンゴーレムを倒したときは、こんなにあっけなかったか……?もっとすさまじい爆発が起こって、俺もライラも吹っ飛ばされたような……
その違和感の正体は、すぐにわかった。風の刃は、まだ消滅していない。
バキィィィィ!
あっ!風の刃が、薄紫のドームにぶつかった!カマイタチの魔法は、オーガの幻を倒してもまったく勢いが衰えていない。けど、このドームは魔法を外に通さないから、さすがにそのうち消滅して……
ミシィ!ミシミシミシミシ……
……なんだよ、このミシミシいう音。まさか、まさか……ふと視線を上に向ければ、薄紫色のドームが限界までカマイタチに引っ張られ、今にもはちきれそうになっている。ああ、見るんじゃなかった……
「や、やばくないかコレ……」
風の刃の威力は、少しも消えていない。考えてみれば、巨大な鉄の塊であるアイアンゴーレムを、スクラップに変えるほどの威力があるんだぞ。オーガの幻ごときで、その勢いが殺せるはずなかったんだ。それが万が一にも、このドームを突き破って、町に飛び出したら……俺とライラとアルルカは、鳴り響くミシミシ音の中、知らず知らずのうちにお互いを抱き合っていた。
ピシィ!
「ひえぇ」
ああっ!ついにドームに、白いヒビが入った!
「やや、やばい!外にいるやつら!逃げろーーーー!」
俺が叫ぶまでもなかった。大勢いた人だかりは、蜘蛛の子を散らすように、われ先にと逃げ出した。そしてついに、ドームの限界が訪れる。ピシ!キシキシキシ……
バリーーーーン!
つづく
====================
ゴールデンウィークは更新頻度2倍!
しばらくの間、毎日0時と12時の1日2回更新を実施します。
長期休暇に、アンデッドとの冒険はいかがでしょうか。
読了ありがとうございました。
====================
Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。
↓ ↓ ↓
https://twitter.com/ragoradonma
お、オーガだって?
観客の何人かが悲鳴を上げた。俺だって同じ気分だ。目の前に現れた、俺の倍くらい背丈のありそうな怪物は、どう見ても鬼にしか見えなかった。その厳めしい顔つきを見て、俺は風神雷神の屏風絵を思い出した。
「観客のみなさま、ご安心ください!このオーガは、魔法によって生み出された虚像、幻にすぎません」
進行役の男が、騒ぐ観客を落ち着かせようとアナウンスする。な、なんだ。本物じゃないのか。俺はほっと胸をなでおろした。それなら、全然楽勝だな……
「しかし、チャレンジャーは油断なきよう。幻と言えど、このオーガにはある程度の実体があります。殴られれば痛いですし、蹴られればぶっ飛びますので、ご用心を」
「な、なに!」
それじゃあ実戦とほとんど変わらないじゃないか!
「このオーガを倒せれば、チャレンジャーの勝利!課題はクリアとなります。もしもダメそうでも、死ぬ前にこちらでオーガを止めますので、そこはご安心ください」
「おい!絶対安全なんじゃなかったのか!?」
「さぁさぁチャレンジャーは、卓越した魔法を駆使して、このオーガを見事倒してください!このドームは魔法を含むあらゆる衝撃を吸収しますので、思う存分ぶっかましてもらって構いませんよ。ま、できたらの話ですがね?それじゃ、スタート!」
「あ、おいってば!」
俺たちの了承も得ず、勝手に課題が始まってしまった。それと同時に、オーガが恐ろしい眼で、俺たちをぎょろりと睨む。
「グルルルル……」
「あ、あはは……どうぞお手柔らかに……」
「ギュララララララッ!」
うわぁ、とても話が通じそうにない!
「アルルカ、陽動!」
俺はそれだけ叫ぶと、ライラのわきに手を突っ込んで持ち上げ、死に物狂いで駆け出した。
「ギュララララララ!」
オーガは狂ったように叫びながら、ハンマーのような拳を振り下ろす。バゴーーン!
「ど、えぇ!?」
嘘だろ!オーガが殴った部分の敷石が、木っ端みじんになったぞ!ひ、広場の一部が砂利道になってしまった……
「や、やべえ。あんなの、指一本にでも触れたらアウトだ……」
あんなのにまともに殴られたら、確実に骨が粉々になってしまうだろう。冗談じゃ済まないぞ……!
オーガは俺たちとアルルカ、二手に分かれたどちらを追うか迷っているようだった。するとアルルカがマントの前を外し、ばさりと翼を広げた。
「ふん。図体だけはでかいようだけれど、空にまでついてこれるかしら?」
あ、なるほど。前にマスカレードに取った戦法と同じで、遠距離から狙撃する気なんだ。
……しかしアルルカは、ここがドームで覆われていることを失念していた。ゴチン!
「あいたぁ!」
アルルカはドームの天井にしこたま頭をぶつけてしまった。それを見た観客たちがどっと笑う。しかし、今はそんなのんきな場面じゃないぞ。オーガがアルルカを狙っている!
「アルルカ!危ないぞ!」
「え?」
オーガのパンチが、油断したアルルカの腹に直撃した。
バキッ!メキメキ!嫌な音を響かせ、アルルカの腰から上がちぎれ、飛んだ。観客から悲鳴が上がる。
「あ、アルルカーーーっ!」
「なによ、うるさいわね」
「ある、ぅえ?」
俺のすぐ隣に、腕組みしたアルルカが立っている。え、じゃあ真っ二つになったアルルカは……?ちぎれたアルルカの体は、地面に落ちてゴトンと転がった。ごとん?
「氷で人形を作る魔法よ。あたしは影になって、分身と入れ替わったの。あんたが陽動しろっていうからやってあげたんじゃない」
「あ、そ、そうだったな……」
び、びっくりした。さっきのは偽物か……転がったアルルカの分身は、すぐに透明な水になって溶けてしまった。
「で?こっからどうすんのよ」
「あ、ああ。いや、とりあえず気を引いてもらえれば、あとはライラの魔法でどうにかなるかと思ったんだけど……」
ライラの火力なら、いくらでっかいオーガといえどイチコロだろう。しかし、魔法の詠唱にはどうしたって時間がかかる。いつもはエラゼムが、その間防御をしてくれたが、今はそうもいかない……ならば、詠唱の時間がほとんどかからない、アルルカの魔法の出番だ。
「ライラ、何秒くらいあればやつを倒せそうだ?」
「……十秒。それだけあれば、きっと倒すよ」
「だそうだ。アルルカ、それだけ時間を稼げるか?」
「はっ。誰にものを言ってるの?なんだったら、十秒であいつを倒してあげるわよ!」
ばさ!アルルカが翼を広げ、今度はドームの天井にぶつからない程度の高さにとどまった。オーガのほうも騙されたと気づいたのか、再び空に舞い上がったアルルカを睨み付ける。
「さあ、いくわよ!スノウ・ウィロウ!」
ピシピシピシ!アルルカの手に握られた杖の先から、氷の鞭が生成される。アルルカは大きく体をそらすと、掛け声とともに鞭をしならせた。
「せいや!」
ビューン!鞭はオーガの手首に巻き付いたが、オーガは怪力の一捻りで、氷の鞭を粉々に砕いてしまった。破片が俺たちのほうにまで飛んでくる。
「うひゃ!アルルカ、気を付けろよ!」
「う、うっさいわね!ちゃんと避けなさいよ!」
俺たちがいがみ合っていると、再びオーガの拳がアルルカ目がけて飛んでくる。しかし今度は、アルルカもそれを読んでいた。横に羽ばたいてかわし、空中で体をひねると、杖の銃口をオーガへとむける。
「食らいなさい!メギバレット!」
ダァーン!撃ち出された弾丸は、オーガの右目を直撃した。うわ、すごい精密射撃だ。あんな体勢で……
「ギャルルゥ!」
オーガが右目を押さえて呻く。しかし、それくらいじゃオーガの幻影は消えない。もっと大きなダメージを与えないと……!
「ほら、今よ!」
アルルカがこちらに目配せする。すると、言われるまでもないとばかりに、ライラが呪文を叫んだ。
「マウルヴルフ!」
ライラが宙を掻くように手を動かす。すると、ゴゴーン!広場の敷石が吹っ飛び、オーガの足元にぽっかりと大穴が開いた。
「ギャララ!?」
オーガもさすがに驚いたようで、奇声を発して穴に落っこちた。しかし、俺の背丈の倍くらいある相手だ。大穴に落ちてなお、やつのたくましい上半身は穴からのぞいていた。
「ちょっと!ぜんぜん弱ってないわよ!」
穴から出ようともがくオーガを見て、アルルカが苛立ったように叫んだ。ライラも負けじと言い返す。
「うるさいな、これはまだ準備!次ので確実に仕留めてやるんだから!」
そういうとライラは、まるで歌うかのように、なめらかな声で呪文の詠唱を開始した。
「……ん?この呪文、前にも……」
俺は、この唄うような詠唱を前も聞いたことがある。ライラの周囲でつむじ風が舞い始めたことで、俺は完全に思い出した。これ、初めてライラと出会った時。サイレン村で、アイアンゴーレムを倒した呪文じゃないか?
「いぃ!?ま、まずいぞ。アルルカ、そこにいちゃヤバい!早く戻れ!」
俺は、オーガのそばで飛んでいるアルルカを、必死に呼び戻した。アルルカは怪訝そうな顔をしているが、俺もなりふり構っていられない。あんなとこにいたら、アルルカまで巻き添え喰らって、吸血鬼の刺身になっちまう!
ゴオォォォ。いよいよ風が渦を巻き、地面の小石をはじき飛ばす。アルルカが一はばたきで隣へやって来ると同時に、ライラはかっと目を見開き、両腕をがばっと広げた。
「カマイタチッ!」
ブゥン!ライラは広げた腕を、見えないヴェールを引き裂くように振り下ろした。その瞬間、目の前の空気がぐにゃっと歪み、そこから音速の風の刃が飛び出した。風の刃は地面の敷石を抉り取りながら、オーガへまっすぐ飛んでいく。
ズカッ!
直撃だ!風の刃は、オーガを一刀両断した。顔の中心で真っ二つになったオーガは、パシャッとはじけて、ただの水になってしまった。
「おお!なんだ、けっこうあっけなかったな」
所詮は幻か。とはいえ、これで無事にクリアだ……
ほっと息をつこうとしたその時、俺の脳裏に違和感が走った。なんだ……?脳内に、過去の映像がフラッシュバックする。前にアイアンゴーレムを倒したときは、こんなにあっけなかったか……?もっとすさまじい爆発が起こって、俺もライラも吹っ飛ばされたような……
その違和感の正体は、すぐにわかった。風の刃は、まだ消滅していない。
バキィィィィ!
あっ!風の刃が、薄紫のドームにぶつかった!カマイタチの魔法は、オーガの幻を倒してもまったく勢いが衰えていない。けど、このドームは魔法を外に通さないから、さすがにそのうち消滅して……
ミシィ!ミシミシミシミシ……
……なんだよ、このミシミシいう音。まさか、まさか……ふと視線を上に向ければ、薄紫色のドームが限界までカマイタチに引っ張られ、今にもはちきれそうになっている。ああ、見るんじゃなかった……
「や、やばくないかコレ……」
風の刃の威力は、少しも消えていない。考えてみれば、巨大な鉄の塊であるアイアンゴーレムを、スクラップに変えるほどの威力があるんだぞ。オーガの幻ごときで、その勢いが殺せるはずなかったんだ。それが万が一にも、このドームを突き破って、町に飛び出したら……俺とライラとアルルカは、鳴り響くミシミシ音の中、知らず知らずのうちにお互いを抱き合っていた。
ピシィ!
「ひえぇ」
ああっ!ついにドームに、白いヒビが入った!
「やや、やばい!外にいるやつら!逃げろーーーー!」
俺が叫ぶまでもなかった。大勢いた人だかりは、蜘蛛の子を散らすように、われ先にと逃げ出した。そしてついに、ドームの限界が訪れる。ピシ!キシキシキシ……
バリーーーーン!
つづく
====================
ゴールデンウィークは更新頻度2倍!
しばらくの間、毎日0時と12時の1日2回更新を実施します。
長期休暇に、アンデッドとの冒険はいかがでしょうか。
読了ありがとうございました。
====================
Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。
↓ ↓ ↓
https://twitter.com/ragoradonma
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる