じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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9章 金色の朝

4-1 働き口

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4-1 働き口

「なんだったんだ、あいつら……」

俺は消えていったギルドの男たちの背中を見つめて、ぼやいた。やたらグイグイ来たと思ったら、あっちゅう間にいなくなったぞ。フランは男から押し付けられた石ころを見下す。

「これ、絶対ただのガラクタだよ……」

「うーん……まだわかんないけどな……」

石ころは、本当にただの石ころに見える。宝石のように輝いているとかもなく、ただ所々、錆びたような赤茶けた汚れが付いていた。そのおかげで、ただの石ころよりも一層汚らしい……

「……いる?これ」

「……まぁ、もしかしたら価値あるものかもしれないし……」

「本気で言ってる?」

「……半分くらいは」

ただ、あいにくと俺は、こういうのをすぐには捨てられない性分だった。一応カバンにしまっといて、ほんとにガラクタだとわかったら捨てちまおう。
かくして嵐のような出来事が過ぎ去り、すっかり気が抜けた俺たちがぐったりしていると、兵士たちがドタドタと広場へなだれ込んできた。

「おい!なにか大きな爆発が起こったと通報があったが、一体何をしていたんだ!?」

兵士の一人が叫ぶ。げっ、そうか。この兵士たち、さっきの騒ぎを聞きつけてやってきたのか。あー!しかも、主催者だった魔術師ギルドの連中は人っ子一人いなくなってる!これじゃあ、俺たちが主犯格みたいじゃないか。

「あ、あの~……これには、いろいろわけがあって……」

俺がしどろもどろ説明しようとすると、兵士たちの中でも、ひときわ立派な鎧に身を包んだ一人が、奇妙な声を上げた。

「んん?お前たちは……!」

「え?あ……あんたたしか、騎士団だかのリーダーの……たしか、エドガーだ!」

前に王城で、ロアと話し合った時以来だな。その時は大けがをしていたが、今は歩き回れるくらいにはなったらしい。ただ、前見た時よりかは、少しだけやつれたような気もした。

「む……!やっぱり、お前たちのしわざかぁ……!」

エドガーは、俺たちが元勇者一行だとわかると、唇をぐにゃりと歪めた。

「また貴様らは、碌でもないことをしおって!今度はなにをしでかした!」

「ち、違うちがう!不慮の事故はあったけど、好きでやったんじゃないって!」

「なにぃ?だいたい、まず何をしたらこんなになるんだ!正直に申さんか!」

「いや、その~……ホントに、壊そうと思ってたわけじゃないんだぜ?」

俺は前置きしてから、そろりと指を突き立てて、ぶっ壊れた家の屋根へと向けた。

「ん?ん~……あ!これか、爆発音の正体は!」

「こ、これには理由があるんだって」

「馬鹿者、そんなことは後回しだ!住人の安否確認はしたのか!?」

「え……あ!」

俺が叫ぶと、ウィルも同時にぱっと口を押えた。そうだった、怪我人がいないか確認するのを忘れていた。家から人の声は聞こえなかったけど、ひょっとすると中で気絶しているかもしれない。

「お前たち、家主がいないか捜索しろ!崩れるかもしれん、気を付けろよ!」

エドガーが兵士たちに命令すると、兵士たちはいっせいに壊れた家へと向かった。俺たちがハラハラしながら見つめるなか、住居の捜査が行われる。しばらくして、兵士の一人がエドガーへ叫んだ。

「どうやら、空き家だったようです!人の住んでいる気配はありません!」

ほっ……ああよかった。中は空っぽだったようだ。エドガーもうむとうなずく。

「よし、被害は最小限のようだな……では、話をじっくり聞かせてもらおうか?んん?」

エドガーが青筋を立てながら、俺のほうへ顔を突き出す……ひえー、今日は怒られてばかりだな。俺はこれ以上印象を悪くしないよう、必死に事のあらましを説明した。

「……ってことなんだけど」

「ふむ……法外な賞金に、ギルドへの強制加入か。なるほどな」

一連の出来事を説明すると、エドガーは納得したようにうなずいた。

「お前たちが遭ったのは、魔術師ギルドの違法勧誘だろう」

「違法、勧誘?」

「最近王都で増えているのだ。詐欺まがいの手口で魔術師を釣り、ギルド員に無理やりさせる悪質な事件がな」

おお、まさにさっきの出来事だ。そうか、俺たちだけじゃないんだな、ああいう目に遭ったの。

「でも、なんだってそんなことが?」

「うむ。魔術師ギルドも、優秀な魔術師の獲得に必死になっているからなんだろうが……」

「へー。人材不足ってやつか?」

「いや、王城からの覚えをめでたくしたいからだろう。前回の反乱のあとから、魔術師ギルドに関する規定が厳しくなったのだ」

ん?どういうことだ?俺たちが首をかしげると、エドガーが目をしばたいた。

「ああ、そうか。お前たちは王都を離れていたから、詳しくは知らんのか。ほら、前に起きた王都での反乱の時のことだ。そのとき魔術師ギルドは、あろうことか王城からの要請を断り、手を貸そうとしなかった。まったくけしからんことに!」

「ああー、そういえば……」

王都を出る時に、そんなような話を聞いた気がする。いま振り返ってみても、たしかに魔術師たちが反乱軍と戦っている様子はなかった。

「王都にギルドがいくつもあるなら、それなりの魔術師軍団ができていたはずだもんな」

「ああ。全く驚いた、魔術師ギルドの王家へ対する忠誠があれほど薄れていたとは……そこで、反乱後はロア様自ら指揮を執り、魔術師ギルドとの関係の再構築が始まったのだ。援助金を垂れ流すだけのつながりを改め、より優秀な魔術師を育成・輩出するように規定を定めた。それらの活動を積極的に行っているかの査定もすることとなった」

「ははぁ。それで、ギルドのほうもうかうかしていられなくなったってことか」

「そういうわけだ。古豪のギルドはともかく、弱小ギルドは魔術師の質も低く、ノウハウもない。となると、査定をパスするために最も手っ取り早い方法は、優秀な魔術師をギルドに迎え入れる事というわけだ。そのためになら手段を選ばないのだ、ああいうやからは。まったく愚かしい、浅ましい連中よ!」

エドガーは吐き捨てるように言った。王城が陥落寸前だったのに、手を貸さなかった連中だもんな、王城側からの印象は最悪だろう。

「それで、さっきみたいな派手なショーとかで、魔術師を集めようとしてたってわけだな」

「うむ。お前たちが引っ掛かったのもそれだろう……まぁ、お前たちの事情はわかった。申請もなくイベントを行い、また安全確保もできていなかったギルド側の落ち度だろう」

おお、助かった。俺たちの罪は問われないらしい。

「おい、そのギルドの名前はわかるか?」

「あ、うん。確か、黒手団ブラックハンズって名乗ってたけど」

「黒手団……落ち目の弱小ギルドだ。ふん、とうとう落ちるとこまで落ちたな。よしわかった、連中に話を聞くとしよう」

「それじゃ、俺たちは無罪放免でいいんだよな?」

「なにぃ?馬鹿を言うな!確かに責任の大半はギルドにあるがな、それでも実際に家を壊したのは、お前たちではないか!」

「う……それは、まあ事実だけど」

「さらに、複数の家で突風によって窓ガラスが割れる事案が発生している。これらに関する損害賠償責任は、当然お前たちに課される!」

「えぇ!」

「当たり前だ!壊した人間が払わないでどうする!」

それは、確かにそうだけども……だけど、俺たちにだって言い分はあるぞ。

「確かに、あんな威力の魔法を町中でぶっ放したのは悪かったけど。けどさ、それだって、魔術師ギルドの連中が絶対安全だからって言ったからなんだぜ。あいつらが、防護壁があるから大丈夫だって言ったんだ」

「なに?むぅ、そうか……それならば、情状酌量の余地はあるかも知れんが。だとしても、お前たちの責任は無くなりはせんぞ。こういう場合は、事故を起こした側にも、少なからず責があるものだ」

「う……俺たち、金なんてほとんど持ってないのに……」

「ふん。金欠なのは、勇者をせずにあちこちふらふらしているからだろうが。ロア様の好意をむげにしおってからに」

む。人をちゃらんぽらんみたいに言いやがって……しかし、まいったな。金を稼ぐつもりが、いきなりマイナスからスタートすることになっちまうぞ。エドガーの言うことももっともなのだが……俺は藁にも縋る思いで頼む。

「なあ、けど本当に今は金がないんだ。俺たち、しばらく王都にいるつもりだからさ。ゆっくり返金していくんじゃだめか?」

「……なに?本当に、それだけの金もないのか?」

「ないこともないけど……それを全部吐きだしたら、俺たち一文無しになっちまうよ。それじゃ宿にも泊まれないだろ」

「ぬぅ……」

エドガーは唸ると、口元に拳を当てた。悩んでいるぞ、チャンスだ!俺は両手を合わせ、言葉を重ねる。

「俺たち、この王都でしばらく稼ぎ口を探すつもりなんだ。それで金ができたら払うから、それまで待ってくれよ。な?」

「……仕事は、もう決まったのか?」

「え?いや、それもこれからだけど……」

するとエドガーは腕を組み、空を見上げて固まってしまった……いったい、何を考えているんだろう?

「……わかった」

「え?」

「私が、仕事を回してやる。それで稼いだ金を賠償に充てるがいい」

えぇ?そりゃ、こっちとしても仕事を探す手間が省けるけど……どういう風の吹きまわしだ?

「どうせお前たちみたいな妙ちくりんなやつらは、まともな仕事など探せんだろう」

「みょ……まあでも、そうだと思うよ」

「ならばお前たち。城に来い」

「は?城?」

「今は、反乱で傷んだ城内外の修復で人手が足りん。お前の仲間の馬鹿力なら、土木作業にうってつけだろう」

俺はフランと、それからエラゼムを見た。確かに二人は力があるし、アンデッドだから疲れ知らずだ。

「わたしは、それで構わないけど」

フランはその案に賛成した。エラゼムも隣でうなずく。しかし二人はよくても、他のみんなはそうもいかない。

「でも、力仕事だと全員じゃできないな……」

「問題ない。お前たちには魔術師がいるだろう。基礎工事のような大掛かりな工事には、いつも魔術師の力を借りるのだ」

へー、なるほど。けど、まだ問題がある……肝心の俺が、何にもできないじゃないか!とほほ……

「あの~……それ以外にも、なんか簡単な仕事はないかな?誰でもできるような……」

自分で言っていても情けないが、かといって俺だけのんきに散歩しているのも嫌だ。するとエドガーは、まなじりを吊り上げはしたが、しぶしぶ首を縦に振ってくれた。

「なにぃ?ちっ、わがままなヤツめ!わかった、それもなんとかしよう。これで文句はないか!?」

おお、それなら大助かりだ。下手なところに雇われるよりも、国の仕事の方が安心できるしな。



つづく
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長期休暇に、アンデッドとの冒険はいかがでしょうか。

読了ありがとうございました。

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