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11章 夢の続き
8-3
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8-3
「……は?」
俺は目の前で土下座したミイラに、思い切り怪訝そうな顔を向けた。今、なんてった?助けてくれ?
「どうか、お願いします、お願いします!後生だと思って!」
ミイラは五体を地面についた格好のまま、ずりずりと虫のように這ってくる。うわ、気持ちわる!
「な、なんなんだよ……」
『主様!周囲を見てください!』
え?うおぉ!?そこここの建物の影からも、ミイラがわらわらと現れたじゃないか。こんなに潜んでいやがったのか!どのミイラも、両手を顔の前で合わせて、擦り切れんばかりにこすり合わせている。
「どうか、どうか頼みます。あなた様だけが頼りなのです……」
「お願いします。憐れな我らに、一抹の情けを……」
「お、おい!近寄るな!それ以上来たら、武力行使だぞ!」
俺はとっさに剣を抜いて、擦り寄って来るミイラを威嚇する。赤色の刀身に恐れをなしたのか、ミイラたちはぎょっとして動きを止めた。
「よ、よーし。とりあえず、そこで止まってくれ」
「おお、どうかそんなことおっしゃらずに。なにとぞ、我らをお助けしてはいただけませんか。なにとぞ、なにとぞ……」
「だー、近寄るなって!何が何だか分からないけど、俺はまだ、あんたたちを信用しちゃいないんだ。何か頼みたいんなら、ちゃんと順序だてて説明してくれ」
おっと、自分でもびっくりするくらい冷静な返答だな。今までなんどもアンデッドと接してきたから、さすがの俺も慣れてきたらしい。
「おぉ、確かにその通りですな。無礼をお許しください……」
ミイラたちは、あっさり非を認め、深々と礼をした。ふーむ、こいつらもまた、その辺のアンデッドモンスターとは違うみたいだ。こんなに理知的な会話ができるなんて。
「……とりあえず、教えてくれ。あんたたちは、一体、なんだ?」
俺が訊ねると、一番最初に出てきたミイラ……未だに五体を地面にこすりつけていた奴が、ようやく体を起こした。
「我々どもは、この死者の都の副葬品でございます。名はありません」
は?なんだって?名は無い?
「あぇーっと……?ごめん、もう少し詳しく教えてくれないかな」
「かしこまりました。この都が、さる王族のお方の為の陵墓なのだということは、御存じですか?」
「ああ、うん。知ってる」
「そうでしたか。わたくし共は、かつてそのお方に仕えていた召使いです。その方が離宮に入られる際、我らもお供として、一緒にこの都へ埋められたのでございます」
え……てことは、この人たちは、まだ生きていたのに……?
「それは、何て言うか……大変、だったんだな。お気の毒に……」
「そんなことはございません。この都に葬られることは、臣下としての最大の名誉でございますから。誉ある最期を遂げられたことを、誇らしく思っていますので」
「そ、そっか。まあ、それは人それぞれだしな……それで?あんたたちは、俺に何をしてほしいんだ?」
「はい。それは、あちらにおわすお方……我らが主である、姫君に関することなのです」
ミイラはそう言うと、恭しいしぐさで、はるか前方を……町の上にぼんやりと浮かぶ、巨大な逆ピラミッドを手で示した。
「あちらの離宮には、名だたる王家の姫君がお眠りになられています。あの離宮は、神聖なる儀式の場なのです」
「儀式……」
「はい。数ある王家の血を継ぎし家系のなかでも、その中から選ばれた、もっとも優れし姫君が……」
「あん?ちょっと待ってくれ。姫様って、何人もいるのか?」
「はい?その通りでございますが。王が十五になられますと、各家を代表した女が種をいただき、そこから姫君候補が生まれるのです。ご存じではありませんか?」
「そ、そうなんだ。ちょっと知らなかったな……悪い、話の腰を折って。続けてくれ」
「かしこまりました。そうしてお生まれになった姫君候補の中から、もっとも民衆を虜にした方が、次期の姫君となられるのです。そして、姫君が血のみしるしを迎えられますと、鬼籍に入られます」
ん?キセキに入る?
「それって、どういう意味だ?キセキがどうたらって」
「それは、あちらの離宮にて、永遠の眠りにつかれることを指します」
「……え?待ってくれ。それじゃ、そのお姫様は、死んじゃうのか……?」
けど、そうか。ここは王家の墓。そこに眠るってことは、つまり、そういうことだ。顔を曇らせた俺を見て、ミイラはゆるゆると首を振る。
「いいえ。姫君は、肉体から魂を解き放ったのち、再びあの離宮へとお戻りになるのです。それは死ではなく、新たなる生。偉大なる復活でございます」
「え?でも、さっき永遠に眠るって」
「はい。一度復活なされた姫君は、常世の世界の永遠なる魂を得ております。それすなわち、時期なる王の器に相応しい盃を得たのと同義。姫君は王の種をその身に受け、子を宿します。そして子を産み落とすと同時に、魂を子へと渡し、ご自身は再びお眠りになるのです。そうしてお生まれになった方が、次の王となります」
あ、え……?なんだって?さらりととんでもない事を聞いて、頭がこんがらがって来たぞ。俺は確かめるように、一つずつミイラに訊ねる。
「その姫様は、一度死んで……いや、魂を解き放った後で、もう一度復活するんだよな?」
「はい」
「それで、王様の子どもを産んで、また眠りにつくんだっけ?」
「その通りでございます」
ミイラは満足げにうなずき、俺は思わず額を押さえた。話を聞くに、その姫様の復活とは、間違いなくアンデッドとして蘇ったということだろう。それは分かる。が、その後が問題だ。子どもを産むだって?アンデッドが、生きている人との子どもを作るってことか?頭が痛くなってきた……
「そんな、馬鹿な……」
「いいえ。それこそが、この都で行われる最も重要な儀式“影結”であり、脈々と受け継がれてきた伝統ある行いでございますゆえ」
ミイラは自信満々に言い切った。噓を言っている風には見えないけど……にわかには信じられない話だな。
「えーっと……まぁそれはいったん置いといて、話を戻そう。確か、その儀式とやらと、あんたたちのお願いが関わってるんだったか?」
「はい、その通りです。我らが仕えし姫君も、遅れながらも無事に血のみしるしを迎え、あちらの離宮へと入られました。我らも副葬品としてお供をし、後は儀式を終え、王の子を宿すばかりだったのですが……」
ミイラはそこまで話すと、がっくりと肩を落とした。他のミイラたちも、目元を押さえて(仮面をつけているのに)よよよと泣いている。
「……なんか、あったのか?」
「ええ!なぜか王は、姫君の下へと現れなかったのですッ!」
うお。ミイラは急に頭を上げて、絶叫した。
「いったいなぜ!?儀式の手順には、一かけらの不備もなかったというのに!すべてが完ぺきだったにもかかわらず、王はおいでにならなかった!」
「そ、そうなんだ……ひょっとして、姫様がタイプじゃなかったとか?」
「とんでもない!我らが姫は、歴代の中でも最も美しいと言われるほどの美女だったのでございます。時に薔薇のように美しく、時に雛菊のように愛らしく、時に椿のようにたおやかで、時に百合のように妖艶な……王も、民草も、姫を大変愛しておりました。鬼籍に入る前日の民との別れの場では、それはもう大変な盛り上がりを見せたものです。歓声で天井が落ちるかと思いました」
「そりゃすごい。じゃあ、いったい何がダメだったんだろう?」
「わかりません……果てしない時の中で、それだけを考えてきましたが、何も思い当たらぬのです……しかし、今重要なことは、それではありません」
ミイラは嘆くのをやめて、俺をまっすぐに見据えた。
「重要なのは、儀式が完遂できなかったことでございます。種を受け、子をなさなければ、姫君はいつまでも眠ることができません。そして姫が眠りにつかないということは、我らもまた、逝くことができないということでもあります。そこで……」
そこで……?そこで、どうして俺を見るんだ。嫌な予感がするな……
「どうか、お願いいたします。我らが姫君と、夫婦の契りを交わしてはいただけませんでしょうか」
「はぁ!?」
冗談だろ、どうしてそうなるんだ。
「そりゃ、いくらなんでも投げやりじゃないか。その辺の、どこの馬の骨かもわからない男と、その……だなんて。あんたらにとっての、大事な姫様だったんじゃないのか?」
「もちろんでございます!ですが……わたくし共としても、見ていられないのです。王がお迎えにあがられなかったことで、姫様は大変傷つき、ふさぎ込んでしまわれました。人一倍、皆に愛されようと努力をなされるお方でありましたから、それを裏切られた事実は、大変重く、苦しいものだったに違いありません」
「あぁ……それは、確かにかわいそうだな」
「そうです。それ以来、姫は変わってしまわれました……地上を歩く者で、少しでも気に入った者が通ると、この都へと引き込むようになってしまい……」
あ。まさか、俺もそのパターンか?じゃあ、あの妙な声は、ひょっとしてお姫様の?
「それに!正直に申し上げますと、わたくし共も辛いのであります!もう数百年以上は、ここにこうして囚われ続けているのです。逝くことも叶わず、眠ることもできない……気が狂うことすらままならない、無間の地獄でございます!」
ミイラは再び、地面にひれ伏した。他のミイラたちも、一斉に地面に手をつく。
「お願いいたします!どうか、我らが姫君を、そして哀れで不愍たる我々を、あなた様の愛で救っていただけませんでしょうか!」
ミイラたちは、まるで神でも崇めるかのように、俺を囲んで土下座をした。こういう状況を、端的に一言で表す言葉を、俺は知っている。
「まいったな……」
俺は途方に暮れて、頬をポリポリかくしかなかった。
つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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俺は目の前で土下座したミイラに、思い切り怪訝そうな顔を向けた。今、なんてった?助けてくれ?
「どうか、お願いします、お願いします!後生だと思って!」
ミイラは五体を地面についた格好のまま、ずりずりと虫のように這ってくる。うわ、気持ちわる!
「な、なんなんだよ……」
『主様!周囲を見てください!』
え?うおぉ!?そこここの建物の影からも、ミイラがわらわらと現れたじゃないか。こんなに潜んでいやがったのか!どのミイラも、両手を顔の前で合わせて、擦り切れんばかりにこすり合わせている。
「どうか、どうか頼みます。あなた様だけが頼りなのです……」
「お願いします。憐れな我らに、一抹の情けを……」
「お、おい!近寄るな!それ以上来たら、武力行使だぞ!」
俺はとっさに剣を抜いて、擦り寄って来るミイラを威嚇する。赤色の刀身に恐れをなしたのか、ミイラたちはぎょっとして動きを止めた。
「よ、よーし。とりあえず、そこで止まってくれ」
「おお、どうかそんなことおっしゃらずに。なにとぞ、我らをお助けしてはいただけませんか。なにとぞ、なにとぞ……」
「だー、近寄るなって!何が何だか分からないけど、俺はまだ、あんたたちを信用しちゃいないんだ。何か頼みたいんなら、ちゃんと順序だてて説明してくれ」
おっと、自分でもびっくりするくらい冷静な返答だな。今までなんどもアンデッドと接してきたから、さすがの俺も慣れてきたらしい。
「おぉ、確かにその通りですな。無礼をお許しください……」
ミイラたちは、あっさり非を認め、深々と礼をした。ふーむ、こいつらもまた、その辺のアンデッドモンスターとは違うみたいだ。こんなに理知的な会話ができるなんて。
「……とりあえず、教えてくれ。あんたたちは、一体、なんだ?」
俺が訊ねると、一番最初に出てきたミイラ……未だに五体を地面にこすりつけていた奴が、ようやく体を起こした。
「我々どもは、この死者の都の副葬品でございます。名はありません」
は?なんだって?名は無い?
「あぇーっと……?ごめん、もう少し詳しく教えてくれないかな」
「かしこまりました。この都が、さる王族のお方の為の陵墓なのだということは、御存じですか?」
「ああ、うん。知ってる」
「そうでしたか。わたくし共は、かつてそのお方に仕えていた召使いです。その方が離宮に入られる際、我らもお供として、一緒にこの都へ埋められたのでございます」
え……てことは、この人たちは、まだ生きていたのに……?
「それは、何て言うか……大変、だったんだな。お気の毒に……」
「そんなことはございません。この都に葬られることは、臣下としての最大の名誉でございますから。誉ある最期を遂げられたことを、誇らしく思っていますので」
「そ、そっか。まあ、それは人それぞれだしな……それで?あんたたちは、俺に何をしてほしいんだ?」
「はい。それは、あちらにおわすお方……我らが主である、姫君に関することなのです」
ミイラはそう言うと、恭しいしぐさで、はるか前方を……町の上にぼんやりと浮かぶ、巨大な逆ピラミッドを手で示した。
「あちらの離宮には、名だたる王家の姫君がお眠りになられています。あの離宮は、神聖なる儀式の場なのです」
「儀式……」
「はい。数ある王家の血を継ぎし家系のなかでも、その中から選ばれた、もっとも優れし姫君が……」
「あん?ちょっと待ってくれ。姫様って、何人もいるのか?」
「はい?その通りでございますが。王が十五になられますと、各家を代表した女が種をいただき、そこから姫君候補が生まれるのです。ご存じではありませんか?」
「そ、そうなんだ。ちょっと知らなかったな……悪い、話の腰を折って。続けてくれ」
「かしこまりました。そうしてお生まれになった姫君候補の中から、もっとも民衆を虜にした方が、次期の姫君となられるのです。そして、姫君が血のみしるしを迎えられますと、鬼籍に入られます」
ん?キセキに入る?
「それって、どういう意味だ?キセキがどうたらって」
「それは、あちらの離宮にて、永遠の眠りにつかれることを指します」
「……え?待ってくれ。それじゃ、そのお姫様は、死んじゃうのか……?」
けど、そうか。ここは王家の墓。そこに眠るってことは、つまり、そういうことだ。顔を曇らせた俺を見て、ミイラはゆるゆると首を振る。
「いいえ。姫君は、肉体から魂を解き放ったのち、再びあの離宮へとお戻りになるのです。それは死ではなく、新たなる生。偉大なる復活でございます」
「え?でも、さっき永遠に眠るって」
「はい。一度復活なされた姫君は、常世の世界の永遠なる魂を得ております。それすなわち、時期なる王の器に相応しい盃を得たのと同義。姫君は王の種をその身に受け、子を宿します。そして子を産み落とすと同時に、魂を子へと渡し、ご自身は再びお眠りになるのです。そうしてお生まれになった方が、次の王となります」
あ、え……?なんだって?さらりととんでもない事を聞いて、頭がこんがらがって来たぞ。俺は確かめるように、一つずつミイラに訊ねる。
「その姫様は、一度死んで……いや、魂を解き放った後で、もう一度復活するんだよな?」
「はい」
「それで、王様の子どもを産んで、また眠りにつくんだっけ?」
「その通りでございます」
ミイラは満足げにうなずき、俺は思わず額を押さえた。話を聞くに、その姫様の復活とは、間違いなくアンデッドとして蘇ったということだろう。それは分かる。が、その後が問題だ。子どもを産むだって?アンデッドが、生きている人との子どもを作るってことか?頭が痛くなってきた……
「そんな、馬鹿な……」
「いいえ。それこそが、この都で行われる最も重要な儀式“影結”であり、脈々と受け継がれてきた伝統ある行いでございますゆえ」
ミイラは自信満々に言い切った。噓を言っている風には見えないけど……にわかには信じられない話だな。
「えーっと……まぁそれはいったん置いといて、話を戻そう。確か、その儀式とやらと、あんたたちのお願いが関わってるんだったか?」
「はい、その通りです。我らが仕えし姫君も、遅れながらも無事に血のみしるしを迎え、あちらの離宮へと入られました。我らも副葬品としてお供をし、後は儀式を終え、王の子を宿すばかりだったのですが……」
ミイラはそこまで話すと、がっくりと肩を落とした。他のミイラたちも、目元を押さえて(仮面をつけているのに)よよよと泣いている。
「……なんか、あったのか?」
「ええ!なぜか王は、姫君の下へと現れなかったのですッ!」
うお。ミイラは急に頭を上げて、絶叫した。
「いったいなぜ!?儀式の手順には、一かけらの不備もなかったというのに!すべてが完ぺきだったにもかかわらず、王はおいでにならなかった!」
「そ、そうなんだ……ひょっとして、姫様がタイプじゃなかったとか?」
「とんでもない!我らが姫は、歴代の中でも最も美しいと言われるほどの美女だったのでございます。時に薔薇のように美しく、時に雛菊のように愛らしく、時に椿のようにたおやかで、時に百合のように妖艶な……王も、民草も、姫を大変愛しておりました。鬼籍に入る前日の民との別れの場では、それはもう大変な盛り上がりを見せたものです。歓声で天井が落ちるかと思いました」
「そりゃすごい。じゃあ、いったい何がダメだったんだろう?」
「わかりません……果てしない時の中で、それだけを考えてきましたが、何も思い当たらぬのです……しかし、今重要なことは、それではありません」
ミイラは嘆くのをやめて、俺をまっすぐに見据えた。
「重要なのは、儀式が完遂できなかったことでございます。種を受け、子をなさなければ、姫君はいつまでも眠ることができません。そして姫が眠りにつかないということは、我らもまた、逝くことができないということでもあります。そこで……」
そこで……?そこで、どうして俺を見るんだ。嫌な予感がするな……
「どうか、お願いいたします。我らが姫君と、夫婦の契りを交わしてはいただけませんでしょうか」
「はぁ!?」
冗談だろ、どうしてそうなるんだ。
「そりゃ、いくらなんでも投げやりじゃないか。その辺の、どこの馬の骨かもわからない男と、その……だなんて。あんたらにとっての、大事な姫様だったんじゃないのか?」
「もちろんでございます!ですが……わたくし共としても、見ていられないのです。王がお迎えにあがられなかったことで、姫様は大変傷つき、ふさぎ込んでしまわれました。人一倍、皆に愛されようと努力をなされるお方でありましたから、それを裏切られた事実は、大変重く、苦しいものだったに違いありません」
「あぁ……それは、確かにかわいそうだな」
「そうです。それ以来、姫は変わってしまわれました……地上を歩く者で、少しでも気に入った者が通ると、この都へと引き込むようになってしまい……」
あ。まさか、俺もそのパターンか?じゃあ、あの妙な声は、ひょっとしてお姫様の?
「それに!正直に申し上げますと、わたくし共も辛いのであります!もう数百年以上は、ここにこうして囚われ続けているのです。逝くことも叶わず、眠ることもできない……気が狂うことすらままならない、無間の地獄でございます!」
ミイラは再び、地面にひれ伏した。他のミイラたちも、一斉に地面に手をつく。
「お願いいたします!どうか、我らが姫君を、そして哀れで不愍たる我々を、あなた様の愛で救っていただけませんでしょうか!」
ミイラたちは、まるで神でも崇めるかのように、俺を囲んで土下座をした。こういう状況を、端的に一言で表す言葉を、俺は知っている。
「まいったな……」
俺は途方に暮れて、頬をポリポリかくしかなかった。
つづく
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