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12章 負けられない闘い
5-2
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5-2
月の神殿からの帰り道を歩きながら、俺は頭を抱えた。
「なんか、次から次に面倒ごとが増えてくな……なんだってあの聖女様は、俺と話がしたいんだ?」
するとフランが、さも面白くなさそうに言う。
「あんがい、一目ぼれとかなんじゃないの」
「いや、俺仮面付けてるだろが……ん、待てよ。確かあの神殿って、昔に召喚された勇者がいるって話だったよな」
「勇者?」
フランが怪訝そうに首をかしげる。するとエラゼムが俺たちの隣に並んだ。
「確かに。以前ラクーンの町を訪れた際に、アニ殿がおっしゃっていましたな」
「だよな。ひょっとして、さっきの聖女様がその勇者なんじゃないか?」
勇者の能力だとしたら、奇跡の力が使える事にも、多少は納得できる。いろいろと規格外の連中が多いのが、勇者ってものだから。
「てことは……あの人も勇者だから、俺と話したがってたってことか。そう考えれば、同僚みたいなもんだしな」
「同僚……」
フランがつぶやくと、ようやく顔から険が取れた。やれやれ。
「勇者……あの女性も、かつて召喚された人ってことですね」
ウィルが後ろの神殿を振り返りながら言う。
「でも私、まだ信じられないんです。だって、あの人は昨日、確かに年老いていました。それなのに……」
「ああ、うん。俺も驚いたよ。信じられないのも一緒だけど、この目でしかと見ちゃったしな……」
すると、仲間たちも一斉にうなずいた。やっぱりこの世界においても、若返りはそうそうあり得ないことらしい。
「あの人も勇者で、しかも光の魔力ってのを持ってるんだよな。光の魔力は、奇跡に例えられるって言うけれど」
歩いていると、庭園の花壇に差し掛かった。色とりどりの花は、どれも生き生きとしていて美しい。だが、色は匂えど散りぬるを。花もいつかは枯れるものだ。花壇の片隅では、庭師たちが萎れた花を引き抜き、新しい株に植え替えていた。
「……とてつもない力をもってすれば、時の流れすらも、巻き戻すことができるんでしょうか……」
ウィルが花々を見ながらつぶやく。時の流れを……俺は何も言えなかった。もしもそんなことが叶うとして、その時……みんなは何を望むのだろう?
しばらく歩いて、ようやくレストハウスが見えてきた。あれ?玄関先に一人の少女が立っている。濃い茶色の髪の、ショートカットの女の子だ。誰だろう?見知らぬ娘だが……その少女は俺たちをちらりと見ると、先に中へ入っていってしまった。臣下の男がこちらを振り向く。
「皆様。今回治療なされた方には、今しばらくの休養が必要でしょう。ですがご安心ください。ライカニール帝は、病人が完治されるまで、こちらにお泊りになってもよいとおっしゃっておいでです」
「それは……ご配慮いただきありがとうございます。皇帝閣下にもそうお伝えください」
ヘイズが礼を返す。ふぅ、するとしばらくは、ここに泊まることになるのか。だがまあ、あの状態のエドガーに無理はさせられないか。とりあえずやることがなくなったので、俺たちは自分たちの部屋に戻ることにした。
「しばらくはここに缶詰めかぁ。せめて町の宿に泊まれたらな。ここじゃいつでも女帝の目が届きそうで、気が気じゃないよ」
廊下を歩きながら文句を言うと、フランがこくりとうなずく。
「あの人、絶対ロクなこと考えてないよ。調子のいい事ばっかり言ってるけど、そうじゃなかったらわざわざ勇者を呼びつけたりしないはずでしょ」
「そうだよなぁ。でも、何考えてるんだろ。この国にはさっきの聖女様と、あのクラークがいるんだぜ。勇者の手は十分足りてそうなのに、どうしてわざわざ二の国の勇者まで……」
「……二の国の、勇者?」
は?その声は、廊下の反対側から聞こえてきた。振り返ってみれば、廊下の突き当りに一人の少女が立っている。あ、あの娘。さっき玄関にいた娘じゃないか?
「えぇっと……?」
「二の国の、勇者と言ったか?」
「え。はい、そうっすけど……」
すると少女は、フゥーっと長いため息をついた。なんだ、失礼だな。むっとした、その時……ぞわわ!全身に鳥肌が立った。こ、これは……今まで何度か感じたことがある。殺気、ってやつだ。
「下がって!」
フランが俺を押し戻す。彼女も異変を感じたようだ。その瞳は、まっすぐ少女を睨みつけている。すると少女は、両手を腰元へと伸ばした。腰には、二本の剣が見える……え、嘘だろ。抜く気か?
「ッ」
一瞬だった。少女は双剣を抜いたかと思うと、背を低くかがめ、猛スピードでこちらに迫ってきた。あまりの速さに、俺は声を掛けることすらできなかった。少女の双剣が翻る。それをフランが鉤爪で迎え撃った。ガキィン!
「お前、一体何のつもり!?」
フランが叫んでも、少女は一切口を開かない。足を振り上げてフランの腕を跳ね上げると、無防備な胴体を切りつけようとする。だが、それはフランを甘く見過ぎだ。フランはお返しだとばかりに自分も足を上げ、サマーソルトキックを放った。少女はとっさに剣を交差させて防御したが、それでフランの怪力を止められるはずがない。少女はぶっ飛ばされ、廊下の床をゴロゴロ転がった。
「くはっ」
少女は一声呻くと、うずくまったまま体を震わせている。あちゃー、やっちまったか?
「ちょっとやりすぎじゃないか?」
「はぁ?いきなり切りかかってきたのはどっち!」
フランが憤慨して俺を振り返る。
「まあそうなんだけど、ほら。相手は女の子だし……」
「知らないよ、そんなの。わたしも女なんだ、それにやられたんじゃ文句はないでしょ」
フランは吐き捨てるように言うと、うずくまる少女を睨みつける。少女は身もだえしながらも、ようやく体を起こそうとしていた。
「ぐぅ……くそ……」
少女はギリっと歯を噛みしめると、恨みのこもった目でフランを睨みつけた……いや、違うぞ。あの娘が見ているのは……
「……俺?」
少女の瞳には、尋常でない憎しみが見て取れる。親の仇でも見るような……少女は双剣を再び握りしめると、またもこちらに突っ込んでくるそぶりを見せた。フランが身構える。すると……
「アルア様!何をなさっているのですか!」
悲鳴に近い声を上げて、廊下の角から臣下がすっ飛んできた。さっき俺たちを案内した男とは別の人だ。そいつは俺たちのそばまで走ってくると、蒼白な顔で俺たちと少女とを交互に見る。
「な、何があったのですか?どうして剣を抜かれて……」
「最初にしかけてきたのは、そっちだよ」
フランが素早く告げ口すると、その少女……アルア、と呼ばれていたか?アルアはキッとフランを睨みつける。
「アルア様、誠でございますか?」
臣下に訊ねられると、アルアは気まずそうに目をそらした。臣下が目を丸くする。
「どうしてそのようなことを!ああ、とにかく、剣をおしまい下さい。外国からいらっしゃったお客様に切りかかるなど、ライカニール帝がお聞きになったらなんとおっしゃるか」
「客人?こいつらがですか?」
アルアは、初めてまともな言葉を話した。少女らしくかわいらしい声だったが、明らかに棘を感じる……棘なんて、なまっちょろいな。有刺鉄線と言ったほうが良さそうだ。
「そうです。ライカニール帝が直々にお招きになった方々です。さあ、こちらへ。お部屋までご案内しなかったわたくしめが悪うございました。お連れしますので、さあ、さあ!」
臣下に背中を押されるようにして、アルアは行ってしまった。廊下の角に消える際、ぎろっとこちらを睨みつけてから……
「な、なんだったんだ……?」
あまりに一瞬の出来事だった。おまけにこちらは、あの少女の名前しかわかっていない。フランが爪を引っ込める。
「なんだかわからないけど、相当いかれてるのは確かだね。でも、そんなに強くはない」
「そうなのか?」
「うん。あの金髪勇者とか、マスカレードに比べたら、全然ザコ」
ふむ……何度も強敵と戦ってきたフランが言うのなら、そうなんだろう。一般人の俺からしたら相当早く動いていたけれど、確かに一撃でノックアウトされていたしな。
「あの人、桜下が勇者だって分かったから、襲ってきたのかな?」
ライラが不安そうに、俺の腰にすがりながら言う。
「ああ、そんなこと言ってたな。ずっと俺のこと睨んでたし……」
エラゼムもうなずく。
「実力はともかく、相当の殺意を感じました。あれほどの殺意は、そうそう放てるものではありませぬ。そういう意味ではフラン嬢の言う通り、“いかれている”と言えましょうな」
「マジかよ……いかれた殺人鬼ってこと?」
「いえ、どちらかと言えば、特殊な訓練を受けた暗殺者、でしょうか」
あ、暗殺者……どうしてそんなやつが、俺を狙ってくるんだ?やましい事をした覚えはないぞ!……少ししか。
「なんでそんな奴がここに?」
「それは、わかりません。王宮の人間に連れていかれたということは、少なくとも不審人物ではないようです。となると、一の国の軍関係者か、あるいは帝の懐刀か……」
「……皇帝様が気に食わないヤツを、後ろからぶすっと?」
「そういうことも、あるやもしれません」
俺は気分が悪くなってきた。ノロは、あの少女に俺を始末させるために、勇者を呼びつけたのだろうか?いやいや、さすがにそれはないだろう……あり得るかも。あの女帝ならなぁ……
「……うぉーん!どうしてこの国にはおっかない女しかいないんだよぉ!二の国に帰りてーよー!」
自棄になった俺は、引っ付いていたライラを巻き込んでくるくる回る。するとライラは楽しそうにきゃっきゃとはしゃいだ。いや、笑い事じゃないんだって。
ちょうどその時、またも廊下の角から、また別の臣下が現れた。
「おや、こちらにいらっしゃいましたか。二の国からいらっしゃった勇者様ですね?」
「へ?」
「皇帝閣下から伝言です。今夜開かれるパーティーにおいて、二の国の勇者様にもぜひご出席いただきたいと」
……笑えねぇ。
つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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月の神殿からの帰り道を歩きながら、俺は頭を抱えた。
「なんか、次から次に面倒ごとが増えてくな……なんだってあの聖女様は、俺と話がしたいんだ?」
するとフランが、さも面白くなさそうに言う。
「あんがい、一目ぼれとかなんじゃないの」
「いや、俺仮面付けてるだろが……ん、待てよ。確かあの神殿って、昔に召喚された勇者がいるって話だったよな」
「勇者?」
フランが怪訝そうに首をかしげる。するとエラゼムが俺たちの隣に並んだ。
「確かに。以前ラクーンの町を訪れた際に、アニ殿がおっしゃっていましたな」
「だよな。ひょっとして、さっきの聖女様がその勇者なんじゃないか?」
勇者の能力だとしたら、奇跡の力が使える事にも、多少は納得できる。いろいろと規格外の連中が多いのが、勇者ってものだから。
「てことは……あの人も勇者だから、俺と話したがってたってことか。そう考えれば、同僚みたいなもんだしな」
「同僚……」
フランがつぶやくと、ようやく顔から険が取れた。やれやれ。
「勇者……あの女性も、かつて召喚された人ってことですね」
ウィルが後ろの神殿を振り返りながら言う。
「でも私、まだ信じられないんです。だって、あの人は昨日、確かに年老いていました。それなのに……」
「ああ、うん。俺も驚いたよ。信じられないのも一緒だけど、この目でしかと見ちゃったしな……」
すると、仲間たちも一斉にうなずいた。やっぱりこの世界においても、若返りはそうそうあり得ないことらしい。
「あの人も勇者で、しかも光の魔力ってのを持ってるんだよな。光の魔力は、奇跡に例えられるって言うけれど」
歩いていると、庭園の花壇に差し掛かった。色とりどりの花は、どれも生き生きとしていて美しい。だが、色は匂えど散りぬるを。花もいつかは枯れるものだ。花壇の片隅では、庭師たちが萎れた花を引き抜き、新しい株に植え替えていた。
「……とてつもない力をもってすれば、時の流れすらも、巻き戻すことができるんでしょうか……」
ウィルが花々を見ながらつぶやく。時の流れを……俺は何も言えなかった。もしもそんなことが叶うとして、その時……みんなは何を望むのだろう?
しばらく歩いて、ようやくレストハウスが見えてきた。あれ?玄関先に一人の少女が立っている。濃い茶色の髪の、ショートカットの女の子だ。誰だろう?見知らぬ娘だが……その少女は俺たちをちらりと見ると、先に中へ入っていってしまった。臣下の男がこちらを振り向く。
「皆様。今回治療なされた方には、今しばらくの休養が必要でしょう。ですがご安心ください。ライカニール帝は、病人が完治されるまで、こちらにお泊りになってもよいとおっしゃっておいでです」
「それは……ご配慮いただきありがとうございます。皇帝閣下にもそうお伝えください」
ヘイズが礼を返す。ふぅ、するとしばらくは、ここに泊まることになるのか。だがまあ、あの状態のエドガーに無理はさせられないか。とりあえずやることがなくなったので、俺たちは自分たちの部屋に戻ることにした。
「しばらくはここに缶詰めかぁ。せめて町の宿に泊まれたらな。ここじゃいつでも女帝の目が届きそうで、気が気じゃないよ」
廊下を歩きながら文句を言うと、フランがこくりとうなずく。
「あの人、絶対ロクなこと考えてないよ。調子のいい事ばっかり言ってるけど、そうじゃなかったらわざわざ勇者を呼びつけたりしないはずでしょ」
「そうだよなぁ。でも、何考えてるんだろ。この国にはさっきの聖女様と、あのクラークがいるんだぜ。勇者の手は十分足りてそうなのに、どうしてわざわざ二の国の勇者まで……」
「……二の国の、勇者?」
は?その声は、廊下の反対側から聞こえてきた。振り返ってみれば、廊下の突き当りに一人の少女が立っている。あ、あの娘。さっき玄関にいた娘じゃないか?
「えぇっと……?」
「二の国の、勇者と言ったか?」
「え。はい、そうっすけど……」
すると少女は、フゥーっと長いため息をついた。なんだ、失礼だな。むっとした、その時……ぞわわ!全身に鳥肌が立った。こ、これは……今まで何度か感じたことがある。殺気、ってやつだ。
「下がって!」
フランが俺を押し戻す。彼女も異変を感じたようだ。その瞳は、まっすぐ少女を睨みつけている。すると少女は、両手を腰元へと伸ばした。腰には、二本の剣が見える……え、嘘だろ。抜く気か?
「ッ」
一瞬だった。少女は双剣を抜いたかと思うと、背を低くかがめ、猛スピードでこちらに迫ってきた。あまりの速さに、俺は声を掛けることすらできなかった。少女の双剣が翻る。それをフランが鉤爪で迎え撃った。ガキィン!
「お前、一体何のつもり!?」
フランが叫んでも、少女は一切口を開かない。足を振り上げてフランの腕を跳ね上げると、無防備な胴体を切りつけようとする。だが、それはフランを甘く見過ぎだ。フランはお返しだとばかりに自分も足を上げ、サマーソルトキックを放った。少女はとっさに剣を交差させて防御したが、それでフランの怪力を止められるはずがない。少女はぶっ飛ばされ、廊下の床をゴロゴロ転がった。
「くはっ」
少女は一声呻くと、うずくまったまま体を震わせている。あちゃー、やっちまったか?
「ちょっとやりすぎじゃないか?」
「はぁ?いきなり切りかかってきたのはどっち!」
フランが憤慨して俺を振り返る。
「まあそうなんだけど、ほら。相手は女の子だし……」
「知らないよ、そんなの。わたしも女なんだ、それにやられたんじゃ文句はないでしょ」
フランは吐き捨てるように言うと、うずくまる少女を睨みつける。少女は身もだえしながらも、ようやく体を起こそうとしていた。
「ぐぅ……くそ……」
少女はギリっと歯を噛みしめると、恨みのこもった目でフランを睨みつけた……いや、違うぞ。あの娘が見ているのは……
「……俺?」
少女の瞳には、尋常でない憎しみが見て取れる。親の仇でも見るような……少女は双剣を再び握りしめると、またもこちらに突っ込んでくるそぶりを見せた。フランが身構える。すると……
「アルア様!何をなさっているのですか!」
悲鳴に近い声を上げて、廊下の角から臣下がすっ飛んできた。さっき俺たちを案内した男とは別の人だ。そいつは俺たちのそばまで走ってくると、蒼白な顔で俺たちと少女とを交互に見る。
「な、何があったのですか?どうして剣を抜かれて……」
「最初にしかけてきたのは、そっちだよ」
フランが素早く告げ口すると、その少女……アルア、と呼ばれていたか?アルアはキッとフランを睨みつける。
「アルア様、誠でございますか?」
臣下に訊ねられると、アルアは気まずそうに目をそらした。臣下が目を丸くする。
「どうしてそのようなことを!ああ、とにかく、剣をおしまい下さい。外国からいらっしゃったお客様に切りかかるなど、ライカニール帝がお聞きになったらなんとおっしゃるか」
「客人?こいつらがですか?」
アルアは、初めてまともな言葉を話した。少女らしくかわいらしい声だったが、明らかに棘を感じる……棘なんて、なまっちょろいな。有刺鉄線と言ったほうが良さそうだ。
「そうです。ライカニール帝が直々にお招きになった方々です。さあ、こちらへ。お部屋までご案内しなかったわたくしめが悪うございました。お連れしますので、さあ、さあ!」
臣下に背中を押されるようにして、アルアは行ってしまった。廊下の角に消える際、ぎろっとこちらを睨みつけてから……
「な、なんだったんだ……?」
あまりに一瞬の出来事だった。おまけにこちらは、あの少女の名前しかわかっていない。フランが爪を引っ込める。
「なんだかわからないけど、相当いかれてるのは確かだね。でも、そんなに強くはない」
「そうなのか?」
「うん。あの金髪勇者とか、マスカレードに比べたら、全然ザコ」
ふむ……何度も強敵と戦ってきたフランが言うのなら、そうなんだろう。一般人の俺からしたら相当早く動いていたけれど、確かに一撃でノックアウトされていたしな。
「あの人、桜下が勇者だって分かったから、襲ってきたのかな?」
ライラが不安そうに、俺の腰にすがりながら言う。
「ああ、そんなこと言ってたな。ずっと俺のこと睨んでたし……」
エラゼムもうなずく。
「実力はともかく、相当の殺意を感じました。あれほどの殺意は、そうそう放てるものではありませぬ。そういう意味ではフラン嬢の言う通り、“いかれている”と言えましょうな」
「マジかよ……いかれた殺人鬼ってこと?」
「いえ、どちらかと言えば、特殊な訓練を受けた暗殺者、でしょうか」
あ、暗殺者……どうしてそんなやつが、俺を狙ってくるんだ?やましい事をした覚えはないぞ!……少ししか。
「なんでそんな奴がここに?」
「それは、わかりません。王宮の人間に連れていかれたということは、少なくとも不審人物ではないようです。となると、一の国の軍関係者か、あるいは帝の懐刀か……」
「……皇帝様が気に食わないヤツを、後ろからぶすっと?」
「そういうことも、あるやもしれません」
俺は気分が悪くなってきた。ノロは、あの少女に俺を始末させるために、勇者を呼びつけたのだろうか?いやいや、さすがにそれはないだろう……あり得るかも。あの女帝ならなぁ……
「……うぉーん!どうしてこの国にはおっかない女しかいないんだよぉ!二の国に帰りてーよー!」
自棄になった俺は、引っ付いていたライラを巻き込んでくるくる回る。するとライラは楽しそうにきゃっきゃとはしゃいだ。いや、笑い事じゃないんだって。
ちょうどその時、またも廊下の角から、また別の臣下が現れた。
「おや、こちらにいらっしゃいましたか。二の国からいらっしゃった勇者様ですね?」
「へ?」
「皇帝閣下から伝言です。今夜開かれるパーティーにおいて、二の国の勇者様にもぜひご出席いただきたいと」
……笑えねぇ。
つづく
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