じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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12章 負けられない闘い

14-1 予期せぬ延長戦

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14-1 予期せぬ延長戦

「どっ、どういうことだ!」

俺はリングに向かって叫んだが、その声は周囲の大歓声にかき消されてしまった。観客たちの様子は、阿鼻叫喚と称してもいいくらいの熱狂っぷりだ。顔を真っ赤にし、腕を振り上げて、声のかぎりに叫んでいる。それほどまでに、ノロのサプライズは刺激的かつ、魅力的だったということなんだろう。
だけど!当事者である俺たちには、何の話も来てないぞ!くそったれ、これで二度目じゃないか!

「なんなんだよ、ちくしょう……!」

「お、桜下さんっ。まずいですよ、なんとしても止めないと!こんなこと、許されるはずがありません!」

「ああ、わかってる!抗議でもなんでもやってやるぞ!」

いい加減、我慢の限界だ。これ以上なし崩しにされてたまるか!俺は勢いよく立ち上がり、ウィルとライラもその後に続こうとした。だが……

「二の国の勇者さまですね。お迎えにあがりました」

あ?いつの間にか、俺たちの背後には、ターバンを巻いた男たちがずらりと勢ぞろいしていた。ノロの家臣たちだ……!ちっ、動きが早い。

「……お迎え?あいにく、俺たちはあんたらに迎えられるつもりはない。お構いなく、ってやつだ」

「いいえ、そうはまいりません。お聞きになったでしょうが、これより勇演武闘の第四試合が開始されます。あなた様には、控室までご一緒していただかないと」

「あんたたちな……いい加減に!」

「桜下!」「桜下殿!」

ちょうどその時、臣下たちの後ろから、フラン、エラゼム、アルルカが駆け足でやってきた。フランとエラゼムは男たちをぐいと押しのけると、俺との間に立ちふさがる。

「フラン、エラゼム。さっきの、聞いてたか?」

「あの笑えもしない冗談のこと?聞こえたよ、あれだけバカでかい声がすれば」

「だよな。で、そのお出迎えがやってきたところなんだ」

「ならばこやつらは、桜下殿を連れて行こうというのですな。念のためお聞きしますが、事前に交渉などは?」

「あったら、こんな顔してないよ!」

「やはりそうですか……」

二人は敵意をあらわにして、臣下たちを睨みつける。臣下たちは見た目は穏やかなままだったが、わずかに肩をこわばらせたのが分かった。さて、どう出てくる。周りには人の目も多いが、力づくでも連れて行く気か?それならそれで、こっちにも考えがあるぞ……!

「ま……待ってくれ!」

あぁ?割って入ってきたのは、慌てた様子のクラークだった。

「クラーク?おい、何のつもりだ?」

「いいから、耳を貸すんだ……!」

クラークは俺の肩を掴むと、ぐいと引っ張って後ろを向かせた。そのまま声を潜めて言う。

「君たち、冷静になれよ。ここで王宮の人と喧嘩なんてしたら、大騒ぎになるぞ……!」

「だったら、おとなしく従えって?冗談じゃない!」

「分かってる、僕だってそうさ。けど、ここで暴れても、問題は解決しないよ」

「……じゃあ、どうしろってんだ」

「ひとまず、彼らに従おう。僕の仲間と合流して、もう一度話し合うんだ。なにか案が出るかもしれない」

「案って、んなもんそう都合よく出るのかよ?」

「そんなの、僕だって分からないよ!けど、ひょっとするとアドリアなら、もう目を覚ましているかもしれない。もしかしたら、もうひと試合できるかもしれないじゃないか」

俺はびっくりして、クラークの顔をまじまじと見た。いくらアドリアと言えど、連戦はしんどいはずだろう。それなのに、こいつがこんなことを言うとは……

「……ちっ。わかった。確かにここじゃ、人目が多すぎるしな」

「よし」

クラークはうなずくと、こちらを訝し気に見つめる家臣たちに、笑顔で振り向いた。

「すみません、お待たせして。彼もいっしょに行くことを承知してくれました」

「おお、誠でございますか。ありがとうございます、クラーク様。それではみなさま、参りましょう」

臣下がにっこり笑って歩き出すと、フランたちが驚いた顔でこちらを見た。

「ちょっと、まさか行く気なの?」

俺は苦り切った顔でうなずく。

「ああ……ひとまず、この場はそうすることにした」

「ひとまずって……」

「クラークが一度、仲間と合流したいそうなんだ。それに、ここは人目が多い」

「そんな……でも……いや、わかった。じゃあ、付いていくだけなんだね?」

「もちろん。延長戦については当然ノーサンキューだ」

「ん、わかった」

フランはうなずくと、もうそれ以上なにも言わなかった。他のみんなも、渋々ながら了承したようだ。
俺たちとクラークは、臣下の男たちに続いて、控室とやらに向かっていく。道すがらに気付いたんだけれど、フランは右足を引きずるように歩いている。エラゼムの歩き方も変だ。二人とも、足を怪我しているんだな。それにアルルカだって、体のあちこちに傷をつくっている……
仮にクラークたちの誰かが連戦できたとして、フランたちはもう一度戦えるだろうか?“ファズ”の呪文が普段通り使えれば問題はないんだけれど、今は俺の能力は使えないし……
そんなことを悩んでいるうちに、いつの間にか控室前まで来ていた。控室と言っても、リングのそばの空き部屋に、ベッドをいくつかしつらえただけの簡素な造りだ。臣下たちはそこに俺たちを通すと、気味が悪いほどにこやかな微笑みを浮かべてお辞儀をした。

「こちらが、二の国の勇者様用の控室となります。クラーク様のお部屋はこのあとでご案内させていただきますが、その前に……」

「その前に、はっきり言わせてもらうぞ。俺は、追加試合なんてやる気はないからな!」

俺は臣下に割り込むように、きっぱりと言い切った。この前から俺は、ずーっと押し切られっぱなしだ。黙ったままじゃ、また向こうのいいようにされちまう。そうはさせるかってんだ。
臣下の男は、不思議そうに首をかしげた。

「おや?こちらにいらしたということは、了承してくださったという事ではないのですか?」

「違うな。あそこじゃ人目につきすぎるから、場所を移したんだ。けどここでなら、何が起こっても騒ぎにならないだろ?」

「ふむ、なるほど……」

俺の挑発ともとれる発言にも、臣下は全く顔色を変えなかった。それどころか、面白そうに笑みまで浮かべている。「怖いもの知らずの子どもだ」とでも言いたげな笑みだ。

「あなた様のご意見は承知いたしました。ですが、その“何か”とやらをご行動される前に、少しだけお時間をいただけないでしょうか?」

「は?時間?」

「ええ。少々お待ちください」

何のつもりだ?臣下たちは俺の話も聞かずに、恭しく頭を下げると、控室を出て行ってしまった。

「何をする気なんだ……?」

それからほどなくして、外の廊下を歩く足音が聞こえてきた。誰かが向かってきているみたいだが……?その何者かが、控室の戸口に姿を現した。

「やあ、勇者諸君。お揃いのようだな」

……ちくしょう。今一番会いたくない相手だ。女帝ノロが、不敵な笑みを浮かべて、戸口に立っていた。



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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