495 / 860
12章 負けられない闘い
15-3
しおりを挟む
15-3
クラークは再生したオレの腕を穴が開くほど見つめると、苦々し気に舌打ちした。
「くそ……!もともとでたらめだったくせに、さらに常識外れになったな!」
「的確な指摘だァ、クラーク!オレの肉を切りてェなら、テメーの骨をまるごといただくことになるぜェ!」
「なら、切らなければいいだけだ!」
やつの剣が輝きを増す。おおっと、そう出てくるか!
「ボルテック・ターミガン!」
ジジジジッ!無数の電撃が、羽根吹雪のように飛んでくる。一撃でダメなら、手数で攻めようって魂胆だな?
「上等だァ!付いてこれるなら付いてきな!」
全速力で走りだす!やつが雷なら、オレたちは風だ!どちらが速いか、勝負と行こう!
「はああああ!」
クラークが叫ぶと、電撃の量が増す。その電撃の嵐のすぐ先を、オレは疾風の如く走っていく。一歩でも速度を緩めたら、オレは一瞬でハチの巣にされるだろう。ゾクゾクするじゃねェか!
「ちょこまかとおおお!止まれぇ!」
「そいつは、できねェ相談だなァ!」
今だ!オレは整備の際に見落とされていた、クルミほどの小さな石ころを、思い切り蹴っ飛ばした。ただの石ころは、それこそ弾丸のようなスピードで飛んでいき、クラークはそれをすんでのところでかわした。やつの背後の壁で、騒々しい音が立つ。メギャア!ガラガラガラ……
「っ!」
それに気を取られてか、ほんの一瞬、クラークにスキが生じた。今がチャンスだ!
「おらああぁぁ!」
オレは踵でギュルンと回転すると、クラークに向かって飛び込んでいく。クラークは一瞬慌てた表情を見せたが、冷静に剣先をオレに向ける。電撃の雨が飛んでくる!
「だけどなァ!んなもん、当たらなきゃいいんだよォ!」
ハッハァ!雷の暴風雨の中を突き進んでいけ!気分は嵐に挑む航海士だ!バチ、バチィ!
『相当数が当たってるけど?』
「かすり傷ならノーカンだァ!」
多少の傷なら即座に回復する!オレはそうやって強引に、電撃の嵐を突破した。捉えたぞ、クラーク!
「でりゃあああ!」
「くっ!」
オレたちの拳を喰らいやがれ!だがやつは、当たる直前でネズミのように体をひるがえした。オレのパンチは地面に吸い込まれる。
ドゴォ!ビシィ!オレの渾身の一撃は、今までさんざん痛めつけられてきたリングに、とうとう致命傷を与えてしまった。オレの拳を始点にして、左右にカミナリのようなヒビが走る。
ズズズ……バキバキバキ!ぐらぐらと地面が揺れ、リング全体が左右にぱっくりと割れた。あーりゃりゃ、底にあった基礎の部分をぶっ壊しちまったみてえだ。ノロがどんなにわがままを言っても、もう次の試合は無理そうだな。ガハハ!
「なっ……なんて馬鹿力だ……」
クラークが顔を青ざめさせている。クカカ、気ィ付けてくれよ?今のオレは、力の加減がデタラメだ!
「くそぉ……!」
クラークは歯噛みすると、何もないところで剣をびゅーんとスイングする。空振り?
「ピーコックウェイブ!」
ブワー!太刀筋から、電撃波がカーテンのように放出された!広いな、これはよけきれねぇ!
「ぬうぅ!」
腕を交差させて、電撃をガードする。電撃が当たると、まるで高波に押しのけられたような衝撃だ。しかも熱い!生身で喰らっていたら、ひとたまりもなかっただろうな。だが!
「ぬるいぜ、クラーク!もう息切れかァ!?」
この程度、屁でもねぇぜ!さっきまでに比べて、明らかに電撃の威力が落ちている。確かアニいわく、やつの魔法は詠唱を必要としないが、その分大量の魔力を消費するんだってな。ほら、やつは悔しそうに顔を歪めるが、上下する肩までは誤魔化しきれていねえ。いくら勇者といえど、魔力は無限じゃないってこった。
『チャンスだよ!ここから畳みかければ、あいつもいずれ限界が来る!』
フランが珍しく興奮した声で俺を急かす。チッチッチ。
「確かになァ。けどよ、フラン。それじゃロマンがねーじゃねェか?」
『はあ?ろ、ロマン?』
「おうよ。どうせなら、派手に幕切れといこうぜェ!だろ、クラーク!」
オレが呼びかけると、クラークは荒い息をしながらも、怪訝そうな顔でこちらを見る。
「てめーだってよ、少年の心ってもんは分かるだろ?このままどちらかがへばって終わりだなんて、つまんねーだろうが?」
「はぁ、はぁ……何が言いたいんだ?」
「ダラダラ続けたってしょうがねェ!ここいらで一発、ドカンとフィニッシュと行こう!お互いのありったけの技をぶつけてなァ!」
「なんだって……?」
『ど、どういうこと?』
おおっと、女の子のフランにはわからないか?いや、フランみたいなクールな娘からしたら、きっとオレはバカにしか見えないんだろうさ!カカカ!
「お互いの必殺技をぶつけ合おうぜ!闘いの最後は切り札同士の激突!熱いバトルのエンドってのは、そう決まってるだろうが!」
クラークはぽかんと口を開けている。ありゃ驚いているんじゃなくて、心底呆れた顔だな。だがクラークは、すぐににやりと笑った。
「……ふっ。そうだね。それに、確かに面白い!」
「ハッハァ!そうこなくっちゃなァ!」
『……』
やっぱり乗ってきた!フランの無言のため息が聞こえた気もするが、関係ねぇ!
オレたちは示し合わせたように、ばっと距離を取った。互いに一直線に、リングの端と端まで走っていく。ちょうど、真っ二つに割れたリングの亀裂を対角線にして、オレたちは再び向き合った。
「はあぁぁぁぁ……」
遠く離れたクラークの気合が、ここまで聞こえてくるようだ。やつは魔法剣を前に突き出し、目を閉じて意識を集中している。おそらく、体中の全神経、全魔力があの剣に集約しているはずだ。ビリビリするような力が、やつの手元に集まっているのを感じる。
『ね、ねえ。本当に大丈夫なの?必殺技って言ったって、あなたにもわたしにも、そんなものなかったんじゃ』
さすがに不安になったのか、フランの焦った声。ハハッ、今日はいろんなフランが見られる日だな。
「心配いらねェぜ、フラン。確かに、オレにもお前にも、必殺技っつうのはなかった。だがな、“オレたち”にはあるんだよ」
『わたし、たち?』
「おうとも!さァ、最後の仕上げだ!いっちょ力借りるぜ、フランセス!」
ピカ!ゴゴーン!上空の黒雲で雷が轟いた。雨は次第に激しさを増し、空は夜になったのかと勘違いしそうなほど暗い。そんな中で、燦然と輝く光が一つ。クラークの魔法剣だ。やつの剣は、今まで見たことがないほどの光を放っている。それは闇夜に輝く灯台のように、人々の目と心を引き付ける。
「はああぁぁぁぁ……!」
ジジジ……バチバチバチ!ついにクラークの全身からも、電気が放たれ始めた。雨粒が彼に当たると、一瞬で蒸発してしまう。
やつの背後には、円形の電撃の陣が形成されつつあった。その陣の内側には、途方もない雷のエネルギーが渦を巻いている。それのまぶしいのなんの、恒星を一つ、地上に落っことしたみたいだ。しかも、どんどん大きくなっていく。
「いいねェ……そうこなくっちゃなァ!」
楽しくなってきやがったぜ!オレは両腕をビュンと振ると、腕に巻き付いた鎖を地面に放った。鎖は土を穿って突き刺さり、しっかりと固定される。
「行くぜェ……魂のありったけを、この一撃に込める……!」
オレは両腕をまっすぐに突き出した。その両腕の間に、薄紅色の魔力を集中させる。膨大な魔力が、オレの目の前に集まっていく……!
『これって……ソウルカノン?』
「チッチッチ……こいつはそれとは、一味違うぜ……!」
圧縮された魔力は、今にも弾け飛びそうだ。だがそれを無理やり押し込め、オレはさらに力を溜める。まだだ、もう少し……波が最高潮になるまで、歯を食いしばって耐える……!
そしてクラークもまた、臨界点に到達しようとしていた。やつの背後の雷はとんでもなく膨れ上がり、すぐ後ろに満月が浮かんでいるように見える。激しく渦を巻く雷のエネルギーは、空気を震わせて奇妙な音を発していた。フィーン、フィィィィン!
オレたちの力は、ともに最大ボルテージを迎えていた。お互いから放たれる見えないオーラが、リングの中心地点で押し合いへし合いしているようだ。オーラは熱気となって、会場全体を包み込む。コロシアム丸ごとを闘気の渦に放り込んだように。そしてその熱が、上空の雷雲へと立ち上り……
カッ!一瞬の閃光。数刻遅れて、空気を震わせる轟音。それはまさしく、開戦を告げるラッパだっ!
「スクアーロ・コライダァァァァァァ!!!」
クラークが叫ぶ!迎え撃て!
「ブチ抜けェ!ソウル“フル”・カノンッ!!!」
ズドドド!オレの両腕の間に限界まで圧縮されていた魔力が、一気に解き放たれる。それは紅色の濁流となって、クラークへとまっすぐ進んでいく!
対してクラークの剣先からは、膨れ上がった膨大なエネルギーが一点に集中、超密度のビームとなって放たれた。ズビィィィィ!
文字通り、相手を必ず倒す必殺技!それがリングの中心でぶつかり合う!
ズガガガガガガガガ!
とんでもない衝撃波に、思わず吹っ飛びそうになった。オレの技を押し返そうとするクラークのビームの威力が、両腕にはっきりと伝わってくる。だが地面に放った鎖が、オレを支えてくれている!
「うおおぉぉぉぉ!」
もっとだ!もっと魔力を!オレの気合に応じて、カノンはさらに太く、勢いを増した。
「はああああああ!」
クラークが叫ぶ。それに応じて、ビームはさらに鋭く、輝きを増した。
二人の必殺技がぶつかる交点は白く輝き、同時に凄まじいエネルギーをほとばしらせている。どちらかが押せば押し返し、どちらかが引けば差し戻す。二人の力は、完全に互角だった。
「おおおおおおおおお!!!」
「あああああああああ!!!」
するとその中心点に、真っ白な光の球体が生じ始めた。ぶつかり合い、行き場を失った膨大なエネルギーが渦を巻いているのか……オレは、新たな星の誕生を見ている気分だった。
その光の球は、どんどん大きさを増していく。強烈な光があたりを埋め尽くす。ひび割れたリングも、観客たちも、そしてオレたちをも飲み込んだ。光の洪水だ。
影は消え去り、全ての輪郭がぼやけていった。空も、大地も、何もかもが同じ色になる。時間も、空間も、ついには体の感覚さえもなくなり……
そして、全てが白くなった。
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
====================
Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。
↓ ↓ ↓
https://twitter.com/ragoradonma
クラークは再生したオレの腕を穴が開くほど見つめると、苦々し気に舌打ちした。
「くそ……!もともとでたらめだったくせに、さらに常識外れになったな!」
「的確な指摘だァ、クラーク!オレの肉を切りてェなら、テメーの骨をまるごといただくことになるぜェ!」
「なら、切らなければいいだけだ!」
やつの剣が輝きを増す。おおっと、そう出てくるか!
「ボルテック・ターミガン!」
ジジジジッ!無数の電撃が、羽根吹雪のように飛んでくる。一撃でダメなら、手数で攻めようって魂胆だな?
「上等だァ!付いてこれるなら付いてきな!」
全速力で走りだす!やつが雷なら、オレたちは風だ!どちらが速いか、勝負と行こう!
「はああああ!」
クラークが叫ぶと、電撃の量が増す。その電撃の嵐のすぐ先を、オレは疾風の如く走っていく。一歩でも速度を緩めたら、オレは一瞬でハチの巣にされるだろう。ゾクゾクするじゃねェか!
「ちょこまかとおおお!止まれぇ!」
「そいつは、できねェ相談だなァ!」
今だ!オレは整備の際に見落とされていた、クルミほどの小さな石ころを、思い切り蹴っ飛ばした。ただの石ころは、それこそ弾丸のようなスピードで飛んでいき、クラークはそれをすんでのところでかわした。やつの背後の壁で、騒々しい音が立つ。メギャア!ガラガラガラ……
「っ!」
それに気を取られてか、ほんの一瞬、クラークにスキが生じた。今がチャンスだ!
「おらああぁぁ!」
オレは踵でギュルンと回転すると、クラークに向かって飛び込んでいく。クラークは一瞬慌てた表情を見せたが、冷静に剣先をオレに向ける。電撃の雨が飛んでくる!
「だけどなァ!んなもん、当たらなきゃいいんだよォ!」
ハッハァ!雷の暴風雨の中を突き進んでいけ!気分は嵐に挑む航海士だ!バチ、バチィ!
『相当数が当たってるけど?』
「かすり傷ならノーカンだァ!」
多少の傷なら即座に回復する!オレはそうやって強引に、電撃の嵐を突破した。捉えたぞ、クラーク!
「でりゃあああ!」
「くっ!」
オレたちの拳を喰らいやがれ!だがやつは、当たる直前でネズミのように体をひるがえした。オレのパンチは地面に吸い込まれる。
ドゴォ!ビシィ!オレの渾身の一撃は、今までさんざん痛めつけられてきたリングに、とうとう致命傷を与えてしまった。オレの拳を始点にして、左右にカミナリのようなヒビが走る。
ズズズ……バキバキバキ!ぐらぐらと地面が揺れ、リング全体が左右にぱっくりと割れた。あーりゃりゃ、底にあった基礎の部分をぶっ壊しちまったみてえだ。ノロがどんなにわがままを言っても、もう次の試合は無理そうだな。ガハハ!
「なっ……なんて馬鹿力だ……」
クラークが顔を青ざめさせている。クカカ、気ィ付けてくれよ?今のオレは、力の加減がデタラメだ!
「くそぉ……!」
クラークは歯噛みすると、何もないところで剣をびゅーんとスイングする。空振り?
「ピーコックウェイブ!」
ブワー!太刀筋から、電撃波がカーテンのように放出された!広いな、これはよけきれねぇ!
「ぬうぅ!」
腕を交差させて、電撃をガードする。電撃が当たると、まるで高波に押しのけられたような衝撃だ。しかも熱い!生身で喰らっていたら、ひとたまりもなかっただろうな。だが!
「ぬるいぜ、クラーク!もう息切れかァ!?」
この程度、屁でもねぇぜ!さっきまでに比べて、明らかに電撃の威力が落ちている。確かアニいわく、やつの魔法は詠唱を必要としないが、その分大量の魔力を消費するんだってな。ほら、やつは悔しそうに顔を歪めるが、上下する肩までは誤魔化しきれていねえ。いくら勇者といえど、魔力は無限じゃないってこった。
『チャンスだよ!ここから畳みかければ、あいつもいずれ限界が来る!』
フランが珍しく興奮した声で俺を急かす。チッチッチ。
「確かになァ。けどよ、フラン。それじゃロマンがねーじゃねェか?」
『はあ?ろ、ロマン?』
「おうよ。どうせなら、派手に幕切れといこうぜェ!だろ、クラーク!」
オレが呼びかけると、クラークは荒い息をしながらも、怪訝そうな顔でこちらを見る。
「てめーだってよ、少年の心ってもんは分かるだろ?このままどちらかがへばって終わりだなんて、つまんねーだろうが?」
「はぁ、はぁ……何が言いたいんだ?」
「ダラダラ続けたってしょうがねェ!ここいらで一発、ドカンとフィニッシュと行こう!お互いのありったけの技をぶつけてなァ!」
「なんだって……?」
『ど、どういうこと?』
おおっと、女の子のフランにはわからないか?いや、フランみたいなクールな娘からしたら、きっとオレはバカにしか見えないんだろうさ!カカカ!
「お互いの必殺技をぶつけ合おうぜ!闘いの最後は切り札同士の激突!熱いバトルのエンドってのは、そう決まってるだろうが!」
クラークはぽかんと口を開けている。ありゃ驚いているんじゃなくて、心底呆れた顔だな。だがクラークは、すぐににやりと笑った。
「……ふっ。そうだね。それに、確かに面白い!」
「ハッハァ!そうこなくっちゃなァ!」
『……』
やっぱり乗ってきた!フランの無言のため息が聞こえた気もするが、関係ねぇ!
オレたちは示し合わせたように、ばっと距離を取った。互いに一直線に、リングの端と端まで走っていく。ちょうど、真っ二つに割れたリングの亀裂を対角線にして、オレたちは再び向き合った。
「はあぁぁぁぁ……」
遠く離れたクラークの気合が、ここまで聞こえてくるようだ。やつは魔法剣を前に突き出し、目を閉じて意識を集中している。おそらく、体中の全神経、全魔力があの剣に集約しているはずだ。ビリビリするような力が、やつの手元に集まっているのを感じる。
『ね、ねえ。本当に大丈夫なの?必殺技って言ったって、あなたにもわたしにも、そんなものなかったんじゃ』
さすがに不安になったのか、フランの焦った声。ハハッ、今日はいろんなフランが見られる日だな。
「心配いらねェぜ、フラン。確かに、オレにもお前にも、必殺技っつうのはなかった。だがな、“オレたち”にはあるんだよ」
『わたし、たち?』
「おうとも!さァ、最後の仕上げだ!いっちょ力借りるぜ、フランセス!」
ピカ!ゴゴーン!上空の黒雲で雷が轟いた。雨は次第に激しさを増し、空は夜になったのかと勘違いしそうなほど暗い。そんな中で、燦然と輝く光が一つ。クラークの魔法剣だ。やつの剣は、今まで見たことがないほどの光を放っている。それは闇夜に輝く灯台のように、人々の目と心を引き付ける。
「はああぁぁぁぁ……!」
ジジジ……バチバチバチ!ついにクラークの全身からも、電気が放たれ始めた。雨粒が彼に当たると、一瞬で蒸発してしまう。
やつの背後には、円形の電撃の陣が形成されつつあった。その陣の内側には、途方もない雷のエネルギーが渦を巻いている。それのまぶしいのなんの、恒星を一つ、地上に落っことしたみたいだ。しかも、どんどん大きくなっていく。
「いいねェ……そうこなくっちゃなァ!」
楽しくなってきやがったぜ!オレは両腕をビュンと振ると、腕に巻き付いた鎖を地面に放った。鎖は土を穿って突き刺さり、しっかりと固定される。
「行くぜェ……魂のありったけを、この一撃に込める……!」
オレは両腕をまっすぐに突き出した。その両腕の間に、薄紅色の魔力を集中させる。膨大な魔力が、オレの目の前に集まっていく……!
『これって……ソウルカノン?』
「チッチッチ……こいつはそれとは、一味違うぜ……!」
圧縮された魔力は、今にも弾け飛びそうだ。だがそれを無理やり押し込め、オレはさらに力を溜める。まだだ、もう少し……波が最高潮になるまで、歯を食いしばって耐える……!
そしてクラークもまた、臨界点に到達しようとしていた。やつの背後の雷はとんでもなく膨れ上がり、すぐ後ろに満月が浮かんでいるように見える。激しく渦を巻く雷のエネルギーは、空気を震わせて奇妙な音を発していた。フィーン、フィィィィン!
オレたちの力は、ともに最大ボルテージを迎えていた。お互いから放たれる見えないオーラが、リングの中心地点で押し合いへし合いしているようだ。オーラは熱気となって、会場全体を包み込む。コロシアム丸ごとを闘気の渦に放り込んだように。そしてその熱が、上空の雷雲へと立ち上り……
カッ!一瞬の閃光。数刻遅れて、空気を震わせる轟音。それはまさしく、開戦を告げるラッパだっ!
「スクアーロ・コライダァァァァァァ!!!」
クラークが叫ぶ!迎え撃て!
「ブチ抜けェ!ソウル“フル”・カノンッ!!!」
ズドドド!オレの両腕の間に限界まで圧縮されていた魔力が、一気に解き放たれる。それは紅色の濁流となって、クラークへとまっすぐ進んでいく!
対してクラークの剣先からは、膨れ上がった膨大なエネルギーが一点に集中、超密度のビームとなって放たれた。ズビィィィィ!
文字通り、相手を必ず倒す必殺技!それがリングの中心でぶつかり合う!
ズガガガガガガガガ!
とんでもない衝撃波に、思わず吹っ飛びそうになった。オレの技を押し返そうとするクラークのビームの威力が、両腕にはっきりと伝わってくる。だが地面に放った鎖が、オレを支えてくれている!
「うおおぉぉぉぉ!」
もっとだ!もっと魔力を!オレの気合に応じて、カノンはさらに太く、勢いを増した。
「はああああああ!」
クラークが叫ぶ。それに応じて、ビームはさらに鋭く、輝きを増した。
二人の必殺技がぶつかる交点は白く輝き、同時に凄まじいエネルギーをほとばしらせている。どちらかが押せば押し返し、どちらかが引けば差し戻す。二人の力は、完全に互角だった。
「おおおおおおおおお!!!」
「あああああああああ!!!」
するとその中心点に、真っ白な光の球体が生じ始めた。ぶつかり合い、行き場を失った膨大なエネルギーが渦を巻いているのか……オレは、新たな星の誕生を見ている気分だった。
その光の球は、どんどん大きさを増していく。強烈な光があたりを埋め尽くす。ひび割れたリングも、観客たちも、そしてオレたちをも飲み込んだ。光の洪水だ。
影は消え去り、全ての輪郭がぼやけていった。空も、大地も、何もかもが同じ色になる。時間も、空間も、ついには体の感覚さえもなくなり……
そして、全てが白くなった。
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
====================
Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。
↓ ↓ ↓
https://twitter.com/ragoradonma
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる