じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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14章 痛みの意味

4-2

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4-2

「へっへっへっへ……」

追いはぎたちは、にやけ面を隠そうともしない。完全に俺たちを追い込んだと思っているんだ。

「油断したなぁ、坊ちゃんよぉ。仲間がずいぶんお世話になったみてえだな?」

「……いいや。大したことなかったさ」

「ひゃひゃひゃ、威勢がいいねえ。どこまで持つか、俺と賭けるか?え?」

追いはぎの男は、隣の男を肘でつついた。

「そうだな。俺は、指一本だな」

「へえ、そうかい?おらぁ爪一枚だ。間違いなく、ションベン漏らしてぴーぴー泣きわめくはずさ」

指に、爪?いったい何で賭けをしているんだろう。だがまあ、間違っても愉快な内容ではなさそうだ。それより今は、聞きたいことがある。

「なあ、聞いてもいいかな。どうやって俺たちを待ち伏せたんだ?」

「あ?おお、そうだろうな。不思議だろうが、え?お前たち高尚な魔術師様は、魔法が自分たちだけのもんだと思ってやがるもんな?」

俺は魔術師じゃないが……それより、男の口ぶりだと、こいつらも魔法を?

「あんた、魔法が使えるのか?」

「けっ!んなもん、誰が使うか!願い下げに決まってんだろ!俺たちは、てめえらみたいな汚ねえまやかしは使わねえ。俺たちが使うの、こいつよ!」

男はポケットから、薄汚れた小さい水晶玉を取り出した。あ、とライラが声を上げる。

「あれ、クレボンストーンだよ」

クレボンストーン……?あ、思い出した!前にロアがよこしてきたやつだ。遠くの景色を見ることができるっていう。

「って、それも魔法の道具じゃないか」

「ち、ちげえ!これは道具だ!てめえらのインチキ手品とはわけが違う!」

何がどう違うんだ?にしても、どうにもこいつら、魔術師への恨みは相当のようだ。三の国じゃ、魔法を使えない人はゴミクズのように扱われる。だからだろうか。

「俺たちはこいつで仲間から合図を受け取った!だから町に餌を捲いといたのよ」

「餌?……まさか、あの受付嬢もグルか!」

「へっへっへ。あの女は俺たちの仲間じゃねえ。だが金さえ出しゃ、いくらでも股ぁ開くアバズレよ」

買収していた、ってことか。フランが「やっぱり」と苦々し気に舌打ちする。

「あんたらはそうやって、何人もの魔術師をここで葬ってきたわけか」

「そのとぉーり!お前たちはまんまと餌に釣られて、のこのこやってきたってわけよ!自分たちの墓場になぁ!」

ちぃ、やっぱり罠だったのか。前に追いはぎの男が、「俺たちにゃ何か策があるんだ」みたいなこと言っていたけど、このことだったんだな。難を逃れた旅人たちは、町で待ち構えていた別の仲間に寝首を掻かれることになるんだ。……こんなことが横行しているのに、国は取り締まりすらしないのか?

「はぁ。ったく、めんどーなことになっちまったな」

俺はため息をついて、男たちの数を数える。ざっと、たぶん前回の倍くらいはいそうだ。その数で洞窟をふさいでしまっているから、避けようもないし。

「桜下殿。ここは吾輩たちにお任せを」

エラゼムが大剣を構えて、俺の前へ進み出た。フランもその横に並ぶ。

「エラゼム、守りは任せていい?」

「承知しました。前は頼みますぞ」

フランはうなずくと、一人で堂々と、大勢の男たちの前に立った。

「へいへいへーい!女の子だぜ!おい、こいつが例のガキなんじゃねえか?」

追いはぎたちがフランを指さして冷やかす。あいつら、フランについて何か聞いているのか?

「ああ、そうに違ぇねえ!このチビが、キスもまともにできねぇ未通女だ!」

あっ、あの野郎。フランが気にしていたことを……
男たちはピーピーと口笛を吹いたが、フランはいたって平然としている。どころか、むしろ誇らしげに胸を張った。

「ふん。それ、いつの話?あいにくだけど、もうしたことあるから」

おぉおい、フラン……そんな、胸を張って自慢するような事じゃ……ほら見ろ、男たちだって目を点にしているじゃないか。

「あん?なんだお前、相手がいんのか。ひょっとして、あのボウズか?」

「だったら?」

「ぶひゃひゃひゃ!こりゃ傑作だぜ!おいお嬢ちゃん、あんなクソガキよりもいい男が、ここにたくさんいるぜ?」

「……は?」

「げははは!そりゃいいな。おい、俺の方があいつよりも、よっぽど気持ちよくしてやれるぞ?どうせあんなモヤシ、ベッドじゃ使い物にならねーだろうしなぁ!」

ぷちん。切れた音がした。俺じゃない、フランの堪忍袋が……

「……荒れそうですな」

エラゼムが剣を構えて、俺を後ろに下がらせる。どっちかって言うと、追いはぎよりも、フランから守るように……そんなこと露も知らない男たちは、まだニタニタとフランをからかい続けている。その内の一人が、唇を突き出しながら、フランの前へとひょこひょこ歩いて行った。危ない、自殺行為だ!
ガシッ!

「うげっ……」

男の首根っこを、フランがガッと掴み上げた。そのまま腕を高く上げたので、男の足がジタバタと宙に浮く。

「がっ……げげっ……!」

「……お前、言ってはいけないことを言ったな」

男の顔はだんだん土気色になり、目は飛び出しそうだ。他の連中は、少女が大の男の首を絞める異様な光景に、すっかりビビってしまっている。俺が「そろそろまずいんじゃ……」、と思ったタイミングで、フランは掴んでいた男をぶんとわきに放り捨てた。男は紙くずのように地面に転がった。

「……がああぁぁぁ!」

ひいぃ!フランは野獣がごとく咆哮すると、男たちへの突撃を開始した!男たちはすっかりびびってしまい、対応が遅れる。フランは姿勢を低くして突っ込むと、一度の足払いで五人を同時に転倒させた。すぐさまそのうちの一人の足を掴むと、片手でぐるぐると振り回す。当たったやつは当然吹っ飛ぶ。もうこれだけで、相当数がぶっ倒されていた。

「この野郎!死ねぇ!」

あ!隙をついて、男の一人がフランの背中に、剣を突き立てた。ドス!

「……それは、無理」

「え!?な、なんで……」

フランは掴んでいた足を放り出すと、刺してきた男の腕を、後ろ手で掴み返した。ガシッ!

「うぐっ!?う、ぎゃぁあ!う、腕が!腕がぁぁぁぁ!」

掴まれた男はぎゃあぎゃあと泣き叫んでいた。おそらく、万力のような力で締め上げられているはずだ……
フランはパッと手を放すと、回し蹴りで男をぶっ飛ばした。

「……もう、死んでる」

剣が背中に刺さっていても顔色一つ変えない少女に、男たちは完全に気圧されていた。

「ば、化物だ……」

「敵いっこない……う、うわああぁぁ!」

一人が転がるように逃げ出すと、他の連中も我先にと逃げ出し始めた。だがフランは容赦しない。

「ウィルッ!逃がさないようにして!」

「うひゃ!ひゃ、はいぃ!」

ウィルはロッドを落っことしそうになりながらも、大慌てで呪文を唱えた。

「フレイムパイン!」

ズゴゴゴ!燃え盛る炎の柱がせり出し、男たちの行く手をふさいでしまった。男たちは半狂乱で、完全に戦意喪失していそうだったが、フランは誰一人として逃さないつもりらしい。鬼のような形相で暴れまわると、全員きっちりぶちのめしてしまった。

「もし死にたいって思ったら、あいつの前であんたを馬鹿にするのが一番確実ね」

アルルカがしみじみと言った不謹慎な冗談を、俺はたしなめることすらできなかった……ありがたい話だよ、まったく。



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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