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15章 燃え尽きた松明
3-2
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3-2
「なあ、おい。さっきのは、どうなんだよ?」
俺は馬上から、並走するアルアへと声を掛ける。
旅芸人の一座のもとを発ってから、五分くらい。いい加減、アルアも頭の血が下がっている頃合いだろう。
「……」
と、思ったんだけど……アルアはしかめっ面で前を睨むばかりで、答えようともしない。はぁー、まだご機嫌斜めなのかよ?
「しょーがねーなぁ。エラゼム、頼む」
俺はエラゼムの背中を、手の甲で叩いた。鎧がゴンゴンと音を立てる。いちおうアルアにも、年長者を敬う礼儀くらいは備わっているらしいからな。彼に訊いてもらった方が、手っ取り早いだろう。
「承知しました。あー、アルア嬢?吾輩は、先ほどの一件についてほとんど存じておりません。一度ご説明願えぬか」
流石にエラゼムのことは無視できないのか、アルアは渋々と言った様子で口を開いた。
「……別に、大したことではありません。不埒な男がいましたので、折檻をしてやっただけです」
「不埒、ですか。しかし彼は、一座の芸人だったのでは?客に対して礼節を欠く態度を取るとは、少々考え難いですが」
「……」
アルアはしばし閉口してから、低い声で言った。
「……あの男は、つまらない手品を言い訳にして、私の下着をスろうとしたのです。下品な男。当然の報いです」
ああ、あいつ……フランにやったのと同じ手品を、アルアに対してもやったのか。どうしようもない男だな。怒るのも無理はないとも思うけど、でもあんなに打ちのめすのは、さすがにやり過ぎだ。下手すりゃ腕が折れていたんだぞ?
「そっ……んんっ、んんっ。それは、なるほど災難でしたな」
エラゼムは少し上擦った声を整えてから、ですが、と続ける。
「確かに見上げた行動だとは思えませぬが、それを理由に過剰な折檻を加えられたとしたら、その男は理不尽を感じるやもしれませんな」
「理不尽?あなたは、あの男の肩を持つというのですか」
「いいえ。吾輩は、正義は常に公正であるべきだと思うだけです」
エラゼムの静かな回答。アルアはぐっと言葉に詰まってから、ぼそりと呟いた。
「……私だって、同じように思っています」
それきりアルアは口をつぐんでしまった。
「呆れたものですね」
ウィルが、俺の背中でぽつりとこぼした。
「それは、誰が?」
「あの手品師の男性も、アルアさんも、です。彼の冗談はいやらしい上に大して面白くありませんでしたけど、あそこまでボコボコにされるほどのものじゃありませんよ」
「やっぱり、そう思うか?」
「まあ、ビンタの一発くらいなら、しょうがないって感じですけど。それにアルアさんのあれは、単に怒っただけでもないと思うんですよね」
「ん?というと?」
「あれですよ、憂さ晴らし。無茶な命令を押し付けられて、むしゃくしゃしてた所をからかわれたものだから、ぷちんときてしまった。そんなところじゃないですか?」
「えぇぇ、それじゃあただの八つ当たりじゃないか」
「ですね。あの男性を気の毒には思いませんが、サーカスの皆さんに迷惑をかけたのは……」
「いただけない、よなぁ。うーん」
俺が気にしているのも、結局のところそれだ。アルアがこの先ずーっと不機嫌で、行く先々でさっきみたいな揉め事を起こしまくるとしたら、たまったものじゃない。
「一言、言っといたほうがいいかもな」
逆上される可能性もなくはないが、いい加減俺も、イライラしてきていた。アルアの不機嫌が、こっちにまで伝染してきそうだ。
(まあけど、分からなくもないんだけど)
俺は、祖父を誰かに殺された経験はない。だけど、仲間を手に掛けられそうになった時は、俺だって強い憎悪を覚えた。家族を奪われた痛みは、それに近いんじゃないだろうか。だからといって、理不尽を許す気にはなれないけど。
(アルアの奴は、おじいちゃんっこだったのかな)
いや……たぶんそれはないな。ファーストの正確な享年は分からないけど、召喚された歳は俺とほとんど変わらないはず。仮に十四歳だったとして……
「なあアニ」
『はい?なんですか』
「ファーストって、召喚されてから何年こっちで過ごしたんだ?」
『約十二年ですね。十六年前に死亡しています』
「てことは、せいぜい三十かそこらか……」
じゃ、孫であるアルアが直接顔を合わせるのは無理があるな。面識はないはずなのに、アレなのか……よほど祖父を尊敬しているのか、はたまた。
(こうして考えると、アルアのことは、ほとんど知らないや)
もちろん、奴が教えてくれるはずもないので、しかたのないことだけどさ。あいつが二の国の勇者を恨むのには、祖父の因縁以外にも、別な理由があるのだろうか?
夕日が辺りを照らすころ、次の村の明かりが、彼方にぽつぽつと見えてきた。あそこが、今日のお宿か。村の名前はソトバと言うらしい。
村につく前に、俺はアルアへと話しかけた。ちょうど目的地手前で速度を落としてきていたので、話しかけやすくて助かる。
「なあ、あんた。一言、言っておきたいんだけどさ」
「……なにか」
アルアは前を向いたままで、こちらを見ようともしない。けーっ!いいですよ、いいですよ。まったく。
「おたくが俺を嫌うのは結構だ。けどな、だからって行く先々でケンカを吹っ掛けるのはやめてもらいたい」
「ケンカ?さっきのことを言っているのなら、あれはあちらが」
「それはさっき聞いたよ。でも、ありゃやりすぎだ。俺たちまで余計な因縁持たれちゃ、たまんないぜ」
「……ふんっ。私だって、好きでお前と一緒にいるわけじゃない」
「わーってるってば。けどな、お前がそうやってあちこちで揉め事ばかり起こすんだったら、俺はあんたを置いていくからな。それで女帝殿が文句つけてきたって、知るもんか」
もともと面倒を避けるために、渋々アルアの同行を承知したんだ。それなのに、かえって手間が増えるのでは、本末転倒もいいとこだ。
「……何も知らないくせに、よくそんな口を!」
アルアはようやくこちらを見たが、その顔は怒りでゆがんでいる。
「お前、閣下が単なる思い付きで、私を遣わせたと思っているの?」
「あ?違うのか」
「馬鹿が。お前たちを監視するために決まっているでしょう。お前たちが違法な手段で入国したのであれば、二の国の密偵の可能性がある。それ確かめるために、私を同行させたんだ」
おっと。え、そういう理由だったのか?それは考えていなかった。その場の思い付きだとばかり思っていたのに……やっぱりあの女帝、腹の底が読めない。
「それは……その」
「せいぜい、言動には気をつけることね。少しでも不審な点があれば、全て閣下に報告するから」
アルアはそれだけ言うと、プイッと顔を背けて、先に行ってしまった。
「マジかよ。あいつ、ノロのスパイだったのか……」
「なんだかタイヘンだね~」
「ああ、ホントだよ。ウィル……」
「へ?私、何も言っていませんよ?」
あん?だって今、耳元で声がしたんだぞ。俺の背後にはウィルしかいないはずじゃ……不思議に思って振り向こうとすると、俺のすぐ隣に、薄桃色の髪の女の子が浮かんでいた。
「うわっ!ロウラン!?」
「もー、ダーリンったら。いい加減慣れてほしいの。毎回バケモノみたいなリアクションされて、アタシ、かなしい……」
ロウランはわざとらしく眉根を下げた。つっても、いきなり隣に人が現れたら、誰だってビックリするわい。
「でロウラン、今度はなんでまた?」
「えー。理由がなきゃ、出てきちゃダメなの?」
「ダメじゃないけど……お前が出てくるときは、大抵なんかの理由がある時だろうが」
「ぶー。つまんないなぁ。ボクはキミに毎日会いたいよ、くらい言ってほしいの」
「あ、桜下さん。それ私も言ってほしいです」
「言うかっ!」
ウィルもロウランも、二人して俺をからかいやがって!そんなに年下をいじって楽しいか?
「きゃははは。ま、冗談もさておくの。今回出てきたのはね、最近調子がいいからなの」
「ったく、最初から本題で来いよ……で、調子がいい?」
「うん。ダーリン、最近はマメに、アタシにアレを注いでくれたでしょ?」
「魔力、な。なんで伏せる?……まあ確かに、最近はよくしてたな。それがどうかしたか?」
「えへへ。おかげさまで、かなり力が戻ってきたの。そろそろ実体で動けそうだから、そのほーこくをね」
おお!ロウランの本体はミイラで、魔力は当の昔に、すっかり涸れ果ててしまっていた。だからずーっと、霊体でコミュニケーションを取っていたんだけれど。
「そうか。ははは、やったな!」
「ロウランさん、よかったですね!」
俺とウィルが口々に祝うと、ロウランは照れたようにはにかんだ。
「ありがとうなの。ふふ。これでようやく、ダーリンに直接触れられるよ。人の温もりなんて、何百年ぶりかなぁ……とっても楽しみ♪」
「あ、ああ、うん」
あんまりベタベタされるのは、俺の精神衛生上よろしくないから、やめてほしいけれど……ロウランのやつ、ちゃんと聞いてくれるかな?
「あ、ロウランさん。一つ言っておきますけど」
ん?背中でウィルが、ロウランの方へ身を乗り出すのが分かる。
「うん?なぁに?」
「ロウランさんが、桜下さんと触れ合うのは否定しませんが。絶対、えっちなことはダメですからね!」
ぶふっ。な、何を言い出すんだ!
「ええー、どうして。アタシは体の隅々まで、ダーリンの温もりを味わいたいの」
「ダメです!ライン越えは、私とフランさんが許しませんよ。無理やりなんてもってのほかです!」
「ぶーぶー。じゃあ、同意の上ならいいの?」
「桜下さんは、同意なんてしませんもの。ね?」
ね、と言われても……ウィルのやつ、これを確かめるために、この前探りを入れてきたのか?
「しないよ、するわけないだろ。そんなおっかないこと」
「おっかない?」
「んなことしたら、フランに生皮剥がされちまうよ」
俺が冗談めかすと、ウィルとロウランはくすっと笑った。だがすぐに、ウィルが「ぴっ」とおかしな声を出す。
「ウィル?」
「あの、桜下さん……隣に……」
隣?ロウランがすぐ隣にいるけど。その逆の事かな?俺が反対側に振り向くと……赤い瞳。並走していたフランと目が合ったぞ……!?
「ひえっ。ふ、フラン……」
「どうしたの?続きは?」
「いや、あの、ごめんなさい……」
「どうして謝るの?謝んなくていいよ、本当のことだもの」
さぁーっと、血の気が引いていく。今の俺なら、例えいま目の前に、絶世の美女が素っ裸で現れたとしても、理性を保っていられる自信がある……
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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俺は馬上から、並走するアルアへと声を掛ける。
旅芸人の一座のもとを発ってから、五分くらい。いい加減、アルアも頭の血が下がっている頃合いだろう。
「……」
と、思ったんだけど……アルアはしかめっ面で前を睨むばかりで、答えようともしない。はぁー、まだご機嫌斜めなのかよ?
「しょーがねーなぁ。エラゼム、頼む」
俺はエラゼムの背中を、手の甲で叩いた。鎧がゴンゴンと音を立てる。いちおうアルアにも、年長者を敬う礼儀くらいは備わっているらしいからな。彼に訊いてもらった方が、手っ取り早いだろう。
「承知しました。あー、アルア嬢?吾輩は、先ほどの一件についてほとんど存じておりません。一度ご説明願えぬか」
流石にエラゼムのことは無視できないのか、アルアは渋々と言った様子で口を開いた。
「……別に、大したことではありません。不埒な男がいましたので、折檻をしてやっただけです」
「不埒、ですか。しかし彼は、一座の芸人だったのでは?客に対して礼節を欠く態度を取るとは、少々考え難いですが」
「……」
アルアはしばし閉口してから、低い声で言った。
「……あの男は、つまらない手品を言い訳にして、私の下着をスろうとしたのです。下品な男。当然の報いです」
ああ、あいつ……フランにやったのと同じ手品を、アルアに対してもやったのか。どうしようもない男だな。怒るのも無理はないとも思うけど、でもあんなに打ちのめすのは、さすがにやり過ぎだ。下手すりゃ腕が折れていたんだぞ?
「そっ……んんっ、んんっ。それは、なるほど災難でしたな」
エラゼムは少し上擦った声を整えてから、ですが、と続ける。
「確かに見上げた行動だとは思えませぬが、それを理由に過剰な折檻を加えられたとしたら、その男は理不尽を感じるやもしれませんな」
「理不尽?あなたは、あの男の肩を持つというのですか」
「いいえ。吾輩は、正義は常に公正であるべきだと思うだけです」
エラゼムの静かな回答。アルアはぐっと言葉に詰まってから、ぼそりと呟いた。
「……私だって、同じように思っています」
それきりアルアは口をつぐんでしまった。
「呆れたものですね」
ウィルが、俺の背中でぽつりとこぼした。
「それは、誰が?」
「あの手品師の男性も、アルアさんも、です。彼の冗談はいやらしい上に大して面白くありませんでしたけど、あそこまでボコボコにされるほどのものじゃありませんよ」
「やっぱり、そう思うか?」
「まあ、ビンタの一発くらいなら、しょうがないって感じですけど。それにアルアさんのあれは、単に怒っただけでもないと思うんですよね」
「ん?というと?」
「あれですよ、憂さ晴らし。無茶な命令を押し付けられて、むしゃくしゃしてた所をからかわれたものだから、ぷちんときてしまった。そんなところじゃないですか?」
「えぇぇ、それじゃあただの八つ当たりじゃないか」
「ですね。あの男性を気の毒には思いませんが、サーカスの皆さんに迷惑をかけたのは……」
「いただけない、よなぁ。うーん」
俺が気にしているのも、結局のところそれだ。アルアがこの先ずーっと不機嫌で、行く先々でさっきみたいな揉め事を起こしまくるとしたら、たまったものじゃない。
「一言、言っといたほうがいいかもな」
逆上される可能性もなくはないが、いい加減俺も、イライラしてきていた。アルアの不機嫌が、こっちにまで伝染してきそうだ。
(まあけど、分からなくもないんだけど)
俺は、祖父を誰かに殺された経験はない。だけど、仲間を手に掛けられそうになった時は、俺だって強い憎悪を覚えた。家族を奪われた痛みは、それに近いんじゃないだろうか。だからといって、理不尽を許す気にはなれないけど。
(アルアの奴は、おじいちゃんっこだったのかな)
いや……たぶんそれはないな。ファーストの正確な享年は分からないけど、召喚された歳は俺とほとんど変わらないはず。仮に十四歳だったとして……
「なあアニ」
『はい?なんですか』
「ファーストって、召喚されてから何年こっちで過ごしたんだ?」
『約十二年ですね。十六年前に死亡しています』
「てことは、せいぜい三十かそこらか……」
じゃ、孫であるアルアが直接顔を合わせるのは無理があるな。面識はないはずなのに、アレなのか……よほど祖父を尊敬しているのか、はたまた。
(こうして考えると、アルアのことは、ほとんど知らないや)
もちろん、奴が教えてくれるはずもないので、しかたのないことだけどさ。あいつが二の国の勇者を恨むのには、祖父の因縁以外にも、別な理由があるのだろうか?
夕日が辺りを照らすころ、次の村の明かりが、彼方にぽつぽつと見えてきた。あそこが、今日のお宿か。村の名前はソトバと言うらしい。
村につく前に、俺はアルアへと話しかけた。ちょうど目的地手前で速度を落としてきていたので、話しかけやすくて助かる。
「なあ、あんた。一言、言っておきたいんだけどさ」
「……なにか」
アルアは前を向いたままで、こちらを見ようともしない。けーっ!いいですよ、いいですよ。まったく。
「おたくが俺を嫌うのは結構だ。けどな、だからって行く先々でケンカを吹っ掛けるのはやめてもらいたい」
「ケンカ?さっきのことを言っているのなら、あれはあちらが」
「それはさっき聞いたよ。でも、ありゃやりすぎだ。俺たちまで余計な因縁持たれちゃ、たまんないぜ」
「……ふんっ。私だって、好きでお前と一緒にいるわけじゃない」
「わーってるってば。けどな、お前がそうやってあちこちで揉め事ばかり起こすんだったら、俺はあんたを置いていくからな。それで女帝殿が文句つけてきたって、知るもんか」
もともと面倒を避けるために、渋々アルアの同行を承知したんだ。それなのに、かえって手間が増えるのでは、本末転倒もいいとこだ。
「……何も知らないくせに、よくそんな口を!」
アルアはようやくこちらを見たが、その顔は怒りでゆがんでいる。
「お前、閣下が単なる思い付きで、私を遣わせたと思っているの?」
「あ?違うのか」
「馬鹿が。お前たちを監視するために決まっているでしょう。お前たちが違法な手段で入国したのであれば、二の国の密偵の可能性がある。それ確かめるために、私を同行させたんだ」
おっと。え、そういう理由だったのか?それは考えていなかった。その場の思い付きだとばかり思っていたのに……やっぱりあの女帝、腹の底が読めない。
「それは……その」
「せいぜい、言動には気をつけることね。少しでも不審な点があれば、全て閣下に報告するから」
アルアはそれだけ言うと、プイッと顔を背けて、先に行ってしまった。
「マジかよ。あいつ、ノロのスパイだったのか……」
「なんだかタイヘンだね~」
「ああ、ホントだよ。ウィル……」
「へ?私、何も言っていませんよ?」
あん?だって今、耳元で声がしたんだぞ。俺の背後にはウィルしかいないはずじゃ……不思議に思って振り向こうとすると、俺のすぐ隣に、薄桃色の髪の女の子が浮かんでいた。
「うわっ!ロウラン!?」
「もー、ダーリンったら。いい加減慣れてほしいの。毎回バケモノみたいなリアクションされて、アタシ、かなしい……」
ロウランはわざとらしく眉根を下げた。つっても、いきなり隣に人が現れたら、誰だってビックリするわい。
「でロウラン、今度はなんでまた?」
「えー。理由がなきゃ、出てきちゃダメなの?」
「ダメじゃないけど……お前が出てくるときは、大抵なんかの理由がある時だろうが」
「ぶー。つまんないなぁ。ボクはキミに毎日会いたいよ、くらい言ってほしいの」
「あ、桜下さん。それ私も言ってほしいです」
「言うかっ!」
ウィルもロウランも、二人して俺をからかいやがって!そんなに年下をいじって楽しいか?
「きゃははは。ま、冗談もさておくの。今回出てきたのはね、最近調子がいいからなの」
「ったく、最初から本題で来いよ……で、調子がいい?」
「うん。ダーリン、最近はマメに、アタシにアレを注いでくれたでしょ?」
「魔力、な。なんで伏せる?……まあ確かに、最近はよくしてたな。それがどうかしたか?」
「えへへ。おかげさまで、かなり力が戻ってきたの。そろそろ実体で動けそうだから、そのほーこくをね」
おお!ロウランの本体はミイラで、魔力は当の昔に、すっかり涸れ果ててしまっていた。だからずーっと、霊体でコミュニケーションを取っていたんだけれど。
「そうか。ははは、やったな!」
「ロウランさん、よかったですね!」
俺とウィルが口々に祝うと、ロウランは照れたようにはにかんだ。
「ありがとうなの。ふふ。これでようやく、ダーリンに直接触れられるよ。人の温もりなんて、何百年ぶりかなぁ……とっても楽しみ♪」
「あ、ああ、うん」
あんまりベタベタされるのは、俺の精神衛生上よろしくないから、やめてほしいけれど……ロウランのやつ、ちゃんと聞いてくれるかな?
「あ、ロウランさん。一つ言っておきますけど」
ん?背中でウィルが、ロウランの方へ身を乗り出すのが分かる。
「うん?なぁに?」
「ロウランさんが、桜下さんと触れ合うのは否定しませんが。絶対、えっちなことはダメですからね!」
ぶふっ。な、何を言い出すんだ!
「ええー、どうして。アタシは体の隅々まで、ダーリンの温もりを味わいたいの」
「ダメです!ライン越えは、私とフランさんが許しませんよ。無理やりなんてもってのほかです!」
「ぶーぶー。じゃあ、同意の上ならいいの?」
「桜下さんは、同意なんてしませんもの。ね?」
ね、と言われても……ウィルのやつ、これを確かめるために、この前探りを入れてきたのか?
「しないよ、するわけないだろ。そんなおっかないこと」
「おっかない?」
「んなことしたら、フランに生皮剥がされちまうよ」
俺が冗談めかすと、ウィルとロウランはくすっと笑った。だがすぐに、ウィルが「ぴっ」とおかしな声を出す。
「ウィル?」
「あの、桜下さん……隣に……」
隣?ロウランがすぐ隣にいるけど。その逆の事かな?俺が反対側に振り向くと……赤い瞳。並走していたフランと目が合ったぞ……!?
「ひえっ。ふ、フラン……」
「どうしたの?続きは?」
「いや、あの、ごめんなさい……」
「どうして謝るの?謝んなくていいよ、本当のことだもの」
さぁーっと、血の気が引いていく。今の俺なら、例えいま目の前に、絶世の美女が素っ裸で現れたとしても、理性を保っていられる自信がある……
つづく
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