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16章 奪われた姫君
3-2
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「ギヘヘヘヘ。サア、女ヲ置イテイッテモラオウカ……!」
「ベタだなぁ~……こいつら、中身は人間なんじゃないのか?」
『そんなわけないでしょう。ゴブリンですよ』
ゴブリン。これは俺でも聞いたことあるぞ。ゲームとかじゃ、割と序盤のザコキャラにされていた気がする。
初めて見た現実のゴブリンは、緑色の肌をした醜いモンスターだった。ブルドッグから愛嬌を全て取り去ったような顔。体格はまちまちで、全部で四匹いる。大柄で縦にも横にもでかい力士みたいな奴、普通の人間サイズの奴、小柄で犬みたいなのが二匹だ。
「アニ、ゴブリンって強いのか?」
『まあ、大したことはありません。危険度はC相当です。主様たちの敵ではないでしょう』
「なら、そこまでビビる必要はないな」
相手はさして数も多くない。あんまり時間を取られるのも癪だし、とっとと抜けちまおう。
「いつも通り、サクッと行こう。フラン、頼めるか。ウィルはサポートを」
「了解」「しました!」
フランはとんとんと地面を蹴ると、ドンッと勢いよく走り出した。勢いそのままに、一番でかいゴブリンに向かって、強烈なキックを繰り出す。これで、まずは一匹だ!
バシィン!
「え!?」
「なに!?」
うけ、止めた……?フランのキックを、大柄なゴブリンは片手で止めた。し、信じられん!
「くっ」
フランは足を捻るが、ゴブリンは手を放さない。ウィルがロッドを振り回して、ようやく振りほどくことに成功した。
フランは素早く距離を取ったが、掴まれた足首をさすっている。対してゴブリンは、余裕だとでも言うように、手を握ったり開いたりした。
「……こいつは、サクッとは行かないかもしれないな。予定変更、ライラも攻撃に回ってくれ!ロウラン、守りは任せた!」
「わかった!」「なの!」
フランの蹴りが効かない相手だ。こいつは、総力戦で行かないときつそうだぞ。ライラは低い声で呪文を唱え始める。俺は上を向いて、大声を張り上げた。
「アルルカー!お前も手伝えー!」
「ああ~?だらしないわねー!」
およそ了解の返事とは思えないが、これがアルルカ流だということにしておこう。とにかく、これでフルメンバーだ。油断せず、全力で敵を排除する!
「やああ!」
フランは再び、大柄なゴブリンに攻撃を仕掛けた。単純な力押しでは効果がないと悟ったのか、フランは小刻みにステップを踏み、素早い動きで敵を翻弄するスタイルに切り替えた。あのでかいゴブリンは、力はあるが、スピードは無い。フランの速度にはついてこられず、隙が生じる。そこに強烈な一撃が炸裂した。バシーン!
フランの拳は、奴の脇腹にクリーンヒットした。にもかかわらず、ゴブリンはびくともしない。それどころか、脇腹の肉に、フランの拳が埋まっている!あいつめ、攻撃を喰らったふりをして、すでにフランを捕まえている!
「ギヘヘヘ……」
ゴブリンは鋭い牙を覗かせながら、フランに手を伸ばす。まずい!
「このぉー!」
ウィルがロッドを振り上げると、ゴブリンの頭をやたらめったら殴りまくった。ゴン、ゴキ、ゴィン!ゴブリンにはまるで効いていない様子だったが、さすがに無視するには鬱陶しかったのか、手ではらい退けようとする。その間に、フランは両足で踏ん張って腕を引っこ抜いた。
「ほっ……けどなんなんだあいつ、とんでもない馬鹿力だぞ!?」
『お、おかしいです。ゴブリンに、あんなにパワーがあるわけは……』
「でも現に、フランの攻撃を受け止めてるじゃないか!」
あいつの一撃は、ガーゴイルだってぶっとばす。ならあのゴブリンは、ガーゴイル並みなのか?しかもガーゴイルと違って生きているので、フランも毒の鉤爪を抜けずにいる。くそ、頭が痛い!
「ちっ、しょうがないわね。メギバレット!」
地上の苦戦を見かねたアルルカが、上空から援護射撃を放つ。ダァーン!
「ジギギギ!サセン!」
え?ご、ゴブリンの腕が、伸びた。並みの体格のゴブリンの片腕が、ゴムのようにびょーんと伸びる。そして、アルルカの弾丸をはたき落としてしまった。そ、そんなのありか?
「お、おいアニ!ゴブリンって、腕が伸びるのかよ!?」
『そ、そんなはずは。王国編纂のモンスター図鑑に、そのような記述など……』
「くそ!なら、新しく書き加えてもらわないとな!」
どうにも俺たちが相手をしている連中は、普通のゴブリンではないらしい。腕が伸びたり、怪力を持っていたり。なんでそんな連中が、街道のど真ん中に現れるんだ!?
「ガスト・オブ・スカイラーク!」
混乱の最中、ライラの呪文が完成した。ザァァァァ。塵が渦を巻き、複数羽の小鳥の姿になっていく。これは、見たことがあるぞ。クラークの仲間の、コルルが使っていた魔法だ!
「いけぇ!」
ライラがぶんと腕を振ると、魔法の小鳥たちはV字の隊列を組んで、ゴブリンめがけて飛んでいく。だがそれに合わせるように、並ゴブリンも両腕を伸ばしてきた。
「なに!?」
今度は腕だけじゃなく、指まで伸びた!網のように広がったゴブリンの手に、小鳥が激突する。ドン、ドンドン、ドン!小鳥の編隊は、一瞬で全滅してしまった。
「ぜ、全部防がれた……」
「ちぃ!攻撃が来るぞ!ロウラン!」
「まっかせてー!腕だろうが槍だろうが、防いでみせるの!」
ロウランの体から、液体の金が溢れ出した。あのゴブリンの伸びた指は、そのままこちらに向かってくるはず。だがな、こっちにも強固な盾がある!ロウランの魔法があれば!
「て、あれ?」
「ん、んん?」
待てど暮らせど、ゴブリンの攻撃が来ない。ロウランが首をかしげる。それもそのはず、伸ばしたゴブリンの腕は、そのままフランの方へと向かっていたのだ。
「ギゲゲゲゲ!」
「くそっ!」
ゴブリンがこっちを無視したせいで、結果的に一対多数の形になってしまったフランは、苦戦を強いられていた。大柄ゴブリンだけでも厄介なのに、並ゴブリンの伸びる腕も加わる。さらにそこに、チビゴブリンどもまでちょっかいを出し始めた。
「ケケケケー!」「キキキキー!」
「うわっ。ちょっと!」
チビゴブリンは二匹そろって、フランの両足に飛びついた。フランは引っぺがそうとするが、チビゴブリンはフランの足に、鋭い歯を立てた。ガブリ!ゾンビのフランに痛みは無いだろうが、ゴブリンは食らいついて離れない。
「ギギギギ!」
「っ!しまっ……」
フランの足が止まった瞬間、並ゴブリンの伸びた腕が、フランの両腕を捕らえた。ぐるぐると巻き付くと、そのまま思い切り下へと引っ張る。ゴキン、ボギン!嫌な音を立てて、フランの両腕が、だらんとぶら下がった。そこに、大柄ゴブリンが腕を叩きつける!
「ぐあ……!」
「フラーン!」
大柄ゴブリンは、その大きな手のひらで、叩き潰すようにフランを殴りつけた。地面に倒されたフランを、大柄ゴブリンはむんずと掴みあげる。
「コノ女ヲヨコセ。ソウスレバ、オ前タチは見逃シテヤル」
「な、なんだと?」
大柄ゴブリンは、俺たちに見せつけるように、捕えたフランを突き出してくる。奴の太った人差し指が、フランの顔を無遠慮に撫でた瞬間、俺は体中の血が沸騰しそうな怒りを覚えた。
「ふざけないで、ください!フレーミングバルサム!」
バチバチバチ!ウィルがロッドを振り下ろすと、激しく弾ける火花が、ゴブリンの顔面で飛び散った。
「グギギギ!?」
これにはさすがに面食らったのか、よろよろと数歩後ずさる。そのすきに、フランはゴブリンの手に噛みつくと、足で奴を蹴り飛ばして、脱出した。
「いいぞ!フラン、一度退け!」
フランは素直に、こちらに走ってきた。どのみち、腕が使えないんじゃ、ろくに戦うこともできない。しかも、フランの両脚にはまだ、チビゴブリンどもが食いついている。
「ダーリン、アタシに任せて!いい加減に、離れるの!」
ロウランが包帯を伸ばすと、チビゴブリンたちを絡め取る。ゴブリンはようやくはがれたが、一緒にフランの肉まで、バリッと剝がれてしまった。うぐぐ……
「ロウラン!そいつを、あいつらの方に投げて!」
ライラが叫ぶ。ロウランはこくんとうなずくと、包帯をしならせて、チビゴブリンを投げ飛ばした。ゴブリンが、一か所に固まった!ライラ、これが狙いか!?
「ギググ!オノレ!」
だがゴブリンも、大人しくじっとしているはずがない。その瞬間、上空で声が轟いた。
「スノーフレーク!」
ピシピシピシ!銀色の冷気が、地面を凍結させていく。アルルカが放った魔法は、ゴブリンどもの足を釘付けにした。いいぞ!重ねるように、ライラの呪文が響き渡る。
「ボルカニック・バーナクル!」
ゴゴゴゴ……!じ、地面が揺れている。地震か!?いや違う、地面が盛り上がっている!ゴブリンたちの足下が、むくむくと膨らんでいく。臨界点に達したそれは、ドカンと弾けた。
「どわぁ!」
ドゴーン!地面が大爆発し、真っ赤な炎が噴き出した。爆風と轟音と振動に、俺は思わず尻もちをつきそうになる。ご、ゴブリンたちは?あの爆心地に居たんじゃ、一匹残らず消し炭になったんじゃ?
だが、その心配は無用だった。ライラはちゃんと威力を調整したらしい。俺ははるか遠くに、飛んで行く四つの影を見つけた。ライラは、ゴブリンを吹っ飛ばしたんだ。やがてそれは落下し、大きな音を立てた。ドッポーン!そう言えば、目の前を川が流れていたっけ?
「おお、完璧なホールインワンだな……」
「けど、また戻ってこられると厄介だよ!馬を出すから、早く行こう!」
「あ、お、おう。わかった」
ライラはすぐさまストームスティードを呼び出した。俺たちは急いで馬に乗り込むと、即座にその場を離脱した。
(でも、なんだか……妙な戦いだったな……?)
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
====================
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「ベタだなぁ~……こいつら、中身は人間なんじゃないのか?」
『そんなわけないでしょう。ゴブリンですよ』
ゴブリン。これは俺でも聞いたことあるぞ。ゲームとかじゃ、割と序盤のザコキャラにされていた気がする。
初めて見た現実のゴブリンは、緑色の肌をした醜いモンスターだった。ブルドッグから愛嬌を全て取り去ったような顔。体格はまちまちで、全部で四匹いる。大柄で縦にも横にもでかい力士みたいな奴、普通の人間サイズの奴、小柄で犬みたいなのが二匹だ。
「アニ、ゴブリンって強いのか?」
『まあ、大したことはありません。危険度はC相当です。主様たちの敵ではないでしょう』
「なら、そこまでビビる必要はないな」
相手はさして数も多くない。あんまり時間を取られるのも癪だし、とっとと抜けちまおう。
「いつも通り、サクッと行こう。フラン、頼めるか。ウィルはサポートを」
「了解」「しました!」
フランはとんとんと地面を蹴ると、ドンッと勢いよく走り出した。勢いそのままに、一番でかいゴブリンに向かって、強烈なキックを繰り出す。これで、まずは一匹だ!
バシィン!
「え!?」
「なに!?」
うけ、止めた……?フランのキックを、大柄なゴブリンは片手で止めた。し、信じられん!
「くっ」
フランは足を捻るが、ゴブリンは手を放さない。ウィルがロッドを振り回して、ようやく振りほどくことに成功した。
フランは素早く距離を取ったが、掴まれた足首をさすっている。対してゴブリンは、余裕だとでも言うように、手を握ったり開いたりした。
「……こいつは、サクッとは行かないかもしれないな。予定変更、ライラも攻撃に回ってくれ!ロウラン、守りは任せた!」
「わかった!」「なの!」
フランの蹴りが効かない相手だ。こいつは、総力戦で行かないときつそうだぞ。ライラは低い声で呪文を唱え始める。俺は上を向いて、大声を張り上げた。
「アルルカー!お前も手伝えー!」
「ああ~?だらしないわねー!」
およそ了解の返事とは思えないが、これがアルルカ流だということにしておこう。とにかく、これでフルメンバーだ。油断せず、全力で敵を排除する!
「やああ!」
フランは再び、大柄なゴブリンに攻撃を仕掛けた。単純な力押しでは効果がないと悟ったのか、フランは小刻みにステップを踏み、素早い動きで敵を翻弄するスタイルに切り替えた。あのでかいゴブリンは、力はあるが、スピードは無い。フランの速度にはついてこられず、隙が生じる。そこに強烈な一撃が炸裂した。バシーン!
フランの拳は、奴の脇腹にクリーンヒットした。にもかかわらず、ゴブリンはびくともしない。それどころか、脇腹の肉に、フランの拳が埋まっている!あいつめ、攻撃を喰らったふりをして、すでにフランを捕まえている!
「ギヘヘヘ……」
ゴブリンは鋭い牙を覗かせながら、フランに手を伸ばす。まずい!
「このぉー!」
ウィルがロッドを振り上げると、ゴブリンの頭をやたらめったら殴りまくった。ゴン、ゴキ、ゴィン!ゴブリンにはまるで効いていない様子だったが、さすがに無視するには鬱陶しかったのか、手ではらい退けようとする。その間に、フランは両足で踏ん張って腕を引っこ抜いた。
「ほっ……けどなんなんだあいつ、とんでもない馬鹿力だぞ!?」
『お、おかしいです。ゴブリンに、あんなにパワーがあるわけは……』
「でも現に、フランの攻撃を受け止めてるじゃないか!」
あいつの一撃は、ガーゴイルだってぶっとばす。ならあのゴブリンは、ガーゴイル並みなのか?しかもガーゴイルと違って生きているので、フランも毒の鉤爪を抜けずにいる。くそ、頭が痛い!
「ちっ、しょうがないわね。メギバレット!」
地上の苦戦を見かねたアルルカが、上空から援護射撃を放つ。ダァーン!
「ジギギギ!サセン!」
え?ご、ゴブリンの腕が、伸びた。並みの体格のゴブリンの片腕が、ゴムのようにびょーんと伸びる。そして、アルルカの弾丸をはたき落としてしまった。そ、そんなのありか?
「お、おいアニ!ゴブリンって、腕が伸びるのかよ!?」
『そ、そんなはずは。王国編纂のモンスター図鑑に、そのような記述など……』
「くそ!なら、新しく書き加えてもらわないとな!」
どうにも俺たちが相手をしている連中は、普通のゴブリンではないらしい。腕が伸びたり、怪力を持っていたり。なんでそんな連中が、街道のど真ん中に現れるんだ!?
「ガスト・オブ・スカイラーク!」
混乱の最中、ライラの呪文が完成した。ザァァァァ。塵が渦を巻き、複数羽の小鳥の姿になっていく。これは、見たことがあるぞ。クラークの仲間の、コルルが使っていた魔法だ!
「いけぇ!」
ライラがぶんと腕を振ると、魔法の小鳥たちはV字の隊列を組んで、ゴブリンめがけて飛んでいく。だがそれに合わせるように、並ゴブリンも両腕を伸ばしてきた。
「なに!?」
今度は腕だけじゃなく、指まで伸びた!網のように広がったゴブリンの手に、小鳥が激突する。ドン、ドンドン、ドン!小鳥の編隊は、一瞬で全滅してしまった。
「ぜ、全部防がれた……」
「ちぃ!攻撃が来るぞ!ロウラン!」
「まっかせてー!腕だろうが槍だろうが、防いでみせるの!」
ロウランの体から、液体の金が溢れ出した。あのゴブリンの伸びた指は、そのままこちらに向かってくるはず。だがな、こっちにも強固な盾がある!ロウランの魔法があれば!
「て、あれ?」
「ん、んん?」
待てど暮らせど、ゴブリンの攻撃が来ない。ロウランが首をかしげる。それもそのはず、伸ばしたゴブリンの腕は、そのままフランの方へと向かっていたのだ。
「ギゲゲゲゲ!」
「くそっ!」
ゴブリンがこっちを無視したせいで、結果的に一対多数の形になってしまったフランは、苦戦を強いられていた。大柄ゴブリンだけでも厄介なのに、並ゴブリンの伸びる腕も加わる。さらにそこに、チビゴブリンどもまでちょっかいを出し始めた。
「ケケケケー!」「キキキキー!」
「うわっ。ちょっと!」
チビゴブリンは二匹そろって、フランの両足に飛びついた。フランは引っぺがそうとするが、チビゴブリンはフランの足に、鋭い歯を立てた。ガブリ!ゾンビのフランに痛みは無いだろうが、ゴブリンは食らいついて離れない。
「ギギギギ!」
「っ!しまっ……」
フランの足が止まった瞬間、並ゴブリンの伸びた腕が、フランの両腕を捕らえた。ぐるぐると巻き付くと、そのまま思い切り下へと引っ張る。ゴキン、ボギン!嫌な音を立てて、フランの両腕が、だらんとぶら下がった。そこに、大柄ゴブリンが腕を叩きつける!
「ぐあ……!」
「フラーン!」
大柄ゴブリンは、その大きな手のひらで、叩き潰すようにフランを殴りつけた。地面に倒されたフランを、大柄ゴブリンはむんずと掴みあげる。
「コノ女ヲヨコセ。ソウスレバ、オ前タチは見逃シテヤル」
「な、なんだと?」
大柄ゴブリンは、俺たちに見せつけるように、捕えたフランを突き出してくる。奴の太った人差し指が、フランの顔を無遠慮に撫でた瞬間、俺は体中の血が沸騰しそうな怒りを覚えた。
「ふざけないで、ください!フレーミングバルサム!」
バチバチバチ!ウィルがロッドを振り下ろすと、激しく弾ける火花が、ゴブリンの顔面で飛び散った。
「グギギギ!?」
これにはさすがに面食らったのか、よろよろと数歩後ずさる。そのすきに、フランはゴブリンの手に噛みつくと、足で奴を蹴り飛ばして、脱出した。
「いいぞ!フラン、一度退け!」
フランは素直に、こちらに走ってきた。どのみち、腕が使えないんじゃ、ろくに戦うこともできない。しかも、フランの両脚にはまだ、チビゴブリンどもが食いついている。
「ダーリン、アタシに任せて!いい加減に、離れるの!」
ロウランが包帯を伸ばすと、チビゴブリンたちを絡め取る。ゴブリンはようやくはがれたが、一緒にフランの肉まで、バリッと剝がれてしまった。うぐぐ……
「ロウラン!そいつを、あいつらの方に投げて!」
ライラが叫ぶ。ロウランはこくんとうなずくと、包帯をしならせて、チビゴブリンを投げ飛ばした。ゴブリンが、一か所に固まった!ライラ、これが狙いか!?
「ギググ!オノレ!」
だがゴブリンも、大人しくじっとしているはずがない。その瞬間、上空で声が轟いた。
「スノーフレーク!」
ピシピシピシ!銀色の冷気が、地面を凍結させていく。アルルカが放った魔法は、ゴブリンどもの足を釘付けにした。いいぞ!重ねるように、ライラの呪文が響き渡る。
「ボルカニック・バーナクル!」
ゴゴゴゴ……!じ、地面が揺れている。地震か!?いや違う、地面が盛り上がっている!ゴブリンたちの足下が、むくむくと膨らんでいく。臨界点に達したそれは、ドカンと弾けた。
「どわぁ!」
ドゴーン!地面が大爆発し、真っ赤な炎が噴き出した。爆風と轟音と振動に、俺は思わず尻もちをつきそうになる。ご、ゴブリンたちは?あの爆心地に居たんじゃ、一匹残らず消し炭になったんじゃ?
だが、その心配は無用だった。ライラはちゃんと威力を調整したらしい。俺ははるか遠くに、飛んで行く四つの影を見つけた。ライラは、ゴブリンを吹っ飛ばしたんだ。やがてそれは落下し、大きな音を立てた。ドッポーン!そう言えば、目の前を川が流れていたっけ?
「おお、完璧なホールインワンだな……」
「けど、また戻ってこられると厄介だよ!馬を出すから、早く行こう!」
「あ、お、おう。わかった」
ライラはすぐさまストームスティードを呼び出した。俺たちは急いで馬に乗り込むと、即座にその場を離脱した。
(でも、なんだか……妙な戦いだったな……?)
つづく
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