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17章 再開の約束
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「ん」
ぱちっと目を開けた。うっ、体がだるいぞ……起きたばかりだってのに、もう眠たい。ちっ、妙な夢を見たせいで、ゆっくり休まらなかったみたいだ。
「うわ、わ。起きちゃいました……!」
「しーっ!静かにしないと……」
ん?ふっと目をやると、金色と赤色の瞳と目が合った。フランとウィルが、俺の枕元に座って、こちらを覗き込んでいる。げっ、よりによってこの二人とあさイチから……俺が気まずく思っていると、なぜか向こうも、さっと目を逸らした。そして次の瞬間には、ぴゅーっとどこかに逃げてしまった。
「な、なんだ……?」
俺が気まずいのは分かるけど、どうして二人のほうから逃げていくんだろう。まあいいか、俺としてはありがたいし。
毛布から上半身を起こして、あたりを見渡す。当たり前だが、ここはシェオル島なんかじゃない。魔王の大陸の、黒い岩山が続く荒地の、連合軍の野営地だった。黒い岩石質の地面の上に、兵士たちの寝袋とテント、そして朝霧が広がっている。
ん?ふと、こちらを見つめる視線に気が付いた。霧の中から、アルルカのニヤニヤした顔がのぞいている。やつは近くの岩にもたれて、組んだ足をぶらぶら揺すっていた。
「……なんだよ、アルルカ。なにニヤニヤしてんだ」
「んっふふふ。教えてほしい?」
うわ、朝からダルいな……しょうがない、付き合ってやるか。こくりとうなずいてやる。
「キキキ!いいわ、教えてあげる。ねえあんた、なんか、夢を見てたでしょ」
「ぎくっ。な、なぜそれを……」
「キャハハ、やっぱり!なぜも何も、あんたが自分から白状したのよ。つまり、寝言でね」
「ね、寝言?俺、なんか喋ってたのか?」
「もちろん、ばっちりとね。であの二人は、それを聞いたってわけよ」
え、まさか、フランとウィルが……え、それってなんだが、すごく恐ろしくないか?
「お、おい。俺、いったいなんて言ってた……?」
青ざめた俺を見て、アルルカはますます調子づいた。うまそうなごちそうを前にしたように、ザクザクと俺を切り刻んでくる。
「でもねぇ、しょうがないと思うわよ、あたしは。何だかんだ言っても、あんたも男だもの。そりゃ、溜まるものもあるわよねぇ。あーでもあれはさすがに、聞いてるこっちが恥ずかしくなりそうだったわぁ」
「なっ!おい、ウソつくな!ほんとのことを言えよ!」
「ほーんとだって、ウソじゃないわよ。こんな具合にね。んんっ……あぁ、フラぁン、ウィルぅ!」
「うわー!やめろ!」
俺はアルルカを黙らせようとしたが、彼女は片手で楽々俺を押さえ込むと、ガッと首に腕を回して、隣に座らせた。
「こら、大人しくなさいってば!あたしには、厳正なる真実を語る義務があるのよ」
「うそつけ!」
「ホントのことよ?すぅっごく切なそうな声で、何度も呼んでたわ。そりゃ、あの娘たちも気まずくなるわよねー、きひひひ!」
ば、馬鹿な……た、確かに俺は、二人のあられもない夢を見た。でもまさか、それを口にして……!?
「……あれ?」
「きひひひ……ん、なによ。どうしたの?」
腹を抱えて笑っていたアルルカは、腕の中の俺がはたと動きを止めたのを見て、首をかしげた。
「いや……なんだか、夢の終わりに、変な奴が出てきたような……」
「変な奴?」
「ああ……くそ、よく思い出せないな」
あんな夢の後だし、目が覚める直前だったのもあって、記憶が朧気だ。少なくとも、フランとウィルではなかったと思うが……
「なぁによ、あんた。あの二人以外にも、夢に出てきてたってわけ?あんたも隅に置けないわねぇ」
「うっせ、そんなんじゃねーよ!」
「で、どこの女よ?あたしたちの誰か?ひょっとしてあた……あ、やっぱいい。なんでもない」
「あん?だいたい、その夢に出てきたのって、男だったと思うんだがな……」
「えっ。あんた、見境ないわね……」
「ちがう!」
この、色ボケヴァンパイアめ!ええい、夢の話はもうやめだ、やめ!俺は強引に、話題を変えた。
「なあおい、それより、そろそろ出発の時間じゃないのか?」
「さあ、知らないわよ」
「知らないわって、聞いてないのか?いつ頃出発か」
「聞くわけないでしょ。なんであたしが、あんな臭い男たちに声かけなきゃなんないのよ」
アルルカは本当に興味なさそうに、組んだ足をぶらぶら揺すった。まったく、相変わらずの人間嫌いめ。だいたいそれなら、俺だって男じゃないか。それともこいつ、俺を男だと思ってないな?ったく……いいさ。目覚ましがてら、自分で確かめるとするか。
俺の寝ていたすぐ隣には、毛布にくるまったライラが眠っていた。毛量の多い赤毛が、カーテンのように顔を覆ってしまっている。息苦しそうだと顔に掛かった髪を払ってやると、くすぐったかったのか、ふふふと小さな笑みをこぼした。いい夢を見ているみたいだな。ギリギリまでそっとしておいてやろう。
寝床から起き上がって毛布をしまっていると、朝食の支度をするいい匂いが漂ってきた。給仕係がパンを焼いているらしい。ふむ、今パンを焼いているということは、出発までまだまだありそうだな。ちょいと早起きしすぎたか。
「ん?」
パンの焼ける匂いに混じって、すぐ近くから、炭のような焦げ臭い匂いが漂ってきた。はて、炭なんて使っているやつがいるのか?こっちの世界じゃ、あまり炭は見かけない。ほとんどが薪だから、たぶん高級品なんだろう。
出発までぼーっとしているのも何だったので、俺はその匂いを辿ってみることにした。誰かが火鉢でも使っているのなら、一緒に当たらせてもらえないかな。そう思いながら、鼻をふんふん言わせていると、出所は思ったより近いことが分かった。おそらく、あの目の前にある焚火からだろう。おまけに、側に見覚えのある後姿。あの二つ結びは、ロウランだ。
「ロウラン、何やってんだ?」
「わひゃ!だ、ダーリン?」
裏返った声を出して、ロウランが勢いよくこちらに振り返った。ん?今なにか、急いで背中に隠したような……
「……ロウラン、今隠したの、なんだ?」
「え、別に?何も隠してなんてないの。あはは、ダーリンってば、見間違いじゃない?」
「ふーん……ところでロウラン、お前との将来についてなんだがな」
「えっ、え!?そんなダーリン、どういう風の吹き回し?とうとうアタシと……!」
スキあり!ロウランが動揺した隙に、俺はさっと背後に回り込んだ。ロウランが隠していたのは、木の枝?なんで枝なんか隠すんだ?それに、何かが巻き付いているみたいだけど。
「ああー!ひどいのー!ダーリン、アタシを騙したね!?」
「わははは。油断したな、ロウラン」
「あーん!乙女の純情を弄んだー!悪い男なのー!」
ひ、人聞きの悪いことを……ぷくーっとむくれるロウラン。本気で怒っているわけじゃないだろうが、あまりからかいすぎるのもよくないか。
「で、何してたんだよ?」
「あ、う、うん……」
ロウランはなおも、もじもじしている。言いにくいことっぽいな?でもなぜだか俺には、聞いてほしそうにも見えたんだがな。俺が焚火の側に腰を下ろすと、ついに観念したのか、ロウランがおずおずと口を開いた。
「その……さっき、兵隊さんのところに行って、食料を分けてもらってきたの」
「うん?手持ち、もうなくなったっけか?」
「ううん。そうじゃなくて、アタシが……ダーリンのご飯を、作ってあげたかったの。でも失敗しちゃった」
へ?そう言ってロウランは、隠していた木の枝を見せた。ああなるほど、巻き付いていたのは、よく見れば焦げたパンだ。さっきの炭みたいな匂いは、こいつが原因か。
「そうだったのか。ロウランって、料理は得意じゃないんだ?ちょっと意外かも」
「う……花嫁修業で、いちおうやったんだよ?でもなにせ、三百年も前のことだから……」
「ああ、そらそんだけ経てばな……」
三百年前は、どういう料理があったんだろう?食材……は、今と変わりはしないか。けど調理法は、今とはだいぶ違っているんじゃないだろうか。それに俺なら、三日前に教わったことでも忘れる自信がある。
「けど、そういうことなら……」
俺はロウランの手から、ひょいと枝切れを抜き取った。
「あっ。ダーリン、返して!そんなの、ただの失敗作なの!」
「でも、もったいないだろ。焦げてるけど、ほら。この辺とかは食えそうだし」
そう言って俺は、枝巻きパンにかじりついた。うぐ……か、固い。歯が折れそうだったが、なんとか一口かじり取った。
「うん。まあ、ひょっと固いけど、ひゃんと食えるよ」
さすがに、おいしいよとは言えなかった。あまりにも見え透いているしな。ロウランもそれは分かっているのか、ぐっと唇に力をこめると、膝を抱えて顔をうずめた。
「……あんまり、無理しないでね。お腹壊すと大変なの」
「ああ」
確かに、うまくはない。けど、嬉しいじゃないか。失敗したにせよ、ロウランはこれを、俺のためにこしらえてくれたんだ。いつもなら料理担当はウィルだけど、今朝は俺の寝言のせいで、それどころじゃなかったしな。だからきっと、温かい食事を用意してくれようとしたんだろう。月並みだけど、その気持ちで腹いっぱいってやつだ。
「……今度はちゃんと、おいしいの作るからね」
「おう。楽しみにしてるよ」
俺はなんとか、焦げたパンを食べ切った。そんなわけで、その日はあごが疲れる朝からスタートした。
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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「うわ、わ。起きちゃいました……!」
「しーっ!静かにしないと……」
ん?ふっと目をやると、金色と赤色の瞳と目が合った。フランとウィルが、俺の枕元に座って、こちらを覗き込んでいる。げっ、よりによってこの二人とあさイチから……俺が気まずく思っていると、なぜか向こうも、さっと目を逸らした。そして次の瞬間には、ぴゅーっとどこかに逃げてしまった。
「な、なんだ……?」
俺が気まずいのは分かるけど、どうして二人のほうから逃げていくんだろう。まあいいか、俺としてはありがたいし。
毛布から上半身を起こして、あたりを見渡す。当たり前だが、ここはシェオル島なんかじゃない。魔王の大陸の、黒い岩山が続く荒地の、連合軍の野営地だった。黒い岩石質の地面の上に、兵士たちの寝袋とテント、そして朝霧が広がっている。
ん?ふと、こちらを見つめる視線に気が付いた。霧の中から、アルルカのニヤニヤした顔がのぞいている。やつは近くの岩にもたれて、組んだ足をぶらぶら揺すっていた。
「……なんだよ、アルルカ。なにニヤニヤしてんだ」
「んっふふふ。教えてほしい?」
うわ、朝からダルいな……しょうがない、付き合ってやるか。こくりとうなずいてやる。
「キキキ!いいわ、教えてあげる。ねえあんた、なんか、夢を見てたでしょ」
「ぎくっ。な、なぜそれを……」
「キャハハ、やっぱり!なぜも何も、あんたが自分から白状したのよ。つまり、寝言でね」
「ね、寝言?俺、なんか喋ってたのか?」
「もちろん、ばっちりとね。であの二人は、それを聞いたってわけよ」
え、まさか、フランとウィルが……え、それってなんだが、すごく恐ろしくないか?
「お、おい。俺、いったいなんて言ってた……?」
青ざめた俺を見て、アルルカはますます調子づいた。うまそうなごちそうを前にしたように、ザクザクと俺を切り刻んでくる。
「でもねぇ、しょうがないと思うわよ、あたしは。何だかんだ言っても、あんたも男だもの。そりゃ、溜まるものもあるわよねぇ。あーでもあれはさすがに、聞いてるこっちが恥ずかしくなりそうだったわぁ」
「なっ!おい、ウソつくな!ほんとのことを言えよ!」
「ほーんとだって、ウソじゃないわよ。こんな具合にね。んんっ……あぁ、フラぁン、ウィルぅ!」
「うわー!やめろ!」
俺はアルルカを黙らせようとしたが、彼女は片手で楽々俺を押さえ込むと、ガッと首に腕を回して、隣に座らせた。
「こら、大人しくなさいってば!あたしには、厳正なる真実を語る義務があるのよ」
「うそつけ!」
「ホントのことよ?すぅっごく切なそうな声で、何度も呼んでたわ。そりゃ、あの娘たちも気まずくなるわよねー、きひひひ!」
ば、馬鹿な……た、確かに俺は、二人のあられもない夢を見た。でもまさか、それを口にして……!?
「……あれ?」
「きひひひ……ん、なによ。どうしたの?」
腹を抱えて笑っていたアルルカは、腕の中の俺がはたと動きを止めたのを見て、首をかしげた。
「いや……なんだか、夢の終わりに、変な奴が出てきたような……」
「変な奴?」
「ああ……くそ、よく思い出せないな」
あんな夢の後だし、目が覚める直前だったのもあって、記憶が朧気だ。少なくとも、フランとウィルではなかったと思うが……
「なぁによ、あんた。あの二人以外にも、夢に出てきてたってわけ?あんたも隅に置けないわねぇ」
「うっせ、そんなんじゃねーよ!」
「で、どこの女よ?あたしたちの誰か?ひょっとしてあた……あ、やっぱいい。なんでもない」
「あん?だいたい、その夢に出てきたのって、男だったと思うんだがな……」
「えっ。あんた、見境ないわね……」
「ちがう!」
この、色ボケヴァンパイアめ!ええい、夢の話はもうやめだ、やめ!俺は強引に、話題を変えた。
「なあおい、それより、そろそろ出発の時間じゃないのか?」
「さあ、知らないわよ」
「知らないわって、聞いてないのか?いつ頃出発か」
「聞くわけないでしょ。なんであたしが、あんな臭い男たちに声かけなきゃなんないのよ」
アルルカは本当に興味なさそうに、組んだ足をぶらぶら揺すった。まったく、相変わらずの人間嫌いめ。だいたいそれなら、俺だって男じゃないか。それともこいつ、俺を男だと思ってないな?ったく……いいさ。目覚ましがてら、自分で確かめるとするか。
俺の寝ていたすぐ隣には、毛布にくるまったライラが眠っていた。毛量の多い赤毛が、カーテンのように顔を覆ってしまっている。息苦しそうだと顔に掛かった髪を払ってやると、くすぐったかったのか、ふふふと小さな笑みをこぼした。いい夢を見ているみたいだな。ギリギリまでそっとしておいてやろう。
寝床から起き上がって毛布をしまっていると、朝食の支度をするいい匂いが漂ってきた。給仕係がパンを焼いているらしい。ふむ、今パンを焼いているということは、出発までまだまだありそうだな。ちょいと早起きしすぎたか。
「ん?」
パンの焼ける匂いに混じって、すぐ近くから、炭のような焦げ臭い匂いが漂ってきた。はて、炭なんて使っているやつがいるのか?こっちの世界じゃ、あまり炭は見かけない。ほとんどが薪だから、たぶん高級品なんだろう。
出発までぼーっとしているのも何だったので、俺はその匂いを辿ってみることにした。誰かが火鉢でも使っているのなら、一緒に当たらせてもらえないかな。そう思いながら、鼻をふんふん言わせていると、出所は思ったより近いことが分かった。おそらく、あの目の前にある焚火からだろう。おまけに、側に見覚えのある後姿。あの二つ結びは、ロウランだ。
「ロウラン、何やってんだ?」
「わひゃ!だ、ダーリン?」
裏返った声を出して、ロウランが勢いよくこちらに振り返った。ん?今なにか、急いで背中に隠したような……
「……ロウラン、今隠したの、なんだ?」
「え、別に?何も隠してなんてないの。あはは、ダーリンってば、見間違いじゃない?」
「ふーん……ところでロウラン、お前との将来についてなんだがな」
「えっ、え!?そんなダーリン、どういう風の吹き回し?とうとうアタシと……!」
スキあり!ロウランが動揺した隙に、俺はさっと背後に回り込んだ。ロウランが隠していたのは、木の枝?なんで枝なんか隠すんだ?それに、何かが巻き付いているみたいだけど。
「ああー!ひどいのー!ダーリン、アタシを騙したね!?」
「わははは。油断したな、ロウラン」
「あーん!乙女の純情を弄んだー!悪い男なのー!」
ひ、人聞きの悪いことを……ぷくーっとむくれるロウラン。本気で怒っているわけじゃないだろうが、あまりからかいすぎるのもよくないか。
「で、何してたんだよ?」
「あ、う、うん……」
ロウランはなおも、もじもじしている。言いにくいことっぽいな?でもなぜだか俺には、聞いてほしそうにも見えたんだがな。俺が焚火の側に腰を下ろすと、ついに観念したのか、ロウランがおずおずと口を開いた。
「その……さっき、兵隊さんのところに行って、食料を分けてもらってきたの」
「うん?手持ち、もうなくなったっけか?」
「ううん。そうじゃなくて、アタシが……ダーリンのご飯を、作ってあげたかったの。でも失敗しちゃった」
へ?そう言ってロウランは、隠していた木の枝を見せた。ああなるほど、巻き付いていたのは、よく見れば焦げたパンだ。さっきの炭みたいな匂いは、こいつが原因か。
「そうだったのか。ロウランって、料理は得意じゃないんだ?ちょっと意外かも」
「う……花嫁修業で、いちおうやったんだよ?でもなにせ、三百年も前のことだから……」
「ああ、そらそんだけ経てばな……」
三百年前は、どういう料理があったんだろう?食材……は、今と変わりはしないか。けど調理法は、今とはだいぶ違っているんじゃないだろうか。それに俺なら、三日前に教わったことでも忘れる自信がある。
「けど、そういうことなら……」
俺はロウランの手から、ひょいと枝切れを抜き取った。
「あっ。ダーリン、返して!そんなの、ただの失敗作なの!」
「でも、もったいないだろ。焦げてるけど、ほら。この辺とかは食えそうだし」
そう言って俺は、枝巻きパンにかじりついた。うぐ……か、固い。歯が折れそうだったが、なんとか一口かじり取った。
「うん。まあ、ひょっと固いけど、ひゃんと食えるよ」
さすがに、おいしいよとは言えなかった。あまりにも見え透いているしな。ロウランもそれは分かっているのか、ぐっと唇に力をこめると、膝を抱えて顔をうずめた。
「……あんまり、無理しないでね。お腹壊すと大変なの」
「ああ」
確かに、うまくはない。けど、嬉しいじゃないか。失敗したにせよ、ロウランはこれを、俺のためにこしらえてくれたんだ。いつもなら料理担当はウィルだけど、今朝は俺の寝言のせいで、それどころじゃなかったしな。だからきっと、温かい食事を用意してくれようとしたんだろう。月並みだけど、その気持ちで腹いっぱいってやつだ。
「……今度はちゃんと、おいしいの作るからね」
「おう。楽しみにしてるよ」
俺はなんとか、焦げたパンを食べ切った。そんなわけで、その日はあごが疲れる朝からスタートした。
つづく
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