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16章 奪われた姫君

16章 モンスター・用語辞典

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●モンスター図鑑

この図鑑は、ギネンベルナ王室が編纂した、全国に生息するモンスターの特徴、生態、戦う際の注意事項などを記したものである。これを読めば、読者諸君は危険なモンスターに対する最低限の知識を得る事が出来るだろう。ただし、留意しておいてほしい。ここに記されているのは、あくまでも多種多様なモンスターの一側面に過ぎない。諸君が実際に剣を握り、モンスターと相対する際には、必ずしも本に書かれた知識だけが全てでない事を忘れないで頂ければ幸いだ。

“危険度”について
そのモンスター一体のみに対して、人間が戦いを挑む場合の脅威の指針。

S……生物の頂点に位置する種族。人間が大軍を成したとしても、討伐は極めて困難。ドラゴン種などが該当。

A……非常に凶暴。人間単体では歯が立たず、屈強な戦士たちによる軍隊の形成が必要。オーガ、ゴーレムなどが該当。

B……危険だが、熟達した知識と技量があれば討伐可能。ただし一人では苦戦を強いられるであろう。ライカンスロープ、トロールなどが該当。

C……単体では弱く、一人前の戦士なら十分応戦可能。だがこのランクのモンスターは群れを成すことが多く、個としての弱さを補っているので注意されたし。オーク、ゴブリンなどが該当。

D……極めて脆弱、もしくは危険性のない生物群。

・モンスター詳細

ゴブリン
歩人根目 小鬼樹科 危険度B
小鬼。
十匹ほどの群れを成すことが多い。単体ではそれほど脅威ではないが、数に囲まれると太刀打ちできない。たとえ一匹でいるゴブリンを見つけたとしても、その周囲に仲間がいることを忘れないようにしたい。
山岳に出没する代表的なモンスターの一角。人間の子供ほどの背丈に、鋭い牙を持つ。狡猾でずる賢く、オーガなどの格上の相手にも、罠や不意打ちを駆使して挑みかかる。また、狩りや闘争と関係のない、いわゆるイタズラを仕掛けてくることも多い。ゴブリンに騙されてキメラの巣に落とされた旅人の話は有名である。
樹齢を重ねた古木の根元に巣を作る。以前は単に大木の根を好んでいるのだと考えられていたが、研究の結果、本種は鬼人目ではなく歩人根目の生物、すなわち動物ではなく植物の仲間であることが判明した。古木はゴブリンたちの母体であり、その根元の巣に戻ることで、母体の養分を分け与えられているのだと考えらえれる。その見返りとして、ゴブリンたちは仕留めた獲物を巣に持ち帰り、母体に栄養を与えているのだ。

ヴィーヴル
翼手目 竜人蝙蝠科 危険度B+
人の体、蛇の首と尾、コウモリの翼を持つキマイラ相のモンスター。
牙と爪に毒を持ち、噛みつかれると平衡感覚を狂わされ、眩暈と吐き気が止まらなくなる。解毒薬はヴィーヴルの尿だが、これには大量の細菌が含まれているため、どのみち病に苦しむことになる。解毒の際は覚悟して飲むように。
人間と蛇の特徴を持つ、大型のコウモリ。翼と腕があるように見えるが、実際の腕は翼腕であり、人間の腕のように見える部分は耳が変化した部位である。そのため、コウモリ類に見られる発達した聴覚は失われており、代償として人間へと擬態する能力を身に着けたと考えられる。主に人間を標的とする、スタージュやチュパカブラなどの吸血モンスターをおびき寄せ、逆に捕食してしまうためだ。
かつてはその奇異な見た目から、人間とドラゴンのハーフであると信じられていた。リザードマンと同じく、各地の竜人伝説の発端となったモンスターである。当然、人とドラゴンの混血など存在するはずもなく、またドラゴンが人の姿に変化できるという眉唾の噂も根拠など一切ないので、うかつに騙されないように。

サンドウォーム
撫子目 大筒砂仙人掌科 危険度B-
巨大な芋虫のような、大型のサボテン。
巨体を横にし、砂を掻き分けるように潜行する。目は持たず、砂の上の振動を全身の針で察知しているため、むやみに走り回るとかえって注意を引いてしまう。やり過ごしたいのであれば、静かにじっとしていること。
筒状の茎を持つサボテンの一種。砂漠に棲息する。多肉植物でありながら一点に根を下ろすということをせず、びっしりと生えた棘を細かく振動させることで、砂中を泳ぐように移動することができる。そうやって砂を頂点の穴から飲み込み、水分や小動物などを越し取って養分としている。ただし水、獲物共に乏しい砂漠ではそこまで実入りがいい方法というわけではないようで、十分な水分が確保できる時には、じっと横たわって光合成に勤しむ姿を見ることができる。

アケパロス
甲虫目 死人転虫科 危険度C
主に動物の死骸を餌とする、フンコロガシの仲間。
後述する特性により、首のない死体として、砂漠を動き回る。鈍重だがその異様な見た目から過剰な警戒と恐れを招きやすい。落ち着いて冷静に対処することを心がければ、そう恐ろしい相手ではないはずだ。
砂漠などの乾燥地帯に棲む、美しい瑠璃色のコガネムシ。暑い昼間は土中でじっとしているが、夜になると地表を歩き回り、餌となる動物の死体を探す。基本的には死骸を捕食するスカベンジャーとして生きるが、損傷が少ない死後間もない死骸を見つけると、それを”宿”とする習性を持つ。死骸の頭部を口吻を使って切断すると、腹部から特殊な神経茎を露出させ、それを死骸の神経に接続することで、死体を操ることができるのだ。頭部を切断するのは、アケパロス自身が脳の代わりを務めることで、死体を動かすためだと思われる。この死体の”宿”を用いることで、本種は暑さ厳しい昼間でも活動ができ、また外敵に襲われる心配もなくなる。さらに緊急時には非常食にもなるなど、とことんまで死骸を使い倒す。またこの際、死体が長持ちするように、活動に不要な臓器は事前に食べてしまうなど、砂漠という厳しい環境で生き抜く術をこれでもかと実践する賢い昆虫である。

オルゴイコルコイ
蔓蜘蛛海星目 八岐大蛇海星科 危険度A
無数の巨大なゴカイの群れに見える、クモヒトデの仲間。
砂漠の砂中に潜み、獲物が上を通りかかるのをじっと待っている。もしも不自然に盛り上がった砂丘を見かけたり、砂が波打っている場所を見つけた時は、急いで逃げるといい。もしも見つかってしまうと、その巨体と数から逃げ切るのは至難の業だろう。
真っ赤なミミズ、もしくはゴカイの大群に見えるが、実は全て同一の個体であり、砂の中で本体と繋がっている。その正体は陸生のクモヒトデの近縁種であり、ミミズのように見えるものは全て捕食腕と呼ばれる、特殊な腕である。目を持たないが音に敏感で、地表のわずかな音にも反応し、砂の中から襲い掛かってくる。元々は海で暮らす生物でありながら、陸上に適応し、さらに砂漠という生存が難しい環境でここまで大型化するのは極めて珍しいケースである。モンスターの中にはしばしば特殊な環境に適応した種が発見されるが、本種の研究が進めば、そういったモンスターたちの謎を紐解くカギになるかもしれないと期待されている。

ギガース
巨人目 岩巨人科 危険度A-
岩のような見た目の巨人。
巨人の中では比較的小型で、性格も大人しめ。だが腐っても巨人であることに変わりはないので、不用意な接近や挑発は厳禁だ。その気になれば山をも崩すことができると言われている。
岩山に洞穴を掘って暮らす。繁殖期にのみ群れをつくることが確認されているが、それ以外は基本的に単独で生活する。雑食だが主な主食は植物で、杉や樅といった針葉樹を丸かじりすることを好む。他の巨人目のモンスターと違って、そこまで大暴れをすることは少ないが、それでも巨体の影響力は凄まじい。長年ギガースが棲んだ山は、あちこちに掘られた洞穴の影響で脆くなっており、しばしば大規模な山崩れを引き起こす。そうなると本種も別の住処を求めて山を移動するため、山崩しの荒神と呼称されることもある。

ハイワイバーン
有翼鱗目 剛飛竜科 危険度不明
ごく最近見つかった、ワイバーンの亜種。
通常二枚の翼を持つワイバーンに対して、三倍の六枚の翼を持ち、それに合わせてブレスを生み出す器官も三つ有している。ワイバーン最大の奥義であるブレスを三回も吐くことができるというだけでも、本種がどれほど恐ろしい存在か、容易に想像がつくだろう。発見例が極めて少なく、危険度の分類はまだなされていないが、少なくともA+は下らないと言われている。
生態など一切不明だが、おそらく繁殖はせず、偶発的に発生するか、何らかの魔術によってのみ生み出されるモンスターであると思われる。六枚羽などの特徴から、三体のワイバーンが融合して生まれた存在である可能性が示唆されているが、今後の調査に期待したいところだ。

●魔法辞典

・(無属性)

キュアテイル
傷を治す。

スクレイルストレージ
異次元にアイテムを格納する、または取り出す。魔術師一人につき1アイテムしか登録できない。

・(火属性)

ファイアフライ
小さな蛍光色の火の玉を複数飛ばす魔法。

フレイムパイン
燃え盛る柱を地面から生やす。

トリコデルマ
高温の赤い火の粉を撒き散らす。皮膚に触れると爛れ、吸い込むと肺を火傷する。

ジラソーレ
大きな火球を飛ばす。

ボルカニックバーナクル
地面から火山のように炎を噴き上げる。

メイフライヘイズ
高熱を放ち、蜃気楼を発生させる。

ファイアアント
ファイアフライの火球を一点に集中し、超高温にした魔法。威力も上がっているが、その分制御も難しい。

ホップフレア
大きな音と炎を発する魔法。合図や信号に用いられる。

ヒートアナナス
暖房魔法。加減を誤ると有毒ガスが発生するので注意が必要。

・(氷属性)

スノーフレーク
空気の温度を極端に下げ、凍らせる。

メギバレット
氷の弾丸を撃ち出す。

ゼロアベーテ
氷点下の空間を生み出し、広範囲を凍て付かせる。

ペタルカメリア
鋭い氷の刃を迫り出させる。

・(風属性)

ストームスティード
疾風の速さで走る馬を呼び出す。

ガストオブスカイラーク
塵を鳥の形に渦巻かせ、ミサイルのように飛ばす。

ヤトロファクルカス
風の力を集めた球を投げつける。

スフィアリウム
気流をコントロールし、空気を一定の範囲に留める魔法。

・(雷属性)

ボルテックターミガン
羽の形をした雷を無数に飛ばす。

レイライトニング
電撃の槍を放つ。

パグマボルト
強力な落雷を起こす。

・(地属性)

バンブーシュート
石筍を生やす、もしくは投げつけて攻撃する魔法。

クレイローチ
土を粘土状にし、自在に操る。

ヴェルスクエイク
地震を起こす。

・(水属性)

ハイドランジア
無数の水流でできた竜の首を呼び出す。辺り一帯が洪水になるほどの威力。水系最強魔法。

ポンドロータス
清らかな水を湧き上がらせる。

ダッシュバラクーダ
激流を起こす。

●地図
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