じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

文字の大きさ
746 / 860
17章 再開の約束

7-3

しおりを挟む
7-3

「一つじゃなかったんだ……十個、二十個、それ以上!どんどん出てきてるよ!」

ライラが震える声で、塔の上部を指さしている。ヘルズニルの上空に、何機もの黒い球体が浮上した。あれが全て、さっきのと同じ浮遊砲台?

「あれだけ集中攻撃して、やっと一つを破壊したのに……」

ウィルの顔には、絶望がありありと浮かんでいた。けど俺だって、似たようなもんだ。俺たちとクラーク、二チームがかりで、ようやく一機を撃墜したばかりだっていうのに。もうすでに、空には十倍以上の黒い点が浮かんでいる。あれを全て、同時に相手するのは、無理だ。

(無理なものは無理。けど、それで諦めるか!)

真っ向からぶっ壊すのは不可能だ。それなら、別の道を探る!考えるのが、俺の仕事だ。思い出せ、なにか一つでも、ヒントになるようなものはなかったか?

(バリアのせいで、魔法は弾かれる……物理に関しても、フランの槍をものともしない耐久力……)

魔法で攻撃しても、あの青いバリアが現れて、無効化してしまう。フランの剛槍も、白い木くずがついただけだった……ん?まてよ、白い木くず?

「あ……そういう、ことなのか?」

「桜下さん?」

ウィルがこちらを見るが、説明している暇はない。今はとにかく、この閃きが正しいのかどうか、検証しないといけない。

「フラン!頼みがあるんだ。あいつらに向かって、槍をぶん投げてくれ!」

「え。いいけど、かなり距離がある。当たるか分からないよ。それに、当たったところで、効果もないけど」

「構わない。やってくれ!」

フランはこくりとうなずくと、背中のスピアを一本取って、助走してから思い切り投げた。槍はロケットのように飛んで行ったが、やがて失速し、浮遊砲台群の手前で落下し始めた。すると、砲台が一斉に、槍の方を向いた。一斉に黒いビームが発射されると、槍は地面を目前に、木っ端みじんに消し飛ばされてしまった。

「ちっ。やっぱりだめだった」

フランが残念そうに舌打ちする。だが俺は、これで確信を得た。

「やっぱり、そういう事か」

「え?」

「あのバリア、物理攻撃は防げない」

フランも、そして仲間たちも、目を丸くした。

「え……で、でも!フランさんの槍は、全然効かなかったじゃないですか!」

「それは、あの黒い眼玉が単純に堅いだけだ。現に、フランの槍は、確かに命中してただろ」

フランの槍は傷一つ付けることができなかったが、それでも確かに“触れていた”。だから、木くずがついたんだ。もしバリアで防がれていたのなら、木くずすらつかなかったはず。

「でも、それがいまさら何よ。どうせ効果がないなら、どっちだって同じじゃない」

アルルカはイライラした様子で、腕組みした。

「確かにそうだ。けどそれはいったん置いておいて、あの砲台のことを考えてみようぜ」

「はぁ?」

「あの砲台、お前はどう思う?アルルカ」

アルルカは完全に困惑した様子で、ついには呆れてしまったらしい。

「あー、そうね。インテリアにはちょうどいいんじゃない?つやつやできれいだし、色も黒で高級感があるわ。あたし、黒って好きなのよ。ほら、あたしの下着も黒だし」

「あ、アルルカさん!こんな時に何ふざけてるんですか!もっとまじめに……」

「いや、俺も同意見だ」

アルルカとウィルの目が点になった。

「……桜下さん、下着は黒い方がお好みなんですか?」

「そっちじゃなくって!インテリアがどうこうって部分だ」

ウィルは俺に回復魔法をかけるかどうか悩んで、手を中途半端に伸ばしている。俺が恐怖のあまりボケたという、あらぬ誤解を受けないためにも、早く結論を言おう。

「あれを、俺は生物とはみなさない。アルルカが、あれをインテリアって呼んだようにな。あれは、どう見ても無機物だ」

「え?ええ、そう、ですね。私も、あれが生き物には見えません」

「なら、あいつを動かしているのは、別の何かのはずだ。頭もないのに、ひとりでに考えるはずがない。アレは、誰かに操られているか、なにかに統括されている、と予想できるだろ」

ここは正直、俺の推論の域を出ないところだ。もしかしたら、アレは無機物そっくりのモンスターの可能性もある。だが今、この切迫した状況で、あらゆる可能性を検証している暇はない。それに、そこまで突拍子もない仮説ではないはずだ。

「確かに……あのような砲台が、たまたま偶然、この近くに転がっていたとは考えられません」

ウィルは、俺の説に納得してくれたようだ。

「それなら魔王軍の誰かが、あれを作ったということになります。もしかして、その人が操っている?」

「そうかもしれない。きっとどこかに、あいつらを統括している場所があるんだ。で、あの球、毎回どこから出てきてた?」

「ねじれた塔の先端……あ!ひょっとして、そこが?」

俺はうなずいた。

「そうだ。あそこが、砲台たちの発進基地。ならそこに、統制官がいてもおかしくない。そこを叩けば……」

「あの砲台たちは、統率を失って、動かなくなるかも!さいあくでも、これ以上数が増えるのは防ぐことができます!」

「その通りだ」

ウィルは目を輝かせた。だが俺は、顔を曇らせる。

「あのバリアが魔法以外は防がないって分かった時、俺はあの城に乗り込んでいって、その基地を叩けばいいって思ったんだ。けど、さっきの砲台の動きを見たら、そうも言えなくなった。あいつらに一斉攻撃されたら、とても城まではたどり着けない」

くそ!拳を握り締める。あと一手で、この局面をひっくり返せそうなのに!俺の凡庸な頭じゃ、ここまでが限界だ。

「みんな、すまない。ここまでしか、俺には思いつけなかった。だから頼む、みんなの知恵を貸して欲しい」

俺がうなだれると、その手にそっと、ウィルが触れた。

「何言ってるんですか、桜下さん。私たち、みんなで一つでしょう。桜下さんだけが悩む必要なんて、どこにもありません」

「そうだよ、桜下!」

ライラがぎゅっと、俺のもう片方の手を掴んだ。

「謝ることなんてないよ!桜下のおかげで、ライラ、とってもいいこと思いついたもん!」

「え?ほ、本当か?」

「うん!ウィルおねーちゃん!あれを、試す時が来たんだよ!」

「……!」

あれ?あれって、何のことだ?ウィルは目を見開くと、胸に手を当てて、大きく深呼吸した。

「すぅー、はぁー……確かに、ライラさんの言う通りかもしれません。桜下さん、ここは、私に任せてくれませんか」

「あ、ああ……でも、どうする気だ?」

「ええ。私の、秘密の秘密兵器を、使う時が来たようです」



つづく
====================

読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

====================

Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。

↓ ↓ ↓

https://twitter.com/ragoradonma
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...