じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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17章 再開の約束

12-3

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12-3

「手折られるため……?」

「そうダ」と、レーヴェは無表情にうなずく。

「お前たちだっテ、あいつらがずっと無事だと思っていたわけじゃあるまイ。必ず、コクゲンはあル」

……ああ、そうだろうとは思っていたさ。俺は悪態をつきたい気持ちを、なんとか抑えた。レーヴェに当たっても、何にもならない。むしろこの子のおかげで、たくさんの情報を得ることができたのだから。

「どうやら、あまりのんびりしている暇はないようだね」

そう言うクラークの声には、話はここまでだという雰囲気がひしひしと感じられる。

「この話を、隊長さんのところへ持っていこう。行動は早い方がいい」

「そうだな。連中には、夜通し計画を練ってもらうことになりそうだ」

俺は立ちあがろうとしたが、ふと、ある事を思い出した。

「そうだ、レーヴェ。もう一つ訊きたかったんだが、いつかに谷で戦った時、お前急に引き上げたことがあったよな?あれは、なんでなんだ?」

「ム?あの時は、この城に襲撃があったからダ。そのせいで、城の守備隊のほとんどがやられてしまっタ」

ふむ、やっぱりそうか。俺やエドガーが予想していた通りだ。

「あれは、オマエたちのしわざじゃないのカ?」

「え?まさか、そんなわけないよ」

「でも、魔王様に攻撃を仕掛けるやつガ、お前たち以外にいるカ?」

「それはそうだけど……けどその時、俺たちはまだ城のはるか遠くにいただろう。物理的に不可能だよ」

「そう、カ……」

レーヴェはまだ納得していない様子だったが、俺からもこれ以上説明のしようがない。ていうか、そっちの謎もあったっけと今思い出したくらいだ。謎、また謎で、頭がこんがらがりそうだ。

「いったい誰が、この戦争の筋書きを書いてるんだか……」

「確かに気になるけど、それは後回しだよ、桜下。今は、目先のこと。攫われた人たちのことを考えよう」

けっ、クラークに諭されるとは、俺も焼きが回ったな。うなずいてから立ち上がる。すると、レーヴェの隣に座っていたフランが呼び止めた。

「まって。行くなら、この子を縛っていかないと」

「ああ、そうだったな。クラーク、お前がやれよ」

「な、なんで僕が!」

「正義を成すものだろ?最初に縄を切る時も、反対してたじゃないか」

「反対はしてない、注意を促しただけだ!それに、女の子を縛るなんて、正義の味方がやることじゃないだろう……」

最後の方は、ぼそぼそと言い訳がましかった。ちっ、わーったわーった。悪役は俺が引き受ければいいんだろ。俺はさっき切った縄を結び直すと、レーヴェの前に屈む。

「そういうことだ。悪いな、レーヴェ」

「しょうがないことダ。姿かたちは似ているかもしれないが、レーヴェはニンゲンじゃない。魔物ダ」

「……そっか。そうだな」

俺は黙々と、レーヴェの腕を縛った。下手に情けを掛けるよりも、むしろこっちのほうが、彼女を傷つけない気がしたから。

「なア」

「うん?」

腕を縛り直すと、レーヴェが呟くように言った。

「さっきの……あの話は、本当カ」

「あの?えっと、ごめん。どれのことだ?」

「……レーヴェたちを、皆滅ぼす気はないと言ったことダ」

おっと、そうか。そのことをすっかり忘れていた。でもレーヴェからしたら、そこが一番肝心だったはずだ。

「ああ、もちろんだ。今の話を訊いて、確信したよ。悪い奴は、お前たちじゃない。その上にいる連中だってな。俺たちが倒さなきゃいけないのは、そいつらだ」

「本当カ?でも、魔王様もヴォルフガング様も、とても強いゾ。それに、レーヴェたちは逆らえなイ。そう言う風に、作られてル。それでもカ?」

「う、そうか……」

彼らの意志とは関係なく、襲ってくるかもしれないってことだな。確かにそうなると、ちとやっかいだな……と。

「もちろん。わたしたちは、“殺し”はしないんだ」

そう答えたのは、俺じゃなくて……

「フラン?」

「そうでしょ。なら、何の問題もない」

フランの赤い瞳が、自信満々に俺を見つめる。俺は悩んでいた自分が、急に馬鹿馬鹿しくなった。

「ははは!そうだ、その通りだ。レーヴェ、心配いらないぜ」

「なんダ?そういう意味ダ?」

俺はとん、と胸を叩く。

「俺たちは、殺しはしない主義なんだ。だから、この先戦う相手も、極力殺さない。もしもレーヴェみたいなやつがいたとしても、殺さずに済む方法を全力で探す。約束するよ」

「はア?」

レーヴェは完全に呆れた顔をしている。

「そんなこと、自分たちを危険に晒すだけじゃないカ?」

「そうかもしれねえな。けど、これが俺たちのやり方。これが、俺たちが決めた道なんだ」

ウィルがキラキラした目で、こちらを見ている。ロウランは満足げにうなずき、ライラは口を押えて、小さな笑い声を溢した。アルルカは処置なしとばかりに首を振っている。

「レーヴェ、ありがとな。この借りは、必ず返すぜ」

「……そうしてくれると、レーヴェも助かル」



俺たちが馬車を出ると、ちょうど人がこちらに歩いてくるのが見えた。燭台を持っているのか、手元がぼんやりと明るい。

「ん、誰だ……?」

「あ、桜下くん、クラークくんたちも。一緒にいたんだね。よかったぁ、ちょうど会えて」

「あれ?尊?」
「尊さん?」

ロウソクを片手にふらふらと歩いてきたのは、尊だった。夜の散歩か?まさか、こんな敵陣とど真ん中でと思う気持ちと、いや尊ならあり得るという気持ちが戦っている。
そんな葛藤もつゆ知らず、尊は俺たちを見ると、ちょいちょいと手招きした。

「実は、二人を呼んできてほしいって、総隊長さんに頼まれてたの」

「あ、そ、そうだったのか」

よかった、さすがにそこまでふにゃふにゃじゃないか……俺が密かに安心している隣で、なぜかクラークはしかめ面をしている。

「どうかした?クラーク君。お腹でも痛いの?」

「いえ……ただその、勇者を、伝言役にしたんですか?尊さん、もう少し引き受ける仕事を選んだほうがいいんじゃ……」

「え?そうかなぁ。特にやることもなかったし、別に気にしてないけど……」

クラークはあっけらかんとした尊に、歯がゆそうな顔をしている。本人が気にしないっつってんだから、拘らなくてもいいのになぁ?

「悪いな尊、手間かけさせて。結構探したんじゃないか?」

「ううん、そうでもなかったよ。すぐに見つかったから」

「え?よくわかったな、俺たちがここにいるって」

ここは、キャンプ地の中でも外れの方だけど。尊はきょとんとすると、すぐにばつが悪そうに頭を掻いた。

「えへへ……実は、ちょこっと寄り道しようと思ってて。お夕飯食べ過ぎちゃったから、ちょっとだけ散歩してこうと思ってたんだぁ」

ガクッ。俺とクラークは、互いに苦笑を漏らした。やっぱり、尊は尊だ。



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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