じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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17章 再開の約束

12-5

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12-5

なんだ、なんだ?ヘイズとエドガーは、二人だけでうんうんうなずき合っている。

「おい、何のことだよ?」

「ああ。だがその前に、一つ確認させてくれ。さっきお前は、というかあの捕虜は、何者かの襲撃があったって言ったんだよな?」

俺がそうだと言うと、ヘイズはゆっくりとうなずいた。

「その話も、おそらく真実だろう。実際に多くの魔物の死体を見たし、戦況もそれを物語ってる。つまり、状況はオレたちに味方してる」

「それは前に、エドガーとも話したよ。それで?」

「そこでオレたちは、さっきまでここで、これからの計画を話し合っていたんだ」

ああそういや、大勢が集まっていた跡があったっけ。

「どう攻略していくつもりだ?」

「残りの敵の数は、正確には分からねえ。が、数はかなり少ないと見ている。とはいえ、あちらにはまだ飛び切りの隠し玉がいるけどな」

「ああ。三幹部のことだな」

三幹部と呼ばれる、魔王軍の中でも飛び切りのエリートモンスター。その名は、二体まで判明している。俺たちを橋から叩き落とした魔人ヴォルフガングと、レーヴェが慕っているドルトという魔物だ。

「オレたちは、大きく分けて二つの計画を立てた。一つ目は、ゆっくり、確実に敵を攻めるパターン。魔王城のフロアを一階一階制圧し、残りの兵力と三幹部を順に討伐していく」

まあ、普通の作戦だ。それが一番安全で、確実だろう。だが、これは一つ目。なら、もう一つの作戦は?

「もう一つは、多少のリスクは覚悟で、一気に突き進むパターンだ」

「な、なんだって?」

「具体的には、明日一日でケリをつける」

俺の目が点になった。気のせいじゃなければ、他のみんなのもだ。

「……明日、魔王まで倒すつもりか?」

「そうできるに越したこたないが、さすがにそこまでは厳しいだろうな。この場合のケリっていうのは、つまりロア様たちを助け出すって意味だ」

ああ、そっちか。だが確かに、それくらい急いだ方がよさそうな気がする。エドガーが断固とした態度でうなずいた。

「もはや、一刻の猶予もない。敵の足並みが乱れている今が好機だ。我ら一丸となって、魔王城を駆け登る!」

エドガーの激は、俺たち全員の胸に染み渡るようだった。俺たちも、クラークも、尊も。ついにこの全員で、魔王に挑むのだ。

「決行は明日早朝だ。皆、ゆっくり休んでくれ。頼んだぞ」



「いよいよ明日、か……」

エドガーたちの幕舎からの帰り、俺は空を見上げて呟いた。夜空には薄雲が立ち込めていて、月も星も見えない。

「緊張しているのかい?」

クラークがそう訊ねてきた。一瞬からかわれているのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。やつもまた、誰かに訊ねてみたくなっただけだろう。俺が独り言を溢したように。

「してないと言えば、嘘になるな。けど、やっとここまで来たかって気持ちの方が強いよ」

「そうだね。僕もだ。明日、少なくとも攫われた人たちは自由になる。うまくいけば、魔王も倒して、この戦争自体がお終いだ」

クラークは、失敗することを微塵も考えていないらしい。いや、仮に考えていたとしても、今この場で口には出せないか。

「さてと……それじゃあ、僕たちはここで」

お?いつの間にか、一の国のキャンプ地まで戻ってきていたのか。クラークとその仲間たちは、俺たちと尊を順に見る。

「明日は、お互い頑張ろう。そして、勝利を掴み取ろう」

クラークの目は決意に燃えていて、このまま円陣まで組みかねそうなほどだった。けっ、運動会じゃあるまいし、やってられるかよ。俺はひらひらと雑に手を振って、くるりと背を向けた。

「じゃ、俺たちも戻るか。そんじゃな、尊」

「あ、う、うん。えっと……」

尊のキャンプは向こう、俺たちはこっちだ。ここで全員解散だな。明日は忙しいだろうし、とっとと寝床に潜ろう。
ところが、俺たちがテントへ向かい始めてすぐのところで、いきなり呼び止められた。

「待って、桜下くん!」

「ん?……尊?」

慌てて追いかけてきたのか、尊は息を荒げている。

「どうかしたか?こっちは尊たちのキャンプじゃないけど。あ、お前まさか、自分のテントが分からなくなったなんて言わないだろうな」

「違うよぅ、そうじゃなくって……あの、ちょっとだけ、その辺歩けないかな?」

ん?散歩のお誘い……じゃ、ないよな、きっと。ひょっとすると、尊はまだ不安なのかもしれない。一瞬明日のことが頭をよぎったが、なに、ちょっとくらいどうってことないだろ。

「まあ、いいぜ。じゃあ、ぶらっとするか?」

「えっと……できれば、静かなところがいいんだけど。ここから、少し離れるくらいの」

「おう、構わないぜ。大丈夫、俺の仲間は強いから、心配いらないよ」

俺が太鼓判を押すと、仲間たちも任せておけとばかりにうなずいた。が、なぜか尊は微妙な表情になった。なんだ?俺、なにか間違えたか?

「あのー……できれば、桜下くんだけだと嬉しいなって、思ったり?」

なに?さっきまで穏やかだった仲間たちの顔が、一瞬で曇った。あ、これはマズい旗色だぞ。こうなった時、特にフランとウィルは、豹変したように攻撃的になる!俺は大慌てで、それと分からないよう自然に、尊と仲間たちの間に割り込んだ。

「あー、あー、尊さん?俺一人じゃ、ボディーガードとしちゃちょっと頼りなくないですかね?」

「ううん、そんなことないよ!桜下くん、とっても頼りになるもの。自信もって!」

うおぉい、そこでフォローはいらない!むしろ追加攻撃だ。背後で、空気がどんどん冷たくなっていくのが分かる……俺はぐいっと顔を手で拭うと、尊を半目で睨みつけた。

「尊、そう言ってくれるのはありがたいが、時と場所を考えろよ。ここは、魔王城の真ん前なんだぞ?」

「あ、あはは。そうだよねぇ……」

力なく笑う尊。ったく、ほんとに分かってるのか?俺が呆れかけた、その時だ。ふと、ある事に気付いた。

「尊……寒いのか?」

尊はなぜか、寒そうに片腕を抱えている。心なしか顔も青いし、押さえた手は小刻みに震えているようだ……

(尊、まさか!)

くそ、そう言うことかよ。だったらさすがに、断れないじゃないか。

「あー……けど、ちょっと気が変わったな。やっぱり、俺も散歩に行こうかな」

「え?」

「は?」

「はい?」

前から後ろから、いろんな声が聞こえてきた。

「いやぁ、寝る前にちょっとだけ体ほぐしときたいっていうかさ、ははは……」

俺は尊に適当な言い訳をすると、急いで振り返った。案の定、フランの目がいつもの三割増しでつり上がっている。俺は小声で呼んだ。

「フラン、フラン!ちょっと、耳貸してくれ」

「……なに。ほぐしたいなら、わたしがやってあげようか」

フランが拳をバキバキ言わす。ほぐすどころか、骨ごとすり潰されそうだな……

「悪い、でも今は大目に見てやってくれ。訳は後で話すから」

フランが片眉を上げた。完全に納得しては居なさそうだが、なにかが違うことは伝わったらしい。

「そういうことだから、ちょっと行ってくるな」

俺は仲間たちに向かって手を上げると、改めて尊に向き直った。

「じゃ、行くか?尊」

「う、うん。いこっか」

俺は尊の数歩先に立って、闇夜の中を進み始めた。



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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