じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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17章 再開の約束

19-6

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19-6

(桜下!まずは、敵の魔法を知らないと!)

「おっけー!確かにこっちだけ知らないってのも、不公平だよね!」

まずはドルトヒェンに、手の内を明かしてもらおう!

「フェアに行こうじゃない!ガスト・オブ・スカイラーク!」

ロッドに魔力を込める。塵が集まり、無数の鳥へと姿を変える。このロッドを媒体にすれば、こちらも詠唱をスキップできる。だけどこの方法は、諸刃の剣だ。魔力の消費量が、何倍にも膨れ上がるから。だからこそ、向こうにだけ休まれるわけにはいかない!

「かける二十!」

(ええっ)

ライラの驚きも無視して、ボクは通常の二十倍の小鳥を出現させた。それは一般的に大群と呼ばれる規模であったし、鳥たちの持つ意味を考えれば、砲弾の雨あられとも言えるだろう。

「いっけー!」

ダダダダダッ!小鳥たちが、ミサイルのように突撃していく。ドルトヒェンは一瞬迎え撃とうか迷った様子を見せたけど、すぐに走って逃げだした。魔法を使わない気?こっちの意図に気付かれた?どっちにしても……

「逃がさないよ!」

ボクが手を振ると、小鳥たちもぐいんと軌道を曲げて、ドルトヒェンを追う。三百六十度、どこにも死角はないぞ!
やがてドルトヒェンは、壁際に追い詰められた。チェックメイトだ!

「つっかまえ……」

え?ドルトヒェンは、すぅと息を吸うと、両手を前に突き出した。

「エクシチューム!」

パァーン!彼女の両手から、弾けるような衝撃波が放たれた。まさしく煙が吹き飛ばされるように、小鳥の大群はかき消されてしまった。

「うっそー!?」

(あいつ、ただ逃げてたんじゃない!壁を背にして、まほーの有効範囲に、鳥を誘導したんだ!)

くっそ、やられた!ボクは悔しさを堪えて、にやりと笑う。

「やるじゃない、おねーさん」

ドルトヒェンは涼しい顔で、顔に掛かった前髪を払う。

「お褒めにあずかり光栄です。ですがこう見えて、かなりギリギリなのですよ、こちらも」

「あら、そう?だったら嬉しいねぇ」

くっ。ピキピキと青筋が浮きそうなんですけど。

(桜下。あの人の……じゃないや、あの魔族の言ってること、たぶん嘘じゃないよ)

「え?ライラ、それほんとう?」

(よく見て、魔力が乱れてる。疲れてるんだよ)

ありゃ、ほんとだ。さっきまで綺麗に集約していた魔力のラインが、今はノイズが走ったように乱れている。

「なるほど、青天井ってわけじゃあないんだね」

それなら、条件は五分と五分だ。てことはこの戦い、そう遠くないうちに、決着になりそうじゃないか。

「短距離走なら、出し惜しみはナシだ。フルスロットルで、飛ばしていくよ!」

どのみちボクらも、持久戦は得意じゃない。なら取るべき作戦は、ガンガンいこうぜだ!

「ジラソーレ!」

ボウッ!僕のロッドから、燃える火の玉が発射される。対してドルトヒェンは、手のひらをこちらに向けた。

「コメット!」

シュウウウウ!青い流星が真っすぐ飛んできて、火の玉にぶつかった。
ガガーン!火の玉が爆発四散した。黒煙が視界を遮る。けど、ボクには魔力が見える!

「バンブーシュート!」

「エクシチューム!」

間髪入れずに次の魔法を唱える。ボクの放った石筍は、正確に敵の魔法とぶつかった。スガーン!ガラガラガラ!二度の魔法の相殺によって起こった黒煙と砂煙とで、目の前がすっかり覆われてしまった。

「げほ、けほ!さすがにこれじゃあ、なんにも見えないね」

(桜下!なら、目を呼び出して!)

「いいね!それ採用!ダンデライオン!」

ズズズズ……スガガ!床を砕くようにして、太い前足と、たてがみのついた頭が生えてくる。岩石のライオンが、ボクの前に姿を現した。

「いけっ!」

ライオンは一声吠えると、煙の中に飛び込んでいく。少しすると、煙の向こうで、何かが光った。

「トライウィザード!」

グシャ!何かが砕ける音と、続けて、煙が激しく渦巻く!

(くるよ!)

「うん!」

ボクは空気を蹴って、宙へと舞い上がった。煙を突き破って、光り輝くオーブが飛び出してくる。オーブは今さっきまでボクがいたところをすっ飛んで行き、壁にぶつかって弾けた。

「くっそー。攻撃を防ぐどころか、撃ち返してきたよあいつ。やるなぁ」

(感心してる場合じゃないよ!)

「はーい。けど、困ったな」

煙が晴れると、その奥から、無傷の姿のドルトヒェンが現れる。ボクが呼び出したライオンは無残にも、そのわきで粉々に砕かれていた。

「……驚きました」

「うん?なにが?」

「あなたはこれまで、風、炎、そして地の魔法を使いましたね。つまりあなたは、三つの属性を魂に有しているということですか」

「へえ……さすが。詳しいね」

「三属性の魔術師は、人間では極めてまれだと聞いておりますが。勇者の成せる業、ということですか」

「ま、そーいうことにしといて。あ、でもおねーさんのことも、なーんとなく分かってきたよ……おねーさんの魔法、原理は分からないけど、ぜんぶ無属性魔法だね?」

さて、ちょっぴりカマも掛けているけど……どう出てくるかな?
誤魔化してくるかもとも思ったけれど、意外にもドルトヒェンは、あっさりそれを認めた。

「ええ。わたくしたち魔族の魔法は、主に無属性が中心です」

「へぇー……びっくり」

「驚かれることですか?無属性魔法は、もっともありふれた魔法でしょう」

「だからこそ驚きなんだよ。普通、無属性魔法は、威力が出ないものでしょ?」

無属性魔法は、世界に普遍的に存在する、マナと呼ばれる魔力を利用する。だからこそありふれていて、強くないのが一般常識なんだ。少なくとも、人間の間では。

「だけどおねーさんの魔法は、ボクのを全部打ち負かした。面目丸つぶれだよ、もう」

「わたくしの種族は、マナの扱いに長けているようです。あなた方人間が知覚できない、より微細なマナまで使用することができますから。その為ではないでしょうか」

「ふーん……にしてもおねーさん、ずいぶんあっさり、手の内を明かしてくれるね?」

「構いません。この程度を明かしたところで、戦況に影響を与えることはないでしょうから」

むっ。その発言、場合によっちゃ、ボクを舐めているってことにならない?それにさっきから、全然顔色も変えないし。余裕しゃくしゃくってこと?

「……よぉーし。それじゃ一発、驚かしちゃおっかな!」

その冷たいお面を、引っぺがしてやる!ボクはロッドを強く握ると、意識を集中した。

「アメフラシ!デザートラット!!ウィンドローズ!!!」

(い、いっぺんに三つも!?)

さあ、とくと見よ!闇雲に連発したわけじゃないぞ。これは連発じゃなくて、連結だ!



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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