じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

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17章 再開の約束

25-3

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25-3

「奴の能力については、分かったよ」

クラークは苦い顔をしながらも、話を先に進める。

「それなら、それにどうやって対抗すればいい?あなたはさっき、なにか策があると言っていたよね」

そう問われ、ペトラは指を三本曲げた。

「奴の能力は、大きく分けて三つだ。……それしかないのか、という顔をするな。省略しただけで、細かな力や闇の魔法も含めれば、もっとあるに決まっているだろう。とにかく、対策を講じる必要があるのは、主にこれらの能力だ」

今度は曲げた指のうち、一本を立てる。

「一つ。目には見えない、不可視の力を発生させる能力」

俺たちを不意打ちで襲った、あれだな。いかんせん見えないから、警戒のしようがない、厄介な能力だ。

「物を押しつぶす、弾き飛ばすなど、様々な使い方ができるが、セカンドの能力の中では、威力は最も弱い」

「……え?嘘だろ、あれが一番弱いのか?」

フランでさえ太刀打ちできなかったんだぜ?冗談だろ……けどペトラは大まじめだ。

「お前たち、あれを喰らったんだったな?その上で、全員が無事だ。勇者も、そうでない者たちも」

「まあ、そうだけど……」

しかし、生易しいものではないと思うが。勇者以外という意味で一般人の、アドリア、ミカエル、デュアンの三人は、その時のことを思い出したのか、ずいぶん苦しそうだ。

「あれは小回りは効くが、大した力は持たん方だ。弱所もはっきりしているしな」

すると、クラークが若干苛立った様子で、顔を引きつらせながら訊ねる。

「ペトラさん、でいいのかな。あなたはそう思っているのかもしれないけど、僕らは、あの能力に全滅させられかけたんだけどな。なにかいい案があるから、そんなことを言っているんだよね?」

「無論だ。そしてそれには、お前の力が重要になってくるはずだ。勇者クラークよ」

「僕の?」

クラークはきょとんとした。雷魔法が、見えない力にどう効果があるんだろう?

「あの能力は、見えない力を発生させる不可思議なものだが、実際はちゃんと仕組みがある。引力と斥力……いわゆる、磁力と呼ばれるものが、あれの正体だ」

磁力?磁石とかの、あれか?クラークもピンとこなかったのか、首をひねっている。

「磁力だって?しかし、僕らは鉄でも、磁石でもないよ。どうして磁力に押しつぶされるんだい?」

「いいや。お前たちにだって、微量ではあるが、磁力の源となる因子が宿っている。この世のあらゆるものの中にもな。奴の能力は、それに過剰に働きかけることで、力を発生させているのだ」

ふーん……と、俺が何となくうなずく横で、ライラはふんふんと真面目にうなずいていた。同じ仕草でも、こうも違うとは……ライラがよく理解できているってことは、魔法の原理に近いものがあるのかな。

「磁力と雷は、切っても切れない関係だ。クラーク、お前の力なら、あの能力に対抗することができるはず。違うか?」

ペトラが試すような目でクラークを見つめた。やつはその目を挑発的に睨み返すと、腕を組んで、黙って考え込み始めた。
一分ほど経ってから、クラークはゆっくりとうなずいた。

「……できる、と思う。その理屈なら、僕の魔法で対抗可能だ」

ペトラは満足げにうなずいた。ええ、マジかよ?俺には理論も理解できていないが、本当だろうか?

「おいクラーク、安請け合いしてんじゃねーぞ」

「もちろんだ。こういう言い方はあれだけれど、僕は勇者としての使命で言っているわけでも、彼女の言葉を根っから信じてるわけでもない」

クラークはそこでちらりとペトラを見たが、ペトラはいたって平然としている。ま、まだ完全には信用できないってことだな。今はまだ、多少の猜疑は仕方ないだろう。

「つまり僕は、自分を最優先に考えて発言しているってことだよ。僕が生き残るために、僕の能力を最大限利用する。その上で、可能性はあると思うんだ」

「ええ……俺にはよくわかんねーけど」

「どのみち、セカンドを倒さなければ、無事に帰ることはできないからね。そこに嘘や見栄は挟まないさ」

ふーん……まあ、やつがそう言うなら。それに、正義の名の下に宣言されるよりも、こっちのほうが俺好みだ。
ペトラはクラークの返事に満足げにうなずくと、二本目の指を立てた。

「では、二つ目に移ろう。これは、闇の魔法そのものだ」

「まあ、それも当然あるよな……」

あれを無視するんじゃ、この会議の名前を希望的観測会に変更しないとな。

「闇の魔法は、魂に強く作用する。厄介な能力だが、これには私と桜下で対処するつもりだ」

「お、俺か?」

「そう。私は魔力に耐性があるし、桜下、お前は以前、あの仮面の男の魔法を防いでいたではないか」

「まあ、そうなんだけども……」

するとクラークやアドリアが、驚いた顔でこっちを見てくる。よしてくれ、たまたま相性がよかったってだけなんだから。

「いちおう、俺のやみ属性の魔力は、マスカレードの闇の魔力を何回か破った実績がある。けど、セカンドにも通用するかは分からないぞ」

「そうだな。だから、矢面に立てとは言わん。基本は私が前に出よう。お前は自分の力を活かせると判断したタイミングで動いてくれればいい」

「そういう事なら、わかったよ」

「よし。では、残る一つだが……」

ペトラは三本目の指を立てたが、ぱたりとたたんでしまった。

「……どうしたんだ?」

「正直、これには対抗策が見つからない」

「えっ」

そんな!ここまで来て、最後がそれかよ?

「どういうことなんだよ、策がないって」

「うむ……三つ目は、黒い炎だ」

黒い炎……フランの腕を焼き、尊を消してしまった、あの炎……

「あれは、ただの炎ではない。恐ろしい呪いを秘めた火だ」

呪いだって?なぜか、フランとアルルカがうなずいていたのが気になるが。それよりも、その意味を確かめたい。

「呪いって、どういう意味だ?」

「あの炎によって受けた傷は、呪いの力によって、二度と治らなくなるのだ」

な、なんだって……?俺は大慌てで、未だ右腕のないフランの方へ振り向いた。

「ふ、フラン!ファズを掛けてみるぞ!」

「う、ん……」

フランは乗り気じゃなさそうだったが、構っていられない。もし本当だったら、大変だ……どうか、ペトラの勘違いでありますように……

「ディストーションハンド・ファズ!」

ヴン!俺の右手が輪郭を失い、フランの胸の中にわずかに沈み込む。いつもならここで、魔力が流れ込む感覚が腕を伝い、体が再生されるはずだが……

「な、治らない……!なんでだ!くそ、もう一度!」

「……無駄だよ。もう、これは……」

「うるせえ、もう一度だ!くそっ、ディストーションハンド・ファズ!」

だが、何度呪文を唱えてみても、フランの右腕が治ることはなかった。くそったれ!確かに、魔法は発動しているはずなのに!

「はぁ、はぁ……も、もう一度……」

「もうやめて。魔力を無駄遣いしないで」

フランは左手でそっと俺の腕を掴むと、自分の胸から引きはがした。ちくしょう、こんなことって……

「……これでわかっただろう。あの炎は、非常に危険だ」

ペトラが瞳を伏せながら言う。

「あれの厄介なところは、呪いだけでない。あの炎は、魔力すらも焼き尽くす。魔法であっても、あの炎を打ち消すことはできないということだ。分かるか?セカンドはあの炎を、盾にも、武器にもできるということだ」

俺は反応を返すことができなかった。代わりにアドリアが答える。

「セカンドがあの炎で自らを覆えば、私たちは一切の手出しができなくなるということだな。対して奴は、一方的に私たちを攻撃できる」

「その通りだ。……だが、隙がないわけではない。私との戦いで奴は、あの黒い炎を出す時、他の能力をほとんど使用しなかった」

クラークがごくりとつばを飲む。

「あの炎と別の能力、同時には使用できないってことかい?」

「いや、まったくではないだろう。だが炎を制御するには、かなりの集中が必要なようだ。他の能力を使用している際に、大量の炎を出すことはできないと見ていいはず」

「なら……奴が、例の磁力を使っている時。もしもその時に、僕が隙をついて、一瞬で奴を倒すことができたら……」

「そうだ。奴は磁力に対抗できることを知らない。黒炎を出される前に、奴を切り伏せろ」



つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

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