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17章 再開の約束
32-4
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ソウルレゾナンスが解け、俺は元の体に戻った。だが、いつもの激痛は襲ってこない。それに、疲れもほとんどない。だぶん……エラゼムの土産のおかげ、だな。メアリーの魔力が、俺を守ってくれたんだ。
「助かったぜ、メアリー。あんたの騎士を遣わせてくれて」
俺は小声でつぶやく。きっと、空の向こうには聞こえているだろう。この戦いが終わったら改めて、彼女の墓参りに行かせてもらおう……でもその前に、まだ仕事が残っている。
「くっ……そがぁ……この……オレが……」
爆発によってめちゃめちゃに砕かれた地面にうずくまっているのは、セカンドだった。最大火力の黒炎弾が暴発した影響は、術者本人に最も多く跳ね返ったわけだ。だがそれでも、奴はまだ倒れちゃいない。さすがに、相当のダメージを負ってはいるようだが。
「殺す……テメェら一人残らず、全員殺してやる……!」
セカンドは地面をかきむしりながら、憎悪の目で俺を睨む。フランが駆け寄ってくると、俺を守るように前に立った。だがその肩をそっと押さえる。
「フラン。ちょっとだけ、いいか」
フランは顔を半分だけこちらに向けた。骸骨となってしまった彼女からは、表情を伺うことはできない。前ならきっと、「正気なの?」とでも言われていたんだろうが。
「少しだけ、あいつと話がしたいんだ。大丈夫、油断はしないよ」
フランは顔を戻すと、半歩横にずれた。了解ってことで、いいんだよな。
「さて……セカンドさんよ」
俺はその場から動かないまま、セカンドに声を掛ける。近づいたら、何されるか分かんないからな。結果的に俺は、奴を見下ろす形になる。
「クソが……カスごときが、オレを見くだすんじゃねえ……!」
ほら、これだ。俺は首の後ろをポリポリ掻いた。
「別に、見くだしてるわけじゃないって。それに、あんた自身のこともな」
「なんだと……?」
意外か?まあ、そうだよな。
「確かに、あんたとは仲良くなれそうにねーよ。でもま、多少は共感できるんだ」
フランがバッとこちらに振り向く。おわ、びっくりした。
「なんだよ、前に言わなかったか?俺とあいつは、似てるって。本質的な部分では、理解できるところも多いんだ。だからだよ」
そう。リーダーシップをいかんなく発揮し、誰からも英雄と湛えられたファーストや、物静かで、徹底的に黒子に徹することができたサードとも違う。俺が一番似ているのは、セカンドだろう。
「セカンド。こういうのは、まあなんというか、月並みだけど。あんたが言いたかったこと、何となく分かる気がするんだ」
「なん……だと?」
「あんたが今までやって来たこと。善い事も悪いことも、全部みんなさ。突き詰めれば、このためだろ?」
ファーストやサードのようになれなかったセカンド。奴はきっと、
「寂しかったんだろ?」
「……」
セカンドは茫然と、俺を見ている。ひょっとしたら、呆れているのかもしれない。
「あんたは、寂しかったんだ。違うか?」
「……なんなんだ、テメェは。さっきから、知った風なことばかり言いやがる。何のつもりだ?」
「おっと、他意があるわけじゃねーよ。単純さ。俺もそうだから、そうじゃないかと思ったんだ」
「テメェも……?」
「ああ。初めてクラークと戦った時、俺はあいつが怖かった。勇者の力は凄まじかったよ。あんなのと正面切って戦うなんて、俺ならごめんだ」
「……」
「だから、あんたが勇者の力を恐れたって言うのも、なにもおかしくないと思う。もし俺がそっちの立場だったら、やっぱりあらゆる罠なりを総動員しただろうと思うよ。けど、一つ分からないことがある。ならどうしてあんたは、自分から戦争を吹っかけたんだ?」
そうまでして勇者を恐れておきながら、なぜ自ら火の粉を呼び込むのか。
「最初はわけ分かんなかったよ。どうして魔王が、こんなことをするんだろうってな。でもあんたが、一人の人間がやったことだって分かったら、全部繋がった」
「それが……その理由が、寂しいからだって?」
「そう思ったよ。俺だけじゃない、誰だって寂しいさ。知らない世界に突然連れてこられちゃ」
セカンドがこうなる前のことを、俺は知っている。宿屋のジルは、“彼”が普通の少年に見えたと語った。きっと俺と“彼”には、大きな違いはなかったんだ。
「あんた、人恋しかったんだ」
魔物から人間を作り出そうとした。自分の血を引いた子どもたちをかき集めた。全部、人恋しさゆえの行動だ。
圧倒的な力を手に入れながら。最強の勇者を退け、魔王の座を手に入れながら。それでも結局、誰かと一緒にいるっていう、ちっぽけな願い事は叶わなかったんだ。ほんとうに、どこまでも……
「……俺もな。自由が、欲しかったんだ。けど結局、自分一人じゃなにもできなくて……それで失敗してきた。もしかしたら、俺もあんたと同じ道をたどっていたかもしれないな」
「……で?だったとして、お前は何がしてーんだ。いまさらオレの理解者ヅラして、取り入ろうって魂胆か?」
俺は首を横に振る。それこそ、いまさらだ。これだけ殴り合っておいて。
「俺が望むのは、一つだ。あんた、負けを認めちゃくれねぇか」
「は……?」
セカンドはぽかんと口を開けた後、ケタケタと笑い出した。
「カカカカ!何を言い出すかと思えば。オレがいつ負けた?言っておくが、これで勝ったと……」
「分かってるよ。だから、認めて欲しいんだ。まだあんたは戦えるだろうが、このくらいで、もうやめにしないかって言ってんだよ」
セカンドは這いつくばってはいるが、奴の黒い鎧はまだ消えていない。エラゼムとの必殺技を喰らってなお、奴は力を残している。つくづく恐ろしいな、まったく。
「これ以上しんどい目にあったって、お互い得もないだろ。俺個人としては、あんたを裁くだとか、討ち滅ぼすとかには興味ないし」
「ハッ!それで、大人しくこうべを垂れろってか?この偽善者が!殺し合い以外に、決着はねーんだよ!」
「だから、それじゃ困るんだってば。それだと主義に反する」
「主義だぁ?」
セカンドは今度こそ呆れたようだ。ふん、どいつもこいつも。ポリシーの重要さを分かってないな。
「俺は殺しはしたくない。だから、あんたには引っ込んでもらいたいんだ」
つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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俺は小声でつぶやく。きっと、空の向こうには聞こえているだろう。この戦いが終わったら改めて、彼女の墓参りに行かせてもらおう……でもその前に、まだ仕事が残っている。
「くっ……そがぁ……この……オレが……」
爆発によってめちゃめちゃに砕かれた地面にうずくまっているのは、セカンドだった。最大火力の黒炎弾が暴発した影響は、術者本人に最も多く跳ね返ったわけだ。だがそれでも、奴はまだ倒れちゃいない。さすがに、相当のダメージを負ってはいるようだが。
「殺す……テメェら一人残らず、全員殺してやる……!」
セカンドは地面をかきむしりながら、憎悪の目で俺を睨む。フランが駆け寄ってくると、俺を守るように前に立った。だがその肩をそっと押さえる。
「フラン。ちょっとだけ、いいか」
フランは顔を半分だけこちらに向けた。骸骨となってしまった彼女からは、表情を伺うことはできない。前ならきっと、「正気なの?」とでも言われていたんだろうが。
「少しだけ、あいつと話がしたいんだ。大丈夫、油断はしないよ」
フランは顔を戻すと、半歩横にずれた。了解ってことで、いいんだよな。
「さて……セカンドさんよ」
俺はその場から動かないまま、セカンドに声を掛ける。近づいたら、何されるか分かんないからな。結果的に俺は、奴を見下ろす形になる。
「クソが……カスごときが、オレを見くだすんじゃねえ……!」
ほら、これだ。俺は首の後ろをポリポリ掻いた。
「別に、見くだしてるわけじゃないって。それに、あんた自身のこともな」
「なんだと……?」
意外か?まあ、そうだよな。
「確かに、あんたとは仲良くなれそうにねーよ。でもま、多少は共感できるんだ」
フランがバッとこちらに振り向く。おわ、びっくりした。
「なんだよ、前に言わなかったか?俺とあいつは、似てるって。本質的な部分では、理解できるところも多いんだ。だからだよ」
そう。リーダーシップをいかんなく発揮し、誰からも英雄と湛えられたファーストや、物静かで、徹底的に黒子に徹することができたサードとも違う。俺が一番似ているのは、セカンドだろう。
「セカンド。こういうのは、まあなんというか、月並みだけど。あんたが言いたかったこと、何となく分かる気がするんだ」
「なん……だと?」
「あんたが今までやって来たこと。善い事も悪いことも、全部みんなさ。突き詰めれば、このためだろ?」
ファーストやサードのようになれなかったセカンド。奴はきっと、
「寂しかったんだろ?」
「……」
セカンドは茫然と、俺を見ている。ひょっとしたら、呆れているのかもしれない。
「あんたは、寂しかったんだ。違うか?」
「……なんなんだ、テメェは。さっきから、知った風なことばかり言いやがる。何のつもりだ?」
「おっと、他意があるわけじゃねーよ。単純さ。俺もそうだから、そうじゃないかと思ったんだ」
「テメェも……?」
「ああ。初めてクラークと戦った時、俺はあいつが怖かった。勇者の力は凄まじかったよ。あんなのと正面切って戦うなんて、俺ならごめんだ」
「……」
「だから、あんたが勇者の力を恐れたって言うのも、なにもおかしくないと思う。もし俺がそっちの立場だったら、やっぱりあらゆる罠なりを総動員しただろうと思うよ。けど、一つ分からないことがある。ならどうしてあんたは、自分から戦争を吹っかけたんだ?」
そうまでして勇者を恐れておきながら、なぜ自ら火の粉を呼び込むのか。
「最初はわけ分かんなかったよ。どうして魔王が、こんなことをするんだろうってな。でもあんたが、一人の人間がやったことだって分かったら、全部繋がった」
「それが……その理由が、寂しいからだって?」
「そう思ったよ。俺だけじゃない、誰だって寂しいさ。知らない世界に突然連れてこられちゃ」
セカンドがこうなる前のことを、俺は知っている。宿屋のジルは、“彼”が普通の少年に見えたと語った。きっと俺と“彼”には、大きな違いはなかったんだ。
「あんた、人恋しかったんだ」
魔物から人間を作り出そうとした。自分の血を引いた子どもたちをかき集めた。全部、人恋しさゆえの行動だ。
圧倒的な力を手に入れながら。最強の勇者を退け、魔王の座を手に入れながら。それでも結局、誰かと一緒にいるっていう、ちっぽけな願い事は叶わなかったんだ。ほんとうに、どこまでも……
「……俺もな。自由が、欲しかったんだ。けど結局、自分一人じゃなにもできなくて……それで失敗してきた。もしかしたら、俺もあんたと同じ道をたどっていたかもしれないな」
「……で?だったとして、お前は何がしてーんだ。いまさらオレの理解者ヅラして、取り入ろうって魂胆か?」
俺は首を横に振る。それこそ、いまさらだ。これだけ殴り合っておいて。
「俺が望むのは、一つだ。あんた、負けを認めちゃくれねぇか」
「は……?」
セカンドはぽかんと口を開けた後、ケタケタと笑い出した。
「カカカカ!何を言い出すかと思えば。オレがいつ負けた?言っておくが、これで勝ったと……」
「分かってるよ。だから、認めて欲しいんだ。まだあんたは戦えるだろうが、このくらいで、もうやめにしないかって言ってんだよ」
セカンドは這いつくばってはいるが、奴の黒い鎧はまだ消えていない。エラゼムとの必殺技を喰らってなお、奴は力を残している。つくづく恐ろしいな、まったく。
「これ以上しんどい目にあったって、お互い得もないだろ。俺個人としては、あんたを裁くだとか、討ち滅ぼすとかには興味ないし」
「ハッ!それで、大人しくこうべを垂れろってか?この偽善者が!殺し合い以外に、決着はねーんだよ!」
「だから、それじゃ困るんだってば。それだと主義に反する」
「主義だぁ?」
セカンドは今度こそ呆れたようだ。ふん、どいつもこいつも。ポリシーの重要さを分かってないな。
「俺は殺しはしたくない。だから、あんたには引っ込んでもらいたいんだ」
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