75 / 107
第一章
第75話/Night
しおりを挟む
第75話/Night
「……長いですね」
ユキと交代してから、そろそろ十分は経つだろうか。店主のおやじは、頑として折れようとしない。おそらく、何かやましい事があるのだろう。それを知られたくないから、あまり立ち入って欲しくないのだ。
「あーあ、派手にやってるわねぇ。ああなると店長、長いわよ?」
不意に声をかけてきたのは、ど派手な金髪に派手な化粧の女だった。この店の嬢だろう、男物のだぼだぼシャツ一枚というふざけた格好をしている。
「それなら、早くするように伝えてきてくれませんか」
「いやぁよ、そんなの。死にに行くようなもんじゃない」
女は何が楽しいのか、ケタケタと笑った。
「ね、ね。今お話してるあのお兄さんって、あなたのカレシぃ?」
「はぁ?くだらないこと聞かないでください、あなたには無関係でしょう」
「えーい~じゃない。年の近い女の子と話す機会なんてめったにないのよぉ。恋バナしましょ~?」
「嘘言わないでください。ここには女性キャストが大勢いるでしょう」
「いるわよ?けど、あたしたちは話さないの」
「……」
「だから、こういう機会は貴重なのよぉ。ねぇ、あのひとカレシじゃないなら、なんなの?客?それともセフレ?」
「バッ……そんなんじゃありません。馬鹿なこと言わないでください」
「え~?別に普通でしょお?男と女がいたら、自然とそうなるじゃない?」
「あなたのなかの“ふつう”は少し調整したほうがいいと思います……」
「あら、なにに操を立ててるのかしら。こんなの、息をするのと同じようなもんじゃなぁい?」
「……そんなふうに年がら年中、頭の中をピンク一色でいれたら楽でしょうね」
「ふふ、いうわねぇ。ま、息は言い過ぎにしても、それでもそんなに敬遠することかしらぁ?っていうか、ふつうしないわよぉ。本能みたいなものだもの」
「それは……」
「太るのが嫌だからって、食欲を遠ざけて飢え死にするのは賢いことかしら?そういう人こそ、世間一般はバカって言うんじゃない?」
「……それは極論すぎやしませんか」
「そう?一般論よぉ。あたしだって頭はよくないもの、むつかしいことはわかんないわぁ。あたしが知ってるのは、楽しいことと、キモチイことだけ」
「……」
「あなただって、ホントはキモチイと思ってるんでしょお?その年ごろだもの、興味がないわけないものねぇ?それとも、初めてがよっぽどヒドイものだったのかしら?」
「それは……その」
「いいじゃない、ここだけよ。聞かせて頂戴な」
「……」
「え、まさか“まだ”なんてことは、ないわよねぇ?」
「……」
「……あら」
「……悪かったですね!どうせ耳年増ですよ!」
「あっははは!なぁに、意外とピュアなのねぇ?実はロマンチストなタイプぅ?」
「あいにくと周りが爛れてる連中ばっかりだったんで、そうそうに嫌気が差してたんですよ!いいんです、私の人生には必要なかったんですから!」
「あらそう。なら、いまから楽しめばいいじゃなぁい?」
「はぁ、はぁ……え?」
「今からでも遅くないわよぉ。いいものよ、アレ。絶対損してるわよ?このご時世、明日がある保証もないからね。後悔はしたくないと思わない?」
「そ……それは」
「あなた、ウチの『用心棒(ケツモチ)』してるヤクザでしょ?けど今までお店で見たことなかったもの。それが、今になって突然出てきた……なんだか生き急いでるみたいだわ。まるで期限の前に、あわててケーキを消化してる子供みたい」
「……」
「勘違いしないで?馬鹿にしたいわけじゃないの。むしろいいことだと思うわ。応援したげたいって思ってるのよ」
「……あいにくですが、余計なお世話です。これは、私だけでどうにかなる問題ではありませんから」
「そうね。なら、ほかの人を頼ればいいじゃない。それこそ、あのお兄さんとか。仲もいいみたいだし?」
「……それこそ、冗談ですよ」
「そんなことないわよぉ。あなたたちなら、とってもお似合い……」
「終わったみたいです」
振り向くと、ユキがこちらに戻ってくるところだ。やれやれといった顔で、くたびれたように手を振っている。
「無駄話はここまでにしましょう。連れが戻ってきたので、失礼します」
「……わかったわ。けど、後悔しないようにね?」
「……もう一度言いますが、余計なお世話です」
私はくるりと踵を返すと、ユキのもとへと歩いて行った。
けど、ユキをそういう対象になんて……う、顔が熱い。さっきの女が変なこと言うから……
くそ、彼の顔をまともに見れるでしょうか……
「悪い、待たせたな。オヤジにごねられてさ……どうしたんだ?」
「な、なんでもありません!さ、はやく行きましょう!」
な、なんだ?ウィローはつっけんどんに言い切ると、ドスドス大股で先に行ってしまった。俺のことを見ようともしない。
「……俺、なんかやったかなぁ」
ぽりぽり頭をかくと、俺は急いでウィローの後を追った。
その後も、ウィローはずっとむすっとしていた。どうして怒ってるんだろう?しかし、俺が何度理由を聞いても、頑として教えてくれなかった。う~む……
「なぁ、ウィロー……俺が何かしたのなら、教えてくれよ。これじゃ謝ることもできないだろ?」
「へ?あ、すみません!別に、怒ってるわけではないんです。ただ……」
「ただ?もしかして、具合が悪いのか?そういえば、顔も赤いぞ」
俺が顔を覗き込むと、ウィローはいっそう顔を朱に染めた。
「~!い、いいですから!ちょっと考え事をしてただけです。それよりほら、そろそろ戻りましょう?もうあらから、回り終えましたよね」
「あ、ああ……」
だめだ。意地でも言わないつもりらしい。
「少し様子を見てみるか……」
しかし、その後もウィローは特に何も話してくれないまま、とうとう決戦の前日がやってきてしまった。
「う~……」
「スーったら。明日のことを今から心配してるの?」
「だだ、だってぇ……」
「……むしろあなたの方が不思議ですよ、キリー。この中で緊張してないのはあなただけです」
「あれ?」
ウィローの言う通りだ。俺たちは(正確にはキリー以外は)その差こそあれ、一様に緊張していた。せっかくだからとみんなで食卓に集まったが、会話らしい会話は今のが初めてだ。
「すごいな、キリーは。全然平気なのか?」
「そんなことないよー。わたしだって怖いし、ちょっぴり緊張もしてるよ?」
「あれ、そうか」
「そりゃねー。けど、それよりもやるぞ!って気持ちの方が大きいの。ここで勝たなきゃ、ユキとリルは連れて行かれちゃう。そうさせないように、全力で頑張るつもり」
「キリー……」
「なんて、わたしは何にも出来ないんだけど……けど、みんながいるから。『メイダロッカ組』なら、ぜったい負けっこないもん!」
「く、くははは。確かに、その通りだ」
「……うん、そうだ、そうだよね!わたしたちなら、きっと大丈夫!」
根拠なんて、何もない。けど、キリーが言ったことなら信じられる気がした。不思議なもんだ。
「……」
「ん……?」
ふと、ウィローの顔が気になった。思い詰めたような、切羽詰まったような表情だ。
だが声をかけられると、すぐにその顔は消えてしまった。
「ウィロー……?」
この前から様子がおかしかったが、まさかまだ……?
そして俺の予感は、その日の夜に的中することとなった。
「……」
ペラリ。
ページをめくる音だけが、薄暗い部屋に響いている。
俺は自分の部屋で一人、先代の日記を読んでいた。
「こんなことやってたんだな……」
そこには、先代と組員たちの出会いも書かれていた。ウィローと初めて会った時、二人は一戦交えたらしい。そのケンカの中で、絆が芽生えた……のだろうか。
先代はその日の最後を、こう締めくくっていた。
「つっけんどんだが、根は寂しがり。愛を欲して見える……」
ほ、ほんとかぁ?
愛だなんて言ったら、彼女は鼻で笑いそうだがな。
コンコン。
「ん?」
控えめに、扉が叩かれる音。みんな寝てると思ったが、誰だろう?
「まだ起きてるよ。何か用か?」
そう呼びかけても、扉の向こうからは何も返事はない。あれ、空耳だったかな。
その時、キィと小さな音を立てて、そろそろと扉が開けられた。
「ユキ……」
「なんだ、ウィローか。誰かと思ったよ」
そこにいたのは、寝間着姿のウィローだった。噂をすれば影、だな。
「どうしたんだ?こんな遅くに」
「いえ……その」
「?とりあえず、入るか?」
俺が促すと、ウィローはおずおずと部屋に足を踏み入れた。
「……」
「……?」
それっきり、ウィローは何も言わない。
彼女の後ろで、半開きだった扉がパタリと閉まった。
「ひゃ!」
「……ぷっ」
「ちょ、ちょっとユキ!笑わないでください……」
「いや、悪い。くくく、何をそんなに緊張してるんだよ」
「……ふふ、ほんとですね」
静かに笑い合うと、ウィローも少しは落ち着いたようだ。
「それで、どうしたんだよ。ここでよければ、座るか?」
俺はベッドをぽんぽんと叩く。ウィローは逡巡したようだが、コクリと頷いた。
ぽすり。
小柄な彼女が腰かけても、ベッドはほとんど軋まなかった。
「あ、あのですねユキ……」
「うん」
俺はのんびり彼女の言葉を待った。ウィローなら、急かさなくっても言葉を見つけて、それを伝えてくれるはずだ。
「じつは、一つお願いがありまして、その……」
「言ってくれよ。俺でよければ力を貸す」
「あの、ユキにしか頼めないというか……」
「うん」
「あの、ユキ……私を、私を抱いてください!」
「うん……は?」
さすがに聞き返した。なんだって?
「抱いてくれって言ったんです!」
「……抱きしめればいいか?」
「とぼけないでください!私と寝てくれって意味です!もっと言うならセッ」
「わー!やめなさい!」
口をふさぐと、ウィローはジタバタ暴れた。その弾みで寝間着の前がはだけると、その下は下着だけだ。ほ、本気なのか……?
「ぷはっ……ユキ!ふざけないでください!私は本気ですよ!」
「いや、そうは言われてもだな……」
「それとも、やっぱり私なんかじゃダメですか?キリーみたいに胸もないし、スーみたく可愛くもないから……」
「え?そんなこと……」
「お願いします!こんなちんちくりんな私に情けをかけてください!挿れて出すだけですから!」
「ウィロー!落ち着けって!」
俺はウィローのむき出しの肩をガッと抑えた。う、絹のような肌ざわりだ……
「ウィロー、話してくれよ。こんなことするのは理由があるんだろ?」
「はぁ……はぁ……」
ウィローはしばらく荒い息をしていた。だが動悸が収まるにつれ、少しずつ落ち着きを取り戻したようだ。
「ウィロー。きみの頼みなら出来る限り協力するが、きみが傷つくようなことはできないよ。それでもと言うなら、わけを教えてくれないか」
「……」
ウィローはうつむいたままだったが……やがて、ぽつぽつと語り出した。
「……くだらない理由ですよ。私、処女なんです」
「い!?いや、続けてくれ」
「それで、最近そのことを馬鹿にされたんですよ……」
「そんな。早けりゃいいってもんでもないだろう」
「ええ。私もそう思いました……けど、なんだか急に虚しくなってしまって」
「虚しい?」
「そうです。だって、私は女として誰にも見られて来なかったってことじゃないですか。そのまま人生お終いだなんて……」
そこまで言って、ウィローはしまった、と口をつぐんだ。
「お終いっていうのは……俺たちが負けるって思ってるってことか?」
「……そうじゃないです。けど、無事に帰ってこれる保障なんて、どこにもないじゃないですか!だから、悔いの残らないように……」
「ウィロー……」
思い詰めての暴走だったんだな。
「ウィロー、そんな気を病むなよ。なぁに、きっとみんな無事に帰ってこれるさ。そんなテキトウなヤツにあげちまったら、きっと後悔するぞ?」
「そんなことないです。ユキなら構いません」
「ぐ……」
場が場なら嬉しいセリフだろうが、今は素直に喜べないぞ。
「だって……誰にも愛されないなんて、そんな人生……寂しすぎます」
「……」
愛を欲して見える……か。言い得て妙だったんだな。
ここでウィローを抱いてやるのも、一つの優しさだろう。それで彼女が迷いを振り切れるなら、明日の戦いにもプラスなはずだ。
けど……
「ウィロー。俺は、お前に居なくなって欲しくない。だから、悔いを残しておいてくれ。きみも言ってたじゃないか、死に切れないやつは生き残るって」
「それは……」
「それに、愛されてないなんて言うなよ。メイダロッカ組のみんなは、きみを愛してる。キリーもスーもアプリコットも……も、もっ……ちろん、俺だってそうさ」
「ユキ……そこで噛みます?」
う……恥ずかしくって、“も”がえらい高くなってしまった。ウィローにジトーっと睨まれている。
「……証拠」
「え」
「証拠、見せてください……」
つい。
目を閉じ、顎を傾ける。白い喉を差し出すその姿は、自らの命すらも委ねているように見えた。
「ウィッ……」
ここで声をかけるのは野暮だろう。この前黒蜜に怒られたばっかりだ。
……ここで他の女の名前を出してしまうから、俺はモテないんだろうな……
彼女の唇は、緊張で少しかさついていた。
「……」
「こっ……これで、いいか」
「ドキドキしてる……変な感じ」
変な感じって……
「これで私のはじめては、ユキに奪われちゃったんですね……」
「人聞きの悪い言い方をすんじゃない……」
「ま、ユキは初めてじゃないですけどね」
「い!?」
「知ってますよ。アプリコットとキスしたことも、スーにキスされたことも、ルゥとイチャついてたことも、キリーを抱いたことも……」
「最後のは誤解だ!て、なんで知ってるんだよ!?」
「女の情報網をなめない方がいいですよ。あなたが場末の宿で女を抱いたって、次の日には私たち全員に知れ渡っていますから」
「ストーカーかよ!」
「これも愛ゆえです」
「愛が重い!」
「まぁ、それは冗談にしても……あなた、結構みんなからの好感度高いですからね。どこかその辺に女でも作ったら、スーあたりが泣きますよ」
「えぇ……それこそ冗談だろう」
「さぁ?気になるなら、自分で確かめてみてください」
確かめるったって……どうしろっていうんだ?
「さて……私は部屋に戻りますね。遅くまで付き合わせてすみませんでした」
「え、あぁ……」
「それでは、おやすみなさい」
「……なぁ、ウィロー!」
「はい?」
俺が呼び止めると、ウィローは顔だけ振り向いた。
「その……ウィローは、どうなんだ?」
「何がですか?」
「だから、その……好感度ってやつ」
「……くすっ。ヒミツ、です」
ウィローは唇に指を立てると、するりと部屋から出て行った。
「なんだよ……言うだけ言っといて……」
後には、釈然としない俺だけが残された。
けど、ウィローは憑き物の落ちたような、スッキリした顔をしていた。彼女の悩みが少しでも晴れたのなら、慣れない事をしたかいがあった……よ、な?
「~~~ッ!」
やってしまった。
よりにもよって、ユキに迫るなんて。しかも諭されたばかりか、ききき、キスまで……
「うぁ……」
顔が熱い。さっきから心臓はドキドキと暴れっぱなしだった。私、変な顔してなかったでしょうか?
「けど……」
それ以上に、にやける顔を抑える事ができない。
どうしよう、嬉しい。
「キス一つで舞い上がるなんて……生娘のようですね」
あながち間違ってないのが虚しいですが……
それに、照れ隠しにみんなのことを話してしまいましたが、よかったでしょうか?もっとも、気付いて無いのはユキだけだったような気もします……
「……いいか。悪い男には、少し罰を与えましょう」
せいぜい悩んでくださいね、色男さん?
私はクスリと笑うと、静かに自分の部屋に戻った。
つづく
「……長いですね」
ユキと交代してから、そろそろ十分は経つだろうか。店主のおやじは、頑として折れようとしない。おそらく、何かやましい事があるのだろう。それを知られたくないから、あまり立ち入って欲しくないのだ。
「あーあ、派手にやってるわねぇ。ああなると店長、長いわよ?」
不意に声をかけてきたのは、ど派手な金髪に派手な化粧の女だった。この店の嬢だろう、男物のだぼだぼシャツ一枚というふざけた格好をしている。
「それなら、早くするように伝えてきてくれませんか」
「いやぁよ、そんなの。死にに行くようなもんじゃない」
女は何が楽しいのか、ケタケタと笑った。
「ね、ね。今お話してるあのお兄さんって、あなたのカレシぃ?」
「はぁ?くだらないこと聞かないでください、あなたには無関係でしょう」
「えーい~じゃない。年の近い女の子と話す機会なんてめったにないのよぉ。恋バナしましょ~?」
「嘘言わないでください。ここには女性キャストが大勢いるでしょう」
「いるわよ?けど、あたしたちは話さないの」
「……」
「だから、こういう機会は貴重なのよぉ。ねぇ、あのひとカレシじゃないなら、なんなの?客?それともセフレ?」
「バッ……そんなんじゃありません。馬鹿なこと言わないでください」
「え~?別に普通でしょお?男と女がいたら、自然とそうなるじゃない?」
「あなたのなかの“ふつう”は少し調整したほうがいいと思います……」
「あら、なにに操を立ててるのかしら。こんなの、息をするのと同じようなもんじゃなぁい?」
「……そんなふうに年がら年中、頭の中をピンク一色でいれたら楽でしょうね」
「ふふ、いうわねぇ。ま、息は言い過ぎにしても、それでもそんなに敬遠することかしらぁ?っていうか、ふつうしないわよぉ。本能みたいなものだもの」
「それは……」
「太るのが嫌だからって、食欲を遠ざけて飢え死にするのは賢いことかしら?そういう人こそ、世間一般はバカって言うんじゃない?」
「……それは極論すぎやしませんか」
「そう?一般論よぉ。あたしだって頭はよくないもの、むつかしいことはわかんないわぁ。あたしが知ってるのは、楽しいことと、キモチイことだけ」
「……」
「あなただって、ホントはキモチイと思ってるんでしょお?その年ごろだもの、興味がないわけないものねぇ?それとも、初めてがよっぽどヒドイものだったのかしら?」
「それは……その」
「いいじゃない、ここだけよ。聞かせて頂戴な」
「……」
「え、まさか“まだ”なんてことは、ないわよねぇ?」
「……」
「……あら」
「……悪かったですね!どうせ耳年増ですよ!」
「あっははは!なぁに、意外とピュアなのねぇ?実はロマンチストなタイプぅ?」
「あいにくと周りが爛れてる連中ばっかりだったんで、そうそうに嫌気が差してたんですよ!いいんです、私の人生には必要なかったんですから!」
「あらそう。なら、いまから楽しめばいいじゃなぁい?」
「はぁ、はぁ……え?」
「今からでも遅くないわよぉ。いいものよ、アレ。絶対損してるわよ?このご時世、明日がある保証もないからね。後悔はしたくないと思わない?」
「そ……それは」
「あなた、ウチの『用心棒(ケツモチ)』してるヤクザでしょ?けど今までお店で見たことなかったもの。それが、今になって突然出てきた……なんだか生き急いでるみたいだわ。まるで期限の前に、あわててケーキを消化してる子供みたい」
「……」
「勘違いしないで?馬鹿にしたいわけじゃないの。むしろいいことだと思うわ。応援したげたいって思ってるのよ」
「……あいにくですが、余計なお世話です。これは、私だけでどうにかなる問題ではありませんから」
「そうね。なら、ほかの人を頼ればいいじゃない。それこそ、あのお兄さんとか。仲もいいみたいだし?」
「……それこそ、冗談ですよ」
「そんなことないわよぉ。あなたたちなら、とってもお似合い……」
「終わったみたいです」
振り向くと、ユキがこちらに戻ってくるところだ。やれやれといった顔で、くたびれたように手を振っている。
「無駄話はここまでにしましょう。連れが戻ってきたので、失礼します」
「……わかったわ。けど、後悔しないようにね?」
「……もう一度言いますが、余計なお世話です」
私はくるりと踵を返すと、ユキのもとへと歩いて行った。
けど、ユキをそういう対象になんて……う、顔が熱い。さっきの女が変なこと言うから……
くそ、彼の顔をまともに見れるでしょうか……
「悪い、待たせたな。オヤジにごねられてさ……どうしたんだ?」
「な、なんでもありません!さ、はやく行きましょう!」
な、なんだ?ウィローはつっけんどんに言い切ると、ドスドス大股で先に行ってしまった。俺のことを見ようともしない。
「……俺、なんかやったかなぁ」
ぽりぽり頭をかくと、俺は急いでウィローの後を追った。
その後も、ウィローはずっとむすっとしていた。どうして怒ってるんだろう?しかし、俺が何度理由を聞いても、頑として教えてくれなかった。う~む……
「なぁ、ウィロー……俺が何かしたのなら、教えてくれよ。これじゃ謝ることもできないだろ?」
「へ?あ、すみません!別に、怒ってるわけではないんです。ただ……」
「ただ?もしかして、具合が悪いのか?そういえば、顔も赤いぞ」
俺が顔を覗き込むと、ウィローはいっそう顔を朱に染めた。
「~!い、いいですから!ちょっと考え事をしてただけです。それよりほら、そろそろ戻りましょう?もうあらから、回り終えましたよね」
「あ、ああ……」
だめだ。意地でも言わないつもりらしい。
「少し様子を見てみるか……」
しかし、その後もウィローは特に何も話してくれないまま、とうとう決戦の前日がやってきてしまった。
「う~……」
「スーったら。明日のことを今から心配してるの?」
「だだ、だってぇ……」
「……むしろあなたの方が不思議ですよ、キリー。この中で緊張してないのはあなただけです」
「あれ?」
ウィローの言う通りだ。俺たちは(正確にはキリー以外は)その差こそあれ、一様に緊張していた。せっかくだからとみんなで食卓に集まったが、会話らしい会話は今のが初めてだ。
「すごいな、キリーは。全然平気なのか?」
「そんなことないよー。わたしだって怖いし、ちょっぴり緊張もしてるよ?」
「あれ、そうか」
「そりゃねー。けど、それよりもやるぞ!って気持ちの方が大きいの。ここで勝たなきゃ、ユキとリルは連れて行かれちゃう。そうさせないように、全力で頑張るつもり」
「キリー……」
「なんて、わたしは何にも出来ないんだけど……けど、みんながいるから。『メイダロッカ組』なら、ぜったい負けっこないもん!」
「く、くははは。確かに、その通りだ」
「……うん、そうだ、そうだよね!わたしたちなら、きっと大丈夫!」
根拠なんて、何もない。けど、キリーが言ったことなら信じられる気がした。不思議なもんだ。
「……」
「ん……?」
ふと、ウィローの顔が気になった。思い詰めたような、切羽詰まったような表情だ。
だが声をかけられると、すぐにその顔は消えてしまった。
「ウィロー……?」
この前から様子がおかしかったが、まさかまだ……?
そして俺の予感は、その日の夜に的中することとなった。
「……」
ペラリ。
ページをめくる音だけが、薄暗い部屋に響いている。
俺は自分の部屋で一人、先代の日記を読んでいた。
「こんなことやってたんだな……」
そこには、先代と組員たちの出会いも書かれていた。ウィローと初めて会った時、二人は一戦交えたらしい。そのケンカの中で、絆が芽生えた……のだろうか。
先代はその日の最後を、こう締めくくっていた。
「つっけんどんだが、根は寂しがり。愛を欲して見える……」
ほ、ほんとかぁ?
愛だなんて言ったら、彼女は鼻で笑いそうだがな。
コンコン。
「ん?」
控えめに、扉が叩かれる音。みんな寝てると思ったが、誰だろう?
「まだ起きてるよ。何か用か?」
そう呼びかけても、扉の向こうからは何も返事はない。あれ、空耳だったかな。
その時、キィと小さな音を立てて、そろそろと扉が開けられた。
「ユキ……」
「なんだ、ウィローか。誰かと思ったよ」
そこにいたのは、寝間着姿のウィローだった。噂をすれば影、だな。
「どうしたんだ?こんな遅くに」
「いえ……その」
「?とりあえず、入るか?」
俺が促すと、ウィローはおずおずと部屋に足を踏み入れた。
「……」
「……?」
それっきり、ウィローは何も言わない。
彼女の後ろで、半開きだった扉がパタリと閉まった。
「ひゃ!」
「……ぷっ」
「ちょ、ちょっとユキ!笑わないでください……」
「いや、悪い。くくく、何をそんなに緊張してるんだよ」
「……ふふ、ほんとですね」
静かに笑い合うと、ウィローも少しは落ち着いたようだ。
「それで、どうしたんだよ。ここでよければ、座るか?」
俺はベッドをぽんぽんと叩く。ウィローは逡巡したようだが、コクリと頷いた。
ぽすり。
小柄な彼女が腰かけても、ベッドはほとんど軋まなかった。
「あ、あのですねユキ……」
「うん」
俺はのんびり彼女の言葉を待った。ウィローなら、急かさなくっても言葉を見つけて、それを伝えてくれるはずだ。
「じつは、一つお願いがありまして、その……」
「言ってくれよ。俺でよければ力を貸す」
「あの、ユキにしか頼めないというか……」
「うん」
「あの、ユキ……私を、私を抱いてください!」
「うん……は?」
さすがに聞き返した。なんだって?
「抱いてくれって言ったんです!」
「……抱きしめればいいか?」
「とぼけないでください!私と寝てくれって意味です!もっと言うならセッ」
「わー!やめなさい!」
口をふさぐと、ウィローはジタバタ暴れた。その弾みで寝間着の前がはだけると、その下は下着だけだ。ほ、本気なのか……?
「ぷはっ……ユキ!ふざけないでください!私は本気ですよ!」
「いや、そうは言われてもだな……」
「それとも、やっぱり私なんかじゃダメですか?キリーみたいに胸もないし、スーみたく可愛くもないから……」
「え?そんなこと……」
「お願いします!こんなちんちくりんな私に情けをかけてください!挿れて出すだけですから!」
「ウィロー!落ち着けって!」
俺はウィローのむき出しの肩をガッと抑えた。う、絹のような肌ざわりだ……
「ウィロー、話してくれよ。こんなことするのは理由があるんだろ?」
「はぁ……はぁ……」
ウィローはしばらく荒い息をしていた。だが動悸が収まるにつれ、少しずつ落ち着きを取り戻したようだ。
「ウィロー。きみの頼みなら出来る限り協力するが、きみが傷つくようなことはできないよ。それでもと言うなら、わけを教えてくれないか」
「……」
ウィローはうつむいたままだったが……やがて、ぽつぽつと語り出した。
「……くだらない理由ですよ。私、処女なんです」
「い!?いや、続けてくれ」
「それで、最近そのことを馬鹿にされたんですよ……」
「そんな。早けりゃいいってもんでもないだろう」
「ええ。私もそう思いました……けど、なんだか急に虚しくなってしまって」
「虚しい?」
「そうです。だって、私は女として誰にも見られて来なかったってことじゃないですか。そのまま人生お終いだなんて……」
そこまで言って、ウィローはしまった、と口をつぐんだ。
「お終いっていうのは……俺たちが負けるって思ってるってことか?」
「……そうじゃないです。けど、無事に帰ってこれる保障なんて、どこにもないじゃないですか!だから、悔いの残らないように……」
「ウィロー……」
思い詰めての暴走だったんだな。
「ウィロー、そんな気を病むなよ。なぁに、きっとみんな無事に帰ってこれるさ。そんなテキトウなヤツにあげちまったら、きっと後悔するぞ?」
「そんなことないです。ユキなら構いません」
「ぐ……」
場が場なら嬉しいセリフだろうが、今は素直に喜べないぞ。
「だって……誰にも愛されないなんて、そんな人生……寂しすぎます」
「……」
愛を欲して見える……か。言い得て妙だったんだな。
ここでウィローを抱いてやるのも、一つの優しさだろう。それで彼女が迷いを振り切れるなら、明日の戦いにもプラスなはずだ。
けど……
「ウィロー。俺は、お前に居なくなって欲しくない。だから、悔いを残しておいてくれ。きみも言ってたじゃないか、死に切れないやつは生き残るって」
「それは……」
「それに、愛されてないなんて言うなよ。メイダロッカ組のみんなは、きみを愛してる。キリーもスーもアプリコットも……も、もっ……ちろん、俺だってそうさ」
「ユキ……そこで噛みます?」
う……恥ずかしくって、“も”がえらい高くなってしまった。ウィローにジトーっと睨まれている。
「……証拠」
「え」
「証拠、見せてください……」
つい。
目を閉じ、顎を傾ける。白い喉を差し出すその姿は、自らの命すらも委ねているように見えた。
「ウィッ……」
ここで声をかけるのは野暮だろう。この前黒蜜に怒られたばっかりだ。
……ここで他の女の名前を出してしまうから、俺はモテないんだろうな……
彼女の唇は、緊張で少しかさついていた。
「……」
「こっ……これで、いいか」
「ドキドキしてる……変な感じ」
変な感じって……
「これで私のはじめては、ユキに奪われちゃったんですね……」
「人聞きの悪い言い方をすんじゃない……」
「ま、ユキは初めてじゃないですけどね」
「い!?」
「知ってますよ。アプリコットとキスしたことも、スーにキスされたことも、ルゥとイチャついてたことも、キリーを抱いたことも……」
「最後のは誤解だ!て、なんで知ってるんだよ!?」
「女の情報網をなめない方がいいですよ。あなたが場末の宿で女を抱いたって、次の日には私たち全員に知れ渡っていますから」
「ストーカーかよ!」
「これも愛ゆえです」
「愛が重い!」
「まぁ、それは冗談にしても……あなた、結構みんなからの好感度高いですからね。どこかその辺に女でも作ったら、スーあたりが泣きますよ」
「えぇ……それこそ冗談だろう」
「さぁ?気になるなら、自分で確かめてみてください」
確かめるったって……どうしろっていうんだ?
「さて……私は部屋に戻りますね。遅くまで付き合わせてすみませんでした」
「え、あぁ……」
「それでは、おやすみなさい」
「……なぁ、ウィロー!」
「はい?」
俺が呼び止めると、ウィローは顔だけ振り向いた。
「その……ウィローは、どうなんだ?」
「何がですか?」
「だから、その……好感度ってやつ」
「……くすっ。ヒミツ、です」
ウィローは唇に指を立てると、するりと部屋から出て行った。
「なんだよ……言うだけ言っといて……」
後には、釈然としない俺だけが残された。
けど、ウィローは憑き物の落ちたような、スッキリした顔をしていた。彼女の悩みが少しでも晴れたのなら、慣れない事をしたかいがあった……よ、な?
「~~~ッ!」
やってしまった。
よりにもよって、ユキに迫るなんて。しかも諭されたばかりか、ききき、キスまで……
「うぁ……」
顔が熱い。さっきから心臓はドキドキと暴れっぱなしだった。私、変な顔してなかったでしょうか?
「けど……」
それ以上に、にやける顔を抑える事ができない。
どうしよう、嬉しい。
「キス一つで舞い上がるなんて……生娘のようですね」
あながち間違ってないのが虚しいですが……
それに、照れ隠しにみんなのことを話してしまいましたが、よかったでしょうか?もっとも、気付いて無いのはユキだけだったような気もします……
「……いいか。悪い男には、少し罰を与えましょう」
せいぜい悩んでくださいね、色男さん?
私はクスリと笑うと、静かに自分の部屋に戻った。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
しののめ あき
ファンタジー
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜
と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます!
3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。
ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです!
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
非常に申し訳ない…
と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか?
色々手違いがあって…
と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ?
代わりにといってはなんだけど…
と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン?
私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。
なんの謝罪だっけ?
そして、最後に言われた言葉
どうか、幸せになって(くれ)
んん?
弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。
※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします
完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします
溺愛兄様との死亡ルート回避録
初昔 茶ノ介
ファンタジー
魔術と独自の技術を組み合わせることで各国が発展する中、純粋な魔法技術で国を繁栄させてきた魔術大国『アリスティア王国』。魔術の実力で貴族位が与えられるこの国で五つの公爵家のうちの一つ、ヴァルモンド公爵家の長女ウィスティリアは世界でも稀有な治癒魔法適正を持っていた。
そのため、国からは特別扱いを受け、学園のクラスメイトも、唯一の兄妹である兄も、ウィステリアに近づくことはなかった。
そして、二十歳の冬。アリスティア王国をエウラノス帝国が襲撃。
大量の怪我人が出たが、ウィステリアの治癒の魔法のおかげで被害は抑えられていた。
戦争が始まり、連日治療院で人々を救うウィステリアの元に連れてこられたのは、話すことも少なくなった兄ユーリであった。
血に染まるユーリを治療している時、久しぶりに会話を交わす兄妹の元に帝国の魔術が被弾し、二人は命の危機に陥った。
「ウィス……俺の最愛の……妹。どうか……来世は幸せに……」
命を落とす直前、ユーリの本心を知ったウィステリアはたくさんの人と、そして小さな頃に仲が良かったはずの兄と交流をして、楽しい日々を送りたかったと後悔した。
体が冷たくなり、目をゆっくり閉じたウィステリアが次に目を開けた時、見覚えのある部屋の中で体が幼くなっていた。
ウィステリアは幼い過去に時間が戻ってしまったと気がつき、できなかったことを思いっきりやり、あの最悪の未来を回避するために奮闘するのだった。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~
夏見ナイ
ファンタジー
過労死したプラントエンジニアの俺が転生したのは、剣と魔法の世界のド貧乏な貴族の三男、リオ。石鹸すらない不衛生な環境、飢える家族と領民……。こんな絶望的な状況、やってられるか! 前世の知識を総動員し、俺は快適な生活とスローライフを目指して領地改革を開始する!
農業革命で食料問題を解決し、衛生革命で疫病を撲滅。石鹸、ガラス、醤油もどきで次々と生活レベルを向上させると、寂れた領地はみるみる豊かになっていった。
逃げてきた伯爵令嬢や森のエルフ、ワケありの元騎士など、頼れる仲間も集まり、順風満帆かと思いきや……その成功が、強欲な隣領や王都の貴族たちの目に留まってしまう。
これは、ただ快適に暮らしたかっただけの男が、やがて“近代化の父”と呼ばれるようになるまでの物語。
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる