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不思議倶楽部_立花公平_A1
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俺は立花公平、ピチピチの高校二年生。不思議倶楽部の下端隊員だ。高校生にもなって不思議倶楽部、そんな部何で入ったんだ?と思う奴もいるだろう、俺もそう思う。
なら何故入ったか?
それは幼馴染みがこの不思議倶楽部の部長で、首根っこを捕まれヤクザも縮み上がる様な恐喝をされ、入部届けに無理やりサインさせられたのだ。
犯罪すれすれ、、いや犯罪だなアレは。
「公平~、いるんでしょ何処にいるの~。出てこないと滅茶苦茶酷いことするからね、本当だよ。10数えるからその間に出てきなさい~。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、、、0!!」
数え終わった幼馴染みはそれでも出てこない俺を、なぜか涙目になりながら探す。やめて帰ればいいのに物好きなやつだ。
「、、-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10!!、、聞こえてる?!お願いだから出て来てよぉ~。」
両腕の拳を振り下ろす涙目の女。
何処から突っ込んでいいのか分からない言動を繰り返す、この女こそ俺の幼馴染みの《篠原夢見》だ。
ちなみに俺は校舎から体育館へ続く通路にある階段、その階段の下にある大きな排水用スペース(ハッピーゾーン)に、鶉隠れをして身を潜めている。
そうそう、鶉隠れとは忍者が使う術で、手足縮めて首を引っ込めてうつ伏せに隠れる技で、身を出来るだけ小さくすることで発見されるのを防ぐ事ができる(らしい)そして真言を唱えれば術の完成である。
「オン、、アニ、、ン、、ナントカ、、ソワカ、、」
忍者百科が本当なら、これで奴は発見出来ない筈だ。
「別に怒ってないから、本当、本当、本当に、本当だって、本当だって、本当何だって、本当ならいいのにね、、嘘、今のは間違い、あは、あはは、あははははっ。」
これはますます出られない、本当に怒っている、俺は長期戦を覚悟する。アイツは普段は大人しいが怒れば怒るほど言動がおかしくなるからだ。
同じ言葉を連続して使う人は《誤魔化している》場合と《自分自身に言い聞かせたい》場合があるらしい。情報提供者は、俺の目の前にいる、、俺を見下ろしている、、俺の頬をプニプニしている、御方である。
「ここで何しているの?まさか急にお腹が痛くなったとか、下手な言い訳する気なのかな公平は?」
「違う!!俺はこの体勢が一番安心するんだ!!何故なら俺の前世はヤドカリだからだ!!!ヤドカリだ!ヤドカリ!!ヤドカリ何だって!ヤドカリならいいな!ヤドカリって何回言ったでしょうか?」
、、つまり、俺は前世をヤドカリにしたかったのだ、、本当に。
食人鬼の様な顔になった夢見に、ズルズルと襟を捕まれ連行される俺。鬼ではなく食人鬼と表したのは、夢見にとって食われそうであるからであるがー
《食人鬼》は言いすぎか、、
《食人鬼》悪魔や怪談で有名。グールとも呼ばれる。人を食べる。力が強い。知能が高い《場合が多い》。
優れた人を食べるとその力を取り入れ更に強くなれる、又愛する人の一部を取り込み共に永遠に生き続けるという、食人カニバリズムを行う人々の事。信仰していた地域もある様で結構有名。それゆえに食人鬼は《人》であると考えられる。
だが本当に《人》が《人》を食べたいただけだったのだろうか?中には人外の《怪物》いて《人》を食べていたというのではないのだろうか。
人の常識を越えた存在は確かに存在するのだ《夢見》の様にー
俺は夢見の怪力に驚きつつその場を離れた。
不思議倶楽部。所謂〈怪談や都市伝説〉などの話の真相を調べて、検証し纏める部である。その歴史は非常に浅く発足一年にも満たない。
不思議倶楽部には部員が5名いる。内3人は名前だけの幽霊部員兼帰宅部である。残りは全員集合している。部長《篠原夢見》と下端部員の俺《立花公平》の二人。
現在部室で夢見は俺の前で椅子に座り鼻息を荒くしていて、俺は正座をして痺れた足を治そうとお尻を浮かせている最中である。
夢見は学園一とはいかないまでも、クラスでトップの可愛い系女子、俺はクラスで人並みとはいかないまでも生理的に受け付けないよりはマシな、雑草系男子だ。
「放課後、友達ののり子から聞いたわ、今日公平が先輩に告白したって。確かに恋愛は自由よ、でも幼馴染みの私に一言言ってよ。そしたら私だって告白の許可を出したかもしれないじゃない、もう!!」
いつから俺の告白は許可申請が必要になったんだよと、目で訴えるが夢見にはエスパー能力がないので気付くはずもない。
「でもいいの、どうせフラれたんでしょ?《夢見、相談しなくて悪かった》って言いながらアクロバティック土下座を見せてくれたら許してー」
「いや、付き合う事になったんだ、告白した先輩とさ。」
夢見の動きが止まり、顔が引きつく。
「ついでに先輩が今度のゴールデンウィークに二人きりで旅行に行かないかって誘われてさぁ。」
青ざめた顔で、夢見が立ち上がる。
「私達は運命で結ばれているとか、囁かれちゃって、、ほんと先輩もまんざらじゃあいんだなって。ハハハハ。」
その顔はひきつっていたがハッとある考えが浮かんだのか、夢見は部室のドアを開けキョロキョロと廊下を見る。そして部室に戻ると同時に部室の窓を開ける。一階の部室棟なので見えるのは芝生とブロック塀だけだ。
何をやっているのかわからないが、構わずノロケ話を続ける。
「まさか清楚で可憐な黒髪乙女のハルカ先輩と付き合えるなんて、毎年氷河期の俺にもやっと春が来たんだな。」
「、、ドッキリでもない。まさか公平!悪魔に魂でも捧げたの、、そんな、、」
物凄く失礼なことを絶望的な顔で言う夢見。勿論俺には悪魔の知り合いはいない〈夢見〉の様な奴は。
「おかしいわ。絶対そんな事があるわけない、不思議すぎる。」
「たまたま、ハルカ先輩の好みだったんだろ。そんな驚くことはない、俺も顔はよく見ると味わい深い顔だろぅ。」
短めの前髪をナルシスト気取りで跳ねあげる。
「たまたま、引く手あまたの先輩と只の冴えない男子がくっついて、たまたま一緒に旅行に行くことにした?何か別の理由があるはずよ、、絶対、、そう。」
それからしばらくして雨が降り始めた、雪ではなく雨が、、
それから俺とハルカ先輩と付き合いだしたが、学校で二人きりで会うことはなかった。LINEや電話が主、休日に一回映画と食事をしたぐらいだった。
これには理由がある。ハルカ先輩の下駄箱に差し出し不明の手紙があり〈恋人ができたらソイツを殺す〉と書かれた脅迫文があったのだ。そして悪戯の可能性が高いが念のためあまり公にしないことを二人で取り決めたためだ(不思議クラブの部長はそれも怪しいと言っていたが)
とにかく俺と先輩はこの秘密の関係を続け、いよいよゴールデンウィークになった。
先輩との初めての宿泊旅行。大人の階段を上れるかもしれない期待と下手な失敗は出来ない緊張を胸に秘め旅立った。
旅行先は先輩の長野の別荘。神奈川県から新幹線と電車、四方を山に囲まれた場所までバスを乗り継いで山の中へと向かった。
「はぁはぁ。」
今はその別荘に向かう途中の山の奥の奥、殆ど獣道に近い山道を力が入らなくなった足で登り続ける。
カーカーカー。
見晴らしの良い丘に出ると丁度夕暮れだった。
眼下には田んぼと小さなミニチュアの様な庭付きの家が転々と立ち並ぶ。
疲れきった体に差し込む赤い太陽光。
そんな黄昏時に現れる黒髪美人。
「良かった、間に合ったわね。これを公平くんに見せたかったの、、綺麗だと思わない?」
夕陽が西に落ちる、赤に金色をまぶした光が強く輝く。この光景は晴れているのならば毎日が繰り返される光景だろう、、しかしそれに気づいて目を凝らせばそれは非日常となる。
特に隣に愛する人がいれば。
ちょっと感動していた俺に話しかけた愛する黒髪美人こそ〈宮澤遥〉先輩である。
「日が落ちちゃいましたね。」
「ねぇ公平くん、このまま夕陽が沈まらなかったらと思わなかった?」
「いえ。なんと言うか夕陽がずっとあのままなら夕陽のありがたみがなくなるような気がして。昼間の太陽みたいに、、いや、、例えになってないよな、、あはは。」
先輩は答えに満足してくれたのか、大きく頷いた先輩は微笑む。
「そうね、変化しないものはツマラナイわよね。」
と呟き、ハルカ先輩は階段を登り始めた。その背中は何かを悟った聖者の様だった。
「公平くんご苦労様、今飲み物淹れるね。」
とハルカ先輩がキッチンに向かう。俺はリビングのソファーに座り、パンパンに膨らみ凶器と化したリュックの攻撃に堪えに堪えた肩を、称賛交じりに揉みし抱く。
タフガイを演じたいが為、ハルカ先輩の荷物まで持ったのは間違いだったか、、実はハルカ先輩の荷物がほとんどなのだ。中味が少し気になって手を伸ばそうかと考えた時。
「はい、緑茶かオレンジジュースがあるけど、どっちにする?」
「緑茶でお願いします。」
まぁ、女性のリュックの中身なんて見るべきではないよな、もし先輩の下着が入っているのを目撃したら!俺は俺である自信はない、、そう女性のリュックの中には男の夢と希望が入っているのだ!!
その後冷たい緑茶で喉を潤したのを確認した先輩は夕食を作り始めた、勿論紳士的に夕食の手伝いを買って出たが気持ちだけ受け取られ、俺はリビングの床で大仏のようにくつろぐ。
トントントン。
リズミカルな包丁の音が眠気を呼び起こす、きっとハルカ先輩は良いお嫁さんになるだろう、、そして俺は良い旦那さん、、子供の名前は、、男の子なら太郎、、女なら花、、こ、、、
そして俺は深い眠りについた。
直ぐに夢だと気づく、いつもの夢だからだ。泣き声が聞こえる目の少女の鳴き声だ。母親がいなくなったらしい、父親は既にいない。話では父方の祖母に引き取られるらしい。孫との関係は最悪でにくんでさえいるらしい。
このままなにもしなければ、この幼馴染みの少女とは会えないだろう、と子供心にそう思う。
、、ここであの言葉が出る。
「僕の家で一緒に住まない?お父さんとお母さんにお願いするから、、」
それは俺がはじめてした告白だった。
俺の最後の手段〈一生のお願い〉〈駄々をこねる〉〈相手の足にしがみつく〉〈少女の泣き声〉フルコンボが炸裂する。しかし両親は折れない。
〈毎日手伝い〉〈肩たたき〉〈勉強する〉のトリプルアタックがヒットするが両親はまだ折れない。〈ゲームしない〉を苦し紛れに放つが、両親は首を振って避けた。
其のとき気付いた何を言っても結果は決まっていたことにー
そしてー
いつつ、体が痛い眠っていた姿勢が悪かったからか、、目を開けるとそこは見知らぬ部屋だった。
ジャラジャラ。
両腕が鉛のように重いので見てみると、両腕に枷をはめられ縛られていた。天井から垂れ両腕の枷に巻き付いている鉄製の鎖は頑丈で、とても力では外せないだろう。
何がなんだか分からないが回りには人の気配はない、つまりハルカ先輩の姿もない。
「先輩、センパーイ!おーい。」
、、反応無し、状況を整理しよう。
ここは知らない部屋、多分倉庫か何かを改造したものだろう。かなり古いがしっかりしたコンクリート製の部屋。薄暗く窓がないため光源らしいものは古びた白熱電球だけ、下は滑らかなコンクリートでヒンヤリしている、あぁトイレ行きたい、あれ服を着ていない。
どうするピンチだ、これでは変態じゃないか?!
「やっと起きたの公平くん。睡眠薬が効きすぎたみたいね、ごめんなさい」
薄暗くて分からなかったが、入り口付近の棚の奥からハルカ先輩の声がする、、、いや、いた!!ドアの側、壁の近くにそれらしい人影が見える。
「ハルカ先輩来ないでください!今俺は縛られていてオマケに裸なんです、恥ずかしいぃー。」
「恥ずかしがることはないわ。公平くんの服を脱がしたのは私だから、それに貴方のソレは、、フフッ。」
鼻で笑われたー、普通って意味?それとも、、、って服を脱がしたのが先輩?!何故まさか、、S、、M??そんな趣味があったなんて、、いや恋人の趣味だこれは合わせておいた方が良いかもしれない。
「なんでこんなことするのかって顔してるわね。別に公平くんに話しても構わないけど、、止めておくわ、他にやることがあるし、楽しみは後でね。」
最後先輩は部屋から出る直前に振り向き。
「そうそう、携帯電話を借りるわね。別荘付近は使えないけど、山を降りて使えるし、、ああパスワードは知っているわ、駄目よちゃんと警戒しないと、パターンロックなんて横から見たら単純なんだから。」
そう言い残すと部屋を出ていった。靴音が反響しながら離れていく。かなり長い廊下だ、バタンと音がした後無音になる。
、、なんだか知らないが不味いことになった気がする。
これからの事を考えながら、トイレには行けそうにない事に絶望したのだった。ジョロロ~、あっ。
なら何故入ったか?
それは幼馴染みがこの不思議倶楽部の部長で、首根っこを捕まれヤクザも縮み上がる様な恐喝をされ、入部届けに無理やりサインさせられたのだ。
犯罪すれすれ、、いや犯罪だなアレは。
「公平~、いるんでしょ何処にいるの~。出てこないと滅茶苦茶酷いことするからね、本当だよ。10数えるからその間に出てきなさい~。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、、、0!!」
数え終わった幼馴染みはそれでも出てこない俺を、なぜか涙目になりながら探す。やめて帰ればいいのに物好きなやつだ。
「、、-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9、-10!!、、聞こえてる?!お願いだから出て来てよぉ~。」
両腕の拳を振り下ろす涙目の女。
何処から突っ込んでいいのか分からない言動を繰り返す、この女こそ俺の幼馴染みの《篠原夢見》だ。
ちなみに俺は校舎から体育館へ続く通路にある階段、その階段の下にある大きな排水用スペース(ハッピーゾーン)に、鶉隠れをして身を潜めている。
そうそう、鶉隠れとは忍者が使う術で、手足縮めて首を引っ込めてうつ伏せに隠れる技で、身を出来るだけ小さくすることで発見されるのを防ぐ事ができる(らしい)そして真言を唱えれば術の完成である。
「オン、、アニ、、ン、、ナントカ、、ソワカ、、」
忍者百科が本当なら、これで奴は発見出来ない筈だ。
「別に怒ってないから、本当、本当、本当に、本当だって、本当だって、本当何だって、本当ならいいのにね、、嘘、今のは間違い、あは、あはは、あははははっ。」
これはますます出られない、本当に怒っている、俺は長期戦を覚悟する。アイツは普段は大人しいが怒れば怒るほど言動がおかしくなるからだ。
同じ言葉を連続して使う人は《誤魔化している》場合と《自分自身に言い聞かせたい》場合があるらしい。情報提供者は、俺の目の前にいる、、俺を見下ろしている、、俺の頬をプニプニしている、御方である。
「ここで何しているの?まさか急にお腹が痛くなったとか、下手な言い訳する気なのかな公平は?」
「違う!!俺はこの体勢が一番安心するんだ!!何故なら俺の前世はヤドカリだからだ!!!ヤドカリだ!ヤドカリ!!ヤドカリ何だって!ヤドカリならいいな!ヤドカリって何回言ったでしょうか?」
、、つまり、俺は前世をヤドカリにしたかったのだ、、本当に。
食人鬼の様な顔になった夢見に、ズルズルと襟を捕まれ連行される俺。鬼ではなく食人鬼と表したのは、夢見にとって食われそうであるからであるがー
《食人鬼》は言いすぎか、、
《食人鬼》悪魔や怪談で有名。グールとも呼ばれる。人を食べる。力が強い。知能が高い《場合が多い》。
優れた人を食べるとその力を取り入れ更に強くなれる、又愛する人の一部を取り込み共に永遠に生き続けるという、食人カニバリズムを行う人々の事。信仰していた地域もある様で結構有名。それゆえに食人鬼は《人》であると考えられる。
だが本当に《人》が《人》を食べたいただけだったのだろうか?中には人外の《怪物》いて《人》を食べていたというのではないのだろうか。
人の常識を越えた存在は確かに存在するのだ《夢見》の様にー
俺は夢見の怪力に驚きつつその場を離れた。
不思議倶楽部。所謂〈怪談や都市伝説〉などの話の真相を調べて、検証し纏める部である。その歴史は非常に浅く発足一年にも満たない。
不思議倶楽部には部員が5名いる。内3人は名前だけの幽霊部員兼帰宅部である。残りは全員集合している。部長《篠原夢見》と下端部員の俺《立花公平》の二人。
現在部室で夢見は俺の前で椅子に座り鼻息を荒くしていて、俺は正座をして痺れた足を治そうとお尻を浮かせている最中である。
夢見は学園一とはいかないまでも、クラスでトップの可愛い系女子、俺はクラスで人並みとはいかないまでも生理的に受け付けないよりはマシな、雑草系男子だ。
「放課後、友達ののり子から聞いたわ、今日公平が先輩に告白したって。確かに恋愛は自由よ、でも幼馴染みの私に一言言ってよ。そしたら私だって告白の許可を出したかもしれないじゃない、もう!!」
いつから俺の告白は許可申請が必要になったんだよと、目で訴えるが夢見にはエスパー能力がないので気付くはずもない。
「でもいいの、どうせフラれたんでしょ?《夢見、相談しなくて悪かった》って言いながらアクロバティック土下座を見せてくれたら許してー」
「いや、付き合う事になったんだ、告白した先輩とさ。」
夢見の動きが止まり、顔が引きつく。
「ついでに先輩が今度のゴールデンウィークに二人きりで旅行に行かないかって誘われてさぁ。」
青ざめた顔で、夢見が立ち上がる。
「私達は運命で結ばれているとか、囁かれちゃって、、ほんと先輩もまんざらじゃあいんだなって。ハハハハ。」
その顔はひきつっていたがハッとある考えが浮かんだのか、夢見は部室のドアを開けキョロキョロと廊下を見る。そして部室に戻ると同時に部室の窓を開ける。一階の部室棟なので見えるのは芝生とブロック塀だけだ。
何をやっているのかわからないが、構わずノロケ話を続ける。
「まさか清楚で可憐な黒髪乙女のハルカ先輩と付き合えるなんて、毎年氷河期の俺にもやっと春が来たんだな。」
「、、ドッキリでもない。まさか公平!悪魔に魂でも捧げたの、、そんな、、」
物凄く失礼なことを絶望的な顔で言う夢見。勿論俺には悪魔の知り合いはいない〈夢見〉の様な奴は。
「おかしいわ。絶対そんな事があるわけない、不思議すぎる。」
「たまたま、ハルカ先輩の好みだったんだろ。そんな驚くことはない、俺も顔はよく見ると味わい深い顔だろぅ。」
短めの前髪をナルシスト気取りで跳ねあげる。
「たまたま、引く手あまたの先輩と只の冴えない男子がくっついて、たまたま一緒に旅行に行くことにした?何か別の理由があるはずよ、、絶対、、そう。」
それからしばらくして雨が降り始めた、雪ではなく雨が、、
それから俺とハルカ先輩と付き合いだしたが、学校で二人きりで会うことはなかった。LINEや電話が主、休日に一回映画と食事をしたぐらいだった。
これには理由がある。ハルカ先輩の下駄箱に差し出し不明の手紙があり〈恋人ができたらソイツを殺す〉と書かれた脅迫文があったのだ。そして悪戯の可能性が高いが念のためあまり公にしないことを二人で取り決めたためだ(不思議クラブの部長はそれも怪しいと言っていたが)
とにかく俺と先輩はこの秘密の関係を続け、いよいよゴールデンウィークになった。
先輩との初めての宿泊旅行。大人の階段を上れるかもしれない期待と下手な失敗は出来ない緊張を胸に秘め旅立った。
旅行先は先輩の長野の別荘。神奈川県から新幹線と電車、四方を山に囲まれた場所までバスを乗り継いで山の中へと向かった。
「はぁはぁ。」
今はその別荘に向かう途中の山の奥の奥、殆ど獣道に近い山道を力が入らなくなった足で登り続ける。
カーカーカー。
見晴らしの良い丘に出ると丁度夕暮れだった。
眼下には田んぼと小さなミニチュアの様な庭付きの家が転々と立ち並ぶ。
疲れきった体に差し込む赤い太陽光。
そんな黄昏時に現れる黒髪美人。
「良かった、間に合ったわね。これを公平くんに見せたかったの、、綺麗だと思わない?」
夕陽が西に落ちる、赤に金色をまぶした光が強く輝く。この光景は晴れているのならば毎日が繰り返される光景だろう、、しかしそれに気づいて目を凝らせばそれは非日常となる。
特に隣に愛する人がいれば。
ちょっと感動していた俺に話しかけた愛する黒髪美人こそ〈宮澤遥〉先輩である。
「日が落ちちゃいましたね。」
「ねぇ公平くん、このまま夕陽が沈まらなかったらと思わなかった?」
「いえ。なんと言うか夕陽がずっとあのままなら夕陽のありがたみがなくなるような気がして。昼間の太陽みたいに、、いや、、例えになってないよな、、あはは。」
先輩は答えに満足してくれたのか、大きく頷いた先輩は微笑む。
「そうね、変化しないものはツマラナイわよね。」
と呟き、ハルカ先輩は階段を登り始めた。その背中は何かを悟った聖者の様だった。
「公平くんご苦労様、今飲み物淹れるね。」
とハルカ先輩がキッチンに向かう。俺はリビングのソファーに座り、パンパンに膨らみ凶器と化したリュックの攻撃に堪えに堪えた肩を、称賛交じりに揉みし抱く。
タフガイを演じたいが為、ハルカ先輩の荷物まで持ったのは間違いだったか、、実はハルカ先輩の荷物がほとんどなのだ。中味が少し気になって手を伸ばそうかと考えた時。
「はい、緑茶かオレンジジュースがあるけど、どっちにする?」
「緑茶でお願いします。」
まぁ、女性のリュックの中身なんて見るべきではないよな、もし先輩の下着が入っているのを目撃したら!俺は俺である自信はない、、そう女性のリュックの中には男の夢と希望が入っているのだ!!
その後冷たい緑茶で喉を潤したのを確認した先輩は夕食を作り始めた、勿論紳士的に夕食の手伝いを買って出たが気持ちだけ受け取られ、俺はリビングの床で大仏のようにくつろぐ。
トントントン。
リズミカルな包丁の音が眠気を呼び起こす、きっとハルカ先輩は良いお嫁さんになるだろう、、そして俺は良い旦那さん、、子供の名前は、、男の子なら太郎、、女なら花、、こ、、、
そして俺は深い眠りについた。
直ぐに夢だと気づく、いつもの夢だからだ。泣き声が聞こえる目の少女の鳴き声だ。母親がいなくなったらしい、父親は既にいない。話では父方の祖母に引き取られるらしい。孫との関係は最悪でにくんでさえいるらしい。
このままなにもしなければ、この幼馴染みの少女とは会えないだろう、と子供心にそう思う。
、、ここであの言葉が出る。
「僕の家で一緒に住まない?お父さんとお母さんにお願いするから、、」
それは俺がはじめてした告白だった。
俺の最後の手段〈一生のお願い〉〈駄々をこねる〉〈相手の足にしがみつく〉〈少女の泣き声〉フルコンボが炸裂する。しかし両親は折れない。
〈毎日手伝い〉〈肩たたき〉〈勉強する〉のトリプルアタックがヒットするが両親はまだ折れない。〈ゲームしない〉を苦し紛れに放つが、両親は首を振って避けた。
其のとき気付いた何を言っても結果は決まっていたことにー
そしてー
いつつ、体が痛い眠っていた姿勢が悪かったからか、、目を開けるとそこは見知らぬ部屋だった。
ジャラジャラ。
両腕が鉛のように重いので見てみると、両腕に枷をはめられ縛られていた。天井から垂れ両腕の枷に巻き付いている鉄製の鎖は頑丈で、とても力では外せないだろう。
何がなんだか分からないが回りには人の気配はない、つまりハルカ先輩の姿もない。
「先輩、センパーイ!おーい。」
、、反応無し、状況を整理しよう。
ここは知らない部屋、多分倉庫か何かを改造したものだろう。かなり古いがしっかりしたコンクリート製の部屋。薄暗く窓がないため光源らしいものは古びた白熱電球だけ、下は滑らかなコンクリートでヒンヤリしている、あぁトイレ行きたい、あれ服を着ていない。
どうするピンチだ、これでは変態じゃないか?!
「やっと起きたの公平くん。睡眠薬が効きすぎたみたいね、ごめんなさい」
薄暗くて分からなかったが、入り口付近の棚の奥からハルカ先輩の声がする、、、いや、いた!!ドアの側、壁の近くにそれらしい人影が見える。
「ハルカ先輩来ないでください!今俺は縛られていてオマケに裸なんです、恥ずかしいぃー。」
「恥ずかしがることはないわ。公平くんの服を脱がしたのは私だから、それに貴方のソレは、、フフッ。」
鼻で笑われたー、普通って意味?それとも、、、って服を脱がしたのが先輩?!何故まさか、、S、、M??そんな趣味があったなんて、、いや恋人の趣味だこれは合わせておいた方が良いかもしれない。
「なんでこんなことするのかって顔してるわね。別に公平くんに話しても構わないけど、、止めておくわ、他にやることがあるし、楽しみは後でね。」
最後先輩は部屋から出る直前に振り向き。
「そうそう、携帯電話を借りるわね。別荘付近は使えないけど、山を降りて使えるし、、ああパスワードは知っているわ、駄目よちゃんと警戒しないと、パターンロックなんて横から見たら単純なんだから。」
そう言い残すと部屋を出ていった。靴音が反響しながら離れていく。かなり長い廊下だ、バタンと音がした後無音になる。
、、なんだか知らないが不味いことになった気がする。
これからの事を考えながら、トイレには行けそうにない事に絶望したのだった。ジョロロ~、あっ。
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