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7.養子にまつわるエトセトラ

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アンヘルが魔王領に馴染むのは早かった。
前世の記憶の影響なのか魔族に対して怯えよりも興味が勝っており、しかもギフトのお陰で攻撃回避能力が高いらしく暗殺や突然の奇襲に強かったので人間にしては強いと認められたのである。
……なんなら反魔王勢力にも認められてる気がするのが納得いかないが。
特に一番意気投合したのは吸血鬼たちである。
「アンヘル魔皇子、本日我が家お抱えの絵師に百合を書かせました」
「これは良い百合だ!女吸血鬼×薄幸の美少女!エロスがありながら互いのまなざしの優しさが素晴らしいな」
ノスフェラトゥス侯爵が百合にハマったからである。
アンヘル曰く『吸血鬼と言えばカーミラ!カーミラと言えば百合!』だそうで、吸血鬼に会ってみたいとせがまれたので私が紹介した。
その際前世で見聞きした女吸血鬼と美少女の物語をノスフェラトゥス侯爵に聞かせたところ、これが本人の琴線にかかったようで吸血鬼一族の中でこの手の美少女と女吸血鬼の百合が大ブームになったのである。
「ノスフェラトゥス侯爵と出会えてよかった」
「こちらこそ、アンヘル魔皇子殿下と出会う事で新しい美とロマンに出会う事が出来ました」
ガシッと固い握手を交わすふたりを見ていると、ちょっと出会わせてよかったのか心配になってくる。
……まあ、本人たちがともに満足してるようだしいいのか?
ちょっとため息が漏れるとノスフェラトゥス侯爵がさっとこちらを向いて膝をついた。
「魔王殿下、いらしたのですね」
「息抜きで歩いてただけだ、気にするな」
「いえ、魔王殿下にもご報告があります」
「報告?」
特に頼んだ記憶はないが、報告があるのなら聞いておこう。
「魔王殿下はアイリス魔王妃殿下との子作りのため術をお探しとお伺いしました」
「ああ、淫魔族に探させてる途中だ。この手の事は淫魔族が一番詳しいし、実際そういう術があった事も確認は取れてる」
「先日我が邸宅の清掃中にいにしえの淫紋術の書籍が見つかり、その中に男同士・女同士の子授けの淫紋について記載がございました」
それは私の悲願だった。
私とアイリスの子を残すことは必要であり、夢であり、悲願だ。
「……それは本当か?」
「もちろんでございます」
「魔術師を呼べ!ノスフェラトゥス侯爵邸に今すぐその本を取りに行かせる、その本の真偽を確認し嘘だったらそれなりの罰を用意しておくからな!」
近くにいた者が即座に動き出す。



ついに、私とアイリスの子がこの腕に来るのだ!
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