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20:全権大使は名探偵じゃない
20-15
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全ての結果を伝えられる準備が整ったのは4月下旬の事であった。
マークス氏により日本側の事件検証についての報告書が作られ、俺たちからも事件検証報告書が提出された。
しかし王家からの音沙汰はない。
「流石に教会による殺人の可能性を明記されても国家としてどうこう言うのは難しすぎるんですよ」
そう評価したのはシェーベイル宰相補佐官である。
「大司教を容疑者としての取り調べてもらうことできないんですね?」
「ええ。国家大司教を殺人容疑で取り調べなんかしたらこの国の教会を敵に回し、ついでに教会本部から王権剥奪って可能性もありますからね。出来てもせいぜい事実関係についての確認を目的とした聞き取り調査ぐらいです。
それでも神聖なる神の代理人へ殺人容疑を向けることを不敬と捉える者も多いでしょうからから、事実だとしても大っぴらには動けないという判断なんでしょうね」
双海公国も同様の判断で教会との完全な敵対は出来ないと判断していたので、やはり王権剝奪への恐怖は大きいのだろう。
地球では皇帝が教皇から破門されても神聖ローマ帝国は続いたが、この国の国王が教皇から破門されても同様にうまく行くとは限らない。だから教会と言う己の首根っこを掴む相手に喧嘩は売れないと言う訳だ。
「今回の検証結果は国家機密扱いですか」
「そうなりますね。日本側には腑に落ちないでしょうが諦めて頂くしか無さそうです」
「わかりました。セナトロフ男爵家はどうなりますか?」
「男爵の一番上の息子が二十歳なので服喪が終われば彼が当主になりますね。ただ、今回は事が事ですから国としても支援を行う予定です」
男爵家の取りつぶしは免れたようでありがたいが、代替わりと国から支援の内容によっては今後の関係が大きく変わる可能性は高い。先方との関係もしっかり注意を向ける必要はありそうだ。
「そう言えば、パーティでお会いした国家大司教が西の国本部に移られるとか」
「この異動は前々から決まってたそうですよ、此度の神罰を重くとらえてるのか教会本部は現教皇の弟子と呼ばれる方を国家大司教に据えてきましたしね」
この人事は北の国は金羊国に接近しすぎている事への戒めのメッセージなのだろう。
新しい国家大司教が教皇と繋がりが深いという点も踏まえると、事件によるショックも利用して教会による信仰心を用いた引き締めが来ることは確実と言っていい。
(……俺らの根回しの効果もガタ落ちだな)
これで北の国と日本の関係構築は遅れそうだが、俺たちがこの国に来たことで与えた衝撃をゼロにすることはできない。
10年20年かけて気長にやっていくしか無かろう。
***
「にしても予定よりちいっと伸びましたねえ」
半井さんが旅の荷物を押し込みながらそんなことを呟く。
本来なら4月末には日本に戻れるだろうと考えていたが、事件の検証と報告に付き合う形で4月末まで伸びてしまったのだ。
「半井さんたちにはお付き合い頂いてしまいましたね」
「ま、異世界への滞在なんてそうそう出来る事やないですし気にしませんって」
「家族へのいい土産話も出来ましたしね」
半井さんと一花さんは手土産に用意したこの国特産の珍しいお香や小物を丁重に鞄に詰め込んでいく。
それに対し笠置さんは「私は帰国してからが本番ですけどねー……」と憂鬱そうな顔をした。
「笠置さんにも本当にご迷惑をお掛けしました」
「ま、休みが出るだけマシですけどね」
明日には北の国を出発する予定だが、帰国にかかる時間を踏まえればまだ2~3週間は一緒に過ごすことになるので不満を少ない状態にしておきたい。
そんな折、伝書鳩を連れた木栖が部屋にやってくる。
「真柴、新しい仕事の要請が来た」
「このタイミングでかよ」
「せめて帰国まで待ってくれればいいのにな」
お互いそうぼやきながら手紙に目を通すと「は?」と言う声が漏れた。
「どうした?」
「……日本人女性がへルペンシュルツ宮廷伯との子どもを妊娠したことを確認、子どもの国籍・親権等確定のため至急先方と交渉されたし」
「「「「はい?」」」」
マークス氏により日本側の事件検証についての報告書が作られ、俺たちからも事件検証報告書が提出された。
しかし王家からの音沙汰はない。
「流石に教会による殺人の可能性を明記されても国家としてどうこう言うのは難しすぎるんですよ」
そう評価したのはシェーベイル宰相補佐官である。
「大司教を容疑者としての取り調べてもらうことできないんですね?」
「ええ。国家大司教を殺人容疑で取り調べなんかしたらこの国の教会を敵に回し、ついでに教会本部から王権剥奪って可能性もありますからね。出来てもせいぜい事実関係についての確認を目的とした聞き取り調査ぐらいです。
それでも神聖なる神の代理人へ殺人容疑を向けることを不敬と捉える者も多いでしょうからから、事実だとしても大っぴらには動けないという判断なんでしょうね」
双海公国も同様の判断で教会との完全な敵対は出来ないと判断していたので、やはり王権剝奪への恐怖は大きいのだろう。
地球では皇帝が教皇から破門されても神聖ローマ帝国は続いたが、この国の国王が教皇から破門されても同様にうまく行くとは限らない。だから教会と言う己の首根っこを掴む相手に喧嘩は売れないと言う訳だ。
「今回の検証結果は国家機密扱いですか」
「そうなりますね。日本側には腑に落ちないでしょうが諦めて頂くしか無さそうです」
「わかりました。セナトロフ男爵家はどうなりますか?」
「男爵の一番上の息子が二十歳なので服喪が終われば彼が当主になりますね。ただ、今回は事が事ですから国としても支援を行う予定です」
男爵家の取りつぶしは免れたようでありがたいが、代替わりと国から支援の内容によっては今後の関係が大きく変わる可能性は高い。先方との関係もしっかり注意を向ける必要はありそうだ。
「そう言えば、パーティでお会いした国家大司教が西の国本部に移られるとか」
「この異動は前々から決まってたそうですよ、此度の神罰を重くとらえてるのか教会本部は現教皇の弟子と呼ばれる方を国家大司教に据えてきましたしね」
この人事は北の国は金羊国に接近しすぎている事への戒めのメッセージなのだろう。
新しい国家大司教が教皇と繋がりが深いという点も踏まえると、事件によるショックも利用して教会による信仰心を用いた引き締めが来ることは確実と言っていい。
(……俺らの根回しの効果もガタ落ちだな)
これで北の国と日本の関係構築は遅れそうだが、俺たちがこの国に来たことで与えた衝撃をゼロにすることはできない。
10年20年かけて気長にやっていくしか無かろう。
***
「にしても予定よりちいっと伸びましたねえ」
半井さんが旅の荷物を押し込みながらそんなことを呟く。
本来なら4月末には日本に戻れるだろうと考えていたが、事件の検証と報告に付き合う形で4月末まで伸びてしまったのだ。
「半井さんたちにはお付き合い頂いてしまいましたね」
「ま、異世界への滞在なんてそうそう出来る事やないですし気にしませんって」
「家族へのいい土産話も出来ましたしね」
半井さんと一花さんは手土産に用意したこの国特産の珍しいお香や小物を丁重に鞄に詰め込んでいく。
それに対し笠置さんは「私は帰国してからが本番ですけどねー……」と憂鬱そうな顔をした。
「笠置さんにも本当にご迷惑をお掛けしました」
「ま、休みが出るだけマシですけどね」
明日には北の国を出発する予定だが、帰国にかかる時間を踏まえればまだ2~3週間は一緒に過ごすことになるので不満を少ない状態にしておきたい。
そんな折、伝書鳩を連れた木栖が部屋にやってくる。
「真柴、新しい仕事の要請が来た」
「このタイミングでかよ」
「せめて帰国まで待ってくれればいいのにな」
お互いそうぼやきながら手紙に目を通すと「は?」と言う声が漏れた。
「どうした?」
「……日本人女性がへルペンシュルツ宮廷伯との子どもを妊娠したことを確認、子どもの国籍・親権等確定のため至急先方と交渉されたし」
「「「「はい?」」」」
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