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本編・上野時代編
異世界税関と万博の春:後
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これまでのあらすじ:この春異世界税関では万博展示品の検査という大仕事が待ち受けてるので、つるとんたんのうどんを奢ってもらうために頑張ることにした。
さて、今回の税関検査はいつぞやの北の国御一行様とは少し中身が異なる。
「万博展示物は保税物品扱いだから三つ葉さんにメインで動いてもらって、丸山さんは三つ葉さんの下についてね」
「分かりました」
というわけで、しばらく三つ葉さんの手伝いという形で書類仕事に入ることになったわけである。
「あーしは日本語と英語のやつをメインで見るから、マルちゃんは大陸標準語のやつ見てくれる?」
「分かりました」
というわけで大陸標準語で執筆された書類を開くと、大陸標準語で書かれた資料に全部目を通したチェックすることになったのだが。
「だっる……」
提出された書類がとにかく分かりにくい。
数字の単位は全部金羊国で使われてる表記なので、キロメートル法に一度直してから書類と中身の違いがないかチェックする必要があるのだ。
2.59ヤードじゃなくて2メートルって書けや!日本に送るなら日本の単位に合わせて書けや!と叫び出したくなる。
しかも中途半端に地球のヤードポンド法に似てるのが災いして、地球だと2メートルは2.18ヤードなので微妙に長さがズレるのがなおの事ややこしい。やはりヤーポン法は滅びるべきと考える。
そんな訳で、書面のミスがないかを確認した上で書面と荷物を突き合わせて間違いがないか・密輸などしてしようとしてないか?をしっかりチェックするだけで3日がかりとなった。あとクソ分かりにくいのでキロメートル法基準表記も併記しておいた、分かりにくいが無いよりはましだ。
「終わったー?」
「うぇい……」
半分力尽きた顔で横たわる私に「力尽きてるけど仕事まだあるから起きてねー」と笑顔で言い放つ。やめてくれ。
「まだあるんですか」
「輸送手段と日数の指定したら、荷物を輸送業者に引き渡して、大阪まで運ばれた後に保税運送目録チェックして終わり!」
いや多いな。しれっと新しい資料出て来てるし。
「というか輸送手段と日数も指定なんですね」
「そりゃー関税逃れは許されないからねー」
そう言いながら新しい書類をてきぱき制作する三つ葉さんは元気である。
地図やコンテナ時刻表を読みながら「このルートならもーちょい時間短くてもイケっかなー」とか考えてる。たのしそうだなおい。
「……万博ってめんどくさいですね」
「面倒っちゃ面倒だけど、楽しみにしてる人らいっぱいいんじゃん。あーしも見に行きたいし」
「さいでっか」
もう何もしたくないとうつぶせる私に三つ葉さんは「拗ねんなー」と笑って励ました。
****
5日後、万博展示品を詰め込んだトラックが上野から大阪を目指して走り出す。
これでようやくひと段落だ。
「僕も万博見に行けるかなぁ」
トラックへの詰め込みを手伝っていた柱谷さんがポヤポヤした顔でそう呟き、「どうだろうねえ」と大曲さんが返してきた。
一応東京税関から定期的に交代要員は派遣してもらってるが、増員される気配はゼロなので大阪旅行できるほどまとまった休みは取れるのだろうか。いや労働基準法は適用されるから休めるときは休めるけどさ。
「でも僕らも頑張ったんだし今回の万博が成功してくれると嬉しいんだけどねー」
大曲さんのひと言に全員がそうだそうだと頷く。
世紀の大イベントの裏でこんなにもこき使われたのだ、うまく行ってくれと思うのが人情である。
「柱谷さん、税関長が今日みんなに美味しいすき焼きとうどんのコースを奢ってくれるって」
「あい、ほんとかね?」
「ホントですよ。ね、大曲税関長?」
私がそう聞けば大曲さんは遠い目をして「……コースじゃなくてうどん単品にして欲しかったんだけどなあ」とぼうやく。ははは、予約取っておかないとつるとんたんおごりが無かったことにされそうだったのでしょうがない。
「東京駅のつるとんたん、大曲さんの名前で8人分きょう7時に予約取ったんで仕事終わったら行きましょう」
私がそう伝えると楽しみが増えたとみんなきゃいきゃい笑うのであった。
さて、今回の税関検査はいつぞやの北の国御一行様とは少し中身が異なる。
「万博展示物は保税物品扱いだから三つ葉さんにメインで動いてもらって、丸山さんは三つ葉さんの下についてね」
「分かりました」
というわけで、しばらく三つ葉さんの手伝いという形で書類仕事に入ることになったわけである。
「あーしは日本語と英語のやつをメインで見るから、マルちゃんは大陸標準語のやつ見てくれる?」
「分かりました」
というわけで大陸標準語で執筆された書類を開くと、大陸標準語で書かれた資料に全部目を通したチェックすることになったのだが。
「だっる……」
提出された書類がとにかく分かりにくい。
数字の単位は全部金羊国で使われてる表記なので、キロメートル法に一度直してから書類と中身の違いがないかチェックする必要があるのだ。
2.59ヤードじゃなくて2メートルって書けや!日本に送るなら日本の単位に合わせて書けや!と叫び出したくなる。
しかも中途半端に地球のヤードポンド法に似てるのが災いして、地球だと2メートルは2.18ヤードなので微妙に長さがズレるのがなおの事ややこしい。やはりヤーポン法は滅びるべきと考える。
そんな訳で、書面のミスがないかを確認した上で書面と荷物を突き合わせて間違いがないか・密輸などしてしようとしてないか?をしっかりチェックするだけで3日がかりとなった。あとクソ分かりにくいのでキロメートル法基準表記も併記しておいた、分かりにくいが無いよりはましだ。
「終わったー?」
「うぇい……」
半分力尽きた顔で横たわる私に「力尽きてるけど仕事まだあるから起きてねー」と笑顔で言い放つ。やめてくれ。
「まだあるんですか」
「輸送手段と日数の指定したら、荷物を輸送業者に引き渡して、大阪まで運ばれた後に保税運送目録チェックして終わり!」
いや多いな。しれっと新しい資料出て来てるし。
「というか輸送手段と日数も指定なんですね」
「そりゃー関税逃れは許されないからねー」
そう言いながら新しい書類をてきぱき制作する三つ葉さんは元気である。
地図やコンテナ時刻表を読みながら「このルートならもーちょい時間短くてもイケっかなー」とか考えてる。たのしそうだなおい。
「……万博ってめんどくさいですね」
「面倒っちゃ面倒だけど、楽しみにしてる人らいっぱいいんじゃん。あーしも見に行きたいし」
「さいでっか」
もう何もしたくないとうつぶせる私に三つ葉さんは「拗ねんなー」と笑って励ました。
****
5日後、万博展示品を詰め込んだトラックが上野から大阪を目指して走り出す。
これでようやくひと段落だ。
「僕も万博見に行けるかなぁ」
トラックへの詰め込みを手伝っていた柱谷さんがポヤポヤした顔でそう呟き、「どうだろうねえ」と大曲さんが返してきた。
一応東京税関から定期的に交代要員は派遣してもらってるが、増員される気配はゼロなので大阪旅行できるほどまとまった休みは取れるのだろうか。いや労働基準法は適用されるから休めるときは休めるけどさ。
「でも僕らも頑張ったんだし今回の万博が成功してくれると嬉しいんだけどねー」
大曲さんのひと言に全員がそうだそうだと頷く。
世紀の大イベントの裏でこんなにもこき使われたのだ、うまく行ってくれと思うのが人情である。
「柱谷さん、税関長が今日みんなに美味しいすき焼きとうどんのコースを奢ってくれるって」
「あい、ほんとかね?」
「ホントですよ。ね、大曲税関長?」
私がそう聞けば大曲さんは遠い目をして「……コースじゃなくてうどん単品にして欲しかったんだけどなあ」とぼうやく。ははは、予約取っておかないとつるとんたんおごりが無かったことにされそうだったのでしょうがない。
「東京駅のつるとんたん、大曲さんの名前で8人分きょう7時に予約取ったんで仕事終わったら行きましょう」
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