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Lesson13 牙を隠した獣
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フロアはシャンパンの泡とシャンパンコールの熱気で笑い声に包まれ、華やかだった。
僕は指名の美奈子さんと並び、笑顔を作りながらグラスを合わせていた。
「みのるくん、本当に可愛いわね!私、みのるくんのためにがんばるわ」
褒められるたびに胸がくすぐったくて、――
姫たちから指名が増えていくたびに、売れないプレイヤーたちの嫉妬の目が僕に刺さってくる。
そこに、不意に割り込んできた男。
トカゲ顔のトシ。
「はじめまして~」とニヤつきながら、美奈子さんの隣に座る。
場が乱れた気がした。けれど酔いのせいか、美奈子さんは笑って受け入れてしまう。
(……なんで、トシさんがここに?ボーイは?呼ばれてないはずなのに)
嫌な予感が背筋を走る。
「なぁ、みのる。頼みあるんだ」
「え?」
「タバコ、控え室に忘れてさ。取ってきてくれない?」
困惑する僕に、軽く笑って肩を叩くトシ。
「久住さんや河野さんに頼めば…」と口にしたが、
「ダメダメ、久住も河野も忙しいからさ。ほら、俺も動けないし?」と遮られる。
(なんで僕に…?)
違和感を抱きながらも、断れず頷いてしまった。
「わかりました」
立ち上がった俺の背中に、13番席にいるトシの含み笑いが刺さった。
――控え室。
静かで、遠くにフロアの喧騒がぼんやり響いている。
「よぉ、みのる」
ソファにだらしなく腰掛け、煙草を吸うセイヤがいた。
「セイヤさん…なんでここに?」
「まだ指名が入らなくてな…待ってたんだ」
タバコを探そうとした瞬間――
背後から腕が絡みつく。
「え…!?な、なんですか!」
「なぁ、みのる、なんで俺を避けるんだ? 俺、こんなにお前思ってんのに」
耳元に熱い息。冷や汗が背筋をつたう。
「や、やめてください!」
必死に振りほどこうとするが、腕を掴まれて動けない。
「痛いっ…!」
目の前で、セイヤの瞳がギラついた。
「正直に言えよ。レオに抱かれたのか? 言えば離してやる」
胸が詰まって、震える声で答えた。
「……好きだから、はい。」
その瞬間、セイヤの顔が歪み、怒気が爆ぜた。
「だったら余計に…無理矢理でも俺のものにしてやる!」
ソファーに押し倒され馬乗りになり、シャツを乱暴に引き剥がそうとする。
「ちょっと何するんですか!やめてくださいよ!離せ!」
必死に叫んでも、口を塞がれて声がこもる。
(誰か助けて…!)
その頃フロアー
フロアで客と笑顔を交わしていたとき、久住が小走りでやって来た。
「レオさん…!ちょっといいですか」
「ん?」
「みのるくんが…13番テーブルでトシさん何か指示されて控え室に行きました。変なんです」
一瞬で血の気が引いた。
(……まさか、罠か)
「レオ?どうしたの?」と呼び止める客に、微笑で答えた。
「ごめんね。すぐ戻るから、少しだけ待ってて」
背筋に冷たいものを這わせながら、早足で控え室へ。
――バターン!
ドアを蹴り開けた瞬間。
ソファーでセイヤが馬乗りになり、必死に抵抗するみのるの姿が目に飛び込んできた。
涙目の子犬
「……みのる」
低く、喉の奥で怒りが燃える。
「お前、何やってんだよ」
セイヤが顔を上げ、舌打ちする。
「チッ…テメェは指名客のとこだろ? なんでここに来やがった!」
俺は一歩踏み込み、セイヤを睨み据える。
「離せ。みのるから離れろ」
声は冷たく笑みを帯びていたが、内側では今にも爆発しそうな怒りが渦巻いていた。
――子犬を泣かせるなんて、絶対に許さねぇ。
「離せって言ってんだよ!」
怒声を叩きつけ、セイヤの肩を乱暴に引き剥がす。
ゴツい体に阻まれながらも、腕を力いっぱい引き裂いた。
「ぐっ……!」
セイヤは不満そうに顔を歪め、自分の乱れたシャッを直す。
「チッ……お前、No.1様だからって調子に乗るなよ」
俺は余裕の笑みを浮かべた。
「――よく言えたな。No.1の俺様によ
お前みたいな下品なやり方でしか上に上がれねぇ奴と一緒にすんなよ。俺は――“選ばれる”んだよ」
静かな声だったが、刃のように鋭く空気を裂いた。
セイヤの顔が真っ赤に染まり、拳を震わせる。
悔しさに歯ぎしりを噛み、吐き捨てるように捨て台詞。
「……クソっ覚えてろよ」
足音荒く、控え室を後にした。
残された俺は、震えるみのるの肩を抱き寄せる。
細い体が力なく寄りかかり、泣きそうな目で見上げてきた。
「……大丈夫だ。もう離さない」
腕の中で背をぎゅっと抱きしめる。
額を寄せ、耳元で囁く。
「お前は……俺のだ」
みのるは言葉を失い、ただ胸にしがみついた。
――その光景を、控え室のドアの影から覗く影があった。
リュウだ。
眼鏡を指先で押し上げ、表情を隠すように深くかけ直す。
「……やっぱりな」
低く笑いを漏らし、そのまま何も言わず立ち去っていった。
次へー
僕は指名の美奈子さんと並び、笑顔を作りながらグラスを合わせていた。
「みのるくん、本当に可愛いわね!私、みのるくんのためにがんばるわ」
褒められるたびに胸がくすぐったくて、――
姫たちから指名が増えていくたびに、売れないプレイヤーたちの嫉妬の目が僕に刺さってくる。
そこに、不意に割り込んできた男。
トカゲ顔のトシ。
「はじめまして~」とニヤつきながら、美奈子さんの隣に座る。
場が乱れた気がした。けれど酔いのせいか、美奈子さんは笑って受け入れてしまう。
(……なんで、トシさんがここに?ボーイは?呼ばれてないはずなのに)
嫌な予感が背筋を走る。
「なぁ、みのる。頼みあるんだ」
「え?」
「タバコ、控え室に忘れてさ。取ってきてくれない?」
困惑する僕に、軽く笑って肩を叩くトシ。
「久住さんや河野さんに頼めば…」と口にしたが、
「ダメダメ、久住も河野も忙しいからさ。ほら、俺も動けないし?」と遮られる。
(なんで僕に…?)
違和感を抱きながらも、断れず頷いてしまった。
「わかりました」
立ち上がった俺の背中に、13番席にいるトシの含み笑いが刺さった。
――控え室。
静かで、遠くにフロアの喧騒がぼんやり響いている。
「よぉ、みのる」
ソファにだらしなく腰掛け、煙草を吸うセイヤがいた。
「セイヤさん…なんでここに?」
「まだ指名が入らなくてな…待ってたんだ」
タバコを探そうとした瞬間――
背後から腕が絡みつく。
「え…!?な、なんですか!」
「なぁ、みのる、なんで俺を避けるんだ? 俺、こんなにお前思ってんのに」
耳元に熱い息。冷や汗が背筋をつたう。
「や、やめてください!」
必死に振りほどこうとするが、腕を掴まれて動けない。
「痛いっ…!」
目の前で、セイヤの瞳がギラついた。
「正直に言えよ。レオに抱かれたのか? 言えば離してやる」
胸が詰まって、震える声で答えた。
「……好きだから、はい。」
その瞬間、セイヤの顔が歪み、怒気が爆ぜた。
「だったら余計に…無理矢理でも俺のものにしてやる!」
ソファーに押し倒され馬乗りになり、シャツを乱暴に引き剥がそうとする。
「ちょっと何するんですか!やめてくださいよ!離せ!」
必死に叫んでも、口を塞がれて声がこもる。
(誰か助けて…!)
その頃フロアー
フロアで客と笑顔を交わしていたとき、久住が小走りでやって来た。
「レオさん…!ちょっといいですか」
「ん?」
「みのるくんが…13番テーブルでトシさん何か指示されて控え室に行きました。変なんです」
一瞬で血の気が引いた。
(……まさか、罠か)
「レオ?どうしたの?」と呼び止める客に、微笑で答えた。
「ごめんね。すぐ戻るから、少しだけ待ってて」
背筋に冷たいものを這わせながら、早足で控え室へ。
――バターン!
ドアを蹴り開けた瞬間。
ソファーでセイヤが馬乗りになり、必死に抵抗するみのるの姿が目に飛び込んできた。
涙目の子犬
「……みのる」
低く、喉の奥で怒りが燃える。
「お前、何やってんだよ」
セイヤが顔を上げ、舌打ちする。
「チッ…テメェは指名客のとこだろ? なんでここに来やがった!」
俺は一歩踏み込み、セイヤを睨み据える。
「離せ。みのるから離れろ」
声は冷たく笑みを帯びていたが、内側では今にも爆発しそうな怒りが渦巻いていた。
――子犬を泣かせるなんて、絶対に許さねぇ。
「離せって言ってんだよ!」
怒声を叩きつけ、セイヤの肩を乱暴に引き剥がす。
ゴツい体に阻まれながらも、腕を力いっぱい引き裂いた。
「ぐっ……!」
セイヤは不満そうに顔を歪め、自分の乱れたシャッを直す。
「チッ……お前、No.1様だからって調子に乗るなよ」
俺は余裕の笑みを浮かべた。
「――よく言えたな。No.1の俺様によ
お前みたいな下品なやり方でしか上に上がれねぇ奴と一緒にすんなよ。俺は――“選ばれる”んだよ」
静かな声だったが、刃のように鋭く空気を裂いた。
セイヤの顔が真っ赤に染まり、拳を震わせる。
悔しさに歯ぎしりを噛み、吐き捨てるように捨て台詞。
「……クソっ覚えてろよ」
足音荒く、控え室を後にした。
残された俺は、震えるみのるの肩を抱き寄せる。
細い体が力なく寄りかかり、泣きそうな目で見上げてきた。
「……大丈夫だ。もう離さない」
腕の中で背をぎゅっと抱きしめる。
額を寄せ、耳元で囁く。
「お前は……俺のだ」
みのるは言葉を失い、ただ胸にしがみついた。
――その光景を、控え室のドアの影から覗く影があった。
リュウだ。
眼鏡を指先で押し上げ、表情を隠すように深くかけ直す。
「……やっぱりな」
低く笑いを漏らし、そのまま何も言わず立ち去っていった。
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