指名は君だけー高層の夜に堕ちる

氷月

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Lesson13.5 本当の名前を、君にだけ

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俺は震えているみのるを抱きしめた。

細い肩が小刻みに揺れて、胸の奥で何かが切れそうになる。

その時、背後から声が飛んだ。

「おい、姫待ってるぞ!」

振り返ると、腕を組んだリュウが立っていた。

薄いメガネの奥の目が、冷ややかに笑っている。

「……忘れてた」

思わず苦笑すると、リュウは小さく鼻を鳴らした。

「いい、俺が繋いでおく。行け。あとは任せろ」

「……ありがとうな」

「借り返しただけだ」

俺はみのるの頭を撫でた。

「帰るぞ、みのる」

「え?いいんですか……」

「こんな乱れた服装、目も真っ赤で……客前に出せるわけないだろ」

みのるは涙目のまま、素直に頷いた。

そのまま、タクシーで俺のマンションへ向かった。

——

セイヤのタバコの匂いが、まだ髪に残っていた。

「痛かっただろ?……あいつ、本当に頭にくる」

声が震えるのを自分でもわかった。

「助けてもらって、ありがとうございました……あの人、力強くて抵抗出来なくて」

「お前、小さいからな」

言いながら、俺はそっとみのるの肩を抱き寄せた。

「ほら、シャワー浴びて、スッキリしてこい」

洗面所に連れていき、着替えを渡す。

「ありがとうござ──」

みのるの言葉の途中で、俺は堪えきれなくなって抱きしめた。

胸の奥が、焼けるように痛い。

奪われなくてよかった——その思いだけが全身を支配していた。

「……レオさん?」

振り返るみのるの瞳に、自分の仮面が映る。

もう抑えられなかった。

俺は何も言わずに唇を塞いだ。

浅いキスが、次第に深く強くなっていく。

香りも、息づかいも、すべてが愛しくて、狂おしいほど溺れていく。

「みのる……」

気づけば声が震えていた。

「お前、俺を好きなのか?」

みのるは顔を赤くし、潤んだ瞳のまま頷いた。

「……好きです」

胸が熱くて、息が詰まる。

どこかで自分に〈遊びだ〉と言い聞かせてきた声が、粉々に砕けていった。

——ベッドに戻り、また唇を重ねる。

みのるが小さくつぶやいた。

「レオさ──」

「違うよ」

「……?」

俺は額を重ねたまま、囁いた。

「和希だ。俺の名前は和希だ。お前しか知らない」

みのるの瞳が大きく揺れた。

「……遊びじゃないんですか?」

胸の奥から素直な声が漏れた。

「遊びじゃなくなったよ。お前に狂わされた。お前が、好きだ」

「和希……」

小さな声で名前を呼ばれた瞬間、腕の中で世界が変わった気がした。

ぎゅっと抱きしめる。

「お前は、俺だけのものだよ」

みのるは泣き笑いの顔で、その胸に顔を埋めた。

夜の静けさの中、二人の鼓動だけが響いていた——。


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