18 / 38
Lesson 14 水槽の向こうで、君が笑った
しおりを挟む
朝の光がカーテンの隙間から差し込む。
隣にいる子犬のような青年は、小さな寝息を立てていた。
――なんで、こんなに愛しいんだ。
遊びだと、自分に言い聞かせてきたのに。
気づけば俺が堕ちていた。もう、離したくない。誰にも渡したくない。
その瞬間、みのるがゆっくりと目を開ける。
まだ眠たげな瞳のまま、微笑んで。
「……おはようございます」
その声に胸がきゅっと締めつけられる。可愛すぎる。
思わず抱き寄せ、髪に唇を落とす。
「なぁ、今日……仕事行きたくないだろ?」
「……はい」
小さくうなずく姿がまた、胸を打つ。
「もうオーナーに連絡してある。俺とお前、今日は休みだ」
「え……ほんとに?」
驚いたみのるの顔が、ぱっと緩む。安堵の色に染まって。
「軽く食べたら出かけよう。――ほら、ごはん作るから手伝え」
額に軽くキスを落とすと、みのるは耳まで赤くしてうなずいた。
キッチンに並んで立つ。
こんな時間が永遠に続けばいいのにと、ふと思う。
「冷蔵庫から牛乳、取ってくれ」
「……和希さん、牛乳買うんですね?」
「お前が好きそうだったからな」
些細なやり取りすら甘い。
テーブルに並んだのは、香ばしいフレンチトーストに、色鮮やかなサラダ、目玉焼き、ベーコン、温かなコンソメスープ。
「……すごい」
みのるの瞳がキラキラと輝く。まるで子どものように。
「ほら、ハチミツもあるぞ」
「……和希さんって、僕のこと読めるんですか?」
「甘いの好きだって言ってただろ」
「言いましたっけ……?」
「はいはい、食え」
「いただきます!」
ひと口頬張った瞬間、みのるの顔が花のように綻ぶ。
「美味しい……!幸せすぎます!」
「大袈裟だな」
くすくすと笑う声さえ、愛しくて仕方なかった。
車が走り出すと、助手席のみのるは子どものように窓の外を眺めていた。
その横顔が楽しそうで、思わず目を細める。
「やっぱ気分転換はいいよな」
「うん!」
笑顔で返してくる声が弾んでいる。
「それと……二人きりのときは敬語禁止な」
「えっ?」
大きな目がぱちぱちと瞬きする。
「わかったか?」
「……は、はい、じゃなくて……うん」
「よし」
にやりと笑うと、みのるは少し照れて頬を赤く染めた。
水族館に到着すると、みのるは目を輝かせて走り出す。
「わぁ!魚がいっぱい!」
「落ち着け、子供か」
口では呆れながらも、その無邪気さに胸が温かくなる。
「見て!あれ鯵?」
「いや、鰯じゃね?」
「……美味しそう」
「……おい」
思わず吹き出す。笑う俺を見て、みのるも恥ずかしそうに笑った。
人の少ない平日だからこそ、二人で並んで歩く姿はやけに目立つ。
鏡に映るガラス越しの俺たちに、通りすがりの女子が振り返って囁く。
――イケメン同士じゃん。やば……。
そんな声を聞いても、みのるは気づかず夢中で水槽を指差していた。
「わぁ!ウミガメ!可愛い!ねぇ見て!」
「はいはい」
肩をすくめつつ、髪に手を伸ばして直してやる。
「クラゲもいるよ!ね、あっちも!」
「はいはい、元気だな」
「ね!あの蟹すごい大きい!……食べれるの?」
「食べたら絶対不味いな」
「だよね~」
屈託のない笑顔に、胸の奥がじんわり熱くなる。
気づけば、額に唇を落としていた。
「なっ、なに!?いきなり……!」
真っ赤になって抗議する声も、また愛おしい。
「お前が可愛すぎるから、仕方ない」
笑みを隠しもせず、その手を引いた。
「……さぁ、行くぞ。まだ回るだろ?」
「……うん」
少し拗ねたように頬を染めたまま、それでも隣に並ぶ姿。
まるで、この場所全てが二人のためにあるかのように、
幸せが胸いっぱいに満ちていた。
クラゲの水槽の前。
青白い光がゆらめき、無数のクラゲがふわふわと漂っている。
その幻想的な景色に、みのるは夢中になって見入っていた。
「……クラゲって、何考えてるのかな?」
「考えてない。脳がないから、ただ浮かんでるだけだ」
「えっ、そうなの?」
みのるは丸い目をさらに大きくして、クラゲを見つめる。
光に照らされた横顔があまりに綺麗で、俺は思わず腕を伸ばした。
そっと引き寄せれば、驚いたみのるの瞳がこちらを映す。
見つめ合う距離。
吐息が触れ合うほど近くで、唇を重ねた。
「……和希……」
「俺、今日……我慢できないかも」
低い声で囁くと、みのるは一瞬戸惑い、そして小さく頷いた。
「……泊まる?」
「……う、うん」
頬を赤く染めながら、はっきりと返してくる。
「嫌なら、しないけど?」
「嫌じゃないよ」
その必死さが可愛くて、思わず笑みがこぼれた。
手を繋いだまま早足で歩き出す俺に、みのるが慌ててついてくる。
振り返って、額に軽くキスを落とせば――
「……っ!」
みのるはさらに赤くなり、俺の腕に両手でぎゅっと絡みついてきた。
その仕草に胸が熱くなる。
水族館の青い光の下、仮面も虚勢もいらない。
――今日も君を、たくさん愛した。
嘘のない気持ちで、ただひたすらに溺れる夜へ。
「……覚悟しとけよ、子犬」
意地悪く囁き、可愛い獲物を腕に抱き寄せた。
Lesson15 へ
隣にいる子犬のような青年は、小さな寝息を立てていた。
――なんで、こんなに愛しいんだ。
遊びだと、自分に言い聞かせてきたのに。
気づけば俺が堕ちていた。もう、離したくない。誰にも渡したくない。
その瞬間、みのるがゆっくりと目を開ける。
まだ眠たげな瞳のまま、微笑んで。
「……おはようございます」
その声に胸がきゅっと締めつけられる。可愛すぎる。
思わず抱き寄せ、髪に唇を落とす。
「なぁ、今日……仕事行きたくないだろ?」
「……はい」
小さくうなずく姿がまた、胸を打つ。
「もうオーナーに連絡してある。俺とお前、今日は休みだ」
「え……ほんとに?」
驚いたみのるの顔が、ぱっと緩む。安堵の色に染まって。
「軽く食べたら出かけよう。――ほら、ごはん作るから手伝え」
額に軽くキスを落とすと、みのるは耳まで赤くしてうなずいた。
キッチンに並んで立つ。
こんな時間が永遠に続けばいいのにと、ふと思う。
「冷蔵庫から牛乳、取ってくれ」
「……和希さん、牛乳買うんですね?」
「お前が好きそうだったからな」
些細なやり取りすら甘い。
テーブルに並んだのは、香ばしいフレンチトーストに、色鮮やかなサラダ、目玉焼き、ベーコン、温かなコンソメスープ。
「……すごい」
みのるの瞳がキラキラと輝く。まるで子どものように。
「ほら、ハチミツもあるぞ」
「……和希さんって、僕のこと読めるんですか?」
「甘いの好きだって言ってただろ」
「言いましたっけ……?」
「はいはい、食え」
「いただきます!」
ひと口頬張った瞬間、みのるの顔が花のように綻ぶ。
「美味しい……!幸せすぎます!」
「大袈裟だな」
くすくすと笑う声さえ、愛しくて仕方なかった。
車が走り出すと、助手席のみのるは子どものように窓の外を眺めていた。
その横顔が楽しそうで、思わず目を細める。
「やっぱ気分転換はいいよな」
「うん!」
笑顔で返してくる声が弾んでいる。
「それと……二人きりのときは敬語禁止な」
「えっ?」
大きな目がぱちぱちと瞬きする。
「わかったか?」
「……は、はい、じゃなくて……うん」
「よし」
にやりと笑うと、みのるは少し照れて頬を赤く染めた。
水族館に到着すると、みのるは目を輝かせて走り出す。
「わぁ!魚がいっぱい!」
「落ち着け、子供か」
口では呆れながらも、その無邪気さに胸が温かくなる。
「見て!あれ鯵?」
「いや、鰯じゃね?」
「……美味しそう」
「……おい」
思わず吹き出す。笑う俺を見て、みのるも恥ずかしそうに笑った。
人の少ない平日だからこそ、二人で並んで歩く姿はやけに目立つ。
鏡に映るガラス越しの俺たちに、通りすがりの女子が振り返って囁く。
――イケメン同士じゃん。やば……。
そんな声を聞いても、みのるは気づかず夢中で水槽を指差していた。
「わぁ!ウミガメ!可愛い!ねぇ見て!」
「はいはい」
肩をすくめつつ、髪に手を伸ばして直してやる。
「クラゲもいるよ!ね、あっちも!」
「はいはい、元気だな」
「ね!あの蟹すごい大きい!……食べれるの?」
「食べたら絶対不味いな」
「だよね~」
屈託のない笑顔に、胸の奥がじんわり熱くなる。
気づけば、額に唇を落としていた。
「なっ、なに!?いきなり……!」
真っ赤になって抗議する声も、また愛おしい。
「お前が可愛すぎるから、仕方ない」
笑みを隠しもせず、その手を引いた。
「……さぁ、行くぞ。まだ回るだろ?」
「……うん」
少し拗ねたように頬を染めたまま、それでも隣に並ぶ姿。
まるで、この場所全てが二人のためにあるかのように、
幸せが胸いっぱいに満ちていた。
クラゲの水槽の前。
青白い光がゆらめき、無数のクラゲがふわふわと漂っている。
その幻想的な景色に、みのるは夢中になって見入っていた。
「……クラゲって、何考えてるのかな?」
「考えてない。脳がないから、ただ浮かんでるだけだ」
「えっ、そうなの?」
みのるは丸い目をさらに大きくして、クラゲを見つめる。
光に照らされた横顔があまりに綺麗で、俺は思わず腕を伸ばした。
そっと引き寄せれば、驚いたみのるの瞳がこちらを映す。
見つめ合う距離。
吐息が触れ合うほど近くで、唇を重ねた。
「……和希……」
「俺、今日……我慢できないかも」
低い声で囁くと、みのるは一瞬戸惑い、そして小さく頷いた。
「……泊まる?」
「……う、うん」
頬を赤く染めながら、はっきりと返してくる。
「嫌なら、しないけど?」
「嫌じゃないよ」
その必死さが可愛くて、思わず笑みがこぼれた。
手を繋いだまま早足で歩き出す俺に、みのるが慌ててついてくる。
振り返って、額に軽くキスを落とせば――
「……っ!」
みのるはさらに赤くなり、俺の腕に両手でぎゅっと絡みついてきた。
その仕草に胸が熱くなる。
水族館の青い光の下、仮面も虚勢もいらない。
――今日も君を、たくさん愛した。
嘘のない気持ちで、ただひたすらに溺れる夜へ。
「……覚悟しとけよ、子犬」
意地悪く囁き、可愛い獲物を腕に抱き寄せた。
Lesson15 へ
0
あなたにおすすめの小説
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
平凡高校生の俺にイケメンアイドルが365回告白してくる理由
スノウマン(ユッキー)
BL
高校三年生の橘颯真はイケメンアイドル星宮光に毎日欠かさず告白されている。男同士とのこともあり、毎回断る颯真だが、一年という時間が彼らの関係を少しずつ変えていく。
どうして星宮は颯真に毎日告白するのか、そして彼らの恋の行方は?
【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!
なつか
BL
≪登場人物≫
七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。
佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。
田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。
≪あらすじ≫
α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。
そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。
運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。
二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる