指名は君だけー高層の夜に堕ちる

氷月

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Lesson22 独占の聖夜、胸に刺さる棘

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二日目のフロアは、昨日を超える熱気に包まれていた。

雪のイルミネーションを思わせるライトが青白く光り、姫たちの笑い声がシャンデリアに反響する。

「レオ~クリスマスプレゼント!」

白い箱を差し出す姫の笑顔。その中には、銀のバングル。

「おー、ありがとう!嬉しいな」

(この高級ブランドか……正直趣味じゃないけど、肩を組むしかないか)

余裕の笑みを浮かべる俺に、姫がさらに頬を染める。

視線を横に流せば――シャンパンタワーを背に、リュウもシュウも笑顔で次々と姫のグラスを満たしていた。

王者三人、煌びやかにスーツに身を包み、まるで舞台の上の王子。他のプレイヤーたちも

スーツに身を包んでいた。

一方で、レギュラーのサンタコスの“可愛い組”とバイトの子たちもフロアを駆け回る。

「みのるくん、これ受け取って!」

ブレスレットを渡され、顔を赤らめて喜ぶみのる。

マダムからは香水まで渡され、困ったように笑う姿。

(……あいつ、ほんとにモテすぎだろ。俺が見てないとすぐ奪われそうだ)

胸の奥がちり、と熱を持った。

その頃ー

(……やべぇ、昨日のホテル街に消えた光景、まだ頭から離れねぇ)

視線がフロアを泳ぐ。

「おいマサキ、何ぼーっとしてんだよ」

すぐ横で、シュウが姫と談笑しながら目だけこちらに向けてくる。

「いや、あの……昨日――」

(言おうとしたのに。おまえアフター行っちまって、チャンス逃したんだよ!)

「ん? 何?」

「いや、なんでもねぇ」

言葉を飲み込む。喉の奥が苦い。

(どうするよ俺。リュウに言ったら……絶対壊れるだろ)

姫の声に呼ばれ、無理やり笑顔を作ってテーブルに戻る。

けど、背中にずっと重いものが張り付いていた。

その頃ー

俺は何度もスマホを確認していた。

指先だけが落ち着かずに画面をスライド。

(……やっぱり返事はないか)

通知は静かなまま。既読もつかない。

そこに浮かぶのは“カイト”の名前。

「リュウさん、大丈夫ですか?」

横から不安そうに覗き込むリツの声。

「なにが?」

微笑んで返す。

「いや……元気ないから」

「大丈夫。ちょっと疲れただけだよ」

穏やかに言ったつもりが、自分の声の奥に小さな棘が潜んでいるのを自覚していた。

──エントランス

姫たちが次々と帰宅。タクシーに乗り込み、クリスマスの夜が少しずつ冷えていく。

白い息が空に溶け、華やかだったフロアも静けさに包まれていく。

「バイバイ、みのる大好きよ!」

「またね、ありがとう」

「リュウありがとう、今日も楽しかった」

「俺もだよ、ありがとう」

その横には、笑顔で見送るみのる。

その肩が、寒さに小さく震えていた。

(……似てる….あいつに…けど、違う…)

胸の奥が疼く。

気づけば、足が勝手に動いていた。

隣に立ち、そっと肩を寄せる。

「二日間、よく頑張ったな。……お疲れ」

驚いたように振り返ったみのるの瞳。

「……ありがとうございます」

子犬みたいな笑顔が零れ落ちた瞬間、眩しさが胸を貫いた。

(俺は……何をしてる)

その笑顔に触れたい衝動を押し殺し、ただ頭に手を置く。

「風邪ひくなよ」

小さな声でそれだけ。


フロアではレオがボトルを掲げる。

ざわめきと光に包まれた。

歓声を浴びる横顔は、相変わらず余裕の笑み。

白い吐息が夜に消えていった。

閉店2時ー

店を出て、冷たい冬の夜風の中。

タクシーに乗り込むレオとみのる。

街はクリスマス一色、笑い声とイルミネーションに包まれていた。

タクシーの窓越し、ホテル街の灯りの中。

窓の外に目をやったその瞬間――。

白いコートを着たサナが隣で笑うカイトと腕を組んでいた。

笑いながら自動ドアへ吸い込まれていくのを、みのるは見てしまった。

(……サナ。やっぱり僕に似たやつを……)

胸の奥がざらりと痛む。

けど同時に、頭をよぎるのは――リュウの穏やかな笑顔。

(あんなに仲良かったのに。リュウさん……知ったら……どうなるんだろう)

心臓が跳ねる。

(は?まてよ、カイトって……男だったの??女の子みたくはしゃいでいたよね?)

あまりのギャップに、思考がぐちゃぐちゃになり、頬が青ざめる。

一呼吸おく

(……僕には関係ない。もう別れたんだ。見てない、見てない……)

必死に言い聞かせるけど、胸の奥の棘は抜けなかった。

横を見れば、レオが疲れた顔で窓にもたれている。

その姿を見た瞬間、堪えきれずに腕を伸ばした。

「和希……ギュッとして」

「……しゃーないな」

レオが肩を抱き寄せ、額に口づけを落とす。

(僕には、この人がいる。……大丈夫、大丈夫だ)

そう呟くように、みのるはレオの胸に顔を埋めた。

次へー
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