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Lesson10もうひとりの御影、秘めた微笑
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朝の光がカーテン越しに差し込む。
ベッドの中、まだ温もりを残したハルの髪を撫でながら、ユウヤは微笑んだ。
(……昨日は酔ったハル、ほんま可愛かったな)
指先でそっと頬をなぞると、ハルが目を開けて小さく笑った。
「……おはよ。ごはん作るね?」
「うん。今日は会社ゆっくりでええ日や。午前中は、こうしてお前とおれる」
軽く抱き寄せると、ハルも素直に腕を回してくる。
温かさが胸にじんわり広がる。
テーブルに並んだのは、目玉焼き、ほうれん草のソテー、ゆで卵、そして野菜入り春雨スープ。
けれど、ハルはスープだけ口にして、苦笑い。
「……二日酔いだから、これで十分」
「胃薬飲んどけよ?」
ユウヤは額にキスを落とし、低く囁いた。
「無理すんな。俺が守るから」
「今日、大学休むね」
「そっか。ゆっくりしときや」
10時、ユウヤはスーツに着替え、柔らかく微笑む。
「行ってきます」
「……いってらっしゃい」
見送る声が少し切なく揺れた。
――そして11時半。
【USB忘れた。会社までお願いできないかな? ごめん】
ユウヤからLINEが届いた。
ハルはユウヤの仕事部屋に入り、机の上からUSBを見つける。
(……よし、届けなきゃ)
姿見の前に立ち、急いで支度を整える。青いコンタクトを入れ、ほんのり色づくリップ。手首に光るシルバーブレスレットが大人びた印象を添える。髪は耳にかけて、チェーンのピアスを揺らす。
長いまつ毛をマスカラで整えた。
ネイビーのサテンブラウスは、光の角度で艶やかに揺れる。襟元に添えられた細いリボンが、幼さを隠すように上品さを際立たせていた。
ふんわりとしたオフホワイトのボトムは、清潔感のある色味で全体を柔らかくまとめる。
そして足元は革のローファー──シンプルなのに、確かな存在感を放っていた。
鏡越しに自分を見て、ハルは小さく息を呑む。
(……なんか、僕じゃないみたいだ。これなら……ユウヤに見られても恥ずかしくないかな)
ハルは緊張した面持ちで、ガラス張りの会社に足を踏み入れた。
吹き抜けのロビーにシャンデリアが光を落とし、行き交う社員たちの足音が響く。
フロントにUSBを差し出して、声を震わせる。
「あの……御影ユウヤさん、呼んでもらえますか?」
受付嬢は一瞬ぽかんと目を見開き、慌てて頷いた。
「はっ、はい! 少々お待ちください」
周囲を通り過ぎる人々の視線が、自然とハルに集まる。
「かわいい……」
「誰の知り合い?」
小声がさざめき、笑顔がこぼれる。
そのとき。背後から艶めいた声が降ってきた。
「……御影ユウヤさんと、どんなご関係?」
振り返ると、南条美咲。
タイトスカートレースの裾を揺らし、挑むような笑みを浮かべていた。
「なに? その可愛い顔。あなた、どういう関係?」
胸が強く跳ねる。返事に詰まったその瞬間──。
「……俺の恋人に話しかけんな」
低い声とともに、背後から腕が回される。
ユウヤがハルを抱き寄せ、美咲を真っ直ぐに睨んでいた。
その腕の強さに、ハルの心臓は爆発しそうになる。
美咲は一瞬、沈黙。紅い唇が引きつる。
「……」
ユウヤは何事もなかったようにハルの肩を抱き、踵を返す。
「ハル、行くぞ」
外の風に触れた瞬間、張り詰めていた鼓動が一気に解けた。
「……ありがとう」
ハルが小さな声で呟くと、ユウヤは苦笑混じりに顔を隠す。
「ほんま、反則や。可愛すぎて……俺、ますます沼やわ」
その言葉に、ハルの頬が熱く染る
その瞬間。
「兄さん! 久しぶりやな」
振り返ると、そこに立っていたのは──ユウヤによく似た青年。
黒髪に、淡く光を宿す瞳。鋭さと優しさが同居する、不思議な存在感。
「……おう、奏真か!」
ユウヤが目を見開き、笑みを浮かべる。
青年は歩み寄り、ハルをじっと見つめた。
「兄さん、隣の人は?」
ユウヤの肩をすくめる仕草の前に、自ら名乗った。
「俺は御影奏真。二十一歳。オーストラリアから帰ってきたばかりや。よろしく」
ハルは思わず息を呑んだ。
はじめまして。琴森晴ハルです。よろしくお願いします」
「……せっかくやし、今日は三人で飯でも行こか」
ユウヤが軽く笑いながら言う。
「今日は仕事早めに終わる日やったから」
ハルは胸がふっと温かくなる
(……三人で? なんだか不思議な気分だな)
「ハル、どこ行きたい?」
「えっと……駅前の韓国料理とか、いい?」
少し遠慮がちに言うと、ユウヤが即答した。
「決まりやな。お前の好きなとこでええ」
ユウヤと同じ血を引きながら、まるで違う光をまとったもう一人の御影──奏真。
Lesson 11へ続く
ベッドの中、まだ温もりを残したハルの髪を撫でながら、ユウヤは微笑んだ。
(……昨日は酔ったハル、ほんま可愛かったな)
指先でそっと頬をなぞると、ハルが目を開けて小さく笑った。
「……おはよ。ごはん作るね?」
「うん。今日は会社ゆっくりでええ日や。午前中は、こうしてお前とおれる」
軽く抱き寄せると、ハルも素直に腕を回してくる。
温かさが胸にじんわり広がる。
テーブルに並んだのは、目玉焼き、ほうれん草のソテー、ゆで卵、そして野菜入り春雨スープ。
けれど、ハルはスープだけ口にして、苦笑い。
「……二日酔いだから、これで十分」
「胃薬飲んどけよ?」
ユウヤは額にキスを落とし、低く囁いた。
「無理すんな。俺が守るから」
「今日、大学休むね」
「そっか。ゆっくりしときや」
10時、ユウヤはスーツに着替え、柔らかく微笑む。
「行ってきます」
「……いってらっしゃい」
見送る声が少し切なく揺れた。
――そして11時半。
【USB忘れた。会社までお願いできないかな? ごめん】
ユウヤからLINEが届いた。
ハルはユウヤの仕事部屋に入り、机の上からUSBを見つける。
(……よし、届けなきゃ)
姿見の前に立ち、急いで支度を整える。青いコンタクトを入れ、ほんのり色づくリップ。手首に光るシルバーブレスレットが大人びた印象を添える。髪は耳にかけて、チェーンのピアスを揺らす。
長いまつ毛をマスカラで整えた。
ネイビーのサテンブラウスは、光の角度で艶やかに揺れる。襟元に添えられた細いリボンが、幼さを隠すように上品さを際立たせていた。
ふんわりとしたオフホワイトのボトムは、清潔感のある色味で全体を柔らかくまとめる。
そして足元は革のローファー──シンプルなのに、確かな存在感を放っていた。
鏡越しに自分を見て、ハルは小さく息を呑む。
(……なんか、僕じゃないみたいだ。これなら……ユウヤに見られても恥ずかしくないかな)
ハルは緊張した面持ちで、ガラス張りの会社に足を踏み入れた。
吹き抜けのロビーにシャンデリアが光を落とし、行き交う社員たちの足音が響く。
フロントにUSBを差し出して、声を震わせる。
「あの……御影ユウヤさん、呼んでもらえますか?」
受付嬢は一瞬ぽかんと目を見開き、慌てて頷いた。
「はっ、はい! 少々お待ちください」
周囲を通り過ぎる人々の視線が、自然とハルに集まる。
「かわいい……」
「誰の知り合い?」
小声がさざめき、笑顔がこぼれる。
そのとき。背後から艶めいた声が降ってきた。
「……御影ユウヤさんと、どんなご関係?」
振り返ると、南条美咲。
タイトスカートレースの裾を揺らし、挑むような笑みを浮かべていた。
「なに? その可愛い顔。あなた、どういう関係?」
胸が強く跳ねる。返事に詰まったその瞬間──。
「……俺の恋人に話しかけんな」
低い声とともに、背後から腕が回される。
ユウヤがハルを抱き寄せ、美咲を真っ直ぐに睨んでいた。
その腕の強さに、ハルの心臓は爆発しそうになる。
美咲は一瞬、沈黙。紅い唇が引きつる。
「……」
ユウヤは何事もなかったようにハルの肩を抱き、踵を返す。
「ハル、行くぞ」
外の風に触れた瞬間、張り詰めていた鼓動が一気に解けた。
「……ありがとう」
ハルが小さな声で呟くと、ユウヤは苦笑混じりに顔を隠す。
「ほんま、反則や。可愛すぎて……俺、ますます沼やわ」
その言葉に、ハルの頬が熱く染る
その瞬間。
「兄さん! 久しぶりやな」
振り返ると、そこに立っていたのは──ユウヤによく似た青年。
黒髪に、淡く光を宿す瞳。鋭さと優しさが同居する、不思議な存在感。
「……おう、奏真か!」
ユウヤが目を見開き、笑みを浮かべる。
青年は歩み寄り、ハルをじっと見つめた。
「兄さん、隣の人は?」
ユウヤの肩をすくめる仕草の前に、自ら名乗った。
「俺は御影奏真。二十一歳。オーストラリアから帰ってきたばかりや。よろしく」
ハルは思わず息を呑んだ。
はじめまして。琴森晴ハルです。よろしくお願いします」
「……せっかくやし、今日は三人で飯でも行こか」
ユウヤが軽く笑いながら言う。
「今日は仕事早めに終わる日やったから」
ハルは胸がふっと温かくなる
(……三人で? なんだか不思議な気分だな)
「ハル、どこ行きたい?」
「えっと……駅前の韓国料理とか、いい?」
少し遠慮がちに言うと、ユウヤが即答した。
「決まりやな。お前の好きなとこでええ」
ユウヤと同じ血を引きながら、まるで違う光をまとったもう一人の御影──奏真。
Lesson 11へ続く
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