13 / 35
Lesson13 親友の刃
しおりを挟む
会社前――。
ヒールの音を響かせて立っていたのは、南条美咲だった。
「……最近、御影悠哉と全然会わないけど。どうしてかしら?」
苛立ちを滲ませ、マネージャーを睨みつける。
マネージャーは困ったように眉をひそめ、低い声で返した。
「……美咲さん。また手を出そうとしたんですか? 御影さんとは“共演NG”です。プロデューサーからも正式に通達されています」
「はぁ?」
美咲は手元のペットボトルを乱暴に開け、マネージャーに水をぶちまけた。
「っ……! だからあなたは嫌われるんですよ!」
マネージャーの怒声が響く。
美咲は胸を上下させながら、ふっと笑う。
「ふさわしいのは、御影悠哉に決まってるのよ。……わたし以外、似合わない」
――その様子を、ビルの窓から偶然見てしまったユウヤ。
(はぁ……嘘やろ。またあいつ……。なんでこんなとこまで。ほんま怖すぎるやろ……)
「ユウヤさん、どうしたんです?」
背後から声をかけてきたのは、営業担当の田中先輩だった。
「あ、田中先輩。いや、その……この前共演した南条美咲に、しつこくされてて……困ってるんです」
田中先輩は軽く肩を叩いて、にやりと笑った。
「なるほど。じゃあ僕に任せてください。ユウヤさん、もう帰るでしょ? 僕が声かける隙に、そのまま出ちゃってください」
「……助かります田中先輩!ありがとうございます」
その頃。
「なんなのかしら、かれこれ1時間は経つのに」苛立ちながら腕を組む美咲のもとに、田中が歩み寄る。
「美咲さん?」
「は?なに、誰よ、あんた?」
「御影さん待ちですか?」
「……だからなに?あなたに関係あるかしら?」
田中はにこりと笑い、声を低めて言った。
「この辺は警察もよく巡回してますからねぇ。もし“芸能人がストーカーで逮捕”なんて噂になったら、どうなるんでしょうね」
美咲は一瞬息を呑み、きつく唇を噛む。
「……帰るわ」
「どうぞ。ストーカー行為は今後おやめくださいね」
軽く会釈して見送る田中。
美咲は悔しそうにヒールを鳴らしながら背を向けた。
「どいつもこいつも……わたしを邪魔する……!」
そのあとー美咲はスタジオに戻り、隅で、
化粧直しを終えた美咲は鏡を睨みつける。
(……悔しいったらない。みんなして、わたしを馬鹿にして……)
唇を噛み、ヒールを鳴らしてフロアへ出たその瞬間。
「……おい」
振り返ると、そこにはレンが立っていた。
モデル仲間もスタッフも、一目置くトップの存在感。
「ちょっと話がある。来い」
「はぁ? わたしに命令する気?」
美咲は嘲笑で返すが、レンは視線を逸らさない。
そのまま無言で歩き出す。
気づけば美咲の足も勝手に動いていた。
連れてこられたのは、照明の落ち着いたカフェ。
奥の席に腰を下ろすと、レンはアイスコーヒーが入ったグラスの氷を揺らしながら静かに切り出した。
「……あんたさ、ほんと気持ち悪いよ」
「な、何それ? 一途な私のどこが?」
美咲の声は一瞬で尖る。だが、レンの眼差しは鋭く、容赦がなかった。
「悠哉を追い回して、晴を脅かして。お前、ただのストーカーだ」
「違う! 御影悠哉はわたしにふさわしいのよ!」
その言葉を遮るように、低い声が重なる。
「黙れ」
カフェの空気が一瞬で張りつめ、美咲の喉が鳴る。
「……このままなら、お前の仕事はゼロになる。わかってる?」
「な、何を言って──」
レンは淡々とした声で続けた。
「俺はプロデューサーとも企業とも直で繋がってる。名前ひとつ出せば、お前の仕事なんか明日から全部消える」
「……っ」
美咲は思わず息を呑み、視線を逸らす。
その横顔を見下ろし、レンは冷たく微笑んだ。
「覚えとけ。悠哉はお前のもんにはならない。……そして俺は、お前の行動を絶対に許さない」
カラン…
グラスに残った氷が、静かに音を立てた。
Lesson 14へ続く
ヒールの音を響かせて立っていたのは、南条美咲だった。
「……最近、御影悠哉と全然会わないけど。どうしてかしら?」
苛立ちを滲ませ、マネージャーを睨みつける。
マネージャーは困ったように眉をひそめ、低い声で返した。
「……美咲さん。また手を出そうとしたんですか? 御影さんとは“共演NG”です。プロデューサーからも正式に通達されています」
「はぁ?」
美咲は手元のペットボトルを乱暴に開け、マネージャーに水をぶちまけた。
「っ……! だからあなたは嫌われるんですよ!」
マネージャーの怒声が響く。
美咲は胸を上下させながら、ふっと笑う。
「ふさわしいのは、御影悠哉に決まってるのよ。……わたし以外、似合わない」
――その様子を、ビルの窓から偶然見てしまったユウヤ。
(はぁ……嘘やろ。またあいつ……。なんでこんなとこまで。ほんま怖すぎるやろ……)
「ユウヤさん、どうしたんです?」
背後から声をかけてきたのは、営業担当の田中先輩だった。
「あ、田中先輩。いや、その……この前共演した南条美咲に、しつこくされてて……困ってるんです」
田中先輩は軽く肩を叩いて、にやりと笑った。
「なるほど。じゃあ僕に任せてください。ユウヤさん、もう帰るでしょ? 僕が声かける隙に、そのまま出ちゃってください」
「……助かります田中先輩!ありがとうございます」
その頃。
「なんなのかしら、かれこれ1時間は経つのに」苛立ちながら腕を組む美咲のもとに、田中が歩み寄る。
「美咲さん?」
「は?なに、誰よ、あんた?」
「御影さん待ちですか?」
「……だからなに?あなたに関係あるかしら?」
田中はにこりと笑い、声を低めて言った。
「この辺は警察もよく巡回してますからねぇ。もし“芸能人がストーカーで逮捕”なんて噂になったら、どうなるんでしょうね」
美咲は一瞬息を呑み、きつく唇を噛む。
「……帰るわ」
「どうぞ。ストーカー行為は今後おやめくださいね」
軽く会釈して見送る田中。
美咲は悔しそうにヒールを鳴らしながら背を向けた。
「どいつもこいつも……わたしを邪魔する……!」
そのあとー美咲はスタジオに戻り、隅で、
化粧直しを終えた美咲は鏡を睨みつける。
(……悔しいったらない。みんなして、わたしを馬鹿にして……)
唇を噛み、ヒールを鳴らしてフロアへ出たその瞬間。
「……おい」
振り返ると、そこにはレンが立っていた。
モデル仲間もスタッフも、一目置くトップの存在感。
「ちょっと話がある。来い」
「はぁ? わたしに命令する気?」
美咲は嘲笑で返すが、レンは視線を逸らさない。
そのまま無言で歩き出す。
気づけば美咲の足も勝手に動いていた。
連れてこられたのは、照明の落ち着いたカフェ。
奥の席に腰を下ろすと、レンはアイスコーヒーが入ったグラスの氷を揺らしながら静かに切り出した。
「……あんたさ、ほんと気持ち悪いよ」
「な、何それ? 一途な私のどこが?」
美咲の声は一瞬で尖る。だが、レンの眼差しは鋭く、容赦がなかった。
「悠哉を追い回して、晴を脅かして。お前、ただのストーカーだ」
「違う! 御影悠哉はわたしにふさわしいのよ!」
その言葉を遮るように、低い声が重なる。
「黙れ」
カフェの空気が一瞬で張りつめ、美咲の喉が鳴る。
「……このままなら、お前の仕事はゼロになる。わかってる?」
「な、何を言って──」
レンは淡々とした声で続けた。
「俺はプロデューサーとも企業とも直で繋がってる。名前ひとつ出せば、お前の仕事なんか明日から全部消える」
「……っ」
美咲は思わず息を呑み、視線を逸らす。
その横顔を見下ろし、レンは冷たく微笑んだ。
「覚えとけ。悠哉はお前のもんにはならない。……そして俺は、お前の行動を絶対に許さない」
カラン…
グラスに残った氷が、静かに音を立てた。
Lesson 14へ続く
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
魔力ゼロのポーション屋手伝い
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
15歳で測定する魔力の量によって、人生の大部分が左右されてしまう世界。
そんな世界で、運命の日を迎えたひとりの平凡な少年──リクは、抱いた淡い期待を大きく裏切られる。魔力が前代未聞のゼロと言い渡されたのだ。
深い絶望とともに頭を抱えていたとき、森でポーション屋を営んでいるというくたびれた男が声をかける。路頭に迷っていたリクは、店で手伝いをしてはどうかという彼の誘いを受けることにする。
捨てかけた夢を拾ってもらった少年と、拾った男。ふたりが絆を深めていく、ポーション屋でのお話です。
一人称おじさんくたびれ男性×魔力ゼロ以外平凡青年のBLです。
カクヨムにも載せています。(完結済み)
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
君に可愛いがられたい
結衣可
BL
高校2年の生徒会長・椎名遼は、明るく人当たりのよい人気者。
しっかりしてそうで、実は「いじられキャラ」で周りからも愛されている。
そんな彼の前に現れたのは、1年生の新入生・高峰孝一。
無口で大柄、少し怖そうに見えるけれど、本当は誠実で面倒見のいい性格の持ち主。
弟や妹の面倒を見ながら、家計を支えるためにバイトに励む孝一は、困っている遼をさりげなく助ける。
遼は戸惑いつつも、「後輩に甘やかされてる……?」と心が揺れ始める。
気が付くと、孝一に甘やかされていく自分に動揺しつつも、思いは止められなくて・・・。
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。
📌本編モブ視点による、番外エピソード
「君はポラリス ― アンコール!:2年後の二人と俺と」を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる