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Lesson14 砕けた虚像、因果応報の終幕
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朝の楽屋。
美咲が鏡の前で髪を整えていると、マネージャーが険しい顔で入ってきた。
「……美咲さん、仕事……全部なくなりました」
「……は?」
振り返った美咲の顔から、血の気が引く。
「あなた、芸能人の高田恭介さんと不倫していたわよね? 奥さんが訴えたそうですよ。もう大騒ぎです」
「え……そんな……」
手にしていたリップが落ち、乾いた音を立てた。
マネージャーは冷ややかな目で続ける。
「スポンサーも降りました。現場からも、完全に出禁です」
美咲の赤い唇が震え、声にならない声が零れた。
「……わたしが……御影悠哉の隣に立つはずだったのに……」
その瞬間、机の上のスマホが震えた。
ディスプレイには、雑誌編集部の番号。恐る恐る取ると、無機質な声が突き刺さった。
「南条美咲さん。連載は本日をもって全て打ち切りです。これ以上のご迷惑は……ご理解いただけますね?」
通話が切れると同時に、鏡に映る自分の顔が、ひどく歪んで見えた。
目尻から黒いマスカラが滲み、プライドが粉々に崩れていく。
(……どうして。どうして私だけが……)
楽屋に沈む空気の中、
美咲は椅子に腰を下ろしたまま動けなかった。
「……全部なくなるなんて、そんなはず……」
震える声は鏡に反射して、自分に返ってくる。
スポンサーも仕事も、プロデューサーからの信頼も、すべて。
追いかけてきた煌びやかな世界が、一瞬で足元から崩れ落ちていった。
スマホを握りしめても、もう鳴ることはない。
誰も助けてはくれない。
(……御影悠哉の隣に立つのは、私しかいなかったのに)
心の奥でそう繰り返しながらも、
──すべてを失った現実だけが、残酷に突き刺さる
──もう、諦めるしかない。
赤く塗った唇を噛みしめても、虚しさだけが滲む。
大学キャンパス。授業が終わり、ざわめきに包まれる廊下。
「はるちゃん~!」
元気な声に振り返ると、マコト姉が手を振りながら近づいてくる。
「今日のお昼のランチなに食べる? 曜日限定キムチチャーハン出てるらしいわよ」
「え、ほんと? じゃあそれにしよっかな」
軽いやりとりに、ハルは自然と笑みを浮かべた。
さっきまでの陰りを振り払うように、温かな日常が広がっていく。
「はい、できたてのキムチチャーハン~!」
トレーを受け取り、二人並んで席に着く。
「やっぱり出来立てはいい匂いだな」
スプーンを手に取ったハルは、頬をほころばせた。
マコト姉がスマホを取り出し、何気なくSNSを開いた瞬間、目を丸くする。
「……ちょっと、ハルちゃん見てこれ」
差し出された画面には、南条美咲の名前とともに並ぶ記事。
《不倫発覚で芸能活動停止》《スポンサー契約解除》──騒がしい見出しが目に飛び込んでくる。
「……ほんとに? あの人が……」
ハルは驚きにスプーンを止めた。
マコト姉は肩をすくめて笑う。
「やっぱり因果応報ってあるのよね。悪いことばっかりしてたら、最後は自分に返ってくるの」
ハルは一瞬だけ真剣な顔をしたあと、ふっと息を吐いて微笑んだ。
「……そうだね」
その笑みは少しだけ切なく、けれどどこか安堵に満ちていた。
ハルの胸の奥にふっと浮かんだのは、あのとき助けてくれた人の顔だった。
(……レンさん。本当に、ありがとう)
強引でぶっきらぼうなのに、どこか兄みたいに背中を守ってくれる存在。
彼が動いてくれなければ、きっとユウヤはもっと傷ついていた。
(僕も……大事な人を守れるようになりたいな)
そして夕暮れの帰り道ー
前を歩いていた見覚えのある後ろ姿に、思わず足が止まる。
(……タクミ?)
よく見れば、その隣には背の高い男。腕を絡めて歩いていて、タクミは幸せそうに笑っていた。
「……もう? え、え、早すぎない?」
思わず小さく声に出してしまい、苦笑いが漏れる。
(……まあ、そっか。タクミらしいか)
少し呆れ、少しだけ胸の奥がチクリ。
(……でも、素敵なレンさんにはタクミは合わないよな)
心の中でそう付け加えると、ふっと力が抜けたように微笑んだ。
ポケットからスマホを取り出し、指先で文字を打ち込む。
【今から帰るよ】
送信ボタンを押した瞬間、画面に「悠哉」の名前が浮かび、胸の奥がほんのり温かくなった。
数秒後に返ってきた返信。
【俺も今終わったとこや。駅の駐車場で待っとるから、お迎えするで。】
画面を見つめたまま、頬が熱くなる。
(……あぁ、やっぱり、こういうとこが好きだ)
Lesson 15へ続く
美咲が鏡の前で髪を整えていると、マネージャーが険しい顔で入ってきた。
「……美咲さん、仕事……全部なくなりました」
「……は?」
振り返った美咲の顔から、血の気が引く。
「あなた、芸能人の高田恭介さんと不倫していたわよね? 奥さんが訴えたそうですよ。もう大騒ぎです」
「え……そんな……」
手にしていたリップが落ち、乾いた音を立てた。
マネージャーは冷ややかな目で続ける。
「スポンサーも降りました。現場からも、完全に出禁です」
美咲の赤い唇が震え、声にならない声が零れた。
「……わたしが……御影悠哉の隣に立つはずだったのに……」
その瞬間、机の上のスマホが震えた。
ディスプレイには、雑誌編集部の番号。恐る恐る取ると、無機質な声が突き刺さった。
「南条美咲さん。連載は本日をもって全て打ち切りです。これ以上のご迷惑は……ご理解いただけますね?」
通話が切れると同時に、鏡に映る自分の顔が、ひどく歪んで見えた。
目尻から黒いマスカラが滲み、プライドが粉々に崩れていく。
(……どうして。どうして私だけが……)
楽屋に沈む空気の中、
美咲は椅子に腰を下ろしたまま動けなかった。
「……全部なくなるなんて、そんなはず……」
震える声は鏡に反射して、自分に返ってくる。
スポンサーも仕事も、プロデューサーからの信頼も、すべて。
追いかけてきた煌びやかな世界が、一瞬で足元から崩れ落ちていった。
スマホを握りしめても、もう鳴ることはない。
誰も助けてはくれない。
(……御影悠哉の隣に立つのは、私しかいなかったのに)
心の奥でそう繰り返しながらも、
──すべてを失った現実だけが、残酷に突き刺さる
──もう、諦めるしかない。
赤く塗った唇を噛みしめても、虚しさだけが滲む。
大学キャンパス。授業が終わり、ざわめきに包まれる廊下。
「はるちゃん~!」
元気な声に振り返ると、マコト姉が手を振りながら近づいてくる。
「今日のお昼のランチなに食べる? 曜日限定キムチチャーハン出てるらしいわよ」
「え、ほんと? じゃあそれにしよっかな」
軽いやりとりに、ハルは自然と笑みを浮かべた。
さっきまでの陰りを振り払うように、温かな日常が広がっていく。
「はい、できたてのキムチチャーハン~!」
トレーを受け取り、二人並んで席に着く。
「やっぱり出来立てはいい匂いだな」
スプーンを手に取ったハルは、頬をほころばせた。
マコト姉がスマホを取り出し、何気なくSNSを開いた瞬間、目を丸くする。
「……ちょっと、ハルちゃん見てこれ」
差し出された画面には、南条美咲の名前とともに並ぶ記事。
《不倫発覚で芸能活動停止》《スポンサー契約解除》──騒がしい見出しが目に飛び込んでくる。
「……ほんとに? あの人が……」
ハルは驚きにスプーンを止めた。
マコト姉は肩をすくめて笑う。
「やっぱり因果応報ってあるのよね。悪いことばっかりしてたら、最後は自分に返ってくるの」
ハルは一瞬だけ真剣な顔をしたあと、ふっと息を吐いて微笑んだ。
「……そうだね」
その笑みは少しだけ切なく、けれどどこか安堵に満ちていた。
ハルの胸の奥にふっと浮かんだのは、あのとき助けてくれた人の顔だった。
(……レンさん。本当に、ありがとう)
強引でぶっきらぼうなのに、どこか兄みたいに背中を守ってくれる存在。
彼が動いてくれなければ、きっとユウヤはもっと傷ついていた。
(僕も……大事な人を守れるようになりたいな)
そして夕暮れの帰り道ー
前を歩いていた見覚えのある後ろ姿に、思わず足が止まる。
(……タクミ?)
よく見れば、その隣には背の高い男。腕を絡めて歩いていて、タクミは幸せそうに笑っていた。
「……もう? え、え、早すぎない?」
思わず小さく声に出してしまい、苦笑いが漏れる。
(……まあ、そっか。タクミらしいか)
少し呆れ、少しだけ胸の奥がチクリ。
(……でも、素敵なレンさんにはタクミは合わないよな)
心の中でそう付け加えると、ふっと力が抜けたように微笑んだ。
ポケットからスマホを取り出し、指先で文字を打ち込む。
【今から帰るよ】
送信ボタンを押した瞬間、画面に「悠哉」の名前が浮かび、胸の奥がほんのり温かくなった。
数秒後に返ってきた返信。
【俺も今終わったとこや。駅の駐車場で待っとるから、お迎えするで。】
画面を見つめたまま、頬が熱くなる。
(……あぁ、やっぱり、こういうとこが好きだ)
Lesson 15へ続く
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