大人になっても、恋は止まらない。──独占と余裕のあいだで

氷月

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Lesson22 秘書への第一歩

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大学ーお昼休み


「もう夏休みかぁ。二ヶ月弱も暇だなー」

ハルがテーブルに突っ伏して呟くと、横から声が飛んだ。

「ねぇハルちゃん、バイトとかしないの?」

マコト姉がニヤリ。

「え?……したことないけど、ちょっと興味ある!」

「いいじゃない。ちなみにあたしはメイドカフェよ♡」

「ブホッ!」

飲んでたお茶を吹き出すハル。

「ちょっ、ハルちゃん失礼ね!? これでもモテてんのよ、メイド服で!」

胸を張るマコトに、周りのサークル仲間は拍手と笑い声。

「似合う~!」「行ってみたい!」と盛り上がっていた。

「……マコト姉すごい。けど僕は……無理だ、遠慮しとく」

耳まで赤くなりながら首を振るハル。

「じゃあコーヒー屋は? 定員さんとか似合いそうじゃない?」

「うん、それなら……ありかも」

ハルは思わずスマホを取り出す。

「よーし、悠哉に相談してみよ」

(……けど、言ったら怒られるかも? いや、試しに言ってみよう!)

夕食の匂いが漂うダイニングー

キッチンに立つハルは、エプロン姿でフライパンを揺らしながら、ふと切り出した。

「ねぇ悠哉、夏休み長いからさ、バイトしたいんだ。いい?」

ソファでは、悠哉がiPadを片手に経済ニュースを流し読みしている。

眉間に皺を寄せたまま、低く返す。

「……バイト?必要ないやろ。俺が養う」

「いやいや、そういうことじゃなくて!」

ハルはフライパンを持ちながら振り返り、

「社会経験だよ!コーヒー屋さんとかで働いてみたいんだ」

その瞬間、悠哉の頭に妄想がよぎった。

――カフェのカウンターで笑顔を振りまくハル。

周りの男客たちが「可愛い子だな」って目で見る光景。

「……ありえへん」

悠哉はiPadをテーブルに置き、額に手を当てた。

「他の男に見られるとか、俺が無理や」

ハルは苦笑しつつも肩をすくめる。

「えー……過保護すぎじゃない?」

悠哉はしばらく沈黙していたが、不意に顔を上げた。

その瞳は、経済ニュースよりも遥かに真剣だ。

「……じゃあ俺の会社でバイトしろ。秘書としてな。父さんも喜ぶし、俺も安心できる」

「え……秘書?」

ハルが目を丸くすると、悠哉は唇の端をゆるめた。

「大丈夫。お前は俺の専属や」

悠哉が立ち上がり、キッチンに歩み寄る。

炒め物の香りが広がる中、背後からハルの腰を抱きしめ、耳元で囁いた。

「……お前が他の男に笑いかけるとか、考えるだけで気が狂いそうや」

「……じゃあ、わかった。僕は悠哉の秘書でいいや」

ハルは照れ笑いを浮かべながら、フライパンを置き、悠哉に体を預ける。

「可愛いな。ほんま……俺をどんどん甘やかす天才や」

悠哉はハルの額にキスを落とし、結局、経済ニュースなんて頭から吹っ飛んでしまった。


Lesson 23へ続く
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