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Lesson 14 交錯する心、砕ける恋
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ーレンのマンション。
連絡もよこさずに、ユウヤはレンのマンションに来た。
夜景の光を背に、ユウヤはお酒が入ったグラスを揺らしながら低く切り出した。
「……なぁレン。言うか迷ったけどな、
お前んとこの後輩タクミ、危なっかしいんちゃうか?… …昨日、見たんや。ハルを抱きしめとった」
「タクミ……人のもんに手ぇ出そうとしとったんちゃうか」
レンは氷を入れていたグラスの手を止める。
「……は?」
「見たんや。昨日雨の日にハルを抱きしめて、離れるとこ。駅前のバス停でな。すぐ離れてたけど」
低く抑えた声には怒りが滲んでいた。
「ハルにそのこと確認したのか?」
「言ってない」
ユウヤは首を振り、苦々しく笑う。
「その代わり、チクリとだけ刺しといた。──“お前は俺のだからな”って」
レンは息を呑む。
「お前がいつまでも余裕ぶってるからだろ! タクミの気持ちぐらい、とっくにお前に向いとるやろ!」
「落ち着け!ユウヤ……」
「だったら会って確かめて、はっきりさせろ! 俺はもう……ハルだけで精一杯なんや……!誰かに揺らされるのも、タクミに揺らされるのも……ごめんやけど腹立ってしゃーないんや!」
グラスを握る手が震えていた。
普段の余裕ぶったユウヤは、そこにはいなかった。
レンはただ黙って、友の嫉妬を受け止めるしかなかった。
グラスを置いた手が震えている。
レンは言葉を失い、ただ黙ってその姿を見ていた。
しばらくの沈黙のあと──ユウヤは大きく息を吐き、額に手を当てて頭を抱えた。
「……悪い。取り乱した」
その声はかすれていて、必死に感情を抑え込もうとしているのがわかる。
レンはグラスを見つめながら、小さく頷いた。
「……わかったよ。会って話すから」
その短い返事に、ユウヤは顔を上げてレンをじっと見た。
「……頼むで。お前も……タクミを放っとくな」
ユウヤが帰った後、静かな部屋に一人残されたレン。
ソファに沈み込み、深く息を吐く。
ふとスマホを手に取り、画面を見つめる。
──噂、きっとタクミの耳にも入ってる。
ちゃんと俺の口から伝えなきゃな。
文字を打ち込む。
【レナとの噂、もう解決してる。……少し話したい。明日、帰りに会えないか?】
送信ボタンを押した瞬間、既読がつく。
だが画面は静かなまま。
胸の奥がじわじわと冷たくなる。
──返事、来ねぇか……
時計の針が12時を越えた頃、ようやく通知が鳴った。
「……っ」
レンはわずかに身を起こし、画面を開いた。
そこに現れたのは、短い言葉。
【明日は予定あります、ごめん】
レンはスマホを見つめ、静かにため息。
「……ガキかよ」
次の日ー
レンはタクミを待つために、コーヒーを片手に大学前で立ち続けていた。
冷めかけたコーヒーの苦さが舌に残る。
ただ気配を探すように視線を巡らせる。
一時間待つもタクミの姿は見えない。
「……俺らしくねぇな」
口元に苦笑を浮かべ、肩を落とした。
ほんの少し胸に疼く痛みを抱えながら。
──その頃。
裏口から静かに出て行ったタクミは、遠目にレンの姿を見ていた。
真っ直ぐに立つその背中があまりにも絵になって、心が揺れる。
「……なんであんなにかっこよく待ってられるんだよ」
そう呟いて、顔を背ける。苦笑いを浮かべたまま、校舎の裏へと足を速めた。
辿り着いたのは美術棟の裏庭。
そこでは、ハルがスケッチブックを抱え、陽の光を浴びながら筆を走らせていた。
楽しそうな横顔に、タクミの胸が一瞬ざわめく。
「……やっぱあいつ可愛いんだよな」
遠くから声かけようとしたらー
ハルの前にユウヤが現れた。
「ハル」
優しい呼び方… その声を聞いただけで、ハルの顔はぱっと華やぐ。
光を浴びたその笑顔は、まるで太陽のように無邪気で──俺は胸が痛んだ。
ユウヤは、その笑顔を見てわずかに目を細めた。
視線の端でタクミの姿をきちんと捉えながらも、気づかぬふりをする。
唇の端には、どこか余裕を滲ませた笑み。
「……ハル、おいで」
低い声で呼び寄せると、迷いなくハルを後ろから抱きしめた。
驚いたハルが見上げるより先に、額へとゆっくりキスを落とす。
「ユウヤ……っ、なに?!誰か見てたらどうするの」
恥ずかしそうに笑うハルを、ユウヤはさらに強く抱き寄せる。
ハルを抱きしめたまま、ユウヤはタクミの存在を確かに意識していた。
振り返ることはしない。
そして、ハルの髪にそっと口づけを落とし、満足そうに腕を解いた。
「……帰ろ?」
甘く優しい声に、ハルは嬉しそうに頷く。
二人が並んで歩き出すその後ろ姿。
立ち去る瞬間、ユウヤはほんの一瞬だけ振り返り── 静かな笑みを浮かべた。
──その仕草はあまりにも自然で、あまりにもズルい。
まるで「俺のものだ」と静かに見せつけるような余裕の色気。
タクミは胸を締めつけられ、足を止めたまま視線を逸らせずにいた。
「……だよな、やっぱり、勝てないよな。あの人なんでかっこいいんだよ、あんなの……」
俺は、喉が詰まった。
視界が滲み、涙が今にも零れ落ちそうになる
「……なんで、俺……」
震える手でポケットからスマホを取り出し、迷いながら文字を打ち込む。
【……レンさん。会いたいです。今から】
送信ボタンを押した瞬間、タクミは唇を噛みしめた。
──その頃、帰路についたレンのスマホが震えた。
歩きながら画面を開いた瞬間、そこに映ったタクミの名前と短い言葉に、レンは一瞬立ち止まる。
夕風に髪を揺らしながら、レンはゆっくりと息を吐いた。
「……今から、か、」はー。
でも少しだけ笑みが溢れた。
Lesson15へ続くー♡♡
連絡もよこさずに、ユウヤはレンのマンションに来た。
夜景の光を背に、ユウヤはお酒が入ったグラスを揺らしながら低く切り出した。
「……なぁレン。言うか迷ったけどな、
お前んとこの後輩タクミ、危なっかしいんちゃうか?… …昨日、見たんや。ハルを抱きしめとった」
「タクミ……人のもんに手ぇ出そうとしとったんちゃうか」
レンは氷を入れていたグラスの手を止める。
「……は?」
「見たんや。昨日雨の日にハルを抱きしめて、離れるとこ。駅前のバス停でな。すぐ離れてたけど」
低く抑えた声には怒りが滲んでいた。
「ハルにそのこと確認したのか?」
「言ってない」
ユウヤは首を振り、苦々しく笑う。
「その代わり、チクリとだけ刺しといた。──“お前は俺のだからな”って」
レンは息を呑む。
「お前がいつまでも余裕ぶってるからだろ! タクミの気持ちぐらい、とっくにお前に向いとるやろ!」
「落ち着け!ユウヤ……」
「だったら会って確かめて、はっきりさせろ! 俺はもう……ハルだけで精一杯なんや……!誰かに揺らされるのも、タクミに揺らされるのも……ごめんやけど腹立ってしゃーないんや!」
グラスを握る手が震えていた。
普段の余裕ぶったユウヤは、そこにはいなかった。
レンはただ黙って、友の嫉妬を受け止めるしかなかった。
グラスを置いた手が震えている。
レンは言葉を失い、ただ黙ってその姿を見ていた。
しばらくの沈黙のあと──ユウヤは大きく息を吐き、額に手を当てて頭を抱えた。
「……悪い。取り乱した」
その声はかすれていて、必死に感情を抑え込もうとしているのがわかる。
レンはグラスを見つめながら、小さく頷いた。
「……わかったよ。会って話すから」
その短い返事に、ユウヤは顔を上げてレンをじっと見た。
「……頼むで。お前も……タクミを放っとくな」
ユウヤが帰った後、静かな部屋に一人残されたレン。
ソファに沈み込み、深く息を吐く。
ふとスマホを手に取り、画面を見つめる。
──噂、きっとタクミの耳にも入ってる。
ちゃんと俺の口から伝えなきゃな。
文字を打ち込む。
【レナとの噂、もう解決してる。……少し話したい。明日、帰りに会えないか?】
送信ボタンを押した瞬間、既読がつく。
だが画面は静かなまま。
胸の奥がじわじわと冷たくなる。
──返事、来ねぇか……
時計の針が12時を越えた頃、ようやく通知が鳴った。
「……っ」
レンはわずかに身を起こし、画面を開いた。
そこに現れたのは、短い言葉。
【明日は予定あります、ごめん】
レンはスマホを見つめ、静かにため息。
「……ガキかよ」
次の日ー
レンはタクミを待つために、コーヒーを片手に大学前で立ち続けていた。
冷めかけたコーヒーの苦さが舌に残る。
ただ気配を探すように視線を巡らせる。
一時間待つもタクミの姿は見えない。
「……俺らしくねぇな」
口元に苦笑を浮かべ、肩を落とした。
ほんの少し胸に疼く痛みを抱えながら。
──その頃。
裏口から静かに出て行ったタクミは、遠目にレンの姿を見ていた。
真っ直ぐに立つその背中があまりにも絵になって、心が揺れる。
「……なんであんなにかっこよく待ってられるんだよ」
そう呟いて、顔を背ける。苦笑いを浮かべたまま、校舎の裏へと足を速めた。
辿り着いたのは美術棟の裏庭。
そこでは、ハルがスケッチブックを抱え、陽の光を浴びながら筆を走らせていた。
楽しそうな横顔に、タクミの胸が一瞬ざわめく。
「……やっぱあいつ可愛いんだよな」
遠くから声かけようとしたらー
ハルの前にユウヤが現れた。
「ハル」
優しい呼び方… その声を聞いただけで、ハルの顔はぱっと華やぐ。
光を浴びたその笑顔は、まるで太陽のように無邪気で──俺は胸が痛んだ。
ユウヤは、その笑顔を見てわずかに目を細めた。
視線の端でタクミの姿をきちんと捉えながらも、気づかぬふりをする。
唇の端には、どこか余裕を滲ませた笑み。
「……ハル、おいで」
低い声で呼び寄せると、迷いなくハルを後ろから抱きしめた。
驚いたハルが見上げるより先に、額へとゆっくりキスを落とす。
「ユウヤ……っ、なに?!誰か見てたらどうするの」
恥ずかしそうに笑うハルを、ユウヤはさらに強く抱き寄せる。
ハルを抱きしめたまま、ユウヤはタクミの存在を確かに意識していた。
振り返ることはしない。
そして、ハルの髪にそっと口づけを落とし、満足そうに腕を解いた。
「……帰ろ?」
甘く優しい声に、ハルは嬉しそうに頷く。
二人が並んで歩き出すその後ろ姿。
立ち去る瞬間、ユウヤはほんの一瞬だけ振り返り── 静かな笑みを浮かべた。
──その仕草はあまりにも自然で、あまりにもズルい。
まるで「俺のものだ」と静かに見せつけるような余裕の色気。
タクミは胸を締めつけられ、足を止めたまま視線を逸らせずにいた。
「……だよな、やっぱり、勝てないよな。あの人なんでかっこいいんだよ、あんなの……」
俺は、喉が詰まった。
視界が滲み、涙が今にも零れ落ちそうになる
「……なんで、俺……」
震える手でポケットからスマホを取り出し、迷いながら文字を打ち込む。
【……レンさん。会いたいです。今から】
送信ボタンを押した瞬間、タクミは唇を噛みしめた。
──その頃、帰路についたレンのスマホが震えた。
歩きながら画面を開いた瞬間、そこに映ったタクミの名前と短い言葉に、レンは一瞬立ち止まる。
夕風に髪を揺らしながら、レンはゆっくりと息を吐いた。
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でも少しだけ笑みが溢れた。
Lesson15へ続くー♡♡
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